Home/ 新着一覧 新着一覧 G7サミット 欧米の「法の支配」の限界――「自由・民主・信仰」による団結を 2023.05.11 http://hrp-newsfile.jp/2023/4432/ 幸福実現党政務調査会・外交部会 久村晃司 ◆「法の支配」を掲げるG7サミット 日本が議長国を務める広島G7サミット開催まで残り一週間となりました。岸田文雄首相はサミットの達成目標の一つとして「法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の決意を力強く示す」ことを掲げています。 ウクライナ電撃訪問を受けて「ロシアの侵略は暴挙だと痛感」した首相の強い思いが表れています。 「法の支配(rule of law)」とは「全ての権力に対する法の優越を認める考え方」であり、権力者が法を無視して自分勝手な政治を行う「人の支配」の対義語とされます。 日本政府は「法の支配の強化」を外交政策の柱の一つに据え、「国際法に基づく国家間の紛争の平和的解決」に力を入れているとしています(※外務省HP)。 しかし、この「法の支配」という考え方だけで、ロシア‐ウクライナ戦争に終止符を打ち、「国際秩序」を守ることは極めて難しいでしょう。 ◆国際社会の分断が浮き彫りになった討論会 今年1月、国連安全保障理事会において「法の支配」をテーマに公開討論会が行われました。テーマは議長国を務める日本が選定し、77カ国等が参加しました。 冒頭、グテレス国連事務総長は、ロシアを念頭に「力によって他国の領土を併合することは国連憲章や国際法の違反である」と指摘しました。 これに対しロシアのネベンジャ国連大使は、「西側が作り出したルールに基づく秩序には同意できない」と真っ向から反論しました。同じく中国も欧米への批判を展開しています。 また、中東やアフリカ諸国には中立的な意見が目立ちました。 例えばアラブ首長国連邦は「基本原則の尊重は、最強国の利益に関わるときにのみ守られるものであってはならない」と釘を刺しています。 討論会を主催した林外相は「法の支配の下に今一度結集しよう」と参加国に呼びかけましたが、かえって国際社会の分断が際立つ結果となってしまいました。 ◆欧米の「国際法違反」の実態 「法の支配」と言えば、一見、すべての国が無条件に受け入れそうなものです。しかし、その考えに反発する国は少なくないのが実態です。 特にロシアは、「欧米こそ国際法に違反する行為を繰り返してきた」と度々強調してきました。 その代表的な事例は「イラク戦争」です。アメリカとイギリスは2003年3月20日、国連安保理の決議を得ることなくイラクの首都バクダッドを空爆、戦争を開始しました。 米ブッシュ(子)政権は「イラクに大量破壊兵器が存在する」と主張していましたが、大量破壊兵器は見つかりませんでした。 イラク戦争については国際的な非難の声が多数上がり、国連アナン事務総長(当時)も、イラク戦争は「国連憲章に違反する」と指摘しています。 なお、戦争開始から最初の一年間で、イラク民間人の死者数は最大1万人超と推計されました(※英米の非政府組織「イラク・ボディーカウント」)。 これはロシア‐ウクライナ戦争における、一年間のウクライナ民間人の死者数約8,000人(※国連人権高等弁務官事務所)を上回ります。 NATO軍による「コソボ空爆」も、欧米諸国による国際法違反、あるいは国連憲章違反と指摘される事例の一つです。 セルビア共和国内のコソボ自治州においてアルバニア系住民が独立を求め、1991年、セルビア当局との紛争が始まりました。 セルビア側によるアルバニア系住民への虐殺行為があったとして、NATO軍は1999年3月24日、国連安保理の承認を得ないままコソボ空爆に踏み切りました。 78日間続いた空爆は回数にして1万回を超え、1,000人以上の民間人死者を出しましたが、当時のクリントン米大統領は「人道的介入」として正当化しています。 その後、2008年にはコソボ自治州が独立を宣言し、西側だけが国家承認を行いました。ロシアによる「特殊軍事作戦」は、このNATOによるコソボ空爆を模倣したものであるとの指摘もあります。 さらにさかのぼれば、先の大戦のアメリカによる広島と長崎への原爆投下や、民間人への無差別爆撃も明らかな「国際法違反」です。 しかし、いまだに日本は、アメリカからの正式な「謝罪」を受けていません。 ◆不公平な「法の支配」の限界 ロシアは今回、ウクライナへの攻撃に踏み切った理由として「ウクライナ東部のロシア系住民を保護するため」と説明していますが、これは一定の正当性がある主張です。 (※言論チャンネル参照 https://www.youtube.com/watch?v=zT1hgibFWr4) 欧米諸国は自分たちの行為を棚に上げてロシアを非難し、「力による一方的な現状変更であり、悪である」と一蹴する傾向がありますが、それこそあまりにも一方的な見方です。 プーチン大統領は「我々はいつも、『西側は法に基づく秩序を守っている』と聞かされてきたが、全くのナンセンス、完全な騙しだ」「西側が何に基づいて決定して、そもそも誰がそうする権利を与えたのか、はっきりしない」(※2022年9月30日プーチンのスピーチ)と、西側諸国への不満をあらわにしています。 大川隆法党総裁は、歴史の法則として、「最強国、要するに、戦争をして勝ちつづける国の法律が、結局は国際法になるのです」(『この戦争をどうみるか』)と指摘しています。 これまではアメリカの国内法が国際法として「通用」してきたかもしれません。 しかし時代は変化しつつあり、アメリカの衰退やBRICs諸国の台頭もあって、プーチン大統領は、世界は「多極化」しつつあると指摘しているのです。 そうしたなかで、日本が相変わらず「法の支配」という名の「欧米の支配」を呼び掛けても、「国際秩序」を守り抜くことはできないでしょう。 ◆分断ではなく「融和と停戦」を では来る広島サミットにおいて、議長国である日本は何を訴えるべきでしょうか。それは、一日も早いロシア‐ウクライナ戦争の「停戦」です。 折しも、アメリカ国防総省ペンタゴンの機密文書流出事件によって、欧米諸国の支援にかかわらず、ウクライナ有利が「嘘」であったことが明らかになりつつあります。 そして、アメリカ国民からは終わりの見えない戦争の停戦を求める声も高まっています。 そろそろ、バイデン大統領の掲げる「民主主義国家」対「専制国家」の対立軸では、世界大戦まっしぐらであることをG7は認識すべきでしょう。 中国の習近平主席はプーチン大統領ともゼレンスキー大統領の両者とそれぞれ会談し、停戦の仲介役として動き始めています。 このままでは中国のような覇権主義国が反欧米国をまとめあげるリーダー国家ともなりかねず、非常に危険です。 ◆「法」の根源にあるもの 「民主主義国家」対「専制国家」の考えに代わるものとして、大川隆法党総裁は「神仏を信じる国家」対「神仏を信じない国家」の対立による、中国・北朝鮮の封じ込めを提唱しています。 ロシアとウクライナは、ロシア正教とウクライナ正教といった違いはあるものの、ともに神を信じている「信仰のある国」です。 特にプーチン政権以降のロシアは、ロシア正教を国の柱に据えた信仰国家であり、かつてのソ連のように数多くの人々を弾圧してきた無神論・唯物論国家ではありません。 冷戦時代の考え方でロシアを封じ込めることは、多くの人々の幸福に適っているとは言えないのです。 他方、中国や北朝鮮ではトップが神に成り代わり、法律をつくっていますが、その結果、罪のない多くの人々が「合法的」に弾圧され、この世の地獄が現れています。 そもそも、「法の支配」の「法」の根源には神仏の存在があります。大川隆法党総裁は『法哲学入門』の「まえがき」で以下のように述べています。 「はっきり言えば、人間の創った法が、神の法や仏の法を超えてはならないのだ。神仏の法を根源としつつ、変動していく社会に適した実定法が定められていくべきだと思う。国民のその時代の『空気』が、必ずしも神意や仏意でもないことを深く肝に銘ずるべきであろう。」 神仏を信じる心を基にした政治が行われてこそ、普遍的な価値に通じる「法」を定めることができます。 「法の支配」が優れたものとみなされてきたのは、どのような時代や地域でも変わらない神仏の願いと一致する「法」が定められるという前提があるからです。 反対に、神仏の存在を忘れると、善悪の判断もなくなり、メディアの作り出す「空気」に流された政治に堕してしまいます。 それはまさに、西側のプロパガンダを横流ししているだけの、現在の日本外交の姿でもあります。 今こそ日本は、「自由・民主・信仰」を政治の基本原則とし、ロシア‐ウクライナ戦争の仲裁国になりうる数少ない国として、正義ある平和をつくる道を選ぶべきです。 LGBT理解増進法、何が問題? 2023.05.10 http://hrp-newsfile.jp/2023/4431/ 幸福実現党政務調査会長代理 小川佳世子 ◆議論百出の「LGBT理解増進法案」 性的少数者に対する理解を深めるための法律案、いわゆる「LGBT理解増進法案」についての議論が自民党内で進められています。 特に議論になっているのは、「差別」という言葉を入れるかどうかです。LGBTに関して「差別は許されない」としてしまえば、心の中で思ったことや、つぶやいたことまで非難されて、生きにくい世の中になるのではないかということで、慎重な声があります。 しかし、野党などからは「理解を進めるだけでは生ぬるい」「差別の禁止まで踏み込むべきだ」というような意見も出ています。 このように議論がまとまらないなか、5月19日から始まるG7広島サミットで議長を務める岸田首相としては「日本が性的少数者に理解のある国である」ことをアピールするため、サミット前に国会に法案を提出し、できれば成立させたいと考えているようです。 この法律について、国民はおおむね理解を示しています。今年2月に行われた世論調査(FNN・産経新聞社)では、理解増進法を成立させるべきと考えている人が64%を超え、反対の26.5%を大幅に上回りました。 また、同性同士の結婚を認めることについては、特に20代では9割以上が賛成、30代でも88%以上が賛成していて、特に若い世代を中心にLGBTへの理解が進んでいるようです。 しかし、いま、この法律を成立させることはいくつかの疑問があります。 ◆疑問(1):「内政干渉」で急かされていないか 一つ目の疑問は、海外からのプレッシャーや空気に押されていないか、ということです。 アメリカのエマニュエル駐日大使は、東京新聞の取材に対して、LGBTへの差別を禁止する法律について、早めに法律を制定すべき、と訴えています。 日本の法律について、なぜアメリカの大使が口を挟むのでしょうか。アメリカの政府関係者が日本の政治に口を挟むことは、「余計なお世話」を通り越して、「内政干渉」です。 「日本だけがLGBTに理解のない国だと思われている。サミットまでに法整備を」と、不必要に空気を読んで成立を急ぐのはおかしな話です。 他の国が何を言おうとも、日本の国のことは、日本で責任を持って決めるべきです。 ◆疑問(2):LGBTに寛容な日本に特別な法律が必要か 二つ目の疑問は、欧米諸国とは違い、もともとLGBTに寛容だった日本に、特別な法律が本当に要るのだろうか、ということです。 例えばイギリスでは1967年まで同性愛が犯罪とされていました。男性同士で性行為を行ったら有罪となり、刑務所に入れられていたのです。 そうした偏見は今も残り、LGBTの人たちを狙った犯罪が後を絶ちません。 イギリス・ロンドン警視庁の統計によれば、2018年にロンドン市内で確認されただけで、年間2300件のLGBTを狙った暴行などが起きているとのことです。 アメリカコロラド州でも、昨年11月、LGBTの人たちが集まるナイトクラブが銃撃され、30人が死傷する事件が起きました。 さらにアメリカでは、同性愛を精神障害と見なして「治療」する施設がいまだに存在しています。2014年にオバマ大統領が、同性愛の治療を中止する声明を発表したものの、世間から隔離された施設でいまだに人権を無視した治療が行われています。 一方、日本ではそのような極端な差別はなく、ゲイのタレントが活躍できるほどです。 しかも、今、日本が成立させようとしている法律は、LGBTに焦点を当てて差別禁止を定めようとするものであり、世界的に見ても異例なものです。 他の国では、人種、宗教、年齢、性的指向(恋愛対象がどの性別か)などで、雇用や教育面において差別をしてはいけない、という法律はありますが、LGBTに特化した法律はありません。 「日本だけがLGBTについての法整備が遅れている」と主張する人もいますが、わざわざ「性的指向」などという言葉を法律にいれなくても、日本では歴史的に、欧米諸国のような極端な差別や人権侵害は行われてきませんでした。 ◆疑問(3):行き過ぎた保護は大多数の人を不幸にする 三つ目の疑問は、この法律をつくることで、大多数の人が暮らしにくくならないか、ということです。 現在、日本がつくろうとしている法律は、差別をした人への罰則があるわけではないので、「罰則がないならそれほど大きな問題は起きないんじゃないか」と考える向きもあります。 しかし、国がわざわざこのような法律を作ることは、国民への価値観の押しつけとなります。法律をつくることで、決して「差別」するつもりがなくても、「同性愛は受け入れられないな」という考えを持つ人が、社会的に批判を浴びるということにもなりかねません。 2月には、首相秘書官が同性カップルについて「見るのも嫌だ」とオフレコ発言をしただけで、クビになるという出来事がありました。 これは公的な場でなされた発言ではなく、「思想・信条の自由」「言論の自由」の範囲と言えるのではないでしょうか。 もし、この法律が成立したら、普通の国民が職場や学校等でこういう発言をしただけで、世間的な非難を浴びることになり、生きづらくなる人が出てしまいかねません。 さらに、LGBT理解増進法案には、今のところ「性自認」という文言が入る見込みです。 「性自認」とは、肉体の性別にかかわらず、自分で認識している性別のことです。 具体的に言うと、例えば肉体的には男性の人が「私は女だ」と認識するだけで、女性であることを認め、尊重しようということです。 そうしたら何が起きるでしょうか。 体は男なのに、「女性だ」と主張して女性トイレやお風呂などに入っていく男性も認めなくてはならなくなります。 実際、LGBTの権利保護を進めるアメリカでは、男性の体のままで「私は女です」と主張して女性のお風呂に入り、その後暴動に発展した事件がありました。 小さな女の子を連れた親が「なぜ男が女性のお風呂に入ってくるの」と抗議をしても、「LGBTの人を差別してはいけない」というカリフォルニア州の法律を根拠に、親の抗議は聞き入れられませんでした。 また、肉体は男性なのに「私は女だ」と主張して、女子スポーツ大会で優勝し、真面目に努力してきた女性が不利益を受けるといったケースも出ています。 そのため、「多数派が安心して生きられるようにしよう」と、揺り戻しも起きています。 フロリダ州では、「小学校で、性自認について話し合いをしてはいけない」という法律が、カンザス州では「性自認に基づいたトイレの使用を禁じる」つまり、「女性のトイレは生物学的女性だけしか使ってはいけない」という法律が定められたりしています。 アメリカなどはLGBTへの理解が進んでいるというイメージの報道がなされていますが、実際はどのようなことが起きているかを理解したうえで、議論を進めるべきでしょう。 ◆政治に必要な宗教的視点 私たち幸福実現党は、LGBTの権利拡大や同性婚を認めることには反対の立場です。 それは、大勢の人たちが生きにくくなるだけでなく、少数派の人たちの幸福にもつながらないと考えるからです。 欧米諸国において、LGBTの人たちへの差別の歴史は、キリスト教的価値観によるところが大きいと思われます。聖書には、同性愛は罪であるというような記述があります。 かといって、神仏の存在を否定し、人間は何をやっても自由であると主張し、LGBTの人たちに過度な権利を認めるのも、社会の秩序を乱し、大勢の人を不幸にします。 私たち幸福実現党は宗教政党であり、神仏の存在や霊的な世界を認める立場です。そして、宗教的な視点から、なぜLGBTの人たちがいるのかということを伝えています。 大川隆法党総裁は、人間は、何度もこの世とあの世を転生輪廻している存在であり、例えば肉体的には男性でも、過去何度か女性で生まれた経験があると、女性として生きた時の記憶が魂に残り、女性としての生き方を望んだり、男性に惹かれたりすることもあるという霊的真実を明かしています。 そのようにLGBTの人たちへの理解を示しつつ、今世与えられた性で生きることが魂の経験を増やす上で重要であることを説いています。 一方、最近では、強い欲望を持つ人がその思いと同通する悪しき霊に憑依されるケースも増えており、死後、苦しみの世界に行かないためにも、過度な権利保護はすべきではないと教えています。 いずれにせよ、こうした視点は、この世的議論や多数決の民主主義では決して得られないものだと言えます。 本当に多くの人の幸福につながる政治を行うためには、やはり神仏の心や霊的な真実を教える宗教的真理が不可欠なのです。 反カルト・新興宗教・宗教二世問題、日本のお粗末な議論に喝!人権の防波堤「信教の自由」を守れ!【後編】 2023.04.28 https://youtu.be/JnKXTDOQaeU 幸福実現党党首 釈量子 ◆中国の気功集団「法輪功」への弾圧 法輪功は、共産党の地方機関紙が「法輪功は詐欺」と書いたことを機に、新聞社や中国の政府機関が密集している「中南海」を取り囲む大規模な抗議行動を行いました。 当時の江沢民政権は、法輪功を非合法の「邪教」として弾圧し、逮捕令状がなくても逮捕し、強制収容所における思想改造、拷問、臓器収奪などがなされています。 2015年には刑法の「邪教」に関する条文を変えて、「邪教団体を組織、もしくは利用し、国家の法律の実施を妨害した者」に対する最高刑を懲役15年から無期懲役に引き上げました。 2017年にも「邪教」への取締りを強化し、中国最高人民法院と最高人民検察院は「未成年者に対する宣伝広告」など7項目に対して厳しく処罰する方針を明示しました。 習近平政権は、若い世代の信仰の根絶に非常に熱心で、教科書や大学内で「神」など宗教的な言葉を禁句にするなど、信仰心を根絶やしにしようとしています。 2015年から習近平政権は「宗教の中国化」を掲げ、「信仰」よりも中国共産党への忠誠を優先させる政策を進めました。 これにより、伝統宗教も例外なく、党の指導に従わないキリスト教の教会を容赦なく破壊し、牧師を連行し、仏像の首が孔子像に挿げ替えられるなど、文明国とは思えないことをしています。 ◆ウイグルにおける中国の人権蹂躙 今、世界の宗教者が心を痛めているのが、中国の習近平政権が行っている宗教弾圧です。ウイグルにナチス型の「再教育施設」が、推計1300カ所以上あるとされています。 ある日突然、頭に黒い袋を被せられて連行され、施設では手足を拘束され、拷問やレイプ、鎖につながれたまま「習近平への感謝」を連日叫ぶよう強制されます。 習近平政権の「宗教弾圧」に関しては、何ができるのか、考えなくてはなりません。 2018年、幸福実現党は、国連の人権理事会の加盟各国の人権状況をチェックする「普遍的定期審査(UPR)で中国が対象となった際、レポートを提出しました。 私と及川幸久外務局長が、ウイグルの方と一緒にオブザーバー参加し、各国の様子などもお話を聴いてきました。 ◆「信教の自由」に対する日米の認識の違い アメリカでは2年以上前から中国のウイグル弾圧を「ジェノサイド」と認定し、厳しい対応を取っています。 アメリカでは人間は創造主に作られた被造物だという考えが根底にあります。どこの国でも、「人間は、神の子仏の子であり、それだけ尊い存在なのだ」という考えが、人権の尊厳の根拠となっています。 おなじ神仏の子が、弾圧されていることは、耐えがたい悲しみを感じるわけです。 神仏の存在は、政治の上位概念にあるものです。 信仰心を踏みにじり、軽々しく宗教に規制を掛けようとする日本の政治の動きは、神になりかわろうとする「独裁者」の傲慢さに、よく似ているように思えます。 政治が宗教の信仰形態や教義などに口を出し、介入すると軽々に言うことの危険性を訴えたいと思います。 ◆アメリカ政治の人権と正義の感覚 また、アメリカの下院は3月27日、「強制臓器摘出停止法案」が、賛成413反対2の、圧倒的多数で可決しました。 アメリカでは、「強制的な臓器狩りや臓器摘出を目的とした人身売買に対して、資金提供など便宜を図った」と判断した人物に制裁を科すことを可能にする法律が審議されており、法案を作成した共和党下院議員クリス・スミス氏は、次のように述べています。 「習近平主席と中国共産党のもと、毎年6万人から10万人、平均年齢28歳の若者が犠牲者となって、その臓器のために残酷に殺されています。」 「中国共産党は彼ら (ウイグル人を含む民族や法輪功) を屠殺にちょうど良い『邪悪なカルト』であると宣言しているのです。 ◆日本は人権の防波堤に 日本の報道では、「宗教で被害を受けた」と言う二世信者のマイナスの側面ばかりが取り上げ、政治でも宗教団体への規制の強化を論じるのが時代の流れのように報じています。 「信教の自由」に対して、国家権力の介入を容認する動きは、中国のような、全体主義の政治に通じて、危険だと思います。 逆に、中国に対しては「自由、民主、信仰」という普遍的価値を共有する国が包囲していく必要があります。 むしろ日本は、宗教の理解を深め、「信教の自由」を擁護する立場を鮮明にし、中国共産党の宗教弾圧に抵抗して、人権の防波堤となるべきではないでしょうか。 反カルト・新興宗教・宗教二世問題、日本のお粗末な議論に喝!人権の防波堤「信教の自由」を守れ!【前編】 2023.04.27 https://youtu.be/JnKXTDOQaeU 幸福実現党党首 釈量子 ◆新宗教に対して偏見を煽るマスコミや政治 昨年夏、旧統一教会に恨みを持つ人物によって安倍元首相が襲撃された事件以降、新宗教に対して偏見を煽るようなマスコミ報道や政治的動きが出てきています。 自己責任を負うべき40歳を過ぎた男性の問題を、政治が「宗教全体」の問題であるかのようにすり替え、これまで票集めに宗教団体を利用してきた政治家たちも、掌を返して宗教への規制を強めています。 そこで今回は、「信教の自由」や海外の「カルト対策」について考えたいと思います。 ◆「信教の自由」の沿革 まず、「信教の自由」というのは、憲法20条で保障されている基本的人権です。もとは「内心の自由」から来ています。 憲法第19条に「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」という規定がありますが、この思想・良心の自由が「内心の自由」です。 「内心の自由」は、人間である以上、絶対に認められないといけない、根源的な自由です。 なぜなら、心のなかで思うことを禁止されたら、もう人間としての尊厳は認められないのに等しいからです。 その「内心の自由」の代表例として、第20条の「信教の自由」が出てきています。 「信教の自由」は、「〇〇の自由」という自由のカタログのなかで、「最も大切」なものとされます。 「何を信じるか」というのは命懸けで「信教の自由」から「信仰告白の自由」、そして「言論・出版の自由」が出てきたからです。 「信教の自由」がなければ、ほかの自由もなかったわけで、こうした歴史的な沿革から、ほかの権利よりも遙かに重い、尊い自由だと考えられています。 「信教の自由」は人権のなかの人権であり、国民が、心の中で何を思うかについて、政治家が口を挟むことは、「信教の自由」を侵害する憲法違反です。 政治の側が、「あなたの信じている宗教はおかしい」「この団体の神は偽物だ」などと言うことは、宗教弾圧であると共に、信者の人格を否定する人権侵害行為に他なりません。 もちろん、「詐欺」や「傷害」などの違法行為に関しては、現行の刑法でしっかり取り締まるべきだと考えます。 しかし、教義の中身に関しては、政治の立場としては、基本的に「思想の自由市場」に委ねるべきで、政治の使命は「信教の自由」を守ることにあります。 「おかしな宗教に騙される人や被害者が出てからでは遅い」という世論に押され、日本でもフランスの「反セクト(カルト)法」のようなものをつくろうという議論も出てきています。 しかし「カルトかどうか」を政治が判断することは、「信教の自由」の侵害に簡単につながるので、カルトの定義は難しく、主観のレベルで決めていい問題ではありません。 ◆海外のカルト対策 ●フランス そのフランスでは、1995年12月に国民議会の調査委員会の報告書で、「法外な金銭の要求」など10の指標を設定して、173団体の名前がカルト教団(セクト)として公表されたことがありました。 2005年に173団体のリストは撤回されましたが、その理由は、「客観的な基準に欠ける」というものです。(フランス内務省2020年報告書)。 その後、2001年に「反セクト法」が成立したのですが、これも、宗教の「教義」を対象にカルト認定して規制するというものではなく、「人権侵害」などの行為を取り締まるものです。 法律違反の有罪判決を複数受ければ、裁判所から宗教団体の解散の宣告ができると定めてはいますが、今日まで、実際に団体が解散させられた例はありません。 ●米国 アメリカでは、カルト規制の法律を作るという動きそのものがありません。 理由は、米国憲法修正第1条で「国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない」と定めているためです。 アメリカでは「信教の自由」は憲法で認められた絶対的な権利の一つとされ、州ごとに日本の「宗教法人法」にあたる法律はあるものの、連邦レベルで宗教団体に制限や制約を設けることはしていません。 ●中国 一応、中国の憲法には「公民の宗教信仰の自由」が明記されてはいます。 しかし、これは見せかけで「宗教を利用して社会の秩序を破壊してはならない」「宗教団体は外国勢力の支配を受けない」として警戒し、実際、容赦ない弾圧が繰り返されてきました。 後編では、中国の宗教に対する弾圧の実態から見てまいります。 (つづく) 現政権の子供政策は、本当に子供のためと言えるのか 2023.04.05 http://hrp-newsfile.jp/2023/4425/ 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 ◆こども家庭庁が発足 4月1日、こども家庭庁が発足しました。 こども家庭庁は、子どもに関する政策を束ねる「司令塔機能」を担う目的で創設されました。 政府の財政が緊迫度を高めるなか、新たな省庁を設置するのには膨大なコストがかかります。今、「こども家庭庁」を設置することに、果たして意義は見出せるのでしょうか。 ◆「縦割り」は残ったまま これまで、政府の子ども政策は主に、文部科学省、内閣府、厚生労働省が担当してきました。こども家庭庁発足の背景には、省庁の縦割りを廃して、救済の手から取りこぼれた子どもを救済し、本当の意味で、子どものための政策を打ち出すべきとの考えがあります。 しかし、こども家庭庁を発足しても、「縦割り」は依然として残り続け、子どもや若者、子育て支援策を「一本化」するというのは名ばかりというのが現状です。内閣府の認定こども園、少子化対策、厚生労働省の保育所、虐待防止などは、こども家庭庁に移管されますが、幼稚園や義務教育、いじめ対策は文部科学省に残ることになったのです。 特に、幼稚園、保育園、認定こども園は、それぞれ別の省庁が管轄していましたが、これを一体化する「幼保一元化」を進めることで、各施設の無駄が解消できるのではないかとも言われていました。しかし、今回の「こども家庭庁」では、幼保一元化が実現できませんでした。 こども家庭庁は、子供政策について、文科省と連携するほか、対応が不十分な場合には、勧告権を持つことになっています。しかし、法的拘束力があるわけではなく、実効性が十分にあるかは定かではありません。 概して言えば、厚生労働省や内閣府の関連部署が集められたにすぎず、政策の一元化が必ずしもできるとは限りません。新たな閣僚ポストや新しい組織を立ち上げるためにかかる費用に相応しい効果があるかは明確ではないのであれば、何のために新たな省庁を作ったのでしょうか。 ◆税金を使っても少子化が「反転」するわけではない 子ども予算の一環として、3月31日には、岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」のたたき台が明らかになりました。そこには、児童手当の所得制限の撤廃や支給年齢を18歳以下まで引き上げること、さらには男女ともに、出産後に育児休業を取得した場合に、休業前の手取り収入の10割を給付する案が盛り込まれており、まさに「大盤振る舞い」です。 岸田首相は、「子ども予算を倍増させる」としていますが、何を基準に倍増するかも明らかになっていません。このことから、子ども政策や少子化対策の内容を定めることなく、ただ「倍増」という言葉ありきの発想で進められた施策だったと言って過言ではないでしょう。 そもそも、税金をつぎ込んだところで、政府の行う「少子化の反転」に効果があるのかは大いに疑問です。 「子ども予算を拡充すべきだ」という主張の論拠として、よく、「OECD 諸国と比較して、日本は子ども予算がGDPに比べて少ない」ことが挙げられています。 しかし、子育てに関する手厚い保障で先進地域にあるされてきた北欧の出生率は、実は、ここ10年で、大きく下がっているのです。スウェーデンの出生率は1.98(2010年)から1.66(2020年)、フィンランドで1.87(2010年)から1.37(2020年)、アイスランドが2.20(2010年)から1.72(2020年)と、いずれも大きく落ち込んでいます。 北欧諸国における出生率の急落は、「新福祉主義」国家へとひた走る日本がどのような運命を辿るのかを、物語っているかもしれません。 政府による手厚い保障をしたところで、少子化の流れに歯止めをかけることはできないでしょう。むしろ、手厚い保障が、税や社会保険料からなる国民負担を拡大させて若者の経済的不安を高め、少子化を「反転」どころか「加速」させるのではないでしょうか。 本来、少子化対策に向けては、国民負担を下げるという意味でも、社会保障の抜本改革を行うという観点は欠かせないはずです。(幸福実現党政務調査会ニューズレター「バラマキありきの対策では、少子化に歯止めはかからない」(https://info.hr-party.jp/2023/13280/)参照)。 ◆本当の意味で、子供のための政治を こども家庭庁に掲げられた、「こどもの最善の利益を第一に考える」などといった理念は理解できなくもないですが、同庁の実態としては、新たなバラマキの温床として使おうとする「大人」の思惑が見え隠れしています。 どのような形で財源を確保しようが、生き過ぎた福祉は高負担社会につながることに変わりありません。将来の納税者である子ども達に負担を強いる社会は、「こどもまんなか社会」とは到底言えません。 少子化対策だけではなく、いじめや児童虐待の対策についても、犯罪に当たる行為を厳格に処罰したり、正しい宗教・道徳的価値観を教育したりすれば十分対処可能です。 子供たちにとって必要な政策は、あえて新たな省庁を作らなくても実施できるのです。 (参考) ・大山典宏「『こども家庭庁』どこへ行く?このままでは看板倒れに(前編)」(Wedge ONLINE, 2023年1月2日付) ・小倉健一「『異次元の少子化対策』が逆に少子化を進める理由、フィンランドの失敗に学べ」(ダイヤモンドオンライン, 2023年2月7日付) ・木内登英「こども家庭庁の発足と先進国中ほぼ最下位の日本の子どもの精神的幸福度」(野村総合研究所, 2023年3月2日付) ・八代尚宏「『こども家庭庁』で少子化は止まるか? 行方を占う3つのポイント」(日経ビジネス, 2022年1月7日付) 中国が宿敵イランとサウジアラビアを仲介。世界大戦の構図が鮮明に。【後編】 2023.03.29 https://youtu.be/n5r0Yfd8nG4 ◆バイデン外交で「世界大戦の構図」に イランの核開発は秒読み段階に入っています。イランは「核兵器を作る意思はなく、核の平和利用だ」と主張してきました。 たとえば原子力発電所に必要な濃縮度は3~5%です。イランが米英仏独中ロと2015年の合意した濃縮度は3・67%でした。 それが今年2月、国際原子力機関は濃縮度84%の高濃縮ウランが発見されたと報告しました。平和利用どころか、核兵器製造に必要な濃縮度90%まであと僅かです。 イスラエルは、イランの核開発成功を黙って見過ごすことはありません。これまでも、イランで核科学者らが暗殺されるたび、イスラエルの関与が報じられてきました。 核施設への破壊工作も行っています。核開発完了前にイランを攻撃する可能性は濃厚です。そうなれば、中東を発火点として世界大戦が勃発する可能性も出てきます。 バイデン米大統領は外交方針として「民主主義VS権威主義」の対立軸を打ち出しましたが、完全に裏目に出ています。 危機が迫る中、幸福実現党の大川隆法総裁は、世界の趨勢を決めるのは「インド」だと指摘してきました。 現在、インドは中立の立場を堅持していますが、中国寄りも人口は多く、仏教も生んだ宗教大国です。歴史的に日本のつながりは深いので、インドを味方に引き入れる役割を、積極的に果たすべきです。 ◆共産主義と戦うことは正義 米国共和党を中心にウクライナ戦争を終わらせようとする動きが出てきたことは注目されます。近い将来、バイデン外交が修正される可能性もあります。 トランプ前大統領は「大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止する。私は第3次世界大戦を簡単に阻止できる唯一の候補だ」と語っています。 また次期米大統領選の有力候補とされるフロリダ州のデサンティス知事も「ウクライナ戦争は領土紛争であり、重大な国益ではない」と述べています。 さらに、米国下院では超党派で「中国特別委員会」を設置し、米国にとっての真の脅威を明らかにしようとしています。 中国問題に取り組んできたマクマスター元大統領補佐官などが、習近平主席の主張を根拠に、「マルクス主義を思想的根拠として西側と戦おうとしている」ことを説得する熱の入った映像を議会で上映しました。(※) (※)「中国問題委員会で使用された映像」 https://www.c-span.org/video/?526319-1/national-security-adviser-mcmaster-testifies-select-committee-china 19世紀のマルクスの共産主義が世界中に多大な犠牲を出したのは歴史的事実です。ソ連で2000万人、中国で6500万人、北朝鮮で200万人など、想像を絶する犠牲者が生まれました。 このマルクスを信奉し、共産主義を国是とする中国共産党の脅威を知らせることは、国防を論じるうえでも大事なことです。 ◆日本の使命 日本は、唯物論国家による文明実験で人類は150年以上、苦しみ続けてきた現実を直視しなくてはなりません。 唯物論を基本思想とする中国は、ウイグルやチベットに対する弾圧も行っています。中国国内でも苛烈な信教の自由への弾圧を行っています。 日本はアジアの大国として、「信教の自由」を守る砦とならねばなりません。「自由・民主・信仰」の普遍的価値観で中国を封じ込め、世界大戦を阻止するために力を尽くすべきです。 中国が宿敵イランとサウジアラビアを仲介。世界大戦の構図が鮮明に。【前編】 2023.03.28 https://youtu.be/n5r0Yfd8nG4 幸福実現党党首 釈量子 ◆中国が宿敵イランとサウジアラビアを仲介 イランとサウジアラビアが7年ぶりに外交関係の正常化で合意しました。 両国とも経済は原油や天然ガスに頼っています。イランとサウジアラビアは宗教上の対立があり、イランはイスラム教のシーア派、サウジアラビアはスンニ派です。非常に複雑な歴史を持っています。 ここ10年くらいのイランとサウジアラビアの対立の経緯を振り返って見たいと思います。主に、二点あります。 一点目は、イエメンの内戦に関わる対立です。 イエメンは、サウジアラビアの南側の国境に面している国で、スンニ派と、シーア派系武装勢力である「フーシ派」の対立がありました。 2015年、スンニ派の大統領に対して、イランが支援するフーシ派の反乱軍が首都を掌握してクーデターに成功しました。 しかしそこに、サウジアラビアが、スンニ派のイエメン政府を守るために、他のアラブ諸国とともに軍事介入しました。 つまり、イエメンの内戦が、サウジアラビアとイランの代理戦争へと発展したのです。ほかにもレバノンやシリアといった国でも、イランとサウジの代理戦争が繰り広げられてきました。 二点目は、サウジアラビア国内のシーア派に対する弾圧です。サウジアラビアのシーア派は、人口で見ると2割~4割を占めると言われています。 イエメンのクーデター騒ぎもあって、サウジアラビアで、シーア派による政治改革を求めるデモが行われたのですが、政権は、参加した47名を処刑しました。 その中には著名なイスラム教シーア派の聖職者(ニムル・バキル・アル・ニムル師)も含まれていました。 これにより、イラン国民も怒って、イランにあるサウジアラビア大使館や領事館へのデモが巻き起こり、結果、2016年1月にサウジアラビアはイランとの外交関係を絶ちました。 その後、サウジアラビアとイランの関係はどんどん悪化しました。 イエメンのフーシ派は、2017年ころからミサイルやドローンを使い、サウジアラビアの首都リヤドや、サウジ国営石油会社であるサウジアラムコの石油施設などを攻撃しています。 ◆中国がつくる「新たな世界秩序」 中国の仲介で、険悪なイランとサウジの両国の関係が7年ぶりに正常化で合意し、「ウォールストリート・ジャーナル」によると、イランはイエメンのフーシ派への武器提供を停止すると発表しています。 米国が湾岸地域から撤退していく状況のなか、中国が力の空白を埋める形で中東での影響力を増大させています。 その中国は、一帯一路構想を掲げ、中央アジア、南アジア、アフリカ、ヨーロッパへと、政治的、経済的な影響力を広げると同時に、台湾や南シナ海、インド国境付近でも軍事的な圧力を強めてきました。 しかし、中国は新たな動きとして、大国として、米国に代わって紛争当事国の「仲介役」を担おうとしています。 2月にもウクライナ戦争の停戦案を発表しましたが、中国は老獪さを見せています。 アメリカに代わる大国としての存在感を見せつつ、「新たな世界秩序」をつりだそうとする動きは、警戒すべきです。 (つづく) 次期日銀総裁に課せられた「難題」—「減量」なくして「出口」なし 2023.02.22 http://hrp-newsfile.jp/2023/4420/ 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 ◆「内定」した日銀新総裁人事 政府は今月14日、日本銀行の次期総裁に植田和男氏を充てる人事を国会に提示しました。 植田氏は金融論、マクロ経済学で国際的な経済学者であり、過去には日銀の金融政策を決める日銀の審議委員を務めるほか、日本政策投資銀行で社外取締役として活動するなど、実務面での経験を持つ人物として知られています。 日銀はこれまでの10年、デフレ不況からの脱却を果たすために「異次元」と呼ばれる金融緩和を行ってきましたが、今、その「副作用」も露わになりつつあります。この「副作用」こそ、日銀の新総裁に課せられた「難題」に他なりません。 当稿では、なぜこれからの日銀が極めて難しい舵取りを強いられるのかについて、難しい議論はできるだけ簡略化して、ポイントを整理いたします。 ◆「黒田バズーカ」の残したツケ 黒田総裁がこれまで行ってきた大規模金融緩和は「黒田バズーカ」と呼ばれます。 黒田バズーカとは、簡単に言ってしまえば、「民間の金融機関や個人が持っている国債を日銀が大量に買い取り、日銀が発行するお金(円)を世の中に大量に流す」というものです。 これまで、長期金利の指標として「10年もの国債」の金利を0%にするよう国債の買い付けを行い、これに連動して世の中の金利を低く抑えることで、企業や家計がお金を借りて設備投資等を行いやすくするとともに(※)、世の中にお金を流して2%のマイルドなインフレを作ることで、「価格の上昇→企業の売り上げ増→給料増→消費拡大→売り上げ増…」といった好循環を作ろうとしました。 しかしながら、黒田総裁の任期中に、時の政権が消費税率を5%→8%→10%へと2度も増税して実体経済が大きく冷え込み、将来の先行き見通しが暗くなってしまいました。 このことから、日銀の大規模緩和策も虚しく、景気の好循環は生まれませんでした。 今は、原材料費の高騰などの影響で、給料アップ・好景気には必ずしもつながらない物価高が世の中を直撃しています。 結果として、日銀が目指していた「給料アップを伴う好景気を作る」目標は今もなお果たせていません。 (※)そのほか日銀は、民間銀行が日銀に預けている預金の一部にマイナス金利を適用する「マイナス金利政策」を実施してきましたが、幸福実現党は、同政策は資本主義の精神に反するとして、反対してきました。(幸福実現党声明「日銀のマイナス金利導入を受けて(2016年1月30日)」「日銀の『総括的な検証』を受けて(党声明)(2016年9月22日)」参照) ◆「出口戦略」論も主張されるようになってきた 日本が物価高に喘いできた原因の一つが、円安・ドル高基調です。 米国は日本以上の激しいインフレに対応するため、金利を引き上げる政策を実施しました。日銀が長期金利の目標を「ゼロ金利」に据え続ける中で、米国は金利を引き上げたことで、投資家による円を売ってドルを買う動きが強くなり、これが円安・ドル高を招きました。 円安は日本にとって輸入物価の高騰をもたらし、これが物価高を招きました。このことから、日本も米国などの金融政策に歩調を合わせて、ゼロ金利政策を解除する「出口戦略」を採るべきとの主張も聞こえるようになってきました。 そもそも、ゼロ金利政策は不況時の特効薬としては意味を持ちますが、長期にわたって継続させると、「資本を蓄積してそれをさらに価値を生むものに投下し、経済の善の循環を生む」という資本主義の精神を失わせ、長い目で見て日本経済の停滞を生む要素となります。 さらに言えば、国債を吸収する反面、お金を世の中に流すことで、今よりも深刻なインフレになる可能性を高めるなど、黒田バズーカには様々な副作用があるわけです。 ◆「出口戦略」は採りうるのか 政府は歳出が税収を大幅に上回る状況を続けてきました。無論、その差額は国債を発行することで充てられます。そして、この国債を日銀が買い続けた結果、総国債額のうち50.3%に当たる534兆円もの国債を保有するまでに至っています(2022年9月末時点)。 バラマキによる政府の国債発行とそれを日銀が吸収していくという構図は、大きな弊害を生んでいます。それは端的に言えば、金融政策の自由性を失わせることです。 日銀が今の構図のままで利上げに踏み切れば、政府にとって巨額の国債利払い費が発生して、政府の財政を圧迫することになります。 国債には償還期間が短期のものから長期のものまでありますが、仮に短長期問わず、また、新規に発行する国債とともにこれまでに発行してきた国債が新しい金利の水準で借り換えられ、全ての国債の金利が仮に1%になれば、毎年12兆円、金利が2%になれば、24兆円もの国債償還費が政府に課せられることになります。 このように利払い費が増えれば、借金の利払いのためにまた借金をこしらえるという、借金地獄に陥ることになってしまうのです。 「出口戦略」を急いで破綻に向かうのは政府だけではありません。日銀や民間金融機関も「あの世行き」になってしまうのです。 そして、国債の金利が上がるということは、国債の価格が下がることと同じ意味をなします。 国債を保有しているのは、日銀(50.3%)や保険会社(19.3%)、銀行(13.8%)などです。 国債の価格が下がれば、これら金融機関にとってのバランスシート上の「資産」の額が目減りして「負債」超過となって経営危機に陥ってしまうということです。 民間金融機関はもとより、日銀まで破綻するという日本経済にとって巨大な金融危機が発生する危険性を有しているのです。 ◆「減量」なくして「出口」なし そもそも、政府が借金を増やし続ければ、借金が返せなくなる事態、つまりデフォルトに陥ることになりかねません。 あるいは、デフォルトを避けるために、日銀が国債を引き受けたとしてもインフレが悪化するため、何れにしても広い意味での「国家破綻」は避けられなくなります。 国債の価値の裏付けとなるのは、人々の信用に他なりません。「日本政府の破綻は近い」と見られることは、国債の信用が失われることを意味し、国債は一気に手放されることにつながります。 そうなれば、国債価格が大暴落して、金利も急騰し、日本経済は「クラッシュ」することになります。 「信用」の一つの指標となるのが、欧米投資会社による格付けです。例えば、米国の格付け機関ムーディーズは今、日本の国債の格付けをA1とするなど、どの機関も日本国債を「リスク資産」と評価する一歩手前のところに位置づけています。 近く、一ランク格下げされるのではないかとの見方も出てきており、もし、実際に格下げされれば、民間金融機関は信用度の下がった金融商品は手放すことになるでしょう。 そうすれば、国債の金利高騰、価格暴落という状況が起こり、日本政府や日銀・金融機関は経営危機に陥ることになります。 何れにしても、「日本政府が借金を作って、これを日銀が買ってその場をしのぐ」という状況は、いずれかのタイミングで国債の「信用」を失わせるため、継続するのは現実的ではありません。 金利を徹底的に抑え込むという、危機時の金融政策を正常化に戻すためには、まずもって、徹底的な歳出改革が条件になることは明白です。減量政策で健全財政を実現させ、緩やかに出口戦略を実施することが、妥当と言えます。 岸田文雄政権は、バラマキ・増税路線を続けていますが、これは「経済見通しを暗くしてゼロ金利からの脱却に耐える環境を不可能にする」という意味と、「国債をさらに乱発して、利上げで国債償還額が爆増することになる」という意味合いから、日銀の出口戦略の可能性を失わせる方向にあると言わざるをえません。 以上のように、日銀は難しい局面に立たされているわけですが、植田氏が新総裁に就任されるのを機に、日本経済が浮上することを心より願います。 朝鮮戦争へのカウントダウン。北朝鮮のミサイル連射とバイデン外交の失敗。【後編】 2023.01.08 https://youtu.be/1Ux5UXNKfvM 幸福実現党党首 釈量子 ◆バイデン外交の失敗 なぜ北朝鮮のミサイルが止まらないのか?大きな要因は、バイデン大統領の外交政策にあります。 バイデン大統領は、「民主主義VS権威主義」の対立構図をつくる二極化政策を採っています。この外交政策は北朝鮮にとって有利に働いています。 例えば、2022年5月、北朝鮮の度重なるミサイル発射に対して国連安保理が非難決議を行おうとしましたが、常任理事国の中国とロシアが拒否権を行使し、否決されました。 11月にも国連安保理が北朝鮮への非難決議を行おうとしましたが、中国とロシアが北朝鮮を擁護し、非常任理事国による共同声明に止まってしまいました。 国連安保理が機能不全に陥る中、北朝鮮はやりたい放題できるわけです。 また、バイデン大統領は核兵器を保有するロシアとは直接対決を行わないようにしています。 北朝鮮は核兵器を持たなかったイラクのフセインやリビアのカダフィが政権を追われて殺害されたのを見て核保有国になることを目指してきました。 金正恩総書記はウクライナ戦争を見て、核を保有することの重要性を改めて認識し、核・ミサイル開発を強化しているのです。 バイデン政権のもとで世界が二極化し、ウクライナ戦争の終わりも見えず、北朝鮮のミサイル連射を続けるならば、朝鮮半島有事が日本有事になる可能性があります。 ◆韓国と日本が戦場に? 1950年6月に始まった朝鮮戦争では米国が主導する国連軍が組織され、日本は重要な出撃拠点になりました。 朝鮮戦争は休戦協定を結んでいるだけで、戦争はまだ終わっていないため、現在でも朝鮮戦争のための国連軍基地が日本に存在します。 朝鮮半島が有事になれば、北朝鮮の第一攻撃目標が韓国だとしても、これらの在日米軍基地が北朝鮮の攻撃対象になるのは間違いありません。 日本や韓国にとって最悪のシナリオは、ウクライナ戦争のように、朝鮮半島で同様のことが起きれば、韓国や日本はウクライナと同じく戦場と化します。 韓国や日本は米国と同盟関係にあるから大丈夫だと思いたいところですが、バイデン政権のもとでは安心できません。 ◆三正面作戦を強いられる日本 例えば、米国は嘉手納空軍基地から常駐だったF15戦闘機を退役させ、F22戦闘機のローテーション配備に切り替えることになりました。 この動きを巡り、11月14日の米軍準機関紙「星条旗新聞」で、中国の軍事力増強などを背景に「沖縄の基地は中国との戦争で生き残ることができない」という米政府元高官の見解を掲載(琉球新報の報道)したそうです。 そういう事情があるにせよ、もし日本から米軍が撤退しているのなら、これは大問題です。さらには台湾有事と朝鮮半島有事が同時に起きることも考えられます。 これにロシアが参戦し、北方領土から北海道を攻撃すれば、日本は三正面作戦を強いられ、あっという間に国家存亡の危機を迎えます。 ◆北朝鮮を抑止できる国防強化を 幸福実現党の大川隆法総裁は1990年代から北朝鮮のミサイルに対して警告を発していました。 幸福実現党立党の背景にも、2009年4月の北朝鮮のミサイル発射を飛翔体と呼び、「遺憾砲」(「遺憾です」との発表)しか出せない政府を見て、これでは日本を守れないと思ったことがあります。 すでに大陸間弾道ミサイルと原水爆を持ち、大量の戦術核を保有しようとしている北朝鮮にとって、「核保有の議論すらできない日本なんて核で脅せばどうにでもなる」と思っているかもしれません。 日本は今こそ憲法9条を全面改正し、日本の戦後を終わらせなくてはなりません。日本の国防を考える上で、核保有の議論をタブー視してはいけません。 少なくとも北朝鮮を抑止できる程度の国防強化を目指さなくてはなりません。本年も私たちは「言うべきことは言う」という姿勢を貫いていきたいと思います。 朝鮮戦争へのカウントダウン。北朝鮮のミサイル連射とバイデン外交の失敗。【前編】 2023.01.07 https://youtu.be/1Ux5UXNKfvM 幸福実現党党首 釈量子 ◆北朝鮮ミサイル連射 北朝鮮のミサイル発射が止まりません。防衛省の発表では、2022年の一年間でミサイルを73発発射し、過去最多だった2019年の25発を大幅に上回りました。 北朝鮮の金正恩総書記は1月1日、「韓国は明白な敵である」と指摘した上で、2023年の目標として「戦術核を幾何級数的に増やせ」と指示を出しました。 さらに「我々の核兵器の第二の使命は防衛ではなく他のところにある」として先制攻撃も辞さない姿勢を明確にしました。 このように北朝鮮の対決姿勢はどんどん強さを増し、戦略的に取り組んでいたのが、「戦術核」の開発です。 ◆戦術核とは何か 「戦術核」とは通常兵器の延長線上で、実際に戦場で使用することを想定した「小型核」のことです。 北朝鮮は韓国の港湾施設、飛行場、司令部施設、アジアの米軍基地など朝鮮半島内外のターゲットを攻撃するために戦術核の開発を急いでいます。 2017年には、水爆の開発や大陸間弾道ミサイルICBMの発射実験を行ってきましたが、昨年9月9日新たな軍事力として、金正恩総書記は最高人民会議で「核兵器政策」に関する法令を発表しました。 特に注目を集めたのは「核兵器の使用条件」です。 それによると、「北朝鮮国家そのもの」「国家指導部と国家核戦力指揮機構」「国家の重要戦略対象」に対して「相手からの攻撃や攻撃が差し迫ったと判断される場合」に核兵器を使用するとしました。 ◆核の先制使用 国家指導部への攻撃には金総書記を狙って特殊部隊を投入する斬首作戦が含まれます。いわゆる「核の先制使用ドクトリン」と呼ばれるものです。 ポイントは「攻撃が差し迫ったと判断される場合」も含まれており、敵による攻撃の兆候が確認された場合でも、核兵器を使用するとして核先制攻撃を排除していません。 しかし、北朝鮮はそもそも偵察衛星を一つも持っていないので、危機が迫っていることを正確に感知できません。 したがって、金正恩氏の腹一つで核兵器を使用できる状況にあると思っておいた方がよさそうです。 また、金正恩氏は「非核化に関する協議には二度と応じない」と強調しました。 トランプ大統領の頃には朝鮮半島の非核化に向けて首脳会談が行われ、北朝鮮のミサイルが全く飛ばない時期がありましたが、金正恩氏はバイデン政権と交渉するつもりは全くないということです。 ◆緊迫する朝鮮半島 昨年9月25日から10月9日にかけて北朝鮮は合計7回のミサイル発射を行いました。これは戦術核運用の訓練として行われたものです。 9月28日は「韓国の飛行場の無力化」、10月6日と9日は「敵の主要軍事指揮施設と主要港湾攻撃」をそれぞれ想定して訓練を行いました。 12月31日には「超大型放射砲」と呼ばれる新型短距離弾道ミサイル30基を配備し、韓国全土を射程に収めることができます。 これは戦術核搭載可能なミサイルで、2023年1月1日に実際にミサイル発射しました。金正恩氏は「敵に恐怖と衝撃を抱かせる兵器だ」と自画自賛しています。 北朝鮮の挑発に対し、韓国のユン・ソンニョル大統領は「一戦を辞さない構え」で北朝鮮の挑発に対して確実に報復するよう指示を出しています。 このように、朝鮮半島はいつ偶発的な衝突が起き、紛争が拡大してもおかしくない一触即発の状況にあります。 今後の焦点は、7回目の核実験です。その目的として指摘されているのが、核弾頭を小型化・軽量化して戦術核兵器を完成させることです。 日米韓は、北朝鮮が7回目の核実験が行えば、かつてない連携のもとで強力かつ断固とした対応を行うと発表しています。その際に朝鮮半島の緊張度が一気に高まる可能性があります。 (後編につづく) すべてを表示する « Previous 1 … 5 6 7 8 9 … 253 Next »