Home/ 遠藤 明成 遠藤 明成 執筆者:遠藤 明成 HS政経塾 「戦争を起こさせない」ために、安保法制改革の実現を! 2015.05.07 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 本年の憲法記念日には、護憲派と改憲派が集会を開催し、それぞれの主張を訴えました。 今後の安保法制改革の向かうべき方向を見定めるために、今回は、5月3日に出された両者の主張を対比してみます。 ◆支離滅裂な主張が続く護憲派集会 護憲派は、憲法記念日に「平和といのちと人権を! 5・3憲法集会」を横浜市で開催し、「集団的自衛権の行使」や「戦争のための全ての法制度」への反対などを訴えました。 大江健三郎氏は、現政権が成立を目指す安保法制に対して、「安倍は日本の国会で(そのことについて)はっきり述べて、われわれ日本人の賛同を得たことはない」と述べ、憲法学者の樋口陽一東大名誉教授は、国民を飢えさせないことと、絶対に戦争をしないことが政治の役割だ(※)として、安倍政権を批判しています。(産経ネット版:2015.5.3) ※これは樋口氏の友人である菅原文太氏(俳優)の遺言 しかし、この批判はどちらも的外れです。 自民党は14年の選挙で「安全保障法制を速やかに整備します」と公約し、13年公約ではガイドライン改定、12年公約でも「集団的自衛権の行使」を明記していました。今回の安保法制改革は民意の審判を経ずに出てきたわけではありません。 また、「絶対に戦争をしないこと」を政治の役割とした場合、他国からの侵略に対して政府は何もできません。一切の戦争が禁じられたならば、侵略に対して自衛のために戦うこともできないからです。 集会では、精神科医の香山リカ氏が、「私たちはこの憲法を変えるどころか、まだ使い切ってもいない」と述べていましたが、有事に「使いものにならない」ことが、今の憲法の最大の問題点なのです。 ◆現行憲法の矛盾を批判する改憲派 一方、改憲派に関しては、東京町の砂防会館別館で開かれた公開憲法フォーラム「憲法改正、待ったなし」の内容が報道されています。(産経ネット版:2015.5.3) 基調講演を行った櫻井よしこ氏は、「平和を愛する諸国民の公正と信義」と書かれた憲法前文を問題視しています。 講演では、例えば、「中華人民共和国のような平和を愛する国の公正さと信義の厚さを信頼して、日本国と日本国民の安寧と生存を守っていこうと決意した」と書かれていたら、受け入れられるかどうかを聴衆に問いかけました。 前文は日本の近隣に「平和を愛する諸国民」が満ちていることを前提にしているので、この精神を遵守した場合、反日的な軍拡国家(中国や北朝鮮など)の善意を信頼しなければいけなくなります。この理不尽さを指摘しているわけです。 ◆中国の軍拡や北朝鮮の拉致や核開発から目を背けてはならない 両者を比べると、護憲派と改憲派とでは、平和への「脅威」と見なすものが違うようです。 護憲派は安倍政権を平和への「脅威」と見なしていますが、改憲派は軍拡を続ける中国や北朝鮮などを「脅威」と見なしています。 しかし、戦後史を振り返ると、中国はチベット、東トルキスタン、南モンゴルを武力で奪い、台湾(金門島砲撃など)やベトナム(中越戦争)、インド(中印戦争)などに戦争をしかけました。 そして、北朝鮮は世界最悪の人権弾圧を続けながら核ミサイル開発を進めているのです。 この両国の戦争や非人道的な行為から目を背け、集団的自衛権の行使や安保法制改革で日本が戦争国家になると批判する護憲派の主張は、東アジアの現状を無視した悪質なプロパガンダだと言わざるをえません。 ◆「戦争を起こさせない」ためには、安保法制改革が必要 戦後70年、日本の平和を守ってきたのは、憲法九条ではなく、日米同盟と自衛隊の「抑止力」でした。 今回の安保法制改革は、昨年の集団的自衛権の行使容認、訪米時のガイドライン改定を踏まえ、日米同盟の抑止力を強化することで、近隣の野心ある国に「戦争を起こさせない」ための改革です。 また、万一、戦争をしかけられても、それに対応できる体制をつくるための改革でもあります。 安保法制改革は先延ばしが続いてきましたが、戦後70年の本年にこそ、これを現実にし、さらに九条改正に向けた気運を高めていかなければなりません。 【参照記事】(どちらも産経ネット版:2015.5.3) 【憲法記念日】「すべて安倍のせい」と護憲派が横浜でスパーク 大江健三郎氏「米演説は露骨なウソ」 香山リカ氏「憲法使い切ってない…」 【憲法記念日】櫻井よしこ氏「憲法前文は変な日本語。文法も間違い」「皆さんの命を中国に預けますか?」 憲法フォーラムで基調提言 日米同盟の強化を阻む「壁」を破るために 2015.04.09 文/HS政経塾 スタッフ 遠藤明成 ◆2015年は日本の安保政策を固めるための「正念場」 中谷防衛大臣とカーター米国防長官は4月8日に会談し、新しい安保法制の内容が日米防衛協力の指針(日米ガイドライン)に反映されることが決まりました。 具体的には、安倍政権は、集団的自衛権の解釈変更などを反映した安保法制を7月末までに成立させ、その後に日米ガイドラインを改定することを目指しています。 今月末には安倍首相の訪米が予定されていますが、そこでも未来の日米関係のあるべき姿が議論されるでしょう。 本年はまさに、日本の安全保障にとって、正念場となる一年です。 ◆日米両国民の「世論」の比較 こうした重要な時期に、米調査機関ピュー・リサーチ・センターが日米両国の1000人の国民を対象にした世論調査の結果(実施は本年2月)を公開し、以下の事実が明らかになりました。 ・歴史認識について米国民に聞いたところ、日本の謝罪を「十分」(37%)、「不要」(24%)と答えた人の合計は61%。「不十分」(29%)を大きく上回った。 ・「中国の台頭は、アメリカにとって日米関係がより重要になることを意味する」と考える米国民は60%。 ・アジアにおいて日本が果たす軍事的な役割が「拡大されるべき」と答えたのは、日本国民は23%、米国民は47%。「制限されるべき」と答えたのは、日本国民が68%、米国民が43%だった。 ・「日本を信頼できる」と答えた米国民は68%。「米国を信頼できる」と答えた日本国民は75%。「中国を信用できる」と答えたのは、米国民で30%、日本国民は7%でしかなかった。 ・米国民に経済的な結びつきについて日中のどちらが重要か聞いたところ、43%が「中国」を挙げ、「日本」の36%を上回った。 ・米国民の安倍首相の好感度は11%だが、73%は「彼について聞いたことがない」と答えており、アジアに関心の薄い人々が多いことが伺える。(小泉元首相の評価も同レベルの結果であり、慰安婦についても57%が、「全く聞いたことがない」と答えている) この調査を見ると、アジアに強い関心を持っていなかった米国民にも、野心を露わにした中国を牽制する国として日本が意識されていることが分かります。 ◆集団的自衛権行使の「限定容認」に潜む落とし穴 日米防衛相会議では自衛隊と米軍の協力範囲の拡大が合意されました。 そして、新しい安保法制で自衛隊が動ける範囲が広がる見込みですが、現在の自公政権の安保政策には未解決の問題点も数多く残っています。 まず、集団的自衛権の行使に関しては、「自衛の措置としての武力の行使」の要件の厳しさが挙げられます。 これが発動できるのは、日本が「存立を脅かされる明白な危険がある場合」ですが、この要件だと「9.11」後のアフガン戦争のようなケースに自衛隊が参加することは困難です。 NATO軍は集団的自衛権に基づいてアフガン戦争で米軍とともに戦いましたが、このケースは朝鮮有事や台湾有事とは違って日本の安全保障との直接的な関係が薄いからです。 今の日本が行使できる集団的自衛権は、「海外派兵は一般に許されない」という原則の下に、「限定的に容認」されたレベルであり、国際標準とはかけ離れています。 同盟国は本来、双務的にお互いの国が攻撃された際に防衛し合うものですが、今の限定容認の体制だと、米国の危機に際して、大統領に「同盟国なのに自衛隊を動かせないのか」と批判される可能性が残ります。 「我が国は集団的自衛権を使える国になった」と言いながら、結局、同盟国としての役割を十分に果たせなかった場合は、国家としての信用を失う危険性もあるわけです。 ◆本来、目指すべきは、防衛法制の「ネガティブリスト化」 また、新しい安保法制では、他国軍が「現に戦闘行為を行っている現場」以外の場所でしか後方支援は認めない方針なので、支援活動を行う地域で戦闘が始まれば、自衛隊は撤退しなければなりません。 中国や北朝鮮が、後方支援が行われている地域に多数のミサイルを撃ち込み、米軍などがミサイルを迎撃した場合、そこは「戦闘行為」が行われた地域に変わってしまうので、自衛隊は支援活動を放棄せざるをえなくなるのではないでしょうか。 今回の安保法制改革は防衛の立直しの第一歩ですが、まだ大きな問題が残っているので、課題は山積みです。 日米同盟の強化を阻む「壁」を破るためには、やはり、幸福実現党が訴えてきた、国際標準の集団的自衛権の容認と防衛法制の「ネガティブリスト化」(法律で禁じられたこと以外は、国際法に則って機動的に動ける自衛隊をつくること)が必要なのです。 世界に広がる「中国離れ」――平和国家・日本は誇りある外交を! 2015.01.15 文/HS政経塾スタッフ:遠藤明成 ◆アジアと中米で起きた象徴的な出来事 昨年の終わり頃から本年初めに世界で中国離れの進展を予感させる出来事が起きています。 中国は、スリランカ前大統領の地元であるハンバントタの港湾開発を支援し、インド包囲網を進めてきましたが、1月9日の同国大統領選では親中外交の見直しを訴えたシリセナ氏が当選しました。(スリランカはインド、日本との関係強化を進めるとの憶測が各紙で報道されている) また、メキシコでは昨年11月に中国から受注した首都と工業都市を結ぶ210キロの高速鉄道プロジェクトを白紙撤回しています。 昨年12月に着工した約5000億円の大きな契約が受注3日後に撤回され、その代替案が日本の新幹線をも含めて再検討されているのです。 ◆外務省の調査で判明した、米国世論の「日中逆転」 また、昨年11月、中国でのAPEC開催前に外務省はアメリカで行なった世論調査の結果を発表しました。 この調査は昨年夏に行なわれましたが、アメリカの有識者と国民に「アジアで最も重要なパートナーはどこか」と問いかけたところ、有識者と国民の双方で、中国よりも日本を挙げる人が上回ったのです。(外務省HP「米国における対日世論調査」2014/11/7) ≪一般国民の部≫(約1000人) 「日本」と答えた割合は46% (前年35%)。 「中国」と答えた割合は26% (前年39%)。 ≪有識者の部≫(約200人) 「日本」と答えた割合は58% (前年39%)。 「中国」と答えた割合は24% (前年43%)。 昨年と比べると「日中逆転」し、09年以来、はじめて「日本」が一般と有識者の双方で1位となりました。4年連続で米国の「有識者」が日本よりも中国を「重要なパートナー」と見なしてきた趨勢が変わったのです。 そして、日米安全保障条約は「維持すべき」との回答が、一般の部で81%(前年67%)、有識者の部で85%(前年77%)へと増えています。 結局、中国の反日外交は、米国世論の「親日度向上」という予期せぬ”成果”を生みました。 ◆歴史観においても日本は正論を貫くべき 良識あるアメリカ人は過去だけを見ているわけではありません。中国が東シナ海や南シナ海で繰り返した「現在の蛮行」に厳しい判定を下しています。 また、歴史観についても米記者のマイケル・ヨン氏と産経記者らが「ナチス戦争犯罪と日本帝国政府の記録の各省庁作業班(IWG)米国議会あて最終報告」を調査し、日本関連の約14万2千ページの文献の中に軍が慰安婦を強制連行した証拠がないことを明らかにしました。 ようやくこの分野でも米国世論が変わる兆候が出てきたのです。 しかし、安倍政権は年頭記者会見で「村山談話を含めた、歴史認識に関しての歴代内閣の立場を継承する」と明言しています。これでは日本は自虐史観の見直しを海外に発信できません。 産経新聞のインタビュー記事(12/31)では、米グレンデール市の慰安婦像撤去訴訟の原告となった目良浩一氏が「朝日新聞が誤報を認めたと記事にしても米国人で朝日を読んでいる人が果たして何人いるか。いないに等しい」と述べていました。 やはり、こうした海外の日本人の努力と期待に応えるためにも、安倍政権は河野談話、村山談話を破棄すべきです。 ◆平和国家として正論を貫き、仲間となる国を増やすべき 日本は、平和国家としての「現在の行動」に誇りを持ち、「敵を減らし、味方を増やす外交」を進めなければなりません。 朝日新聞や毎日新聞、東京新聞などの報道を見ると、まるで中国と韓国だけが世界の世論であるかのような書きぶりですが、台湾やインド、バングラデシュ、トルコ、ブラジルなど、世界各地に多くの親日国があります。 日本は昨年にフィリピンへ巡視艇を10隻(ODAの円借款を活用)、ベトナムへ巡視船に転用可能な中古船6隻(ODAとして無償供与)の供与を決めました。 現在、ODAの範囲拡大に向けて議論が進められていますが、日本は、欧米諸国が行っている「対外援助協力」(Foreign Aid)を参考とし、人道支援、経済援助、軍事援助などを多角的に構成し、親日国を支援すべきです。 (※「対外援助協力」は民生分野が中心のODAとは異なり、安全保障分野にまで踏み込んだ援助を行なうことに適している) 道州制や地域主権を改め、防災に堪える体制づくりを 2014.12.17 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 2014年の衆院選が自公政権の勝利に終わり、今後の経済政策の行方に人々の注目が集まっています。しかし、一点、今回の選挙で十分に議論されなかったテーマがありました。 それは、「道州制や地域主権で大規模な天変地異に対応できるのか」という問題です。 ちょうど、衆議院が解散された翌日には長野市と長野県小谷村、小川村などで震度6弱を記録した長野北部地震が起きました。(負傷者は41人、全半壊54棟)。 25日には阿蘇山の中岳で噴火も起きており、「また大きな災害が来るかもしれない」という漠然とした不安を少なからぬ国民が感じているのではないでしょうか。 ◆東日本大震災後も「道州制」「地域主権」路線は変わっていない 与党の自民党、公明党だけでなく、野党である民主党、維新の会など、既存の政党は、「道州制」や「地域主権」などを掲げ、基本的には中央集権に否定的なスタンスを取っています。(そのほか、共産党、社民党は「国家解体」を目指している) そして、「国家」を重視する次世代の党でも「中央集権型国家から地方分権型国家へ」という公約を掲げています。 2010年の参院選では「自民党、公明党、みんなの党などが、道州制実現を公約に掲げ」、2012年6月末には財界が「地域主権と道州制を推進する国民会議」を開催しましたが、今の日本は、「道州制の実現という方向で、主な政党や財界の足並みが揃いつつある」のです。(全国町村会「道州制の何が問題か」2012年11月) ◆災害時の対策を考えれば「中央集権=悪」という考え方は危険 自公両党は2013年に「道州制への移行のための改革基本法案」を出しましたが、自民党内でも地方との調整がうまくいかず、成立しませんでした。 しかし、東日本大震災への対処は大打撃を受けた地方自治体だけではどうにもならず、中央政府の力がなければ震災復興もままなりません。 また、阪神大震災でも、知事が自衛隊の出動に否定的だったことが被害の拡大を招いた面がありました。 非常時には、中央政府のリーダーシップが人命を救えるか否かを大きく左右するので、「中央集権=悪」という単純な論理は危険です。 ◆道州制に反対する地方政界の声 そして、「道州制」については、内実を知る地方政界から反対の声も上がっています。 全国町村会は、「国(外交・防衛・司法)と地方の役割(内政全般)を切り分け、国の役割を極力限定すべき」とする「道州制」構想に対して、「国の役割と地方の役割は、明確に切り分けられず、相互作用の上に成り立っている」とし、「現実からかけ離れた空論」と批判しました。(全国町村会「道州制の何が問題か」2012年11月) 福井県知事・西川一誠氏は、道州制によって、「国の交渉力低下を招くため、経済交渉で不利になる」「道州制にしても自治体のサービスは住民に身近にならない」などと批判しています。(『中央公論2008年7月号』) 市町村から遠方にある道州政府が各地の行政をわがこととして理解するのは難しく、住民にとっては国と同じぐらい遠い政体になるからです。 「道州制にすれば地方の自由度が増し、中央政府の統制から解放され、各地域が発展する」というバラ色の未来図を描く方もいますが、これは十分に立証されていないので、現実に地方政治に携わる人々から、「机上の空論だ」という批判が出ているわけです。 ◆防災政策を機能させるために 幸福実現党は、立党以来、一貫して、道州制に反対し、地方行政のための権限移譲は認めつつも、中央集権の必要性はなくならないことを訴えてきました。 非常事態に対応できる「国と地方の関係」がなければ、どのような防災政策を並べても空理空論で終わってしまいます。 幸福実現党は、「強固な防災インフラの整備」(堤防や津波避難タワーなど)、「建物の一層の耐震強化」「道路の拡幅などで震災に強い交通網を築く」「ヘリコプターなど空を使う交通網の整備」「震災時も停電しにくい電力網、中断されにくい通信網の構築」「災害備蓄の強化」などを掲げています。 政策的には他党と共通する要素もありますが、幸福実現党は、危機管理、安全保障という中央政府の役割を堅持しているので、他の政党以上に、筋の通った防災政策を打ち出しているのです。 給付金よりも減税を。再生可能エネルギーよりも原発を 2014.12.13 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆12月10日自公政権、地方への2000億円の臨時交付金 自公政権は、急速な円安に伴う燃料高対策や家計負担の軽減のため、12月10日に、地方への2000億円の臨時交付金を配ることを決めました。そして、景気対策の補正予算の総額は3兆円となると見られています。(産経12/11) これは選挙対策の一つですが、増税で景気を悪化させた後に景気対策の予算を組み、低所得者対策を打ち出すのは、自作自演のマッチポンプの一種です。 ◆自公両党が、中小企業や地方経済にもたらした3重の打撃 振り返れば、東日本大震災の後、自民党は公明党や民主党と一緒に原子力規制委員会をつくり、原発再稼働を難しくしました。さらに三党合意のもとに消費税の増税を決めました。 そして、自公政権の発足後は金融緩和で円安路線が進みましたが、円安で輸入原材料価格が上がる中で消費税が8%に上げられました。この時、原発停止に伴う電気料金の上昇が続いていたことも無視できません。 結局、自公両党の政策は、「原発停止に伴う電気料金上昇」+「円安によるコストアップ」+「消費税の増税」という3重の打撃を家計と中小企業、地方経済にもたらしたのです。 大手の輸出企業などを中心に円安の大きな恩恵もありましたが、上記の弊害は無視できないため、自公政権は、マッチポンプ的に、「エネルギー価格の高騰や物価上昇の打撃を受ける低所得者や中小事業者、子育て世代」(産経12/11)などの支援を始めています。 ◆必要なのは「金融緩和」と「減税」 この「金融緩和」と「消費税8%への増税」の組み合わせは、円安の恩恵が届かない企業や家計にとっては負担増の連続でしかないので、本当は、「金融緩和」と「消費税5%への減税」が必要だったのです。 円安路線で中小企業と家計の負担が増えるのならば、その痛みを軽減するために消費税は5%へと減税されなければなりません。この「金融緩和」と「減税」を組み合わせた幸福実現党の政策は、「金融緩和」と「増税」がセットの自民党政策とは全くの別物なのです。 もともと、消費税を増税しなければ景気対策の公共事業も要らず、交付金も要らなかったはずですが、そうした事実は「財政再建」の美名の下に隠され、消費税5%への減税という正論を無視し、自公政権は「増税延期」という詭弁を訴えています。 そして、自民党を批判する民主党、共産党、社民党は、給付金の交付や年金の拡充、奨学金の充実(「奨学金の無利子化」「返済不要の奨学金」)などを打ち出していますが、こうしたお金は、結局、富裕層や大企業への増税から生まれるので、この三党の行き着く先は、結局、個人の私有財産と企業の内部留保の没収なのです。 与党と野党のどちらを見ても、お金で票を買う「取引型民主主義」になっています。 しかし、補助金や給付金を一部の人に配れば政治の「公平性」が失われ、全員に配ればお金持ちにもお金が届くため、「合理性」が失われてしまいます。 やはり、あるべき低所得者対策は、お金を配ることではなく、みなの負担を公平に減らす減税政策です。減税は補助金のように政府予算の拡大を招かず、予算の無駄を切り下げる圧力が働くからです。そのため、幸福実現党は消費税5%への減税を訴えています。 ◆原発稼働で電気料金を引き下げ、家計と企業の負担を軽減 そして、原発の再稼働を進め、電気料金上昇の負担を減らすべきです。一日百億円もの燃料費の流出をこれ以上、続けるのではなく、すでにある資産として原発を活用すれば、年3兆円以上もお金を使わずに済むからです。 今、幸福実現党と自民党、次世代の党以外はみな脱原発政党であり、再生可能エネルギーの推進を訴えていますが、この路線は危険です。 また、自民党の政治家は、電力自由化で料金が下がると誤解していますが、原発が止まって電気の総量が減る中で自由化しても、電気料金が上がるだけで終わります。 ドイツは1998年に電力自由化を決め、2000年に「再生可能エネルギー買取制度」をつくりましたが、その結果、14年間で電気料金が2倍になりました。脱原発後はその負担が深刻化し、今ではこの制度を見直すための議論が進んでいるのです。 維新の党は脱原発の代案として電力自由化と再生可能エネルギーの推進を打ち出していますが、この路線の先には過去のドイツの失敗の再現が待っています。 ドイツの失敗に学ぶならば、脱原発ではなく、使われていない資産である原発を再稼働すべきです。原発が回れば電気料金が下がり、その分のお金が企業の余力となり、賃上げを促進していきます。 円安対策の給付金よりも、消費税5%への減税が必要です。そして、使われていない原発を回すことで、電気料金を引き下げ、家計と企業の負担を軽減すべきなのです。 岩盤規制の打破に挑戦する幸福実現党 2014.12.12 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆自公政権に規制緩和は出来るのか? 自公政権は「成長戦略」を掲げていますが、本当に規制緩和ができるのでしょうか。 本年4月に公務員制度改革法が改正されましたが、内閣人事局が縦割り行政を排して、国全体に奉仕する人事を目指すという趣旨は失われ、新設された内閣人事局と従来の人事院が並立し、人事が二つの組織で行なわれることになりました。 元官僚の高橋洋一氏らは、内閣人事局は人事院の意図を無視できず、主導権を握れないので、これは人事に携わる部局が増えただけの焼け太りの“改革”だと批判しています。(これは単なる組織いじり) 07年に公務員制度改革に踏み込み、官僚の抵抗で退陣させられた安倍首相は、前回の轍を踏むことを恐れてか、「大臣が幹部公務員を解雇できない」という、外国から見たら信じがたい、日本行政の欠陥を改革できませんでした。 規制改革の先には許認可権を握る官僚との対決が待っています。前回、官僚に敗れた安倍政権が岩盤規制を緩和し、成長戦略を実現するのは、極めて難しいことなのです。 ◆学力テストの結果を公表し、教育に競争原理を しかし、幸福実現党は立党以来、党綱領で、「行政に経営の思想を入れ」、小さな政府を実現し、「企業家精神を鼓舞」することを訴えてきました。成長戦略を本当に実現するには、本気の改革を目指す政党が国会で議席を持つ必要があるからです。 今、規制だらけの分野としては教育が典型的です。 例えば、11月30日の朝日新聞では、文科省が大都市圏の私大の定員超過に対して助成金を減額し、志願者がたくさん集まる大学は定員を増やすべからずという方針を出したことが報道されています。 これは計画経済の発想です。各大学の努力相応に志願者が集まり、生徒が増えるのが当然なのに、国がお金にものを言わせて大学の入学者数を統制しているからです。 そして、公立中学と高校を見ても、川勝平太・静岡県知事と下村博文・文科省との間で、全国学力テストの結果公表について論争が起きています。 二人は11月6日に会談したのですが、下村文科相は「知事に結果公表の権限はない」と主張し、川勝知事が「県教育委員会の委員長から(権限を)一任されている」と反論する物別れに終わりました。(11/7産経電子版) 学力テストの学校別成績の公表率は6パーセントであり、下村文科相自身も「6パーセントという結果は十分とは言えない」と述べているので(12/9日経電子版)、川勝知事の行動が安倍政権の方針に反しているとは考えにくいのですが、なぜか文科大臣が文句をつけています。 下村文科相のポスターには「使命感が原動力」と書かれていますが、今の教育行政を見ると、安倍首相の規制改革路線に反しているように見えてしかたがありません。 しかし、幸福実現党は、公務員の仕事の情報公開として、学力テストの結果を公表し、教育に競争原理を働かせることを訴えています。教育に自由主義を持ち込み、日本の学力を建て直さなければならないからです。 ◆岩盤規制の打破を 教育以外にも、日本には信じがたい規制がたくさんあります。 例えば、建物の中で野菜をつくる「植物工場」も広がってきていますが、いまだに植物工場を農地に立てることはできません。野菜を栽培するためでも立てられないのですから、岩盤規制、恐るべしです。(6/23フジサンケイビジネスアイ電子版) また、自民党は「移民政策ではないことを前提に」して、「外国人材が日本で活躍しやすい環境を整備」することと、「クールジャパンの推進」を公約しましたが、今のままでは、日本料理の修行をしに来た外国人は規制の壁にぶつかります。 省令が外国料理のプロ以外の入国を認めておらず、14年に農林水産省のプログラムで例外規定が認められても、「習得機関2年以内」「1事業所2人以内」の範囲でしか外国人は日本料理の修行ができないからです。(原英史著『日本を縛りつける役人の掟』) 安倍政権は規制緩和を訴えていますが、長さの足りないロープのように、成長の可能性を引っ張れないのが現状なので、このロープを伸ばす政党が国会に必要なのです。 これらの政策は、幸福実現党は立党以来、実現を目指してきたものです。植物工場の推進、意欲ある外国人労働者の導入、日本の魅力のPRを提言してきたのです。 成長戦略を本物にするには「自由の大国」を目指す幸福実現党が必要です。幸福実現党は、国会に「岩盤規制の打破」を求める国民の声を届けてまいります。 バラマキ野党VS減税政党・幸福実現党 2014.12.09 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 国民の多くは民主党政権の悪夢を未だに忘れておらず、11月29日の読売朝刊では12年に落選した民主党・樽床伸二元総務相が逆風の中、大阪12区で自分の名前だけが印刷され、『民主党』も『元総務相』の文字もない名刺を配っていることが報道されています。 ◆やはり、民主党、共産党、社民党はバラマキ路線 しかし、民主党の公約には与党時代の反省がなく、アベノミクスによる格差拡大を批判し、「新児童手当等により子育てを直接支援」「所得制限のない高校無償化」「戸別所得補償制度の法制度化」などの「ばらまき政策」を並べています。 ばらまき政治という点では、元民主党の小沢一郎氏が代表を務める「生活の党」も同じで、相変わらず「子育て応援券」と称した子ども手当を配ろうとしています。 そして、格差是正を目指す共産党、社民党などは大企業と富裕層への課税強化、「富裕税の創設」を訴え、そのお金を低所得者層にばらまこうとしています。 これらの野党は成功した企業や個人に重税をかけ、「結果の平等」を実現しようとしているのです。 今回、民主党は公約に増税の項目を入れていませんが、消費税5パーセントの追加増税が必要になる「最低保障年金の創設」など、さらに予算が必要になる政策が多いので、結局、彼らの行き着く先は、前回と同じく「増税」です。(民主党政権時代に所得税と相続税の最高税率5パーセントの引き上げが決まった) ◆幸福実現党の消費税5パーセントへの減税は共産党や社民党の増税反対と別物 これに対して、幸福実現党は「小さな政府」と「安い税金」を掲げ、消費税5パーセントへの減税を訴えています。 法人税を20パーセント台に下げ、所得税の累進課税を廃止して10パーセント程度の一律税制にし、「努力する者が報われる社会」の建設を目指しています。 「5パーセントへの消費税減税を主張する幸福実現党は、消費税増税に反対する共産党、消費税5パーセントを訴える社民党と何が違うのか」と思う方もいるかもしれませんが、この二党と幸福実現党の目指す世界は全く違います。 共産党や社民党は、成功する個人や企業を「悪」と見て、そこからお金を奪い取ろうとしています。 これは、民主主義の名を借りて、バケツから出ようとするカニを皆で引きずり下ろす社会を目指しているのです。こうした富の再配分に基づいた社会では、「貧しさから抜け出そうとすると、引きずり降ろされる」という意味での「平等」が実現します。 民主党について述べれば、前回と同じく、増税をせざるをえなくなるバラマキ政策ばかりなので、結局、目指す方向は共産党や社民党と同じです。 しかし、金持ちを潰すことによって貧しい人を助けることはできません。給料を払う者を潰すことによって給料をもらう者を助けることはできません。 格差是正の名のもとに、富の再分配を目指す政党もありますが、稼ぐよりも使う方を多くすることによって窮地を脱することはできないのです。 ◆パイの取り合いを目指す政党とは違い、幸福実現党は富の創造を目指す 幸福実現党が消費税5パーセントへの減税、小さな政府と安い税金(所得税のフラットタックス化、20パーセント台の法人税減税、相続税・贈与税の廃止など)を訴えるのは、努力する者が報われる社会をつくり、民間の活力で繁栄する国をつくるためです。 消費税導入と日本が「失われた20年」に突入したのは同じ時代です。そして、名目GDPの総額は消費税が増税された97年から500兆円前後で一進一退を繰り返しています。 消費税増税と金融緩和による円安路線が同時に進み、原発が動かない自公政権では、中低所得者の負担や中小企業、地方の負担が重くなります。 しかし「消費税5パーセントへの減税」と金融緩和を並行させ、原発の早期再稼働を目指す幸福実現党であれば、円安路線の負担を軽減しながら経済全体を成長させることができます。 一つのパイをどのように配分するかを考えているのが、民主党や共産党、社民党、共産党ですが、幸福実現党は、パイを大きくすることと、新たなパイを焼くことを考えています。 公平で「安い税金」に変えることで努力する者が報われる社会をつくり、富の創造を実現しようとしているのです。 今の日本に必要なのは、富の再配分を訴える政党ではありません。減税によって富を創造する個人と企業を生み出し、日本人全体を豊かにする幸福実現党なのです。 増税が失政だと認めない自公政権、消費税5パーセントで景気回復の幸福実現党 2014.12.08 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆増税に反対した幸福実現党 2014年7-9月期の景気の悪化の規模は、11月に公表された速報値よりもさらに深刻だったことが12月8日、内閣によって発表されました。 11月の速報では7-9月期のGDPの減少値は年率換算でマイナス1.6パーセントと言われていたのですが、実際はマイナス1.9パーセントだったことが明らかになったのです。 増税後の景気悪化の規模を調べ直したら、被害はもっと深刻だったことが今回の発表(改定値)で分かり、「調査によってGDPのマイナス幅がもっと小さいことが分かるはずだ」と考えたエコノミストや政治家などの期待が裏切られたのです。 昨年の秋に多くの“有識者”が8パーセントの増税を行なうべきだと主張する中で、幸福実現党はこの増税に反対しました。 それは、「日本経済がデフレから脱却し始めたばかりで、大部分の庶民の給料が上がってもいないのに増税などできるわけがない」という当たり前の常識があったからです。 ◆デフレ下で消費増税の弊害が分からない政治家 しかし、自民党の甘利明大臣は11月17日のGDP速報値発表後の記者会見で、「デフレ下で消費増税を行うことの影響について学べた」と反省の弁を述べる有様です。 どうして増税を行なう前に気が付かなかったのでしょうか。まるで、普天間基地の県外移設を訴え、日米同盟を危うくした後に「抑止力について学ばせていただいた」と言った鳩山首相の迷走とそっくりです。 昨年の8パーセント増税、今年の10パーセント増税に反対した三菱UFJの片岡剛士氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員)は、今年の11月に今回の増税によるGDP減少の規模は97年の消費税増税の時よりも大きく、東日本大震災の時のGDP減少に匹敵することを示していますが、この被害を直視しなければいけません。 (※「97年4‐6月期:前期比年率3.5パーセント減」/「11年1‐3月期:前期比年率6.9パーセント減」) 今年の4月に消費税を増税した後の3か月(4-6月期)のGDP減少を年率で計算し直した数字は約-7%と言われています。(※11月発表では「1.9%減:前期比年率7.3%減」/12月8日の発表では1.7%減(同6.7%減)」 ◆消費税増税で引き起した景気悪化は「人災」 今回の消費税増税は「東日本大震災」並みにGDPを減らした「人災」なのです。これは自公民の三党合意と安倍政権からもたられた未曾有の失政です。 また、消費税増税に警鐘を鳴らす早稲田大学の若田部昌澄教授は、本年11月の官邸での点検会合で、景気の悪化を深刻に捉え、「アベノミクスは振出しに戻ったのだから、税率を出発点と同じにし、金融・財政政策を再稼働させよ」と言っていました。 若田部教授は消費税を5パーセントに戻すのがいちばんよいと提言しています。これは、要するに「頭を冷やして出直せ」と言っているのと同じです。 日本は消費税を5パーセントに戻すべきだというのは、ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授(米・プリンストン大)も言っていることです。 しかし、自公政権はこうした警告を十分に受け止めず、増税延期と言いながら、同時に17年4月に必ず増税することを明言しています。もう一度、日本経済破壊の実験を繰り返そうとしているのです。 そんなことが許されてよいはずがありません。幸福実現党は、日本経済を発展し、パイを増やすことで、国民を豊かにするために、消費税5パーセントへの減税を訴えます。 靖国参拝「差し止め訴訟」、安倍首相はひるまずに「再参拝」を 2014.09.25 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆靖国参拝「差し止め訴訟」 昨年12月の安倍首相の靖国神社参拝は、憲法20条に定めた政教分離に違反すると主張し、200人以上が起こした裁判の口頭弁論が9月22日に東京地裁で開始されています。 原告である広島出身の被爆者、関千枝子氏(82)が、集団的自衛権の行使容認なども含めて靖国参拝を批判し、安倍首相が「平和に暮らす権利を保障した憲法に違反」していると訴えたのに対して、首相側では、「参拝で原告の信教の自由などが侵害されたとは言えない。また、今回の参拝は私的に行ったもので、総理大臣の公務として行ったものではない」と反論しました。 ◆過去、繰り返されてきた靖国裁判訴訟 昔にも「中曽根首相公式参拝訴訟」や「小泉首相参拝訴訟」などが行われ、原告の損害賠償請求は棄却されましたが、高裁レベルでは「首相の公式参拝は違憲」という判断が示されています。 大阪高裁においては、中曽根首相の公式参拝は92年に「憲法20条3項や89条に違反する疑いがある」と見なされ、小泉首相の参拝に関しては、05年に違憲判断が出されています。 その後、最高裁は首相の靖国参拝について違憲・合憲を判断しませんでしたので、これらの判決から「公人としての参拝は違憲」と見なされるようになりました。 ◆首相の靖国参拝をめぐる争点 前掲の訴訟では、「政教分離の原則」と「信教の自由」、「歴史認識」が大きな問題になっています。 過去の判例では、「国家神道において宗教と政治が結びつき、信教の自由が脅かされたので、政教分離が必要なのだ」といった論理が立てられており、法曹関係者の中では「先の大戦における“日本の侵略”を繰り返さないためには、A級戦犯が合祀される靖国神社へ首相は参拝すべきではない」という考え方も根強いのです。 政教関係に関わる事案は、国が特定の宗教を援助・助長し、他宗を圧迫する行為を禁止する「目的・効果基準」に基づいて判断されますが、前掲の判例では、公人としての首相の靖国参拝は、他の寺社や宗教団体以上に靖国神社を優遇する行為と見なされています。 (津市が地鎮祭に公金を支出し、政教分離違反に問われた際に、最高裁判決(77年)にて地鎮祭を「社会の一般的慣習にかなった儀礼」と評価し、特定宗教を「援助、助長、促進し又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるとは認められない」と判断したことから、この「目的・効果基準」が確立。97年に愛媛県が玉串料に公金を出した行為は最高裁判決で違憲とされた) ◆政府が抱える「慰霊の責任」と「政教分離」との関係 この基準を厳格に解釈すれば、政府は、どのような宗教施設においても慰霊の当事者にはなれません。 しかし、現実には靖国神社以上に戦没者を祀っている寺社はなく(約250万人)、日本政府には、日本のために死んでいった軍人たちを慰霊する重い責任があります。 政教分離に関しては厳しい制約があるにもかかわらず、日本政府は国家予算で神道の「祭祀王」である皇室を支えているのですから、国家の根幹に関わる大きな案件に関しては、小さな案件とは違った基準を考えるべきでしょう。 現実には、歴史上、日本の政治権力に正統性を与えてきた皇室の権威は大きく、占領軍も、「これを廃止した場合には、日本は大混乱に陥る」と考えたため、結局、現行憲法でも政治から皇室を完全に分離できず、政教分離には例外が認められることになりました。 日本政府全体としての「戦没者への慰霊」といった大きな案件と、個々の自治体などと宗教の接点で生じる小さな案件とでは、違ったレベルの判断基準が用いられるべきなのです。 ◆「A級戦犯合祀」への批判は筋が通らない また、A級戦犯の合祀などへの批判もありますが、サンフランシスコ講和条約が結ばれ、A級戦犯の社会復帰が許された後にも、死刑となった人々だけを半世紀以上も延々と追及し続けるのは筋が通りません。 1952年には「戦犯在所者の釈放等に関する決議」(参院)や「戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議」(衆院)がなされており、国際的にも国内的にも、すでに戦犯問題は終わっています。 日本は、靖国参拝を利用した他国からの内政干渉を拒絶すべきです。戦後70年を迎える2015年に向けて、安倍総理は批判に屈せず、靖国「再参拝」を決行すべきだと言えるでしょう。 中南米をめぐる日中の資源外交のゆくえ 2014.07.31 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆中南米訪問に力を入れる安倍首相 7月25日から中南米訪問を開始した安倍首相は、メキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリを訪問し、8月1日にはブラジルのルセフ大統領と会談します。 日本の首相の訪問は、メキシコ、ブラジル、チリが10年ぶり、トリニダード・トバゴとコロンビアが初となりますが、今回の訪問には、日本のエネルギー安全保障を確保すると同時に、中南米に浸透する中国の影響力に対抗する狙いがあります。 安倍首相は、25日に「メキシコの石油増産やシェールガス開発が、世界のエネルギー市場の安定にとって重要だ。日本の技術と資金が今後有効に活用されることを期待する」と述べ、「トリニダード・トバゴで天然ガス、チリでは銅、リチウムなどの開発で日本の技術支援や投資を」(産経ネット版7/30)活発化させる方針を示してきました。 ◆中南米に浸透する中国の影響力 安倍首相は、中南米にてインフラ輸出、資源・エネルギー面での連携、国連での地位向上を図るための味方づくりなどを進めていますが、すでに習近平氏は7月中旬に中南米四か国を訪問しているため、今回は、東アジアでの日中の対抗関係が地球の裏側にまで持ちこされています。 8月1日に安倍首相はブラジル入りしますが、習近平氏とルセフ大統領との首脳会談では、ブラジルの鉱山開発企業に約5千億円規模の融資、アマゾン流域で建設中のダム開発支援、ブラジルのエンブラエル社製の航空機60機の購入等が決まっています(産経ネット版 7/18)。 習氏は、「中南米30カ国以上が加盟するラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の首脳会議にも出席し「2024年までに中南米との貿易総額を現在の約2倍の5千億ドル(約50兆円)以上にする」(産経ネット版 7/25)と豪語しました。 現在、長年の積み重ねもあって、中国の資源外交や貿易拡大のための世界戦略は中南米にまで浸透しています。(習氏は就任以来、二回目の中南米訪問を行なっており、前主席である胡錦濤氏も中南米を訪問している) 筆者である私も、ペルーに住む知人から「日本語を学ぶ人が減り、ビジネスで有利な中国語を学びたがる人が増えている」という話を聞いたことがありますが、今後、日本はGDP第二位奪還計画を立てるとともに、もっと国際広報に力を入れていかなければならないでしょう。 日本の首相が訪問できたのは10年ぶりであることを考えると、今後、日本にとって大切なのは、世界規模で「敵を減らし、味方を増やす」外交戦略を展開することです。 そのためには、「常に地球儀を見ながら考えていた」とも言われる毛沢東以上の戦略眼を持った大政治家が、日本から出て来なければならないでしょう。 ◆中南米最大の親日国ブラジルとのさらなる関係強化を 中国に比べると、なかなか外遊できない日本の首相は後手後手になっていますが、習氏の中南米訪問にはベネズエラやキューバなどの反米国も含まれているため、日本としては、ブラジルなどの国々に「自由主義、民主主義国の連携」を訴えることで、中国との差別化を図ることができるでしょう。 1日に安倍首相が赴くブラジルは150万人の日系移民が住む南米最大の親日国であり、日本とは歴史的にも文化的にも経済的にも深いつながりを持っています。(日本からのブラジル移民には100年以上の歴史がある) そして、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック、2020年の東京オリンピックにおける相互の協力、ブラジル人移民の受入れ、南大西洋の深海油田開発への協力、ブラジルからの石油、鉄鉱石の輸入など、日本とブラジルの間で進めるべき取組みも数多くあるのです。 ブラジル側には、「中国の軍事的脅威は地球の裏側にある自国にまで及ばないので、確執が続く日中両国とうまく付き合い、日中両国からブラジルに有利な融資や支援などを引き出したい」という考えもあるでしょうが、日本としては自由主義、民主主義国としての価値観の共通性や日系移民を通じた交流の歴史などを強調し、単なる経済関係以上の、深い協力関係を目指していかなければなりません。 すべてを表示する « Previous 1 … 8 9 10 11 Next »