Home/ 新着一覧 新着一覧 沖縄県那覇市に核シェルター設置を 2022.10.06 http://hrp-newsfile.jp/2022/4358/ HS政経塾12期生 山城 頼人 ◆核攻撃の危険性があるが避難場所がない日本 中国による台湾侵攻に際して、日本への核・ミサイル攻撃の可能性も考えなければなりません。 現状の日本の地下駅舎では、「核兵器攻撃による放射能物質の流入を防ぐのは困難」であると政府が判断していたことが、産経新聞の報道にて明らかになっています(※1)。 つまり、核攻撃から身を守れる公共の避難場所が、日本国内には存在しないことを意味しています。 そのような中、台湾有事に備えるために、政府が先島諸島に住民避難用のシェルターを整備する方向で検討に入っていると報道がありました(※2)。 先島諸島のみならず、日本の各都市には、最悪の事態である核攻撃から国民を安全に守れる、「核シェルター」の設置が急務です。 ◆核シェルターの特徴 核シェルターとは、核・ミサイル攻撃による閃光や衝撃、放射能や生物化学兵器などによる有害物質から身を守るための避難場所を指します。 核シェルターは、鉄鋼建築による強度性と外気を完全遮断できる機能(複数の扉など)を備え、核兵器による放射線物質の室内侵入を防ぐ「特殊空気ろ過装置」と、電力発電所からの電力供給の停止を考えた「自家発電装置」の設置が必須です。 また、核爆発後に生じる放射線の減衰期間から考え、最低でも2週間はシェルター内に滞在できるよう、食料や水、簡易トイレ、生活物資の備蓄が必要です。 海外では、個人用核シェルターを持っている人も多く、自宅の地下室や庭などに地上型か地下型のいずれかで設置しています。また、ビルの地下空間や地下鉄駅、地下駐車場などが、公共用核シェルターの機能を兼ねている場合が多いです。 スイスの人口あたりの核シェルター普及率は100%以上(※3)、スウェーデンは約70%(※4)、台湾台北市には、台北市人口の4倍を収容する4600箇所もの核シェルター施設があり、市の人口の4倍以上にあたる約1200万人を収容できると言われています(※5)。 シンガポールでは1998年以降、新築住宅にはシェルター設置を義務付ける措置をとるなどして国民保護を国家事業として行っています。 ◆ドイツの地下鉄駅兼核シェルター(※6) ドイツの都市ボンにあるボン地下鉄駅は、最大14日間、約4,500人を収容できる核シェルターでもあります。 1960年代に、東側諸国との武力衝突の危険性から、地下鉄駅内の改修工事が始まり、1979年に地下鉄駅兼核シェルターとして完成しました。 ボン地下鉄駅には、都市の送電網に障害が発生した場合も想定して、非常用電源装置が備えられており、平時の際はボン市営鉄道の鉄道運行のための非常用電源装置として機能しています。 飲料水タンクやシェルター避難者の排熱を減らすために独自の井戸水を利用した水冷式冷却装置、空気ろ過機も備わっています。 ボン地下鉄駅の改修工事は、政府による補助金のみで1,110万DM(ドイツマルク※7)、当時の円レートにして約12億円を費やしています(※8)。 日本も既存の地下施設の改修工事をして、核シェルターとして活用する方法が良いでしょう。 ◆公共と民間の地下施設を、核シェルターとして活用 そこで、国防の最前線地である沖縄県の那覇市に、公共と民間の地下施設を活用した核シェルター設置の実現性を考えてみたいと思います。 那覇市にある公共地下施設は、「県民広場地下駐車場」、「なは市民協働プラザ」の計二箇所になります。本二箇所は県が管理する地下施設であり、既に「緊急一時避難施設」として県が指定しています(※9)。 那覇市にある民間地下施設は、「パレット久茂地地下駐車場」、「泊ふ頭地下駐車場」、「首里城公園地下駐車場」の三箇所の地下駐車場があげられます。 民間地下施設を避難場所(核シェルター)として活用するには、都道府県知事が施設管理者の同意を得られれば、可能となります(国民保護法第148条)。 また、現在沖縄県によって進行中の「沖縄鉄軌道計画」では、那覇市内に鉄道を通すにあたって「地下駅」が構想されているので、本地下鉄駅もボン地下鉄駅のように核シェルターとして活用できるよう計画を進めていくべきでしょう。 ◆核シェルター設置への課題 那覇市への核シェルター設置に向けての課題は二点あります。 一点目が、予算の問題です。上述したように、核シェルターには様々な設備工事が必要になり、最低でも2週間は滞在できるように、食料や水、簡易トイレ、生活物資などの備蓄が求められます。ボン地下鉄駅の例であるように、改修工事には数億から数十億円の出費が伴われます。 さらに維持費も考えなければなりません。とはいえ、既存の地下施設を核シェルター化に向けた改修工事は急務であります。財源としては沖縄振興予算からの捻出が考えられます。 二点目が、既存の地下施設のみでは市民全員を収容できないことです。 避難所において一人当たりの必要な収容面積は3.5平方メートルと言われています(※10)。那覇市の人口は約32万人(317,406万人)(※11)です。 那覇市民を地下施設に避難させるにあたり、単純計算で合計112万平方メートル(32万×3.5平方メートル)の面積を要した地下施設が必要になります。 上述した公共地下施設である県民広場地下駐車場は、地下三階建ての計10,688平方メートルの地下面積を要しており、仮に収容人数を約3,000人(10,688平方メートル÷3.5平方メートル)と考えます。 つまり、県民広場地下駐車場ほどの面積を要した地下施設が、市内に約110箇所(32万人÷3,000人)必要という計算になります。 ◆行政が取り組むべきこと 本二点の課題は、那覇市のみならず各都市でも直面する課題でしょう。まず行政が取り組めることは、新規で建物を建設する際に、核シェルター設置が容易にできる法整備(固定資産税の優遇など)です。 さらに、既存の建物にも核シェルター設置を推進し、個人用核シェルターの設置も市民に普及させていくべきです。 また、核シェルター建設費として、国家予算の公共事業関係費などを増額する必要があります。 本記事では、那覇市を例に考えましたが、核シェルターの設備工事は、日本の各都市が取り組むべき喫緊の事業になります。 抑止力としての防衛力も高めていく一方で、国民の命を守る国民保護にも意識を向けなければなりません。 (※1)産経新聞朝刊(2022年8月1日) (※2)時事通信社(2022年9月16日) (※3)swiaainfo.ch 《https://www.swissinfo.ch/eng/prepared-for-anything_bunkers-for-all/995134》 (※4)Swedens`news in English 《https://www.swissinfo.ch/eng/prepared-for-anything_bunkers-for-all/995134》 (※5)ロイター『有事に備える台湾防空壕整備』(2022年8月4日) 《https://jp.reuters.com/article/taiwan-defence-shelters-idJPKBN2P90IY?feedType=RSS&feedName=special20》 (※6)「Der Großschutzraum in der U-Bahnstation Bonn Hauptbahnhof 」geschichtespuren.de 《https://www.geschichtsspuren.de/artikel/bunker-luftschutz-zivilschutz/172-bunker-u-bahn-bonn-hauptbahnhof.html》 (※7)DM=ドイツマルク。1948年6月20日から1998年12月31日までのドイツ連邦共和国(1990年のドイツ再統一までは西ドイツ、それ以降はドイツ)の法定通貨。 (※8)1971年1月から1980年12月までの各月を円レートで平均し、1DM=111円となった。 《https://fx.sauder.ubc.ca//data.html》 (※9)「内閣官房国民保護ポータルサイト」 《https://www.kokuminhogo.go.jp/hinan/index.html》 (※10)スフィアハンドブック-人道憲章と人道支援の最低限基準2018年- 《https://jqan.info/wpJQ/wp-content/uploads/2019/10/spherehandbook2018_jpn_web.pdf》 (※11)那覇市公式ホームページ(2022年7月末時点) 《https://www.city.naha.okinawa.jp/》 日本企業で進む「脱中国」3つの理由【後編】 2022.10.05 https://youtu.be/yQ0bqUImVno 幸福実現党党首 釈量子 前編では、日本の製造業の「チャイナリスク」として(1)ゼロコロナ政策、(2)経済安全保障をあげました。 「チャイナリスク」の三つ目は、台湾有事です。 (3)台湾有事 今年秋の党大会では習近平氏が異例の3期目に入り、「偉大な領袖」と呼ばれた毛沢東に並ぶ「領袖」が公式に復活し、「人民の領袖」と呼ばれるのではないかと言われています。 習近平氏は一貫して「台湾再統一に際して、武力統一を排除しない」と明言しています。 米国下院議長のナンシー・ペロシ氏が訪台してから、人民解放軍による台湾海峡の中間線を超える挑発は常態化しています。 もし台湾有事が起きれば、日本は中国とは敵対関係になり、中国に進出している日本企業とその社員は人質に取られることも想定されます。 何年も積み上げてきた事業が台無しになるかもしれず、言いがかりをつけて、日本企業の社員が不当に逮捕されることも十分あり得ます。 中国経済の低迷が台湾有事を引き起こす可能性もあります。 中国のGDPは不動産市場が3割を占めます。しかし現在、不動産の売れ行きが減り、不動産価格も下落しています。 中国では7月以降、物件の引き渡しが遅れていることに抗議して、数千人規模で、マンション購入者が住宅ローンの返済を拒否しています。 日本と異なり、中国では購入契約を結んだ時点で頭金を支払い、物件の受け渡し前にローンの返済が始まります。 専門家の中には「中国経済はすでにマイナス成長に陥っている」と指摘する方もいます。 中国経済が著しく低迷し、成長の見込みがなくなれば、中国共産党による統治の正当性が揺らぎます。 そのような場合には、党の正当性を証明するために、台湾の武力統一に動く可能性が高まります。 いずれにせよ、台湾有事は「あるか、ないか」ではなく、「いつあるのか」と考えるべきです。日本企業が脱中国に動き、不測の事態に備えるのは賢明な判断だと思います。 ◆日本企業は国内回帰を! このように中国での事業リスクを感じて、中国から撤退しコストの安いインドやベトナム、マレーシアに生産拠点を移す企業が増えています。 例えば、アップルはすでにインドでiPhoneを生産し、今年6月にはベトナムでiPadを生産すると発表しています。 日本にとっては、日本企業の国内回帰を促したいところです。 特に、中国に生産を大きく依存している製品のうち、付加価値の高いものは日本に移転してほしいと思います。 資生堂やマツダなどの工場が日本に帰ってくれば、日本の地方経済が活性化するのは間違いありません。 ちなみに、米国では、トランプ政権の時に企業の国内回帰を促しましたが、バイデン政権も踏襲し、米国の雇用を創出しています。 つまり、共和党、民主党ともに国内回帰を推し進めています。 米国への国内回帰や直接投資によって、雇用は2019年以降右肩上がりになり、2022年には約35万人の雇用を生んでいます。 日本政府も日本経済をもっと良くするために、国内投資を増やすために努力しなくてはなりません。 今後も新型コロナの感染拡大や戦争のリスクがあることを考えると、地方経済をインバウンドのみに頼るのは危険です。 企業が地方で工場を建設し、社員を採用し、社員が生活すれば、立派な経済圏が誕生します。地方経済の基盤はもっと強いものになります。 ◆企業の国内回帰の課題 しかし日本企業の国内回帰を促すにあたって、大きなボトルネックがあります。それは、アジアの諸外国に比べて、日本の電力料金が高いということです。 日本企業の国内回帰を推し進めるためには、電力料金を抑え、安定した電力供給を確保しなくてはなりません。 そのために安全基準を満たした原発を再稼働させることが必要です。国内回帰をする企業の法人税を安くするという政策もあります。 円安が進んでいることも日本企業の国内回帰を促す理由になります。他にも考え得る対策を打って、このチャンスを生かすべきではないでしょうか。 日本企業で進む「脱中国」3つの理由【前編】 2022.10.04 https://youtu.be/yQ0bqUImVno 幸福実現党党首 釈量子 ◆脱中国の動き 韓国や米国に比べて対中依存度が高い日本ですが、いよいよ日本企業の脱中国の動きが強くなってきました。 自動車メーカーのホンダは、現在、二輪、四輪、エンジン工場などホンダの生産拠点は日本や中国、米国、カナダなど24カ国に及びます。 今後、上海のロックダウンで生産に影響が出たことを受けて、中国からの部品供給を東南アジアやインドなどにシフトできるか検討すると言われています。 また、マツダは上海のロックダウンや半導体不足の影響で、4~6月期の販売台数が前年同期比で34%も減少しました。 今後、国内での部品生産を増やし、日本国内で安定した生産活動を行う予定です。 他にも、資生堂はこの3年間で国内工場を6か所に倍増させました。「SHISEIDO」「エリクシール」といった主力商品は、ほぼ全てが国内生産になると言います。 資生堂は、品質の高さを重要視し、信頼の高い「メイド・イン・ジャパン」を売りにするつもりで、こうした企業が相次いでいます。 ◆中国撤退を決めた三つの理由 以前、尖閣諸島を国有化した際に、激しい反日デモや不買運動が起きました。 これを中国特有の「チャイナリスク」と呼びました。しかしここにきて中国の新たなリスクが顕在化しています。 (1)ゼロコロナ政策 一点目は、ゼロコロナ政策です。中国の習近平氏は、「ゼロコロナ政策」を採用し、新型コロナを完全に封じ込めるため、私権を無視し、隔離を強行しました。 中国の上海では3月末から約2ヶ月間、新型コロナ拡大によるロックダウンが行われ、日本企業の生産活動を制約し、大きな損害を与えました。 企業経営に大きな影響を与える政策が、強権のもとでいとも簡単に行われたのを見て、日本企業は中国リスクを実感したわけです。 ちなみに現在も、四川省の成都など、中国人口3億人をカバーする地域でロックダウンが行われています。 中国の電力不足も影響し、今年夏、中国は記録的な猛暑によって電力需要が増大するとともに、雨不足で水力発電量が減少しました。 中国政府は対策として、電力使用量が多い工場に生産の一時停止を通知しました。8月中旬、四川省にあるトヨタ自動車の工場の生産も一時停止しました。 (2)経済安全保障 二点目は、経済安全保障です。現在、米中対立が激しさを増す中、日本でも経済安全保障の観点から技術流出に対する意識が高まっています。 特に、先端技術を持つ日本企業にとっては、経済安全保障は重要な課題です。なぜなら、技術・データの流出が日本企業の優位性や日本の安全保障に与える影響が大きいからです。 そんな中、中国政府は昨年9月、中国でのデータの取り扱いを規制する「データ安全法」を施行しました。 これは、企業が持つデータの管理を強化するものです。同法では対象とするデータの具体例として工業、通信、交通、金融、資源、ヘルスケア、教育、技術などを挙げており、これらが主な監視対象となります。 日本企業は経済安全保障の観点から、技術流出や機密情報が漏えいすることを警戒しているわけです。 また、中国政府は、ハイテク製品の開発や設計などの全工程を中国国内で行うことを事実上強制する新たな規制を導入することを検討しています。 現在、複合機やプリンターといった事務機器を対象としていますが、今後は半導体などのハイテク製品まで範囲を広げることを検討しています。 この規制が導入されれば、日本で商品開発を行い、中国で組み立てるような企業は、中国で販売できなくなります。 (後編につづく) 自分の国は自分で守る体制整備に向けた防衛費の確保を 2022.09.22 http://hrp-newsfile.jp/2022/4355/ 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 ◆ 防衛費増額に向けた議論が活発化 今、日本の防衛費の増額をめぐり議論が活発化しています。 現在、日本の防衛費にあたる「防衛関係費」は5兆1,788億円で(※1)、GDP比でわずか1%弱の水準に留まっています。 一方、日本の安全を脅かす中国は、軍事費は毎年拡大を続けており、2022年度は前年比で7.1%増となる約26兆3000億円にすると明らかにしています(※2)。 政府は年末までに、安全保障の基本方針などを示す、いわゆる「安保3文書」を同時改定する予定であり、今、従来の安全保障政策を転換するタイミングとなっています。 特に、5年間の防衛費の総額を明示するのは「中期防衛整備計画」と呼ばれるものです。あるべき防衛費の水準を巡り、様々な意見が交わされている状況です。 ◆今、防衛費は「倍増」で足りるのか 日本は今、中国や北朝鮮のほか、日本が対露包囲の姿勢を明らかにしていることで、ロシアからも軍事的脅威を受ける状況となっています。 最悪の状況を想定して、然るべき防衛体制を整備する観点で考えれば、「防衛費倍増」では足りなくなっているのが現実ではないでしょうか。 日本の防衛費の使途内訳は大まかに、「人件・糧食費(2兆1740億円)」、「維持費等(1兆2788億円)」、「装備品等購入費(8165億円)」、「基地対策経費(4718億円)」、「施設整備費(1932億円)」、「研究開発費(1644億円)」などと分類されます(※3)。 自衛隊が十分な活動を展開するにあたっては、どの要素も不足しているというのが現状です。以下、4つのポイントを挙げてみます。 (1)正面装備・継戦能力 日本の防衛予算5兆円程度のうち、武器・弾薬戦車や戦闘機など、いわゆる「正面装備」に割かれるのはたった2割弱にすぎません(※4)。 また、日本の防衛体制について、武器弾薬、砲弾が足りず、継戦能力(戦闘を継続する能力)が圧倒的に不足していると指摘されてきました。例えば、中国が沖縄の離島へ侵攻するという事態を想定すれば、現状よりも弾薬が20倍以上必要である(※5)とされています。国を守る上で必要となる装備を維持、充実させるほか、有事を想定して十分な弾薬などを確保することは絶対不可欠でしょう。 (2)抗たん性の向上 抗たん性、すなわち「攻撃に耐える」力を向上させる必要もあります。日本がミサイル攻撃を受けるような最悪の事態において、たとえ「反撃能力」を有していたとしても、相手のミサイルにより戦闘機やミサイル、武器の補給庫などが攻撃されれば、もはや反撃することができなくなります。 日本のこれら自衛隊の装備品および補給庫は抗たん性に欠け、いわば丸腰状態にあるとも言われています。有事を想定して、こうした施設の抗たん性を強化しなければなりません。 (3)研究開発費 研究開発費も圧倒的に足りない状況です。米軍が研究開発費に16兆円を使っている一方で、日本の防衛省はわずかに2千億円程度にすぎません。 日本の武器調達は、FMS(※6)という枠組みを通じ、米国からの武器購入に大きく依存しています。しかし、米国が主導的に価格を設定するため、いわば「言い値」で武器を調達せざるをえなくなるため、この枠組みでは調達額の高騰化を余儀なくされます。 そのほか、装備品の体系が、米国の方針に影響を受けることになり、日米共同防衛のためにはたいへん有効であっても、一方で日本が主体的な防衛戦略を組み立てることが阻まれてしまうというデメリットも挙げられます。 以上を踏まえても、日本は防衛力強化に向けた研究開発費を大幅に引き上げるべきと考えます。最新鋭の武器を自国で生産する体制を整備すれば、国富の流出が抑えられるとともに、関連企業の活性化など経済面でもメリットがあります。 最近、ポーランドが韓国製の兵器を大量に購入しているように(※7)、武器を他国に売れるようになれば、これまで投じてきた研究開発費を回収できるほか、定期的なメンテナンス等により、輸出先国との関係強化に寄与することにも繋がります。 (4)自衛隊員の待遇改善 自衛官のなり手が減少している今、自衛官の生活環境や待遇を改善に向けて、「人件・糧食費」を拡大すべきとの声も高まっています。 以前、トイレットペーパーすら経費で賄えず、自衛官が自費で調達しなければならないとの実態が明らかになり、話題となりました。 このほか、訓練などで自衛隊員が移動するにも、予算から高速道路料金が捻出できず、節約のために一般道を走ったり、目的地から相当距離の離れたインターチェンジで高速から降りることなどを余儀なくされています(※8)。総じて、予算不足が明らかとなっているのです。 その他、サイバー防衛に向けた十分な体制を整備するための予算を確保するほか、電磁波領域の構築やレーザー兵器の実用化に向けた費用など、防衛予算は抜本的に拡充する必要に迫られているのです。 ◆防衛力強化に向けた本質的議論を 岸田文雄首相は、5月の日米首脳会談後の記者会見において、「防衛費の相当な増額を確保する」と表明したほか、自民党は今年6月発出の参院選公約で、来年度から5年以内に、対GDP比2%以上を念頭に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」との旨、記載しています。 しかし、国家存続の危機が迫る今、防衛費を「5年」で倍増するなど悠長なことを言っている場合ではありません。防衛費の水準も「倍増」ではもはや不十分でしょう。 トランプ政権で米国防省副次官を勤めたエルブリッジ・コルビー氏は「日本は直ちに3倍程度に引き上げるべきだ」としているほか(※9)、「3文書」改定にあたり、政府が行った有識者との意見交換の場で、有識者から「防衛費は3倍に増額すべき」との意見が出ていることが明らかになっています。 尚、鈴木俊一財務相は16日、海上保安庁予算など安全保障に関連する費用を、幅広く防衛費に組み入れるとの可能性に言及しています。 省庁間での予算の獲得に向けた駆け引きがあるにせよ、既に別の予算で計上されている費用を「防衛費」に組み入れるなどすれば、いくら防衛費を引き上げたところで、防衛力の強化にはほとんど寄与しないと言えます。 防衛費の引き上げに向けては、金額ベースの議論だけが一人歩きするようであってはなりません。 本来は、然るべき防衛戦略のアウトラインを示した上で、その際に必要となる防衛費の水準と、その確保に向けた議論を行うべきでしょう。 ◆防衛費の財源確保に向けては では、防衛費の増額分の財源はどう捻出すべきでしょうか。 まず、防衛費増は「増税」で賄うべきとの意見がありますが、コロナや物価高による経済低迷に対し、増税で追い討ちをかけることは避けるべきです。 長い目で見て、防衛力強化に向けては経済を成長軌道に乗せるとの観点は欠かせません。 では、「新規国債発行」はどうでしょうか。1,200兆円超の債務を抱える今、日本の財政は危険水域に達しており、新たに国債を発行する余裕はほとんどないのが現状です。 国防強化は喫緊の課題であり、国防強化をおろそかして、国家そのものがなくなってしまえば、元も子もありません。 そのため、短期的には、現実的には新規国債発行に頼ることもやむをえないのかもしれませんが、本来は、国の「無駄遣い」「バラマキ」を徹底してなくすほか、財政の構造的赤字の要因となっている社会保障の抜本的な制度改革に向けた議論を徹底するなど、財政健全化の道筋を付けることが必要です。 日本はリーダー国として、アジアにおいて「自由・民主・信仰」の価値観を守り抜く使命があるはずです。 日本の平和を米国に頼り切るという姿勢を改め、軽武装・経済優先の「吉田ドクトリン」から脱却し、「Be Independent」の精神を持って、真の意味で「自分の国は自分で守る体制」を整備するための防衛費を確保すべきです。 (※1)令和4(2022)年度当初予算。防衛省「我が国の防衛と予算〜防衛力強化加速パッケージ〜―令和4年度予算(令和3年度補正を含む)の概要―」より (※2)時事ドットコム(2022年3月6日付)「『強国』継続を明確化 コロナ禍も軍拡加速―国防予算、日本の5倍・中国全人代」より (※3)防衛省「日本の防衛―防衛白書―令和4年版」(p.220)より (※4)谷田邦一「防衛費の増額は、いったい何に使うべきなのか?」(nippon.com, 2022年7月6日)より (※5)産経新聞(2022年8月12日付)「<独自>対中有事で弾薬20倍必要 九州・沖縄の備蓄1割弱」より (※6)国立国会図書館(「調査と情報」)「有償援助(FMS)調達の概要と課題」(2022年3月1日)より (※7) dziennikzbrojny.pl, Korean Orders – The Armaments Agency reveals details(英訳) ( 2022/7/24, http://dziennikzbrojny.pl/aktualnosci/news,1,11672,aktualnosci-z-polski,koreanskie-zamowienia-agencja-uzbrojenia-ujawnia-szczegoly), 現代ビジネス(2022年8月29日)「【総額1兆円以上】ポーランドが韓国製兵器を爆買いするワケと日本の防衛産業がヤバすぎる」などより (※8)日本経済新聞(2022年9月7日付)「自衛隊、劣悪環境で人材難『人的資本』軽視のツケ」より (※9)日本経済新聞(2022年8月4日付)「『日本は防衛費を3倍に』元米国防省高官コルビー氏」より 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【後編】 2022.08.29 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆危機の時代に求められる農政のイノベーションを! 安倍政権で掲げられた成長戦略の1つの柱でもあった農業分野ですが、改革は遅々として進んでいないのが実情でしょう。 2020年度版の「食料・農業・農村基本計画」においては、それまでの「主業農家や法人を中心に大規模化していく」という方針を撤回し、「担い手の多様化」という言葉でまとめられ農政改革は「後退」を始めていると考えられます。 また、2018年には建前上廃止となった減反政策ですが、コメ農業が盛んな地域ほど、未だに減反がまかり通っているのが現状です。その中心となるのが、食用の米から飼料米、エサ米への転作です。 飼料自給率も低い日本にとって、「国産化」と最もらしいことを掲げていますが、コメは飼料にするには高コストで向かないと考えるのが世界基準です。 現に、人間が食べるようなコシヒカリを豚用の飼料米として生産しているケースもあると言われています。 そしてこれ全部、国民の税金です。同等の金額(約950億円)で、6倍以上の飼料用トウモロコシを輸入できるほどの高コストぶりです。 危機の時代に自給体制は必要ではありますが、コスト感覚のなさは相変わらずです。では、日本農政のイノベーションに何が必要なのでしょうか? ◆日本農政のイノベーション (1)コメの増産 まず一刻も早く求められるのは、コメの生産調整の完全撤廃です。失われた水田を可能な限り、少しずつ取り戻し、思い切りコメの増産に舵を切るべきです。 また、海外向けにどんどん輸出すべきです。このように国内需要を大きく超えた生産余力を有することが、危機の時代には国民の命を救う備蓄の役割を果たすことになるのです。 畑作では同じ農作物を作り続けると、収量の減少や病害虫の発生など「連作障害」が起こりますが、稲作では「連作障害」は起きません。 また、小麦などと異なり、食べるのに加工する必要もありません。食料安全保障上、安定性が高く、危機の時代に最適な穀物こそコメだと言えます。 また、ただでさえ穀物市場は生産量に比べ、取引量が少なく「薄い市場」ですが、コメ取引は小麦の4分の1と、極めて「薄い」商品です。 コメの生産潜在力を多分に持つ日本は、有事において国際社会で大きな影響力を発揮することも可能です。 (2)戦略的な穀物備蓄 またコメ増産と共に、急がれるのは戦略的な食糧(穀物)備蓄体制の構築でしょう。 現時点で、コメについては約100万トンが政府備蓄、約270~280万トンは民間が抱える在庫と言われています。 しかし、もって半年、全国民がコメしか食べられない状況と仮定すれば、2~3か月程度分しかありません。 少なくとも年単位の兵糧攻めに耐えられるだけの備蓄体制は必要ではないでしょうか。同時に、小麦(現状2.3か月分)、大豆、トウモロコシなど(現状は飼料向け100万トン)を大量に輸入して備蓄しておく必要があります。特に、たんぱく質の供給源として大豆の備蓄は必須だと言えるでしょう。 仮に、減反政策に投じられる財源(3500億円)が活用できるならば、約2,000億円を備蓄設備とコメ以外の小麦や大豆、トウモロコシの輸入拡大に振り分ける方がはるかに効果的でしょう。 同時に、天候不順による不作などで経営が苦しくなる主業農家に限定して、EUが行っているような直接支払いなどのセーフティーネットを構築することで、日本の安全保障を食料面で支えてくれている農家を本当の意味で守ることが出来ます。 これは約1,500億円で実現できると、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏が試算されています。 最後に付け加えるならば、食料生産に不可欠な肥料の確保です。 前回の動画同様、肥料自給率ほぼゼロ%の日本はその多くをロシアや中国、ベラルーシなどに依存しており、ロシアを敵性国に回したことで肥料の確保が大変厳しい状況です。 堆肥を最大限活用しようと努力する自治体が早くも出始めていますが、国を挙げての食料増産となれば、化学肥料は必要不可欠です。 肥料の自国生産が困難ならば、何とかロシアからの輸入再開の糸口を見つける外交努力を行うべきです。 また、シーレーンリスクを負わないロシアとの関係改善を果たせれば、肥料のみならず、大豆やとうもろこしなど、不足が見込まれる穀物の確保にもつながるかもしれません。 ◆今こそ農政の転換を図る時 冒頭でも申し上げましたが、いつ何時、日本が有事のど真ん中に立たされてもおかしくない状況がすぐそこまできています。 そんな中、軍事防衛においても、エネルギー・食料など兵站面においても、不安が山積なのが日本という国です。 現時点で本当に食料輸入が途絶すると、終戦直後の食料事情よりも、酷い状況になるとも言われており、先ほどの山下一仁氏によれば、餓死者は国民の半数にあたる6000万人に上るという試算が出ているくらいです。 この危機の時代に一刻も早く、一部の既得権益を守るだけの世界でも異常な農政から、日本国民の豊かさと生命を守り抜く、あるべき農政への転換を図るところから始めるべきではないでしょうか。 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【中編】 2022.08.28 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆失った水田面積は四国一つ分!?コメの生産調整(減反)の驚くべき実態 終戦直後の900万トンから一時は1400万トンを超えるまでコメの生産力を拡大した日本でしたが、1970年頃から価格維持を目的としたコメの減反が始まり、なんと今では700万トンまで半減しています。 減反に応じ、他の作物に転作するコメ農家に、補助金を支払うことで生産量の調整を図っていきました。が、莫大な財政支出を伴って、自国の主力の穀物生産を減少させた事例は日本以外に見つけることは難しいと言えます。 実際に、米国や中国、インドといった生産国を中心に、この半世紀でコメ生産は3倍規模まで増産、世界全体では3.5倍以上も増産しています。 一方で日本は半減、あまりにも逆行しています。(グラフ)これはコメだけではありません。この半世紀で小麦、トウモロコシなど、他の穀物においても減産している国はほぼ皆無です。 【参考】この国の食糧安保を危うくしたのは誰か https:/cigs.canon/article/20220602_6800.html 【参考】「武力攻撃より食料不足で壊滅」米の生産を減らし続ける日本が抱える本当の危機 https://www.gentosha.jp/article/21521/ また半世紀続いた減反政策によって、失われたものは少なくありません。 まず、農業にとって最も大事な資源である「農地」です。1970年には350万haあった水田のうち、200万haが水田として活用されなくなっています。 200万ha(20,000㎢)は、四国4県分(18,297㎢)よりも広いと考えれば、半世紀で失われてしまった水田は空前絶後の規模だと分かります。 これを取り戻すことは容易なことではありません。 また、「智慧」の喪失です。「たくさん作るな」という指令に等しい減反によって、特に、それまで精力的に取り組んできたコメを沢山作る技術(単収増加)がタブーとなり、失われていきました。 そして、農村からコメ農業への「情熱」「やる気」を失わせた点が、最も大きいでしょう。 コメ作りで生計を立てる主業農家ではなく、会社勤めをしながら、週末に片手間でコメを作るような零細(兼業)農家に補助金を支払うといった、極めて不公平で社会主義的な仕組みを作ったことで、農村から「勤勉の精神」が失われました。 そして、補助金と高い米価、また農地の転用期待、要するに「将来、持っている農地が高く売れるかもしれない」といった期待感などを甘いエサとして、農業を本業とするつもりがない零細(兼業)農家を、大量に農業に引き留めてしまいました。 これこそ農地集約化、大規模化などを阻害し、農業改革が一向に進まない真なる要因だと言えるでしょう。では、なぜこのような不合理極まりない政策が、半世紀もの間、続いてしまったのでしょうか。 それはひとえに、零細・中小農家へのバラマキによる見返りとして、農村に堅固な票田が出来るという農林族議員の利得や金融機能(JAバンク)を柱に経済基盤を拡大し続けた農協組織のお互いの「既得権益」を守りあうという強固な結束があったからです。 ◆もう一つの異常なコメ農政 ~高すぎる関税障壁とその犠牲~ 以上のように、コメの生産調整(減反)によって、莫大な財政支出を行いながらコメの生産量を減らし、高い米価を維持してきました。 いわば国民に対して「税金」と「商品価格」の二重の負担を強制しつつ、自国の食料安全保障を脆弱化するという、国際的には異常すぎる政策が罷り通っています。 しかし、コメ農政の異常さはこれで終わりません。 それが「高すぎる関税」です。コメにかかる関税は従量税で1㎏あたり341円ですが、国内米価となる約240円を100円以上も上回っているわけです。 要するに、輸入される米価が仮に0円/kgでも、341円となるため、誰も買いません。このように、高すぎる関税障壁を築くことで、海外から実質的に輸入されない仕組みを作っています。 関税交渉の時、コメの高い関税を死守するために、バーターとしてほかの物品の完全を下げるなどしているわけですが、この数十年の差し出した犠牲はあまりに多く、莫大な経済的利益が失われたと言っても言い過ぎではないと思います。 ここで、国の農業保護の度合いを観てみたいと思います。 よく日本はアメリカよりも低いと言われていて、フードスタンプなど食糧費の補助をしていますが、OECDの指標でPSE(Producer Support Estimate:生産者支持推定量)という指標があります。 これは財政支出における「納税者負担」と、関税も含めた国内外の価格差から算出する「消費者負担」の合計から算出したものです。 それをみると、2020年時点で日本は40.9%と、アメリカ11.0%、EU19.3%と比べて際立って高く、主要国で3本の指に入る農業保護国となっています。 (https://cigs.canon/article/20220104_6468.html) ただ、日本の場合、農業保護といっても、(主業)農家が守られるのではなく、農協組織と農林系議員の間の「既得権益」が守られるという真実は、何度繰り返してもいい足りないくらいです。 (後編につづく) 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【前編】 2022.08.27 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆ヨーロッパを襲う歴史的干ばつ 世界で広がる異常気象が食料危機に更なる影響を与えそうです。 日本でも記録的な豪雨で農作物などにも大きな被害が及びましたが、ヨーロッパでは逆に深刻な水不足によって大変な事態になっています。 英国を含んだEU地域の実に60%において、干ばつの被害が深刻化していると報じられており、そのうちの4分の1で植物の生育が厳しいほどの水不足が発生しているとのことです。 調査によればEU圏内のトウモロコシ、大豆や、植物油の原料となるヒマワリの生産は8~9%低下すると予測されています。 特に、歴史上最悪の干ばつに見舞われているフランスでは、ベシュ環境相が5日、「100以上の自治体で飲用水が尽きた」と述べ、給水車が出動している緊急事態が続いています。 農作物(レモンやオリーブ)への被害は「壊滅的な状況」とされ、12日には英国・イングランド8地域でも「干ばつ宣言」が発令され、被害の深刻化が懸念されています。 ウクライナ戦争が長引き、世界の穀倉地帯からの食料供給が大打撃を与えるさなか、ヨーロッパでの干ばつによる大凶作は、世界の食料危機を更に加速させそうです。 ◆台湾有事で日本に届かなくなる食料とは 更に、ペロシ米下院議長の電撃的な台湾訪問によって、台湾を巡る情勢が緊迫化の一途を辿っています。 「台湾有事は日本有事」と我々も繰り返し訴えてきましたが、食料自給率(カロリーベース)37~38%しかなく、6割強を輸入に依存する日本はいよいよ死活問題です。 それが、米台中の間での軍事的緊張の高まりに応じて、バシー海峡など日本のシーレーンが中国海軍によって封鎖される可能性が高まっているからです(図)。 もしシーレーンが封鎖されると、石油タンカーや、食料などの物資を運ぶ民間商船の航行が阻害、迂回を強いられ、状況によっては拿捕される恐れも出てきます。 台湾近海のシーレーンが封鎖された場合、日本に入ってこなくなる食料として、穀物を中心に具体的に見ていきたいと思います。 全量を国内で自給できている米は別として、まず小麦です。 自給率は15%程度(2020)ですが、米国(227万トン)、カナダ(180万トン)、豪州(106万トン)の3ヵ国で輸入のほぼ全量を賄っているため、台湾周辺のシーレーンリスクは負っておりません。 一方で、問題なのは大豆(自給率6~7%)とトウモロコシ(自給率0%・スイートコーン除く)です。 大豆輸入の15%、とトウモロコシ輸入の約40%をブラジル産に(おそらくアルゼンチン産も)依存していますが、両品目共にブラジル産の約7割が、サントス港など大西洋側の港から輸出され、南アフリカ喜望峰経由で、インド洋から台湾近海を航行するルートを通ります。 これらがシーレーン遮断の影響を受ける可能性が高くなっています。 割合としては輸入大豆の約1割、トウモロコシの約3割を占め、日本の食料調達に与える被害は甚大だと言えるでしょう。 用途は、輸入大豆の3割が食用、7割が油など、輸入トウモロコシの75%が飼料用、25%がでんぷんなどの加工用です。 更に、戦域の拡大によっては、中国や北朝鮮に囲まれ、ロシアまで敵に追いやった日本周辺の海上路が全て分断される恐れは無きにしもあらずです。 そうなれば、北米や豪州方面からの船舶も日本に寄港できず、全ての穀物輸入が途絶える恐れすらあるのです。 ◆あるべき食料安全保障体制とは? このように、天災や戦争などの外部要因によって、日本と世界を取り巻く食料事情(肥料含め)はかなり厳しい局面を迎えつつあります。 食料を買うお金がいくらあっても、物理的に手に入らなくなる状況がすぐそこまできていますが、日本はそうした局面に全く対応できておりません。 万が一、輸入が全て途絶えても、全国民を食べさせるというサバイバル思考をベースに、あるべき食料安全保障体制を早急に検討する必要性があります。 その一丁目一番地となるのがもちろん「食料増産」です。自給力を高め、有事に対応できる体制を早急に整えるべきです。 特に、生存に直結する穀物の増産は不可欠でしょう。しかしながら、日本農政は半世紀に渡って、真逆の方向に「大きな失敗」を犯し続けてきました。 それは本来日本の強みであり、大きな武器であるはずのコメを減産し続ける政策を採ってきたことです。正式には生産調整、また俗に減反と言われるものです。 (中編につづく) 台湾海峡で米中もし戦わば。米軍勝利も、米空母2隻撃沈・戦闘機900機以上が撃墜【後編】 2022.08.26 https://youtu.be/4XwWly_E9Jk 幸福実現党党首 釈量子 ◆台湾を巡る米中戦争のシミュレーション 前編で紹介した「台湾を巡る米中戦争のシミュレーション」は、米軍の元大将や防衛専門家が、米国と中国を示す青と赤の2つのチームに分かれ、9月までに22回のシミュレーションを行うそうです。 両陣営とも戦略を練りながら、空母や戦闘機、潜水艦などの軍事上の配置を示すピースを、チェスの盤面ように、テーブル上に広げられた太平洋の台湾周辺の地図に、交代で打ちます。 実際、台湾の陸上戦を想定し、陸上地図の上で、18回までこのウォーゲームをやってどうなったかが報道されています。 まず中国は、台湾侵攻の際に、先制攻撃を仕掛けます。 それによって、米軍は数十億ドルの空母2隻を沈められます。日本とグアムにある米軍基地も攻撃され、数百機の最先端戦闘機が破壊されるだろうとしています。 次に、人民解放軍は22,000人の兵士を台湾に上陸させ、台湾南部を制圧します。そして解放軍はゆっくりと北進し、滑走路や港湾の確保を目指します。 しかし、中国は徐々に勢いを失っていきます。 米軍と日本の自衛隊によるミサイル攻撃や、潜水艦の攻撃が、台湾攻撃の根元を断つかのように、中国本土の港湾を破壊して、中国の哨戒線(警戒ライン)を突破してくるからです。 人民解放軍の揚陸艦も破壊され、中国は台湾に軍隊を送ることができなくなりました。 米軍の強力な空軍力や海軍力に対抗するには、中国の長距離弾道ミサイルが、決定的に不足していました。 こうしたシミュレーションが繰り返され、9月まで続けて12月に発表することになっています。 今の段階ではほとんどのケースで、米国と台湾は最終的には勝利を収めています。 しかし莫大なコストが発生することがわかり、損失の規模として、米国は900機以上の戦闘機を失い、これはアメリカの海軍と空軍が保有する戦闘機の半分に相当します。 8月4日に中国が軍事演習でミサイルを撃ちましたが、シミュレーションで想定された中国の能力を裏付けるものだったようで、いよいよ現実味を帯びてきているわけです。 日本人が「台湾有事は日本有事である」という現実を受け止め、日本の外交や国防のあり方を考えるための参考になると思います。 ◆米国議会の台湾防衛への決意 米国議会は超党派で台湾防衛を強化するために、従来の「台湾関係法」に基づく台湾政策を見直すために、新たに「台湾政策法2022:Taiwan Policy Act of 2022」の制定に向けて取り組んでいます。 狙いは、米台関係を一層強化し、台湾防衛の意思を明確に示すことにあります。 この法案の最も注目すべきポイントは、台湾を「主要な非NATO同盟国」と認め、日本と同じように、同盟国として扱おうとしていることです。 実質上、日米同盟と同じような米台同盟を目指したものです。 この法案が成立すれば、現行の「台湾関係法」では表立って行うことができない、米台共同軍事演習に道を拓くことができます。 他にも、この法案には、今後4年間に渡って台湾へ45億ドルの軍事支援を行うことや、台湾が国際機関に加盟できるよう推進すること、中国が台湾に制裁した場合に米国が代わりに中国に金融制裁を行使すること、などが含まれています。 中国の反発は必至だと思いますが、米国議会の台湾防衛への決意のほどがうかがえます。 ◆日本は台湾有事への備えを急ぐべき では日本はどうするか。日本も、日台関係強化のために出来ることがもっとあります。 例えば、台湾と中国が昨年秋に表明を行ったTPP加盟について、日本は自由貿易を守る立場から、台湾のTPP加盟支持を表明してはどうでしょうか。 また、日本と台湾の間には正式な国交がありませんので、「日本版台湾関係法」制定に向けて着手すべきだと考えます。 蔡英文総統は、日本に「日台の安全保障対話」を望んでいます。安全保障分野の交流を今こそ実現すべきです。 台湾に近い南西諸島のミサイル配備増強も必要です。他にも、台湾の邦人救出や、中国本土に出ている企業を日本に帰すことなども、同時に必要になってくると思います。 課題は山積ですが、台湾は「自由・民主・信仰」の価値観を共有する日本の運命共同体です。 日本は「自分の国は自分で守る」体制を構築すると同時に、台湾有事への備えを急いで、日本を守らなくてはなりません。 台湾海峡で米中もし戦わば。米軍勝利も、米空母2隻撃沈・戦闘機900機以上が撃墜【前編】 2022.08.25 https://youtu.be/4XwWly_E9Jk 幸福実現党党首 釈量子 ◆中国が台湾統一に向けたリハーサル? 台湾海峡の緊迫度が増しています。 中国は米下院議長のナンシー・ペロシ氏の台湾訪問に反発し、8月4日から数日間かけて実戦さながらの軍事演習を行いました。 中国の官製メディア「環球時報」は8月3日の時点で、「今回の軍事演習は台湾統一に向けたリハーサルであり、今後も引き続き行われる」と報道しました。 軍事演習が始まる前日、まず大規模なサイバー攻撃が行われ、台湾各地のセブンイレブンでは「戦争屋のペロシ、台湾から出ていけ」という文字が大きく映し出されました。 台湾鉄道や地方行政の電子掲示板にも「偉大な中国はいずれ統一される」という文字も表示されました。 台湾国立大学もハッキングされ、「世界には一つの中国しかない」と表示されました。 台湾政府は今回のハッキングについて、中国製のソフトウェアが使用されたことが原因であるとことを突き止めて、公的機関のすべての敷地内で、中国製機器を使用することを即座に禁止しました。 そして、8月4日から始まった軍事演習では、台湾を包囲するように海上封鎖の予行演習を行いました。 海上封鎖の目的は、米国から台湾への軍事支援を断ち、台湾の輸出入を止め、台湾の無血開城を迫ることにあります。 日本にとっても、台湾海峡は中東からマラッカ海峡を経て原油を輸入するための重要なシーレーンの一部です。 実際に「海上封鎖」の予行演習をされたことによって、台湾海峡を航行する予定の数十の船舶が台湾海峡を迂回せざるを得ませんでした。 実際に事が起きれば、迂回で済むかわかりません。拿捕されたり、撃沈される可能性や、またエネルギーや食糧など、日本の安全保障が危機に陥るのは間違いありません。 ◆台湾の半導体も中国の管理下に さらにもう一つの危機は、半導体です。 もし中国が台湾の海上封鎖を行ったら、世界的に有名な台湾の半導体企業TSMCの輸出を、中国が管理するということになります。 半導体は、iPhoneなどスマホやパソコンばかりではなく、自動車など様々使われており、半導体を押さえられたら世界経済は中国に握られることになります。 昨年、アメリカ陸軍戦争大学の雑誌(『PARAMETERS』)で「中国が台湾侵攻をするなら、TSMCを焼き払え」という論文が一番読まれました。 TSMCが無くなれば、中国が台湾侵攻する理由も無くなるだろう、というものです。 現在起きているエネルギーや食糧危機に続いて、半導体危機が現れたら、世界経済は大混乱に陥ります。 ◆中国の弾道ミサイル5発がEEZに着弾 さらに、8月4日は、中国が発射した弾道ミサイル5発が日本の経済的排他水域(EEZ)に初めて着弾しました。 この演習は、より実戦に近い演習を想定し、習近平国家主席自ら判断したと言われています。 これは、台湾に近い南西諸島海域の軍事封鎖は避けられないため、台湾侵攻の際に「日本は介入するな」という牽制の意味があると思います。 石垣市の中山市長は、「台湾を超えて来た中国のミサイルは私たちの島のすぐ近くに着弾した。与那国島の80km近辺にも落ちている。台湾有事は決して他人事ではないという感じだ」と話し、住民の避難体制の整備を政府に要求しました。 ◆台湾海峡で米中もし戦わば こうした深刻な事態を受け、8月上旬、アメリカワシントンD.C.に本部を置く、民間シンクタンク「CSIS戦略国際問題研究所」が、「台湾を巡って米中戦争が起きたらどうなるのか」をシミュレーションし、米国で話題となっています。 今回のシミュレーションは、前提として米国の公式見解では、台湾侵攻の際に関与するかどうかを明言しない「あいまい戦略」を採用しています。 あいまい戦略とは、「台湾が中国に武力攻撃を受けた際に、米国がこれにどう対応するか明言しないでおく」という政策です。 そうすることで中国を挑発せず、また一方で台湾がアメリカの安全保障の約束に自信を持つと、独立を宣言したりしかねないので、中国の台湾進攻の糸口を作らないよう微妙なバランスに配慮したものです。 ただ今回は、「2026年に中国が台湾に侵攻し、米軍が軍事的に関与する」という前提でシミュレーションが検討されました。 また、日本については「本土が攻撃されない限り、直接的な軍事介入までは至らないが、日本国内の米軍基地の利用を許可する」とされました。 他にも、「核兵器は使用しないこと」や、「2026年までに配備可能な軍事力を前提とすること」などが前提とされました。 2026年という設定は、人民解放軍の創立100周年にあたる2027年までに台湾侵攻を行うということから来ています。 (後編につづく) GX(グリーン・トランスフォーメーション)で日本壊滅。中国だけが得する驚愕の中身とは?【後編】 2022.08.12 https://youtu.be/usNSYF8TXcU 幸福実現党党首 釈量子 ◆GXは壮大なムダ そもそも、政府が思い描いているような、官民合わせて150兆円の「GX投資」が行われたとしても、企業、あるいは国にとっては経済成長につながるどころか、マイナスの方が大きいことは間違いありません。 「グリーン」関連だけは一部儲かるところもあるかもしれませんが、全体的に見れば、企業の利益が増えるわけでもなければ、国の成長につながるわけでもありません。 むしろ、成長を大きく阻害する要因に他なりません。 企業にとっては、確かに、「GXに向けて動いている」あるいは、「環境を意識した投資、いわゆる『ESG投資』の『E』に配慮している」と言えば、今の日本なら、企業イメージの向上につながって、一時的に株価が吊り上がることもあるかもしれません。 しかし、実体のある「富」を生み出さなければ、株価もいずれは下がります。 むしろウクライナ危機以降、欧米金融機関では、ESG投資の見直しを始めており、安全保障を重視して化石燃料の価値を再評価しています。 現在、最も株価が上昇しているのは石油や天然ガスなどの銘柄です。 そもそも、「炭素税」を提唱した米国の経済学者W・ノードハウスは、排出量を実質ゼロにするために必要となるコストは全世界で50兆ドル以上となり、(排出量を実質ゼロにせず)地球の平均気温が3度上昇した時の経済損失の10倍以上になるとしています。 つまり、お金をかけてCO2排出を抑えたところで、経済的な意味は全くないのです。 グリーン投資は全く割に合わないグリーン投資を非効率な投資を、政府が主導することは、まさに「政府の失敗」です。 投資の是非は民間が自由に判断し、政府は脱炭素政策を撤廃して、こんな無駄なお金を使うことをやめ、もっと政府が「減量」しなければなりません。 ◆中国だけが得するGX さらに、GX戦略で想定している脱炭素実現に向けた「10年間で150兆円の投資」を見ると、かなりの資金が中国に流出する点にも言及しなければなりません。 現在、太陽光パネルの中でも最も安価であり、大量に普及しているのが「多結晶シリコン方式」です。 この心臓部にあたる多結晶シリコンの8割が中国製であり、さらにその半分が新疆ウイグル自治区で生産されているのです。全世界で見れば、同シリコンのウイグル産のシェアは約45%と推計されています。 電源の脱炭素化のうち「原子力」だけはサプライチェーンのほとんどが国内にあり、再稼働をするだけで国内の産業に莫大なお金が回り始め、海外からの燃料の輸入を削減できます。 その意味では、最も費用対効果の大きな経済政策は、原発再稼働と言えます。 しかし、太陽光や風力では、中国製品の輸入が進むだけであり、日本の産業にはほとんどお金が回りません。 こうして中国企業の太陽光や風力が国内で増えていき、中国製品が多く接続されることは、サイバー攻撃に対して弱い体制をつくることにもなり、経済安全保障上の重大な問題が懸念されます。 ◆GX で日本壊滅 このように見ましても、温暖化が仮に真実だとしても、グリーン投資やGX戦略は無駄だということがおわかり頂けたかと存じます。 そもそも、CO2により温暖化が進んでいるとする説は、科学的根拠がなく、フェイクとも考えられています。 「気候危機」を叫ぶ環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏が広告塔となって、世界は「脱炭素」一色に染まりました。 「我先に」とグリーン投資の拡大がブームとなっていますが、儲かるのは中国と関連するグローバル金融機関だけであり、日本とそのほかの西側先進諸国は、没落の道に歩むことになります。 そして特に、物価高の今、行うべきは、脱炭素ではなく、原発再稼働に他なりません。 しかし、ウクライナ危機以降、欧米先進国の議論もかなり変わり始めていて、「脱炭素」の看板は下ろせないものの、脱炭素一辺倒から安全保障重視に変わりつつあります。 また、投資家もグリーンだけでは儲けられなくなり、化石燃料株が見直されています。いまこのタイミングで「グリーン」に固執する日本の政府は、かなりの周回遅れとも言えます。 日本が奈落の底に落ちる前に、今こそ、軌道修正を図るべきではないでしょうか。 すべてを表示する « Previous 1 … 8 9 10 11 12 … 253 Next »