Home/ 新着一覧 新着一覧 教養主義の伝統の再評価を望む 2015.08.01 文/幸福実現党・岐阜県本部副代表 加納有輝彦 ◆国立大から文系学部が消える? 文部科学省が本年6月、全国の国立大学に対して人文社会系の学部と大学院(文学部や社会学部など)について廃止や社会的要請の高い分野への転換など大規模な組織改編を行うよう求めていることが波紋を広げています。 グローバルな競争が激しくなる中、文系学部は理系学部のように「技術革新」に直結せず、将来に向けた目に見える成果がすぐには期待しにくい、さらに、国の財政難から国立大に投入される税金を、ニーズがある分野に集中させ効率的に使いたいという政府側の狙いがあるとみられています。 人文社会系の卒業生の多くがサラリーマンになるという現実を踏まえ、大学は地元で必要とされている職種を把握し、即戦力となる人材を育てる学部に転換するべきといった考えが根底にあります。 政府の試算では、平成3年に207万人だった18歳人口が今から15年後の平成42年には101万人まで半減するとしています。少子化に伴い大学の定員縮小、再編は必然の流れではあります。 現在、大学進学率は50%を超えており大学の大衆化が進んでいますが、私立大学の半分以上は定員割れの状態で、大学の経営は厳しい競争に晒されています。国立大学も例外でなく成果が求められています。 従来、教員養成系の学部を含め、人文社会系学部には左翼思想の影響が色濃くあり、実践的な知識を身に付けた人材が必要とされる経済界の要請に必ずしも答えていないという批判が根強く存在していたことは事実です。 文科省の通達に関しては、当然反発の声が上がっています。京都大の山極寿一総長は、「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。」(6月16日の会見)と批判しています。 ◆教養主義の伝統 日本には、「教養主義」という伝統があります。教養主義とは、哲学、歴史、文学などの読書を中心にした人格形成を目指す態度をいいます。 特に、教養主義の舞台は、旧制高校であったといわれています。 明治、大正、そして戦後昭和25年まで存続した高等学校で、例えば、現在の東大の教養学部の前身となった旧制一高は、広く知れわたった寮歌「嗚呼玉杯に花受けて」と共に有名です。 旧制高校の学生たちにとって、阿部次郎の「三太郎日記」、西田幾多郎の「善の研究」、倉田百三の「愛と認識の旅立ち」は『三種の神器』と言われました。 22歳まで日本人として育った台湾の李登輝前総統は、旧制高校で教育を受けたお一人ですが、当時、鈴木大拙、夏目漱石、和辻哲郎をはじめとする〝人間の内面を深く省察する〟書物を読んだといいます。 「青春時代の魂の遍歴に、最も大きな影響を与えた本を三冊あげるとすれば、ゲーテの『ファウスト』、倉田百三の『出家とその弟子』、カーライルの『衣装哲学』」と語る李前総統の、泉のように溢れ出す人間的な魅力に接するとき、私は、教養を深め人格を磨くことを基本にした旧制中学、旧制高校の教育のすばらしさを、他の誰からよりもリアルに実感する。」と櫻井よしこ氏もコラムに書いています。(「李登輝氏に見る古き佳き日本」2007/6) ◆教養主義の再評価を さらに時代を遡れば、日露戦争時、二百三高地で従軍記者として取材していたスタンレー・ウォシュバンというアメリカ人新聞記者は、乃木希典将軍の人格に魅了され、乃木将軍をFather Nogiと呼び、「乃木大将と日本人」という著作も残しています。 乃木将軍が受けた教育は、今で言えば、国文学科の国文学・漢文学コースで学ぶような教養が全てだったと言われています。 やや古い事例を挙げましたが、国立大学の人文社会系の学部の再編成にあたっては、日本の教養主義の伝統が、国際的に活躍し、尊敬を集めた人材を多数輩出したことを振り返り、むしろ人文社会系学部の意義を積極的に再評価し、未来の日本に資する教育改革の断行を望むところであります。 日本の誇りを取り戻す広報文化外交を 2015.07.31 文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ ◆「武器なき戦い」はすでに始まっている 8月15日、米国サンフランシスコに「抗日戦争記念館」が開館します。9月には、中国でプーチン大統領らを招いて「抗日戦争勝利記念日」軍事パレード、ユネスコ記憶遺産の登録発表など、日本を貶める「歴史戦争」が次々に仕掛けられています。 国会前で「「戦争反対」と声高に叫ぶ人たちは、日本の誇りと名誉が傷つけられている「武器なき戦い」はすでに始まっていることを知るべきです。「子供たちが戦場に送られる」という妄想ではなく、自虐史観によってたやすく洗脳され、謝罪ばかり続ける精神的奴隷になろうしている現実に向き合うべきです。 米国カリフォルニア州では、新たに中国系の反日団体が慰安婦像を設置しようと市議会に働きかけ、テキサス州の博物館に対して、中国政府関係者が第二次大戦の展示記述を書き換えるように圧力をかけるなど、反日プロパガンダの勢いは増しています。 このような動きに対して、日本はもう一段、国際世論を味方にする積極的なアプローチが必要です。 ◆国際世論を味方にするために普遍的価値のある「メッセージ」を発信せよ 国際世論を味方にするためには普遍的価値のある「メッセージ」を発信していく必要があります。普遍的価値とは、日本は成熟した民主主義国家であり、自由主義社会であり、法の支配や人権の尊重、世界の平和に貢献してきた国家であるということです。 なぜ、普遍的価値のあるメッセージを発信しなければならないのでしょうか。それは、国際世論を味方にするためには「一般市民の琴線に触れる働きかけをすること」と、「戦勝国の論理を打ち破ること」という2つが重要だからです。 現代において、国際世論を左右するのは一部の政治家だけではありません。CNNやBBCなどの国際メディアであり、シンクタンクの研究員であり、それらの意見を見たり、聴いたりする多くの一般市民なのです。 また、国際世論に影響を与えている国際メディアの価値観の基準は、第二次大戦の戦勝史観に基づいています。この価値観を変えない限り、日本は外交でも不利な立場に置かれたままです。 国際世論を味方にするためには、民主主義、自由主義、基本的人権などの普遍的価値に基づき、一般市民が理解しやすく、琴線に触れるもの、さらには戦勝史観を打ち破るメッセージが必要なのです。 ◆ 6つのマトリックスを巧みに操る中国 メッセージを効果的に伝えるためには、6つのマトリックスに分けた働きかけが重要です。ターゲットは自国内、対立国、第三国で、働きかける対象は、エリート層と一般市民に分かれます。これを巧みに行っているのが中国や韓国です。 中国の「上手さ」とは第三国である米国のエリート層に対しては、「米中はお互いに重要な貿易パートナーであり、世界最大の米国債保有国である中国を軽く見たり、刺激したりするのは国益にかなわない」と言い、民衆にはいかに日本が残虐的なことをしてきたかというメッセージを送っています。 最近は、ハリウッド映画界が中国シフトを加速させています。例えば、中国人女優を起用し、ロケ地に中国を入れ、中国企業と連携したり、旧日本軍による重慶爆撃を描いた中国映画のコンサルタントにハリウッドの俳優や映画監督が就任し、有名俳優が出演するなど中国との関係を強めています。 また、メトロポリタン美術館では、年に一度、ファッション界のアカデミー賞ともいわれる「MET GALA(メット・ガラ)」開催され、ハリウッド・スターやスーパーモデル、著名人たちが大集合しますが、今年のテーマが「中国」。中国の著名人が招待されたことが世界中に報道されました。 米国の主要な美術館では近年、中国美術の特別展が開催され、中国がアジアの偉大な国であることをPRしています。このように第三国の一般市民への発信力を強めるために、中国は莫大な資金力で寄附や人材を投入し、映画やファッション、文化まで活用しています。 対立国の日本に対しても、エリート層には中国と付き合っていくことがいかに「利益」にもたらすかを友好的にアピールし、「お上」や「空気」に従う民衆に対しては、直接的な働きかけは行っていません。 中国国内のエリート層には、「反日プロパガンダが中国の国益になる」と言い、民衆に対しては「国民の怒りは我々がぶつけるんだ」というように、6つのマトリックスで内容を変えているのです。 それに比べて、日本は6つのマトリックス全てで同じことを発信してしまっています。 ◆日本が具体的に取り組むべきこと 日本が国際世論を味方にするためになすべきことは何でしょうか。それは、反日プロパガンダを「論破すること」だけではなく、「日本は素晴らしい国なんだ」という感動を与えることです。 (1)日本は世界史の中の奇跡であるという文化的アプローチ 日本には「統一王朝が二千数百年の長きにわたって現在まである」ということや、ギリシャ以前に「神による民主主義」が行われていたことなど国自体が世界遺産そのものです。日本は、第二次世界大戦で敗れてから発展したわけではありません。 日本の本当の素晴らしさを伝えるものは国宝や重要文化財としてきちんとのこっています。海外の主要な博物館や美術館と連携して、特別展を開催したり、シンポジウムを開いたり文化的アプローチを数多く行っていくべきです。 連綿と続く、日本の歴史の真実をみれば、「日本は悪魔の国だ」と思って原爆を落とした米国の論理や、「民主主義国家対全体主義国家の戦いだった」という戦勝国史観も崩れていくはずです。 (2)人材育成 そのためには、自国の文化を海外に対して外国語で十分に説明できる人材を育成していくことが急務です。 また、日本の歴史や文化を正しく伝える書籍なども十分に翻訳されておらず、日本にある「人類史のなかの宝庫」のような部分を世界の人は知らないままです。 日本語の本や雑誌を諸外国の言語に翻訳する機関を立ち上げ、翻訳した本や雑誌を世界中の政府や大学、図書館に送ることも国家プロジェクトとして取り組むべきです。 (3)予算の確保 予算の問題がありますが、現在、脱原発によって全国の原発が停止していることで、一日に100億円の燃量代がかかっています。今年の広報外交予算が約700億円ですので、1週間分の燃料費と同じです。 原発を1日でも早く再稼働させれば、100億円の燃料費の流出を止めることができ、年間3兆6千5百億円を別なところに使うことができるのではないでしょうか。 日本には、国際世論を味方にするための普遍的価値のあるメッセージや誇るべきものを数多く持っています。日本から様々な考え方や意見を世界に発信し、世界の人々に「あるべき姿」や指針を示すことこそ、私たちが目指すべき未来なのです。 10月10日、北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射実験? 2015.07.30 文/HS政経塾スタッフ 遠藤 明成 日本の各紙では安保法案の衆院採決に伴う安倍政権の支持率低下を報道しています。 しかし、日本が「平和安全法制」を撤回したとしても、中国や北朝鮮が軍拡を止めるわけではありません。 ◆10月10日に北朝鮮が長距離弾道弾の発射実験を行う? 例えば、共同通信は5月に北朝鮮が10月10日(朝鮮労働党創建70周年)にミサイル発射実験を行う可能性を示唆しましたが(「北『衛星』10月打ち上げ指示」5/19、47news)、最近はその準備の進展ぶりが各紙で報道されているのです。 ★7月22日:聯合ニュース日本語版「北朝鮮北西部の基地長距離ミサイル発射台完成か」 増築された発射台から、2012年の「2倍の大きさの長距離ロケットを発射できる」という軍と情報当局の分析を紹介。 ★7月25日:読売新聞電子版「北朝鮮、ミサイル開発強行…エンジン燃焼実験」 北朝鮮の東倉里(トンチャンリ)基地で射程1万キロ以上の弾道ミサイルのエンジン燃焼実験が7月半ばに行われたとの韓国政府関係者の見解を紹介。 7月28日に、北朝鮮の国連大使はニューヨークの記者会見で、このミサイル発射実験について「いかなる可能性も排除しない」と述べました。 10月10日に北朝鮮が大陸間弾道弾の発射実験を行う可能性はかなり濃厚になってきています。 ◆1年経っても出てこない拉致問題の再調査報告 また、北朝鮮は昨年7月に日本人拉致被害者と特定失踪者の安否に関して再調査開始を約束しましたが、本年7月3日には調査報告の延期を日本政府に伝えています。 これに抗議し、拉致被害者家族と「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」は、7月22日に「全拉致被害者を取り戻す緊急国民集会」を東京で開催しました。 そこでは全被害者の一括帰国や帰国できない場合の制裁極大化などを求めることが決議され、同日には次世代の党の平沼赳夫党首を会長とする「拉致救出議員連盟」も制裁強化の要望書を政府に提出しました。 ◆北朝鮮への制裁の現状 06年、09年、13年の核実験を行った北朝鮮に、日本は以下の経済制裁を課してきました。(以下、安全保障貿易情報センター「北朝鮮に対する経済制裁措置」を参照) 1北朝鮮籍者の原則入国禁止 2全北朝鮮籍船の入港禁止 3北朝鮮を仕向地とする全貨物の輸出禁止 4北朝鮮を原産地または船積地域とする全貨物の輸入禁止 5北朝鮮と第三国間との移動を伴う貨物売買、貸借、贈与に関する取引(仲介貿易取引)禁止 6輸入承認を受けていない、原産地または船積地域が北朝鮮である貨物の輸入代金支払の禁止 このうち、昨年7月以降、北朝鮮との人的往来の制限や北朝鮮籍船への入港禁止などが緩和されました。 「人道物資」の輸送などを北朝鮮籍船が行うことが容認され、北朝鮮に住所や事務所等を持つ個人・法人は同国で3000万円以下の支払いを行った場合に日本政府への報告義務を課されなくなったのです。(それ以前は300万円を超える支払いに報告義務があった) ◆誠意ある報告がなければ、北朝鮮への強硬策を打ち出すべき 再調査開始の見返りに制裁が一部解除されましたが、北朝鮮からの調査報告はないままに、本年も威嚇的な短距離ミサイルの発射などが行われました。 北朝鮮は短距離ミサイルを2月8日には5発、3月2日に2発、4月3日には4発発射。 150mの模擬弾ではありますが、5月9日には「潜水艦発射型弾道ミサイル」の発射実験を行っています。 この状況に対して、日本側は「遺憾だ」と言うだけではなく、政府として「被害者救出や拉致事件の真相究明に資する報告を出さない限り、制裁を再強化する」と明確に意思表示すべきです。 本年4月には、北朝鮮の人権侵害に対して、米政府当局者が「日本側から制裁の要請や(拉致の責任者、実行犯らに関する)情報提供があれば制裁対象として検討し得る」と語ったことも明らかになっています。(共同通信2015.4.19、47news) 引き伸ばし策を許さないために「8月末」等と期限を示し、報告の内容が杜撰であれば、全拉致被害者の帰国を要求すべきです。 その時には、制裁を再強化し、米国とも連携しながら包囲網を広げる強硬策への政策転換が必要だと言えます。 ギリシャ危機は終わらない。――根本解決に必要なこと 2015.07.29 文/幸福実現党埼玉県本部幹事長代理 HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆ギリシャ危機は終わったか 今月23日、ギリシャ議会は増税や年金改革関連法案に加え、銀行の破綻処理手続き等を柱とする財政改革法案を可決。これにより、ギリシャはEUから求められていた金融支援の条件をクリアしました。 「ギリシャ危機の後退」を受け、世界の株式市場は高騰。2万円台を割り込んでいた日経平均株価も2万500円台まで回復しました。 では、これでギリシャ危機は終結に向ったのでしょうか。 確かに、労働人口の4分の1とも言われる公務員を抱え、早くて50代から年金受給が始まるギリシャ経済の現状は持続不可能であり、ドイツを始め、金融支援と引換えにギリシャに改革を求めるEU側の主張にも正当な点はあるでしょう。 しかし、若年層失業率が50%を超え、名目・実質共に一人当たりGDPがピーク時の4分の1も減少している状況で、増税を始め、さらなる緊縮政策が断行されれば、いっそう失業者が増大し、失業者救済のための公共支出が求められることが予想できます。 これでは、たとえEUが求める改革が断行されても、ギリシャ債務問題は深刻さを増すばかりか、EU支援に依存したギリシャはやがて国民の意思による予算決定、すなわち国民による主権行使が何一つできなくなるでしょう。 つまり、ギリシャとEUが現状、向っている未来は、かつて債務国であった東ドイツを債権国の西ドイツが吸収したとの同様、EUという第3者機関を通じた「ドイツのギリシャ吸収」、あるいは「ギリシャのEU直轄領化」です。 むろん、東ドイツと西ドイツの場合と異なり、言語も民族も異なる国家の統合は、常に破局の危機に晒され、その度に、日本も含め、世界経済は迷惑を蒙るでしょう。 では、ギリシャ危機の根本解決には本来、何が必要なのでしょうか。 ◆ギリシャに必要な改革 まず、「50代で退職したギリシャ人の生活を、どうしてドイツ人が税金で面倒を見なければならないのか」という率直なドイツ人の感覚は間違ってないでしょう。 かつて英国病とマーガレット・サッチャーが闘ったように、勤労意欲の低下したギリシャには労働組合の弱体化政策、国有資産の民営化、社会保障費の削減、行政のスリム化等といったドイツが求める改革の断行は一部不可欠であり、ギリシャは鉄の意志を持った指導者を選出しなければなりません。 しかし、同時に不可欠なのは、独自通貨の復活と通貨切り下げを通じたギリシャの国際競争力回復です。 現状、ギリシャは通貨切り下げではなく、デフレによって、つまりギリシャの製品・サービス、そして労働賃金が名目・実質共に、下落していくことを通じて、国際競争力を取り戻そうとしています。 ところが、統計上、あるいは直感的にも、名目上の賃金給与額が低下し続ける社会(デフレ下)で、景気回復や失業率の改善は不可能で、ギリシャは国際競争力の回復、つまり債務返済のために、失業率を増大させなければならないという、矛盾した状況に陥っているのです。 だから独自通貨の復活と通貨切下げが必要なのです。 もしもギリシャが独自通貨ドラクマの復活を決断すれば、通貨の切下げによって、ギリシャは自国の製品・サービス、また賃金給与の名目額を下落させることなく、対外的な競争力を取り戻すことができるのです。 実際、英国病からの脱却にはサッチャーによる改革だけでなく、ポンド危機による通貨切下げが必要でした。また97年通貨危機に見舞われた東アジア諸国においても、通貨の暴落自体が次の成長を後押ししました。 日本政府も世界経済のステークホルダーとして、ギリシャ問題をEUやIMFだけに任せるのではなく、意見を述べるべきです。 例えば日本政府には1兆ドルを超える外貨準備があり、その準備から一部融資することで、ギリシャの債務不履行を防ぐことができます。 日本はその見返りに、日本の改革案をギリシャに履行させ、また円建ての返済を求めることで、欧州における円国際化を進め、ギリシャ進出を足かせに欧州における人民元の国際化を企てる中国を牽制することもできます。 ◆緊縮財政と決別を 緊縮財政ではギリシャ問題の解決は難しいこと、そして根本解決に必要なことを述べて参りましたが、1930年代の大恐慌を経験した世界は、既に緊縮財政の間違いを痛い程、学んでいるはずなのです。 大恐慌以前の世界では、金と自国通貨の価値を連動させること、つまり金本位制がグローバル・スタンダードでした。 供給側に制限のある金を基準に貨幣を刷れば、貨幣の価値暴落はまぬがれ、世界経済は安定すると考えられていたのです。 ところが金本位制の下では、金の流通量、あるいは金の埋蔵量に世界の貨幣供給量が規定されるため、世界経済は成長しようとすればするほどに、デフレ、賃金の下落、景気悪化、結果的としての社会秩序の不安定化が進む構造となっていました。 そこで世界は金本位制と決別し、金ではなく、供給側に制限のない国債やその他債券・証券を担保に貨幣を発行するようになったのです。 金の価値は供給が制限されることで保たれますが、債券には供給側の制限がありません。ところが、たとえ新規債券が発行されても、人々の勤労により、新しい価値が付加されれば、債券の価値は保たれるのです。 緊縮財政の発想が世界経済の成長の足かせとなっています。これを乗り越えるために必要なのは、勤労によって富を増やすことができるという世界観です。 今こそ、私たちは緊縮財政と決別すべきなのです。 エネルギー供給の多様化を図り、危機に強い国家をつくろう! 2015.07.28 文/HS政経塾第5期生 表 なつこ ◆先の大戦の開戦の理由は何だった? 本年は戦後70年にあたる節目の年です。 各国戦没者の方々に哀悼の心を捧げ、祖国への愛情を持って戦った方々に感謝を表し、悲しい経験が再び繰り返されないように教訓を学ぶことが、私たちのするべきことだと考えます。 では「そもそも先の大戦がなぜ起こったのか?」という切り口から考えてみると、大きな原因の一つに、エネルギーの危機がありました。 ◆石油を全面禁輸された日本 欧州列強による植民地支配が当たり前だった弱肉強食の当時の国際情勢の中で、日清・日露戦争に勝利した日本は、石油の約75%をアメリカからの輸入に頼っていました。 アメリカ国内では世界に対して力を持ち始めた日本人移民への反感があり絶対的排日移民法が制定されました。 その中で、ヨーロッパでドイツと対戦していたイギリスは、アメリカに加勢してもらうために、「アメリカが日本と戦争すれば、アメリカは日本と同盟関係にあるドイツとも自動的に戦うことになる」というシナリオを考え、対日石油輸出の全面禁止を画策したのです。 国民の生活・経済・国家防衛など国家の運営に必要な石油が入ってこなければ、日本は必ず開戦するだろう、という作戦でした。 75%もの石油をアメリカに頼っていた日本は、なんとか石油禁輸の解除がなされるよう働きかけましたが実現せず、開戦へと向かっていった、という経緯があります。 ◆似通っている当時と今の日本のエネルギー構造 以上の歴史を振り返ると、エネルギーを他国に頼らず自給できていれば…と考えてしまいます。しかし、これは過去の問題ではありません。 日本は今も昔も資源小国であり、エネルギー資源の96%を輸入に頼っています。 当時は石油の75%をアメリカからの輸出に頼っていましたが、現在の日本はエネルギーの90%以上を、中東からの石油・石炭・天然ガスなど化石燃料の輸入で賄っています。 また東日本大震災後、原子力発電所の稼働がストップしてからは、電力の中でもこれらの化石燃料による火力発電の比率がより高まっており、その比率は90%近くにも及びます。 つまり、日本はエネルギーの9割を輸入に頼り、そのうち9割を中東に頼り、そのエネルギーでつくる火力に国内発電の9割を頼っている、という構造になっているのです。 ここに、今も昔も変わらない日本のエネルギー安全保障の脆弱性があると言えるでしょう。 ◆これからの日本のエネルギー安全保障を考える 経済産業省は、2030年時点で実現されることが望ましいとされる原子力や火力、水力などの「電源構成(エネルギーミックス)」を公表しました。 原子力の比率は「20~22%」と東日本大震災前より低く抑えて、太陽光などの再生可能エネルギーを「最大24%」とし原子力を上回る普及を目指しています。 しかし、再生可能エネルギーに大きく依存するエネルギー政策は現時点では効率的とは言えないため、結局、最も効率的で環境上も望ましい自律的エネルギーである原子力エネルギーを拡大させることが重要だと言えるでしょう。 原子力エネルギーを運営管理するに当たっては、福島原発や40年廃炉の問題、放射線廃棄物処理をどうするか―など、問題が山積しているため、2030年時点で20~22%の稼働を実現できるかどうかには疑問符が付きます。 原子力はコストが低く国民経済に与える恩恵は大きく、環境への影響も最小限、高い技術の保有が国際的な競争力を高め、さらにエネルギー自給率も高めてくれるものです。 その運転再開までを埋めるため、当面のうちは化石燃料のうち環境に優しい天然ガスを、安定的に確保・活用することが最適なのではないかと考えます。 イギリスの元首相チャーチルが海軍卿時代に発言したように、「供給の安全は多様化の中のみにある」ということを考えるなら、日本は中東以外に、複数のエネルギーの供給先を確保しておくべきでしょう。 歴史に学び、世界を見つめ、平和と安定のうちに世界が繁栄していくよう、着実な歩みを重ねる日本であるように、私も努力したいと思います。 韓国の「ユネスコ世界遺産登録」での横槍――「朝鮮人強制連行」の真実を暴く(3) 2015.07.25 ※幸福実現党・政務調査会長の江夏正敏メルマガから、「朝鮮人強制連行」の真実を暴く――第3回目をお送り致します。 文/幸福実現党・政務調査会長江夏正敏 ◆朴慶植著『朝鮮人強制連行の記録』 戦後直後の反日であった李承晩政権でさえ、「朝鮮人強制連行」を言っていませんでした。それがいつの間に「朝鮮人強制連行」という極端な表現がまかり通っていったのでしょうか。 1965年に朴慶植著『朝鮮人強制連行の記録』が刊行されました。刊行当時は、限定的な影響でしたが、後々、この本が「朝鮮人強制連行」のバイブルとなります。 ◆マスコミの偏向報道!? 事態が大きく動いたのが、1980年代です。80年代は教科書問題が勃発し、指紋押捺制度の是非が議論され、そしてソウルオリンピック開催で韓国ブームが起こりました。 日本国民の日韓問題に対する関心が高くなっていくにつれ、日本のマスメディアが第二次大戦中の日本の国家犯罪を取り上げていく中に、「強制連行」という言葉が大衆化していったのです。 ◆「従軍慰安婦」問題とそっくり いわゆる「従軍慰安婦」問題の構図と似ています。吉田清治という人物が『私の戦争犯罪朝鮮人強制連行』を刊行し、全世界に虚構をまき散らしました。今もその収拾に追われています。 朴慶植という著者は、朝鮮総連の関係者で、強い政治的意図を持っていたとも言われています。 ◆松下村塾まで批判する韓国 韓国の外務省報道官は世界遺産登録のゴタゴタの際に、「松下村塾の登録の決定には問題意識を持っている。世界遺産以外の多様な次元で対応を検討していこうと考えている」と述べました。 これはユネスコ以外でも、松下村塾登録に反対の意思を示していくということであり、日本の明治維新の根幹を攻撃していこうとしています。 ここまで傍若無人に振る舞ってきたら、さすがに許し難いと考えます。明治維新は世界史的に見て、植民地支配終焉、人種差別撤廃の最も重要な出来事だからです。韓国もその恩恵を受けています。 韓国は礼節を欠いた外交態度を改める時でしょう。度が過ぎますと、第二の征韓論が日本に復活しかねません。子供が駄々をこねるような態度を改め、常識ある韓国政府に変貌することを望みます。 ◇江夏正敏の闘魂メルマガ登録(購読無料)はこちらから https://m.blayn.jp/bm/p/f/tf.php?id=enatsu 韓国の「ユネスコ世界遺産登録」での横槍――「朝鮮人強制連行」の真実を暴く(2) 2015.07.24 ※幸福実現党・政務調査会長の江夏正敏メルマガから、「朝鮮人強制連行」の真実を暴く――第2回目をお送り致します。 文/幸福実現党・政務調査会長江夏正敏 ◆日本本土への出稼ぎで「食べていける」という期待 なぜこのような巨大な「出稼ぎ移住」の流れがあったのでしょうか。3つの要因があります。 1つ目は、植民地統治時代に朝鮮半島の人口が飛躍的に増加したことです。韓国併合時の1910年に1300万人だったのが、終戦時には2900万人になっています。 人口が増加しているので、朝鮮半島の植民地時代は抑圧と搾取ではなく、投資と開発が行われたという議論があるほどです。 2つ目は、人口が増えるぐらい農家の生産性は上がりましたが、それでも農村の生活は厳しかったことです。その農村の生活苦が、日本本土への「出稼ぎ移住」へと駆り立てました。 3つ目は、日本本土に旺盛な労働力需要があったことです。日本の都市、鉱山、工場に多くの働き口があり、旅費だけ準備すれば食べていけた状況がありました。 ◆日本本土「不正渡航者」増加対策としての強制送還 この大きな出稼ぎ希望者増大の潮流の中で、朝鮮人の日本本土への「不正渡航者」が多くなり、1939年から1942年の間に、約2万人が摘発され、朝鮮半島に「強制送還」されました。 1人あたり強制送還費用が2円~3円とも言われています。それほど、日本本土に行きたい朝鮮人が多かったのです。 日本政府は朝鮮人を「強制連行」して、無理矢理に日本本土に来させたのではなく、逆に押し寄せてくる「不正渡航者」を取り締まって送り還していたのです。 韓国では「強制連行」を「人狩り」と称していますが、日本は「不正渡航者」を強制送還するくらいなのですから、「人狩り」をする必要は全くありません。 ◆日本人も朝鮮人も台湾人も戦時体制に組込まれた 当時の朝鮮半島は、日本の一部であり、それは国際法上も合法です。朝鮮人も日本国民であり、日本国民はすべて、戦時体制に組み込まれていました。 当時は、日本人も朝鮮人も台湾人も、正当な日本国民として徴兵や徴用の義務を全うしていたのです。朝鮮人だけが特別に過酷だったわけではありません。 さらに戦争中の日本には、ぶらぶらと遊んでいるような人は、基本的に誰もいなかったことを考慮しなければなりません。 ◆日本人は徴兵、朝鮮人は徴用 戦争が長引けば、兵隊に徴兵される人が増加し、日本本土では極端な労働力不足が生じました。それを補うために労働力の動員(労務動員)がなされていったのです。 日本人は徴兵で戦場に送られました。朝鮮人の労務動員は、それに替わるものです。日本政府は、一番死ぬ確率の高い兵隊としての徴兵を、できるだけ日本人にしました。 戦場に送られる替わりに、朝鮮人は徴用で炭鉱や建設現場に送り込まれたことを「不条理」と見るのでしょうか。「国民徴用令」の朝鮮半島における施行は、日本本土や台湾に比べても、遅れていました。 私は日本政府に、朝鮮人に対する大きな「配慮」があったと感じられます。場所によっては重労働であったかもしれませんが、戦場で生きるか死ぬかの戦いを強いられるよりは、良いのではないでしょうか。 (朝鮮人も志願して兵隊になった人もいれば、徴兵されて軍人、軍属として前線に赴いた人もいることも忘れてはなりません) ◆徴兵、徴用は国際法上も合法 日本人も朝鮮人も、「赤紙召集」(徴兵)や「白紙召集」(徴用)が来たら、強制的に行かねばならない時代でした。これは国際法上も合法でした。他国も徴兵や徴用を行っています。 強制的な徴兵や徴用は「不条理」かもしれませんが、それが戦争というものです(今でもスイスのように徴兵制を取っている国もあります)。 ILO(国際労働機関)の『強制労働に関する条約』(1930年成立、1932年批准)では、「兵役」、裁判結果による「労務」、戦時または災害時の場合の「徴用」は、「強制労働」にあたりません。国際的にも合法なのです。 これが「強制労働」だと国際法違反となります。ですから韓国は「日本政府が朝鮮人に対し「強制連行」を行い、不法に「強制労働」をさせたことにしたい」という意図があるのでしょう。 そうすれば、日本はナチスなみの非道な国家と糾弾でき、あわよくば賠償金を請求することができると思っているのではないでしょうか。 ですから、韓国に「強制連行」という表現を用いられて、「朝鮮人は被害者、日本人は加害者」であるという構図を国際社会で浸透されることを防がねばなりません。 (つづく) ◇江夏正敏の闘魂メルマガ登録(購読無料)はこちらから https://m.blayn.jp/bm/p/f/tf.php?id=enatsu 韓国の「ユネスコ世界遺産登録」での横槍――「朝鮮人強制連行」の真実を暴く(1) 2015.07.22 ※幸福実現党・政務調査会長の江夏正敏メルマガから、「朝鮮人強制連行」の真実を暴く――を全3回に分けてお送り致します。 文/幸福実現党・政務調査会長江夏正敏 ◆韓国の「ユネスコ世界遺産登録」での横槍 7月5日に、ユネスコは「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産に登録することを決めました。 しかし、審査の過程で、韓国が外相会談での合意を無視し、「強制労働」を声明に盛り込もうと激しいロビー活動を行いました。 長崎の「軍艦島」をナチス・ドイツによるアウシュビッツ強制収容所と比較して、他国に訴えるなど、事態がかなり紛糾しました。 最終的には世界遺産登録は実現しましたが、日本は「犠牲者のことを忘れないようにする情報センターの設置などの措置を取る」という言質を取られ、韓国はユネスコに対して「日本が確実に実行するかを検証すること」を求めました。 ◆第二の「従軍慰安婦」問題になる恐れ その後、韓国は勝ち誇ったように「日本が初めて強制労働があったと認めた」と都合のいいように対外発信を繰り返しています。 このままだと、日本が「強制労働はなかった」と説明しても、韓国の主張が国内外で独り歩きし、戦時賠償訴訟の理由に利用されることになりかねません。 どこかで見た風景です。それはありもしない「従軍慰安婦」問題を、河野談話などで謝罪し、全くの事実無根の虚構が世界に広がった事象に似ています。 今回の騙し討ちのような韓国のやり方に対し、日本国民はかなり「嫌な感じ」を受けました。 今後、戦時賠償訴訟に利用されることがないように注意するとともに、第二の「従軍慰安婦」問題へと発展しないように、日本は監視しなければなりません。 まぁ後ろ向きの仕事が増えたようで、気が滅入ります。 ◆「労務動員」を「強制連行」とすり替え!? さて、今回のメルマガは、ユネスコ騒動の核心である「朝鮮人強制連行」について述べたいと思います。 韓国は「日本政府は、戦時中、大勢の朝鮮人を強制的に朝鮮半島から連れ去り、日本国内で過酷な労働をさせた」と主張しています。本当でしょうか。 韓国が「強制連行」と問題視していることは、戦争中に朝鮮半島から日本本土などへの「労務動員」を指していると思われます。 この「労務動員」を「強制連行」と呼ぶことは「日本人は加害者、朝鮮人は被害者」という構図になります。これは適切ではありません。悪意に満ちています。 ◆労務動員の流れ それでは日本国民を対象に適用された労務動員の流れを見てみましょう。 1938年4月、「国家総動員法」が公布されました。この法律によって、戦争に必要な物資、労働力の計画的動員が本格化していきます。日本国民ということは、日本人も朝鮮人も対象です。 1939年7月、日本本土では「国家徴用令」の発令とともに、全ての日本人が戦時生産力増強のために徴用の対象となり、後にその対象は男女の学生にまで及びました。ただし、朝鮮半島にはまだ「徴用令」は発動されていません。 1939年9月、朝鮮半島で「募集」形式での動員が開始されました。実際は「募集」よりも、自主的に渡航した出稼ぎ労働者の方が多かったようです。強制でもなんでもありません。 1942年2月、朝鮮半島で「官斡旋」方式の動員が開始されました。「官斡旋」をしても、契約期間中に逃走し「自由労働者」になった人もかなりいました。自由労働者は、そのまま他の建設現場などで働いています。 1944年9月、朝鮮半島では軍属に限り、「徴用令」が全面的に発令されました。それでも逃亡が多く、動員計画は失敗しています。朝鮮半島ではギリギリまで「徴用令」が発令されていません。 ◆自主的に日本本土に渡ってきた朝鮮人が8割(終戦時) このような流れで労務動員が進みましたが、1945年の終戦時には日本本土に200万人の朝鮮人労働者とその家族がいました。 労務動員が始まる1938年までには80万人の朝鮮人が、すでに日本本土にいたので、労務動員期間中(1938年~1945年)に、120万人の朝鮮人が日本本土に渡ってきたことになります。 結論を言うと、終戦時、日本本土にいた200万の朝鮮人のうち、自らの意思で日本に渡ってきた「出稼ぎ移住者」は8割の160万人です。 つまり、朝鮮半島から日本本土に渡ってきた理由は、出稼ぎなどが大半でした。多くの人が自主的に渡ってきたと言えます。 そして、戦時中の労務動員(軍属・軍人を除く)は、約30万人強であり、その本質は、建設現場などで個別に「出稼ぎ移住」をしようとしていた朝鮮人を、戦争が厳しくなってきたので、炭鉱、金属鉱山などの軍需産業に動員しようとしたものだったのです。 (つづく) ◇江夏正敏の闘魂メルマガ登録(購読無料)はこちらから https://m.blayn.jp/bm/p/f/tf.php?id=enatsu 「コーポレートガバナンス強化策」の是非と、「長期金融制度」の必要性 2015.07.21 文/HS政経塾4期生 西邑拓真(にしむら・たくま) ◆安倍政権によるコーポレートガバナンス強化策 安倍政権は、アベノミクス「第三の矢」である「民間投資を喚起する成長戦略」の一環として、コーポレートガバナンスの強化を推し進めています。 コーポレートガバナンスとは、企業の法的な所有者である株主の利益が最大限に実現化されることに向け、企業を監査するための仕組みを指します。 この強化策の背景として、これまで、日本はコーポレートガバナンスが低く、経営の透明性が低かったことから、特に外国人投資家が積極的に日本株を購入していなかったことが挙げられます。 企業統治を強化して企業の収益性・生産性を高め、企業価値を向上させることを通じ、株式市場をより活性化させようとするところに、その狙いを求めることができます。 また、今年の6月には、金融庁と東京証券取引所により、コーポレートガバナンス・コードが導入されました。これは、株主の権利や取締役会の役割などといった、上場企業の行動規範を表したもので、上場企業はコードに同意するか、同意しない場合はその理由を投資家に説明することが求められるというものです。 企業統治の強化策としてのコードの導入により、上場企業は、資本効率を向上させることをより強く求められるようになったわけです。 ◆政策の効果 日本企業における「経営の透明性」が低いことの一要因として、長年の「株式持合い」という慣行の存在が挙げられています。 「株式持合い」を行えば、長期的に株式が保有され、相手株主から厳しい口出しがなされない「ぬるま湯的体質」が生じるとされます。持合いが解消し、経営陣が投資家によって厳しく精査されることで、経営効率が改善するだろうということが、この政策の狙いの一つであるとされています。 また、現に、このコーポレートガバナンス強化策を行った成果として、企業が取締役会に対する監督強化を図ることを念頭に、「社外取締役」を選任する上場企業が、昨年12月の72%から、今年の6月には94%以上に増加したとする報告もあります(米 Institutional Shareholder Services社調査)。 ◆外国人投資家 日本の株式市場における売買シェアの約6割を占めるのが、外国人投資家です。 外国人投資家とは、海外を拠点に活動する、ヘッジファンドを含めた短期売買の投資家や、欧米の年金基金・投資信託など長期運用を行う投資家を指します。 この外国人投資家は、企業が資本を使ってどれほど効率的に利益を出しているかを示す「自己資本利益率(ROE)」を重視する傾向にあると言われています。 日本の株価が上昇している一つの背景には、政府がコーポレートガバナンス強化を推進することで、日本企業のROEが上昇し、外国人投資家が日本に株式投資を積極化させていることがあるわけです。 ◆強化策に対する否定的な見方 しかし、そもそも「企業と投資家の交渉は、本来は市場メカニズムによって行われるべき」で、特にコードの導入は「経営者の手足を縛る内政干渉」であり、こうした一連の政策を「官製コーポレートガバナンス」であるとして、それを否定的に捉える向きもあります。 また、中長期的な経営の視点から見れば、例えば、多額で長期的な研究開発費を賄う方策として、株主からの調達に関しては、「ハイリスクな投資に否定的な株主が多い」のが現状であり、「ROEの低下要因である内部留保を使うことが現実的である」とする観点もあります(原丈人著『21世紀の国富論』参照)。 このような視点から見れば、政府によるコーポレートガバナンス強化策が、必ずしも中長期的な経済成長に寄与するとは限らないことがわかります。 ◆長期金融制度の必要性 日本は戦後復興時より、日本長期信用銀行などの長期金融機関が、高度経済成長を金融面でサポートしてきました。 今後、日本が長期的な成長を実現し、ゴールデン・エイジを実現していくにあたっては、株式市場の活性化も必要ですが、それだけではなく、国内での新たな長期金融制度の創設もまた必要であると考えます。 参考文献 小田切宏之著 2010 『企業経済学』 東洋経済新報社 原丈人著 2007『21世紀の国富論』 平凡社 出国税スタート――国家による強すぎる経済介入に要注意 2015.07.18 文/幸福実現党スタッフ 荒武 良子(あらたけ・りょうこ) ◆7月1日出国税スタート 7月1日から、国外転出時課税制度、いわゆる「出国税」が、スタートしました。 この税制度は、1億円以上の株等の有価証券を持ち、かつ、5年以上日本に居住した人が、海外に転出する際、実際に株等を売却していなくても、その株等の売買で得られることになる利益の15%の税金を納めなければいけないというものです。 租税条約上、こうした株等の利益への課税権は、株式等を売却した人が居住する国にあります。株式等保有者は、株等を売買した時に住んでいる国に、その国で決められている税額を納めることになっているのです。 現在、日本国内で、株等を売買した場合には、その利益には、20%の所得税が課税されます。一方、香港やシンガポールでは、日本と違い、株式等の売買に、課税はされていません。 富裕層が、日本から上記のような租税回避地へ移住してから資産を売ると、日本国内で売った場合に課税されるはずだった20%の所得税は課税されないこととなります。 日本で株を売ると利益の20%の税を納めることになりますが、香港やシンガポール等に転居してから売ると、税金を納めなくてよくなるのです。 しかし、この「出国税」は、日本から租税回避地に移住する前の出国の段階で、売買していない株式等のみなしの利益に対して、売買した場合に得られる利益にかかる所得税と同程度の税金がかかることとなります。 ◆過度の累進課税は統制経済につながる 今年1月より、所得税の最高税率は、40%から45%に、相続税も、50%から55%に上がっています。所得税は、所得が多い人ほど、高い税率となる累進課税です。 日本の財政では、所得税等によって高額所得者から多く税金を集め、低所得者へ、医療・年金などの社会保障を行う、所得の再分配が行われています。しかし、過度の累進課税は、結果として、経済の衰退を招きます。 財政における所得の再分配は、個人の私有財産を否定し、国が配給を行うという、共産主義下の経済に類似しています。資本主義を標榜する日本における、隠れた社会主義とも言えます。 実態を伴わない、行き過ぎた投機と、日本国外への過度の資産の流出は、控えるべきですが、強すぎる経済の管理は、国家権力の増大へとつながります。統制経済の代表的なものは、戦時下における配給制であることに留意すべきでしょう。 ◆減税による豊かな国づくりを 今回始まった出国税も、1億円以上の有価証券を持つ富裕層への課税強化であり、所得税等の累進課税と類似しています。 政府の介入による所得の再分配の機能も働いていると言えます。今回の出国税は、例えば、10%程度にしてはどうでしょうか。 また、高すぎる税率は、海外の富裕層が日本に住む機会の損失にもなります。特に大富豪は、税金の高いところから、税金の安いところへ移動していきます。 ユダヤやアラブの大富豪が、日本に住んでいると、世界情勢や戦争の原因になる行為が分かるため、高すぎる税率の回避は、国防上も大切なことです。 私有財産の否定とも取れる、国家の経済介入による管理型の経済は避けるべきです。 幸福実現党は、国家の介入による所得の再分配のための出国税には反対です。 高額の納税を避けるために海外へ移住する富裕層に、さらに出国前に徴税をかけるのではなく、各種税金を安くし、むしろ、海外の富裕層も日本に住めるような国にすべきです。 参考:『政治の理想について』大川隆法著/幸福の科学出版 『幸福実現党テーマ別政策集2 「減税」』大川裕太著/幸福実現党 すべてを表示する « Previous 1 … 112 113 114 115 116 … 253 Next »