Home/ 2019年 May 2019年 May 日米貿易交渉を契機に農政の大転換を 2019.05.31 日米貿易交渉を契機に農政の大転換を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆日米経済協議の中で農業は重要分野 5月に訪日したトランプ大統領は、日米貿易交渉の結果について、「8月に発表ができると思う」と述べました。 この交渉が本格化するのは参院選後となる見込みですが、そのなかで、日本の保護農政のあり方は、大きな争点の一つになっています。 日本では、自由に競争が行われている農産物と、高関税などで保護される農産物との差が大きいので、特に後者が問題視されているのです。 ◆米国が交渉を急ぐ背景 米国の通商代表部(USTR)は、日本には、牛肉や豚肉、コメ、小麦、砂糖、かんきつ類などに「貿易障壁」があると批判しています。 --- 【米国から見た「貿易障壁」の例】 ・コメ:輸入分のほとんどが加工・飼料用や食料援助用となり、消費者に提供されない ・小麦:小麦輸入は国家貿易 ・豚肉:差額関税制度(国内販売価格より輸入価格が安い場合、差額分が関税扱いとなる) --- 米国はTPPを離脱したため、現状ではFTAの恩恵を受けられず、TPP11の国々よりも高い関税がかかっています。 例えば、米国産牛肉には36%の関税がかかりますが、TPPに加盟している豪州・カナダ・ニュージーランド・メキシコの牛肉は27.5%です。 そのほか、日欧FTAも発効したので、欧州の農産品も関税削減が始まっています。 結局、現状は米国農産品に不利なので、トランプ政権は交渉を急いでいるわけです。 ◆日米協議についての安倍政権のスタンス 米国はTPPよりも有利な条件を勝ち取るために、TPPを離脱しました。 「(米国は)TPPに参加しておらず、縛られていない」(トランプ大統領 5/27) しかし、安倍政権は一方的にTPPを離脱した米国を他国よりも優遇できないと考え、「TPPと同水準」で日米貿易交渉をまとめようとしています。 安倍政権は、選挙で農業票を失いたくないので、「コメや麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖」などの関税は譲れないと考えているのです。 ◆減反と高関税でコメの消費者負担は重くなる しかし、高関税は輸入品の値段をあげ、消費者に負担を強いるので、国民全体の利益を損なっています。 農政アナリストの山下一仁氏は、生産量を減らす「減反」と「高関税」でコメの値段が上がり、年間6000億円もの国民負担を生んでいると指摘しています。 マスコミ報道では、「安倍政権が減反を廃止した」ことになっていますが、この種の補助金は、違った形で支払われています。 減反補助金と、2010年度に始まった戸別所得補償を足すと、年間で4000~5000億円の規模になっていました。 この補助金の配分が2013年に変わり、普通のコメのかわりに飼料米などをつくる農家への補助金が強化されたのです。 農政の体質は変わっていません。 (2019年予算では「水田活用の直接支払交付金」 が3215億円。これに他のコメ農家支援の項目が追加される) 山下一仁氏は、4000億円以上の補助金に高米価がもたらす6000億円の消費者負担を足すと、国民は毎年、1兆円以上の負担を強いられていると試算していました。 ◆保護農政の結果、主業農家は農地規模を十分に拡大できず 減反が始まった1970年に農地は580万ヘクタールありましたが、2017年には444万ヘクタールにまで減りました(23%減)。 1968年に1445万トンあったコメの生産量は、2017年には782万トンにまで下げられています(46%減)。 本来は、自由競争の中で農産物を増やし、余った分を輸出すべきなのに、コメ農政はその逆になっています。 この政策は「自給率の向上」を目指す農林水産省の方針とも矛盾します。 自民党や公明党は、農業だけでは食べていけない兼業農家の票を得るために、補助金行政を続けてきました。 その結果、自由競争に任せれば農業をやめて土地を貸し出す層までが保護されたので、主業農家は農地を十分に拡大できなかったのです。 ◆コメ農政の大転換を 農業では、「規模を大きくして生産コストを下げる」という規模の経済が働きます。 しかし、日本では、そのメリットを活かせませんでした。 そのため、幸福実現党は、生産調整に伴う補助金を廃止し、主業農家の生産量を増やそうとしています。 生産量が増えれば、農産物の価格が下がるからです。 また、輸出できるほど農産物を増やせば、非常時に輸出分を自国消費に回せるので、食糧安全保障は強化されます。 日本は、トランプ政権との日米交渉を契機に、農政の大転換を行うべきです。 幸福実現党は、立党以来、生産調整(減反)の廃止と大規模化の推進を訴えてきました。 家計を楽にするために、生産を増やし、安いコメが買える農政を実現してまいります。 【参照】 ・外務省「2019年 USTR外国貿易障壁報告書(日本関連部分概要)」 ・農林水産省「平成29年度 農林水産白書」 ・農林水産省「米をめぐる関係資料」(平成30年7月) ・山下一仁著『日本農業は世界に勝てる』(日本経済新聞出版社) エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6)自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠 2019.05.30 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6)自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 (本稿では、読者の皆さまからいただいたご意見・ご質問にお答えします。) ◆原子力発電だけで経済成長を支えられるか 幸福実現党は、2050年頃までに日本の一次エネルギー自給率をフランス並みの50%以上に高めることを目標としています(※1)。 この目標を達成するために、再生可能エネルギーの主力電源化ではなく、原子力発電をさらに推進してはどうかというご意見があります。 我が党は原発の再稼働・新増設を訴えており、現在原子力規制委員会が新規制基準への適合性審査を進めている新設2基(※2)に加えて、合計13基(計画・構想段階の原発9基および我が党独自の提案分4基)の軽水炉の新増設、さらに高速増殖炉等の開発を目指しています。 これが実現すると、2050年の原発による発電電力量は3,000億kWh以上となりますが、それでも過去最高だった1998年度の原発による発電電力量(※3)を超えることは厳しい状況です。 我が党は、減税、規制緩和、大規模なインフラ投資などの成長戦略により、実質経済成長率3%程度を実現することを目指しており、これに基づく2050年の最終エネルギー消費は約1.7倍、電力需要は約3倍(いずれも2016年比)と推定しています(※4)。 2050年における電力需要は約2兆8,000億kWhとなり、このうち原発で供給できる電気は約10%しかありません。 ◆エネルギー自給率を高めるには再エネが不可欠 したがって、残りの90%の電力供給を火力発電と再エネで分担することになりますが、一次エネルギー自給率を50%以上に高めるには、電源のうち再エネの比率を80%程度まで高め、火力発電の比率を10%程度とする必要があります。 ここで、発電用の燃料のうち液化天然ガス(LNG)の一部は、日本近海に豊富に賦存するメタンハイドレートに置き換わることを想定しています。 再エネ比率80%は非常にチャレンジングな目標ですが、日本は海洋・地熱等の未開発の豊富な再エネ資源に恵まれ、先行している太陽光発電についても、システムの低価格化が進んでいます。 大川隆法・幸福実現党総裁は2009年2月の講演(※5)で、時代が脱石油文明にシフトしていくとの見通しを示していますが、実際に2010年代には、世界で再エネに関する技術革新が飛躍的に進み、低炭素技術や化石燃料を削減する技術の普及が一段と進んでいます。この「新文明」の潮流はもはや止まらないと考えられます。 再エネに投資を行い国産資源として活用することは、日本の安全保障を高め、低廉なエネルギーが潤沢に供給される社会の基盤をつくり、政策を誤らなければ投資の大部分を国内経済に還流することも可能なため、国家としての総便益はきわめて大きいといえます。 ◆仮に原発だけで自給率50%以上を目指すなら 仮に、自給率を50%以上に高めるために原発だけを使うとした場合には、現時点で国内最大級の原発(1基あたり138万kW)を250基以上新増設する必要があります(※6)。 日本のような民主主義国で、わずか30年間に250基の原発を新増設することは非現実的ですが、中国のような共産党一党独裁の全体主義国家であっても、ほぼ不可能でしょう。 なお、現在の経済状態が2050年まで続き、エネルギー需給構造や電力需要が変わらないと仮定した場合には、火力発電を全て廃止して原発と再エネに置き換えれば、一次エネルギー自給率は50%程度になります。 その場合にも、再エネを利用しない場合には原発を80基以上新増設する必要があり、現実的ではありません。 ◆エネルギー政策にはバランスが重要 特定のエネルギーに偏る政策は、それが実現しなかった場合の代替エネルギーの確保を困難にするため、リスクが大きいといえます。原発に過度に期待すると、それが実現しなかった場合には、結局は化石燃料への依存から脱却できないことになります。 我が党は、原子力を重要なエネルギー源として位置づける一方、太陽光・陸上風力などの在来型再エネ、洋上風力、潮力、海洋温度差、次世代地熱(EGS)などの新しい再エネに加え、メタンハイドレートの新規開発も進め、石油、石炭、LNGなどの在来型の化石燃料も戦略的に維持することを目指しています。 エネルギーに関するあらゆる可能性を否定せず、情勢の変化に柔軟に対応できるエネルギー供給体制を構築し、日本の独立と繁栄を守ります。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1) 総論」 HRPニュースファイル 2019年5月12日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3534/ ※2 電源開発の大間原発1号機と、中国電力の島根原発3号機 ※3 エネルギー白書2018 資源エネルギー庁 1998年度の原発による発電電力量は3,322億kWで、電源比率は36.8%と、ともに過去最高。 ※4 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か」 HRPニュースファイル 2019年5月26日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3558/ ※5 『創造の法』 大川隆法 幸福の科学出版 ISBN978-4-86395-014-6 ※6 改良型沸騰水型原子炉(ABWR)で想定。出力138万kW、設備利用率85%とすると、1基あたり年間約103億kWhの発電電力量となる。 公務員平均給与は678万円 民間平均は432万円 この差は何? 2019.05.29 公務員平均給与は678万円 民間平均は432万円 この差は何? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆増税を予定しながら、自公政権は5年連続で公務員の給料を増やした 2019年には消費税10%への増税が予定されていますが、不思議なことに公務員の給料は伸び続けてきました。 18年11月には、平均年収を約3万円増やし、678万3000円とする改正給与法が成立しています。 これで、5年連続の給料増となることが決まりました。 ◆平均給与「公務員VS上場企業」の結果は? 政府の言い分は、好景気が続いてきたので、公務員も「民間並み」に昇給したということです。 しかし、その説明に納得できる人がどれだけいるのでしょうか。 東京商工リサーチによれば、2018年3月決算をもとに計算した上場企業(1893社)の平均年間給与は620万8000円です。 今の公務員は、厳しい上場基準をクリアした企業よりも、1割ほど高い給料をもらっていることになります。 さらに、民間の平均給与をトータルで見ると、2017年は432万円でした。 (*民間給与実態統計調査〔平成29年度〕。現在、17年の値が最新) これは、正規・非正規と男女の双方を含めた約4900万人の平均値です。 4900万人の23%が非正規社員なので、金額は低めになる分は割り引いて考えるべきですが、公務員とは250万円近い差がついています。 ◆「赤字続きで昇給」というのは、民間ではありえない 今の日本は「財政赤字を増やし続け、国民に増税をお願いしながら、公務員の昇給を続ける」というおかしな政治が続いています。 「中央政府と地方を足すと、1100兆円もの赤字がある。だから、増税が要るんだ」 「子供や孫の世代に国の借金の負担を先送りしてはいけない」 それが増税の理由だったのに、安倍政権は、5年連続で公務員の給料をあげています。 2013年に616万円だった平均給与が、19年には678万円にまで上がるのです。 しかし、民間では、赤字を積み重ねながら毎年昇給を続けるような経営を続けていたら、悲惨な未来が待ち受けています。 ◆政府に「経営の思想」を入れたら、どうなるのか この問題について、幸福実現党・大川隆法総裁は、20年前から人件費の拡大と不採算部門の肥大化に警鐘を鳴らしていました。 「財政赤字の場合、公務員は、ボーナスや退職金をもらえたり、年功序列で給料や地位が上がったりすることを、当たり前と思ってはならないのです」 「財政を再建するためには、将来的にも税収が見込める分野に予算を重点的に配分する一方で、将来的には成長が見込めず、単に税金のたれ流しになっている分野を縮小していくことが必要になります」 (※『繁栄の法』幸福の科学出版刊 この発言は1998年1月) ◆「小さな政府、安い税金」で民間が自由に使えるお金を増やす 大川総裁の考えは一貫しており、5月22日にも「消費税をあげていくなら、省庁を一つずつ減らすなど、目に見えるかたちにしてくれないと、納得がいかない」と政府を厳しく批判しました(「令和元年記念対談」)。 (※詳細は「幸福実現NEWS 2019年5月23日 特別号」を参照) それは「小さな政府、安い税金」を実現し、民間が自由に使えるお金を増やしたいと考えているからです。 「政府が国民からお金を集めて使うよりも、国民や企業が自分で稼いだお金を使ったほうが、有効な使い道になる」というのが、自由主義経済の基本です。 幸福実現党は、この精神に沿って、消費税5%への減税や政府のスリム化(組織や事業の見直しや公務員給与の適正化など)を進めてまいります。 【参照】 ・時事ドットコム「改正給与法が成立=国家公務員、年収3万円増」(2018/11/28) ・東京商工リサーチ「2018年3月期決算『上場企業1893社の平均年間給与』調査」(2018/8/3) ・国税庁企画課「平成29年分民間給与実態統計調査結果について」(平成30年9月) ・J-CASTニュース「公務員給与の削減終了 わずか2年、『身を切る姿勢』はどこにいった」(2013/11/30) ・大川隆法著『繁栄の法』幸福の科学出版刊 ・幸福実現NEWS「大川隆法党総裁・釈量子党首〈幸福実現党立党10周年・令和元年記念対談〉『君たちの民主主義は間違っていないか。』を開催」(2019年5月23日特別号) エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か 2019.05.26 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆原子力発電の推進を一貫して訴えてきた幸福実現党 2011年の東日本大震災・福島第一原発事故後、民主党(当時)の菅直人元首相による法的根拠のない要請で浜岡原発が停止して以来、被災していない全国の原発が相次いで止まり、再稼働ができなくなりました。 当時の世論やマスコミの多くが「脱原発」に傾く中で、幸福実現党は震災直後から、全国の原発の再稼働を強く訴えてきました。 我が党は、エネルギー資源に乏しい日本が液化天然ガス(LNG)や石油等の化石燃料に過度に依存することは、安定供給と経済性の両面で問題があるため、一貫して原発の再稼働や新増設を主張しています。 ◆世界の流れは原発推進 日本ではしばしば、「世界の流れは脱原発」と言われます。韓国、台湾、ドイツ、ベルギー、スイス等での脱原発の動きや、日立製作所による英国原発事業の中断(※1)、再生可能エネルギーの急速な拡大などがある一方で、日本のマスコミは脱原発を強調し、世界の原発推進の動きをあまり報道しないため(※2)、そのような印象があるのかもしれません。 しかし、米国、フランス、中国、ロシア、インド、英国、カナダ等は今後も原発を推進する方針であり、UAEやサウジアラビア等は新たに原発の利用を計画しています。 また、脱原発を表明した前述の国でも、代替エネルギーの目途が立たないため、実際には脱原発が難航しています(※3)。 世界の流れは、明らかに原発推進に向かっています。その最大の理由は、世界の国々が豊かになり、エネルギー需要が大幅に増大することにあります。 国際エネルギー機関(IEA)が2018年に発行した報告書(※4)によれば、エネルギー効率を野心的に高めた「新政策シナリオ」でも、2017年から2040年にかけて、世界のエネルギー需要は25%以上増加すると予測しています。 また、エネルギーの電力化が大きく進み、世界の発電電力量は約57%増加し、再エネの大幅な増加(約2.6倍)を織り込んでも、さらに原発は約41%増加すると予測しています。 ◆日本だけは経済成長しないのか 一方、「人口減少・少子高齢化・低成長の日本ではエネルギー需要の大幅増加は見込めないため、原発がなくても再エネで十分」という、“下山の思想”のような主張があります。 しかし、米国トランプ政権下で景気が好転したように、米国のような成熟国であっても、政策次第で3%程度の経済成長率になることは珍しくありません(※5)。 日本の「失われた30年」の低成長は、バブル期以降の相次ぐ財政・金融政策の失敗、消費税の増税、高い法人税、低い生産性を温存する諸制度、企業活動を制約する不合理な規制等によるものであり、国民がこれらを前提とした低成長を当然視して自縄自縛に陥っている、世界でも特殊な状況にあるといえます。 したがって、これらの政策を変えれば、3%程度の経済成長が実現しても何ら不思議はありません。 ◆経済成長で電力需要が大幅に増える 我が党は、減税、規制緩和、大規模なインフラ投資などの成長戦略により、実質経済成長率3%程度を実現することを目指しています。 経済成長とエネルギー消費には強い正の相関があることが知られており、経済成長に伴いエネルギー消費は増加します。また、経済成長と電力需要には、特に密接な関係があります。 このため、経済成長率を平均3%程度とすれば、2050年の最終エネルギー消費は約1.7倍、電力需要は約3倍(いずれも2016年比)と推定されます(※6)。 電力需要の伸びが特に大きいのは、電力化率(※7)が高まるためです。 これは、国民がより便利な生活を求めて電化製品、IoT(モノのインターネット)機器、ロボット等が増えること、電気自動車(EV)、ドローン、「空飛ぶクルマ」などの交通の電動化、リニア新幹線など高速鉄道の充実、再エネの急拡大、省エネルギーの要請でエネルギー効率の高い電気に転換が進むことなどが理由です。 ◆原子力利用は国家の独立と安全保障の基盤 経済成長には電力の安定供給が不可欠ですが、他国の支配を受けずに安定供給を確保するには、化石燃料への依存を減らし、原発と再エネの利用を進めなければなりません。 そして、今後の電力需要の増大を考えれば、今世紀中に原発が世界の主力電源の座から降りることは絶対にありません。当面は、原発が大量の電気を安定して発電できる最も効率的なシステムだからです。 さらに、原子力関連の技術は原発に役立つだけでなく、医療、新素材の製造、放射性物質の無害化など、多分野の有用な技術につながるほか、次世代原子炉の開発や核融合炉の実用化に向けた技術開発にも役立つものです。 また、日本に向けて核ミサイルを配備する全体主義国家が存在する現状にあっては、潜在的核抑止力としても重要な意味を持っています。再エネがいかに普及したところで、原子力技術およびその利用の重要性は変わりません。 我が党は、今後も国家の独立と安全保障の基盤である原子力エネルギーを堅持し、原子力の利用を着実に推進します。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「日立、英原発事業を中断 2000億円規模の損失計上へ」 日本経済新聞 2019年1月11日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39897670R10C19A1MM0000/ ※2 「『脱原発』は世界の流れに逆行する メディアが報じない欧米・アジアの大半が『原発推進』という現実」 石川和男 JBpress 2019年4月30日 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56257 ※3 「原子力をめぐる“世界の潮流”」 竹内純子 国際環境経済研究所 2019年4月22日 http://ieei.or.jp/2019/04/takeuchi190422/ ※4 World Energy Outlook 2018, International Energy Agency https://www.iea.org/weo/weo2018/secure/ ※5 Gross Domestic Product, US Bureau of Economic Analysis https://www.bea.gov/data/gdp/gross-domestic-product ※6 幸福実現党による試算。 ※7 電力化率: ここでは、最終エネルギー消費に占める電力需要の割合。 「大義なき自公」「反対のみの野党」には任せられない 2019.05.25 「大義なき自公」「反対のみの野党」には任せられない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「大義」の中身を語れない自民党 菅官房長官は、5月17日に続き、20日の会見で、内閣不信任案の提出は解散の大義になりえると述べました。 ――― 「(会見の質問は)内閣不信任決議案が提出された場合に解散の大義になるか、ということだった。私は当然なり得るだろうと話した」(時事通信 5/20) (それは)「制度上の問題だから、当然ではないか」「首相が解散すると言えば、解散する。しないと言えばしない…まさに首相の専権事項だ」(日経電子版5/20) ――― この発言を見ると、解散に至るまでの「制度」を説明しただけで、「大義」の中身は述べられていないことがわかります。 本来、政治家にとっての大義は、国民のための政策実現を意味するのに、菅長官は何も政策を語っていないからです。 「増税延期が解散の大義になる」という方もいますが、今年は参院選で民意がわかるので、解散の必要はありません。 「増税延期」を参院選で訴え、結果を見た後に是非を決めることができるからです。 そのため、昨今の解散風は「野党が劣勢である間に議席を確保したい」という自民党の事情から生まれてきたものだといえます。 結局、自民党は、国民に必要な政策の議論なしに「解散」を進めたいという下心を「大義」という美しい言葉で隠しているのです。 ◆「野党候補の一本化」=「談合」による候補者の決定 いっぽう、支持率低下が目立つ野党は戦々恐々としています。 NHK世論調査(5/10~12調査)によれば、政党支持率は自民党と公明党で38%あるのに、反安倍政権を掲げる勢力は10%以下です。 ――― ・自民党は35.2%、公明党は3.1%。中間勢力の日本維新の会は2.9% ・立憲民主党は4.8%、国民民主党は0.7%、共産党は3.2%、社民党は0.6% ――― そのため、野党は候補者の一本化を進めています。 5/21には、共産党が参院選で20人の候補予定者を取り下げる方針を固めました。 そうすることで、立憲民主党や国民民主党などとの連携を進める体制をつくっています。 この「一本化」によって、野党の支持者は「違い」を選べなくなります。 「共産党は嫌だ」と思っていても、「安倍政権を許さない」というだけの理由で統一候補に票を入れるしかなくなるわけです。 これは、「議席を減らしたくない」という野党の事情で、有権者に「思想・信条の自由」に沿った投票を行う選択肢を奪っています。 共産党などの左派陣営は、自民党を土建屋と密着した「談合政治」だと批判してきましたが、自分たちは「談合」によって有権者の投票先を減らしているのです。 野党連合が目指す民主主義では、談合で有権者の選択肢を減らしても構わないのでしょう。 それは、候補者と有権者の思想や信条などはどうでもよく、党利党略だけで有権者の投票先が決められる政治なのです。 ◆幸福実現党が示す「新しい選択」とは 今の与野党は、選挙を自分たちの党利党略を実現する場ととらえています。 しかし、幸福実現党は「大義なき解散」や「政党の談合による候補者選び」で勝者が決まるような政治でよいとは考えていません。 幸福実現党は、日本に「自由・民主・信仰」といった価値観を打ち立て、本物の民主主義を実現したいと考えているからです。 幸福実現党は、あくまでもこの大義を尊び、この価値観に反する政党とは手を組みませんでした。 また、立党以来、消費税増税に反対し、今は5%への減税を訴えています。 北朝鮮の核ミサイルや中国の軍拡にも、立党の時から警鐘を鳴らしてきました。 立党から10年の間、変わらぬ理想と政策を訴え続けてきたのです。 それは、大義も政策も見えない政治の中に「新しい選択」を示すための試みでした。 「大義なき解散」をはかる与党でも、「反安倍」しかメッセージのない野党でも満足できない方の受け皿であり続けてきたのです。 幸福実現党は、立党10年の今年も、減税と国防強化を訴え続け、国民に「新しい選択」を訴え続けてまいります。 【参照記事】 ・時事ドットコム「菅官房長官、解散『大義』再び発言=内閣不信任案提出なら」(2019/5/20) ・日経電子版「不信任案提出は解散大義 菅氏『制度上、当然』」(2019/5/20) ・「NHK世論調査 政党支持率」(NHK選挙WEB 2019年5月) ・毎日新聞「共産が20選挙区で取り下げへ 参院選1人区 野党候補を一本化」(2019/5/21) 反日韓国への効果的な対抗措置 2019.05.24 反日韓国への効果的な対抗措置 HS政経塾第9期生 梅本 茉弥(うめもと まや) ◆次々と起きる反日行動 韓国は相変わらず反日行動を繰り返しています。 これまでに起きた徴用工訴訟の原告人数が959人、訴えられている日本企業は70社を超えています。 また、日本製鉄と不二越の韓国内資産は差し押さえらえており、その金額は約9300万円相当(日本製鉄)、約7300万円相当(不二越)だと報じられています。 これに対し、河野太郎外相は「企業が実害を受ける場合は対抗措置を出す」と警告しました。 ◆効果的な対抗措置は? 現在、安倍政権は約100種に及ぶ対抗措置をリストアップ化していると報じられています。 これに関して、元内閣参事官の高橋洋一氏は「外為法に基づく直接投資規制」が効果的だと述べています。 「対韓直接投資」とは、日本企業が韓国に進出し、韓国でビジネスを行なうことです。 これを規制することで、日本企業の韓国進出を制限、そして今ある在韓日本企業の引き上げが進みます。 実は、すでに日本企業の韓国引き上げは始まっています。 韓国の反日政策をリスクとみて、日本企業は続々と引き上げており、日本から韓国への直接投資は、昨年よりも約3割減りました。 すでに始まっている「引き上げ」を日本政府としても後押しすることで、対抗措置とするべきではないでしょうか。 ◆「外為法に基づく直接投資規制」とは 高橋氏は、自身が旧大蔵省で担当した「外為法」を基に、以下のような対抗措置を提案しています。(注:参照記事 高橋洋一「韓国「日本企業の資産差し押さえ」 有効な対抗策とは」NEWSポストセブン) 外為法には、「対外取引に対し、最小限の管理と調整を行える場合がある」ことが規定されています。 その条件には「国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき」が含まれているのです。 徴用工問題に関しては、1962年に結ばれた日韓請求権協定という「国際約束」を誠実に履行する必要があるので、外為法によって、対韓直接投資を管理・調整することが可能です。 現在、日本企業が対外直接投資をする際は、事後報告となっています。日本政府の許可なく、自由に海外に企業が投資できる状態です。 しかし、韓国に限って事前申告制に変更すれば、日本政府が事前にチェックして、是正・中止を求めることや、韓国への投資を遅らせることが可能になります。 この投資規制で、韓国への投資を減らし、企業の引き上げを促進できるはずです。 ◆第2の手段として考えられる「関税引き上げ」 「投資の引き上げ」は効果的な対抗措置となります。 なぜならば、1997年に韓国で起った通貨危機は、海外からの投資が一気に引き上げられたことによって起きているからです。韓国は、その繰り返しを避けたいと考えるのではないでしょうか。 現在、関税の引き上げも検討されていますが、そのためには、法整備が必要なので、時間がかかってしまいます。 対策が急がれる今回の問題に関しては、まず、関税引き上げの準備をしながら、韓国への直接投資を減らし、韓国の出方を見るべきでしょう。 しかし、それでも韓国の対応が変わらない場合は、「関税の引き上げ」も行うべきです。 ◆「無視」だけでは何も解決しない 韓国では、日本による対抗措置は「実現不可」と予想する声が多く聞かれています。 現在、安倍首相は「戦略的無視」をしていますが、「慰安婦問題」について具体的な対抗措置を打たずにいる間に「徴用工問題」が出てきました。 このままでは永遠に騒がれてしまいます。黙っていては何も解決しません。 だからこそ、無視はやめて、真剣に対抗措置を打つ必要があるのです。 参照 高橋洋一「韓国「日本企業の資産差し押さえ」 有効な対抗策とは」NEWSポストセブン https://www.news-postseven.com/archives/20190404_1343364.html 日本銀行 外為法の報告制度について 1-5外為法の取引規制 https://www.boj.or.jp/about/services/tame/t_seido.htm/ 徴用工問題に腹を立てているあなたへ 2019.05.23 徴用工問題に腹を立てているあなたへ HS政経塾第9期生 梅本 茉弥(うめもと まや) ◆ますます過熱する「徴用工問題」 韓国側が、「戦時中に日本が朝鮮人を強制的に徴用し、奴隷労働させられた」と主張し、日本企業に賠償を求めている「徴用工問題」が、新たな局面を迎えました。 徴用工訴訟を支援する弁護団は4月29日、新たに日本企業9社を追加提訴。 さらに、昨年10月に韓国大法院(最高裁)で損害賠償請求権が認められた原告団は5月1日に、日本企業2社(日本製鉄・不二越)に対し、韓国内で差し押さえた資産を現金化する手続きに入りました。 ◆そもそも「徴用工問題」とは この問題については、そもそも歴史の真実を確認する必要があります。 まず、日本政府が朝鮮人を強制的に徴用し、奴隷労働させたという事実はありません。実際には、自らの意志で日本に出稼ぎに来ていた人がほとんどでした。 「国民徴用令」が発令された1939年から4年間、朝鮮では「募集」による徴用が行われました。この間、実際に徴用されたのは約15万人。 徴用とは関係なく出稼ぎのために日本に来た人は約44万人でした。 また、日本に来ることを望む朝鮮人は多く、約2万人もの人が不正渡航者として、「強制連行」どころか「強制送還」されているのです。 終戦時には、在日朝鮮人は約200万人まで増加。そのうち徴用者は約32万人、軍人や軍属は約11万人とされています。 徴用者や軍人・軍属を除くと、約160万人の朝鮮人が何らかの理由で日本に暮らしていました。 では、その人々は何をしていたのでしょうか。 それが、まさに「出稼ぎ」なのです。(西岡力著『日韓「歴史問題」の真実』参照) ◆「徴用者」は奴隷扱いされていたわけではない 1944年9月には、朝鮮でも「国民徴用令」が施行され、実際に徴用された朝鮮人もいました。 当時の朝鮮徴用者の中には、徴用者の部屋の広さは畳二十畳(10人部屋)で、清潔な寝具が用意されているなどの様子を、手記に残している人もいます。(西岡力「朝鮮人戦時動員の関する研究(2)」参照) つまり、朝鮮人が差別され、劣悪な環境で働かされたわけではないのです。 ◆「徴用工」の問題は既に賠償済み これまで日本は、1965年の「日韓請求権協定」で徴用工問題は解決済みと主張してきました。 1962年の日韓国交正常化の際、韓国の李承晩大統領は、日本に対して「対日請求要綱」を提出しています。 そこに載っている徴用工に関する請求には、徴用者への未払い賃金、徴用によって怪我等をした場合の補償などが含まれていますが、これらは「日韓請求権協定」によって全て解決済みなのです。 また、「協定についての合意された議事録」の中で、この協定については「いかなる主張もなしえないこととなることが確認された」と記されています。 ◆文在寅大統領も「全て解決」に同意済み また、盧武鉉政権が2005年に発足させた「韓日会談文書公開後続対策関連民官共同委員会」は「65年韓日請求権協定の効力の範囲問題」に対する見解を表明しています。 そこでは、「徴用工」に対する補償問題は日本の責任ではなく、韓国政府に責任があるとも記されています。 驚くべきことに、同委員会には、現在の大統領である文在寅氏も所属していました。 文大統領は、徴用工への賠償は韓国政府の責任とすることに同意したのに、日本政府に責任を求めているのです。 韓国側の主張には正当性がありません。 ◆国際広報力が弱い日本 日本は国際社会に歴史の真実を訴えなければなりません。 2015年に韓国で公開された映画「軍艦島」の内容が嘘であることに対抗し、「軍艦島」の元島民が「真実の歴史を追求する端島島民の会」という団体を作りました。 同団体は、You Tubeに、元島民による証言動画を日本語と、韓国語・英語字幕で更新しています。 しかし、民間が声を上げているのに、日本政府は歴史の真実を国際社会に訴えていません。韓国が主張している「徴用工」自体が嘘であることを訴え、真実を世界に伝えなければなりません。 ◆韓国大使館前の抗議行動 そのため、幸福実現党は4月23日に、韓国大使館前で、文在寅政権の反日暴走に対する抗議行動を行ないました。 文在寅政権の反日暴走に対する抗議行動 http://hrp-newsfile.jp/2019/3518/ 今後も歴史認識問題に関して、真実を世界に広めるための活動を続けてまいります。 参照 西岡力著『日韓「歴史問題」の真実』PHP研究所 西岡力「朝鮮人戦時動員に関する研究(2)、手記の検討」『歴史認識問題研究第3号』所収 崔 碩栄著『韓国が「反日国家」である本当の理由』彩図社 松木國俊著『日本が忘れ韓国が隠したがる本当は素晴らしかった韓国の歴史』ハート出版 飛鳥新社『月刊Hanadaセレクション 韓国、二つの嘘 徴用工と従軍慰安婦』 オーストラリアで与党勝利のサプライズ 日米豪の連携強化へ 2019.05.21 オーストラリアで与党勝利のサプライズ 日米豪の連携強化へ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆豪州総選挙で与党が辛勝 5月18日に行われたオーストラリアの総選挙は、保守連合(国民党+自由党)が労働党に勝利しました。 自由党では2018年に内紛が起き、ターンブル前首相が失脚。スコット・モリソン氏は国民の審判を仰がずに首相となったので、総選挙は厳しい戦いでしたが、続投が決まりました。 労働党に有利な数字が並んでいた数か月の世論調査をくつがえすサプライズが起きています。 親米路線を取り、中国のファーウェイ社(華為技術)排除にもいち早く協力した保守連合が勝利したことは、同じく米国との同盟を重視する日本にとっても朗報だといえます。 ◆注目点(1):豪州の外交路線は親米でまとまる 日本から見た時に、今回の豪州選の最大の注目点は、与野党の外交路線です。 モリソン首相と労働党党首の路線が真逆だったので、政権が交代すれば、外交路線が変わる可能性があったからです。 労働党のビル・ショーテン党首は「中国の台頭を歓迎」しており、その台頭を「脅威」ではなく、「チャンス」と捉えていました(※1)。 そして、トランプ大統領に対しては、2016年に「自由世界の指導者に全くふさわしくない」とまで酷評していたのです(※2)。 しかし、保守連合を率いたモリソン首相はトランプ大統領と連携して中国のファーウェイ社の排除を主導。 カナダと豪州、ニュージーランドがいち早く米国に賛同し、これに日本も同調したことで、米国の影響力が世界に印象付けられたといえます(英国は19年4月に全面排除を撤回)。 米中の経済対決は、双方が賛同する主要国の数を競っているので、このたびの保守連合の勝利には、非常に大きな意義があります。 ◆注目点(2):中国包囲網の「豪州切り崩し」は困難に この保守連合の勝利を悔しがっているのは、中国でしょう。 ファーウェイ排除の厳しい網の目を破るために、中国は「豪州の切り崩し」を狙っていたからです。 豪州の貿易において、中国は輸出の3割(30.6%)、輸入の2割(18%)を占めているので、労働党政権ができたら、これを用いて対中政策をくつがえせる可能性がありました。 (※3:出典は外務省HP「オーストラリア基礎データ」) それが必要だったのは、トランプ政権が5月15日に大統領令で安全保障上の脅威と見なされた企業が米企業に通信機器を販売することを禁止したからです。 ファーウェイ社はその中に含まれただけでなく、製品供給も事実上、禁止されるブラックリストに載せられています。 これが完全に実施されれば、ファーウェイはソフトウェア更新やメンテナンス、ハードウェアの交換ができなくなり、経営危機に直面するはずです。 そのため、中国は英国に続いて「豪州切り崩し」を狙っていましたが、それは、今回の選挙で難しくなりました。 ◆注目点(3):労働党のCO2削減案は予期したほどの支持を得られず 3番目に大きな注目点は、豪州のエネルギー政策です。 今回の選挙では、与党も野党もインフラ投資による雇用拡大を掲げており、経済では意外と共通点がありました。 (※ただ、最低賃金の引上げや低所得者減税、富裕層や大企業への課税強化などを訴える労働党のほうが「格差是正」色が強い) しかし、最も大きな違いが分かれたのは、エネルギー政策です。 石炭の産地である豪州は火力発電が8割を占めているので、保守連合は地球温暖化対策にはやや消極的でした。 (※保守連合のCO2等の削減目標は2030年までに2005年比で26~28%削減) これに対して、豪労働党は2030年までに温暖化ガス排出量を45%(2005年比)削減することを公約したのです。 そのために再生可能エネルギーの拡大をうたったのですが、これを実現した場合、火力発電にブレーキがかかり、再エネ用の設備投資や温暖化対策費がかかります。 これに対して、モリソン首相は「コストを明らかにせよ」と批判していました(※4)。 結局、労働党は予想したほど支持されなかったのですが、「火力で十分なのに、なんで再生可能エネルギーがそんなに要るんだ?」という疑問が出てくるのは、きわめて当然のことでしょう。 ◆日米豪でさらなる連携強化を オーストラリアは、日本にとって欠くことのできない友好国です。 同じ自由民主主義国で、ともに米国を同盟国としているだけでなく、わが国は石炭の7割(71.5%)、天然ガス(LNG)の3分の1(34.6%)をオーストラリアから輸入しています。 日本は原油の9割(86%)を中東から輸入していますが、豪州も、違った意味での資源安全保障上の要地なので、失うわけにはいかない友好国です。 また、米国にとっても豪州は秘密情報を共有する五カ国(ファイブアイズ)の一員です。 イギリスとカナダ、オーストラリアとニュージーランドは、米国の同盟国の中で、もっとも親密な国々に位置づけられています。 米海兵隊は豪州のダーウィンに拠点を構え、中国の海洋進出に睨みを利かせています。 グアムと、グアムの北にある沖縄、南にあるダーウィンに米軍が展開することで、東南アジアから日本までのシーレーン(海上交通路)が守られているのです。 (※5:日本の化石燃料の輸入比率は「日本のエネルギー2018」(資源エネルギー庁)を参照) すでに、トランプ大統領からモリソン氏の勝利への祝辞が届いていますが、今後、日米豪が安全保障と経済面で連携を強化し、中国の覇権拡大に対峙していくことが大事だといえます。 【参照】 ※1:ニューヨークタイムズ Bill Shorten Wants Australia to Embrace China. But at What Cost? (By Jamie Tarabay, 2019/5/15) ショーテン氏は“I welcome the rise of China in the world”と述べていた。NYTは he saw China not as a “strategic threat,” but as a “strategic opportunity.”と指摘。 ※2:ガーディアン Australian opposition leader Bill Shorten to declare Donald Trump ‘unsuitable’ to lead US (2016/10/11) 原文は entirely unsuitable to be leader of the free world ※3:2017/18年の「財・サービス」輸入。出典は外務省HP「オーストラリア基礎データ ※4:ガーディアン “Australian election… エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(4)火力発電を戦略的に維持 2019.05.19 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(4)火力発電を戦略的に維持 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆小売全面自由化で価格形成のメカニズムが変わる 電気・ガス・水道・鉄道などのインフラ型産業は総費用に占める固定費の割合が高く、生産量が増加するほど平均費用が低下し、自然独占が生まれやすい性質があります。 このような産業は「費用逓減産業」と呼ばれ、経済学では、一般に限界費用が平均費用を下回ることが知られています。 費用逓減産業においては、政府が独占企業の価格規制を「限界費用」で行うと、価格は下がりますが、企業は固定費を回収できず、政府が赤字を補填することになります。 一方、政府が価格規制を「平均費用」で行うと、独占企業は固定費回収の原資を得て独立採算で黒字経営を維持することが可能ですが、価格は前者に比べて高くなります。(※1、※2) 日本では、1951年に松永安左エ門氏が地域独占・民営の電気事業体制を構築したときから、政府が「平均費用」で価格規制を行い、審査のうえ適正な電気料金を認可する方式を採用しました。 その後、基本的には政府による赤字補填を受けることなく、独立採算で設備投資を行い、完全民営の電気事業が営まれてきました。 しかし、2016年度から始まった小売全面自由化で、電気料金は原則として市場メカニズムで決まるようになり、将来は規制料金が全廃される予定です。 電気には、貯蔵が難しく需要と供給が同時同量でなければならないという制約があるため、自由化された電力市場(kWh市場)では、「限界費用」(※3)で価格が形成されるようになります(※4)。 ◆火力発電は経営困難に 再生可能エネルギーの開発には多額の初期投資を必要としますが、ほぼ「限界費用ゼロ」で無尽蔵のエネルギーを供給できる可能性を秘めています。 しかし、電力市場(kWh市場)で大量の再エネが取引されるようになると、火力発電会社が固定費を回収できないという、厄介な問題が発生します。 例えば、太陽光発電(PV)の余剰買取制度(2012年度に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」に移行)は2009年度の開始から10年が経過するため、いわゆる「卒FIT太陽光」の電気を小売会社が買い集める動きがあります。 これらは既に初期投資の回収が終わっているため、1kWhあたり7~8円程度の安い単価で取引が成立しますが(※5)、今後はこのような低価格の再エネが大量に供給されるため、競争により火力発電にも単価引き下げの圧力が及び、固定費の回収が難しくなります。 その結果、短期的には電気料金を引き下げる効果がありますが、発電会社は火力発電への設備投資を控えるようになるため、安定供給に必要な設備が不足して、長期的には電気料金が上昇する可能性があります。 ◆再エネには火力発電のバックアップが必要 しかし、再エネは天候の変化で大きく出力が変動するため、火力発電が再エネの変動に備えて待機し、再エネを支えているのが現実です。このような火力発電の役割は電力の安定供給に不可欠ですが、小売全面自由化で、発電会社にこれを期待することが難しくなっています。 その傾向が顕著に出ているのがドイツです。ドイツではPVや風力発電が大量に導入され、2018年には電力需要の約38%を再エネで賄っています。国内需要約5,990億kWhに対して、全電源で約6,490億kWhを発電しており、約500億kWhをフランスなど欧州各国に輸出しています(※6)。 しかしこれは、「余った再エネを他国に押し付けている」と見ることもできます。 ドイツでは需要の少ない時間帯には風力発電などの電気が余り、電力価格がマイナスになることもあるため、火力発電の稼働率が大幅に低下し、経営困難となった火力発電の撤退が起きています(※7)。 また、日本でも、自由化以前に大規模災害等に備えて温存していた古い火力発電所が、経済的な理由で次々と廃止されています。 ◆政府の支援で火力発電を戦略的に維持 このように、FITおよび「電力システム改革」の結果として、必要な火力発電を市場原理の中で維持していくことが難しくなっていますが、不安定な再エネを支え、大規模災害など不測の事態に備えるためにも、日本は一定の火力発電を保有し続けなければなりません。 幸福実現党は、政府の支援や効率的な制度設計の導入により、今後も火力発電を戦略的に維持し、電力の安定供給と国益を守ります。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 例えば、『ミクロ経済学入門』 奥野正寛 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-01523-7 ※2 「容量メカニズムの必要性と必然性」 国際環境経済研究所 http://ieei.or.jp/2017/07/special201204062/ ※3 ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※4 『エネルギー産業の2050年 Utility 3.0へのゲームチェンジ』 竹内純子ほか 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-32170-3 ※5 例えば、「関電、家庭用太陽光1キロワット時8円で買い取り 四国電は7円」 日本経済新聞 2019年4月22日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44047450S9A420C1TJ1000/ ※6 The Energy Transition in the Power Sector: State of Affairs in 2018 Agora Energiewende 4 Jan. 2018 https://www.agora-energiewende.de/fileadmin2/Projekte/2018/Jahresauswertung_2018/Agora-Annual-Review-2018_Energy-Transition-EN.pdf ※7 『限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』 ジェレミー・リフキン NHK出版 ISBN978-4-14-081687-5 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(3)再生可能エネルギーは高い? 2019.05.17 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(3)再生可能エネルギーは高い? 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆すでに「戦力」となっている太陽光発電 民主党(当時)政権が2012年度から導入した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」により、太陽光発電(PV)を中心として、再エネの利用が急速に進んでいます。 日本のPV導入量は4,300万kW(2018年末現在)を超え(※1)、既に重要な供給力の一部となっています。 例えば、九州エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約81%をPVで賄い、余った電気を他のエリアに融通しました。夏のピーク需要時には約27%をPVが供給しました(※2)。 また、需要の多い東京エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約36%をPVで賄い、夏のピーク需要時には約11%をPVが供給しました(※3)。 このように、PVは特に昼の需要に対しては「戦力」として機能しており、夏の節電要請が4年連続で見送られていることからも、その効果の大きさがわかります。 一方、再エネを電力量(kWh)の点から見ると、2017年度の日本の発電電力量約1兆602億kWhのうち、PVは約551億kWh(約5%)であり、水力・風力・バイオマス等を合わせた再エネ全体でも約1,700億kWh(約16%)に過ぎません(※4)。 エネルギー源として期待するにはまだ量が足りないといえます。 ◆莫大な国民負担 このように、日本ではFITの導入により、PVを中心とした再エネの爆発的な普及が進みましたが、その代償として国民負担が急増しています。 FITを導入した2012年度には、再エネの賦課金総額(国民負担)は約1,300億円でしたが、2018年度には約2.4兆円に膨れ上がりました(※5)。 電力中央研究所は2017年に、このままでは2030年度の賦課金総額は3.6兆円、累計44兆円に達するとの試算を発表しました(※6)。 この試算はメディアでも取り上げられ(※7)、国民や経済界にも負担増への不満が高まってきたことから、経済産業省は国民負担の抑制のため制度設計を段階的に見直し、2019年4月にはFITの抜本的な改革に向けた検討を始めました(※8)。 ◆民主党(当時)の失政が巨額の国民負担を招いた なぜ、ここまで国民負担が増大したのでしょうか。 実は、再エネのコストは高くないばかりか、海外では急速にコストが低下し、既存の系統電力のコストを下回る例も出てきています(※9)。 また、バイオマス以外の再エネは燃料が不要なため、ひとたび初期投資を回収すれば、ほぼ「限界費用ゼロ」(※10)で電気を供給することができます。 国際エネルギー機関(IEA)によれば、日本でFITが始まった2012年当時でさえ、世界のPVの発電原価は既に急速な下落傾向にあり、1kWhあたり25円程度、入札価格はさらにこれを下回っていました(※11)。 ところが、日本はFITの導入時に、1kWhあたり42円(税込み)という、当時のドイツの2倍近い、世界の相場とかけ離れた非常に高い価格でPVの電気を買い取ることを決めました。 これは、メガソーラー事業への参入を予定していたソフトバンクの孫正義氏が、民主党(当時)の菅直人・元首相に強く要望したことが理由ともいわれています。 このように、民主党(当時)政権が再エネ事業者の過大な利益を誘導したことが、PVの爆発的な普及につながったことは間違いありませんが、再エネ事業者が法外な利益を得る一方で、巨額の国民負担が累積的に増加し、高い買取価格を織り込んで日本ではコスト削減が進まないなど、多くの弊害が出ています。 再エネはもっと安いものですが、日本の再エネをここまで高コストにしたのは、明らかに民主党(当時)の失政が原因です。 ◆FITの速やかな廃止で、再エネはもっと安く大量に導入できる 幸福実現党は、FITを速やかに廃止し、電気料金を原資としない補助金制度を創設することを訴えています。 FITでは買取価格が固定されているため、コスト削減の努力が生まれにくいことから、再エネの開発にあたり、競争入札を広く適用します。 また、陸上におけるPV・風力発電等の開発では、乱開発による深刻な環境破壊が各地で発生していることから、規制を強化し、秩序ある開発によって自然環境・生活環境を守ります。 このような施策により、我が党は国民が安心して再エネを受け入れられる条件を整えて、低コストの再エネの導入を拡大し、広く国民がメリットを享受できるようにします。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト https://www.fit-portal.go.jp/PublicInfoSummary ※2 九州電力 系統情報の公開 http://www.kyuden.co.jp/wheeling_disclosure.html これによると、2018年4月29日(日)12:00頃、エリア需要793万kWのうち646万kWをPVが供給。2018年7月26日(木)14:00頃、エリア需要は1,601万kWのピークに達し、そのうち432万kWをPVが供給。 ※3 東京電力パワーグリッド エリアの需給実績公表について http://www.tepco.co.jp/forecast/html/area_data-j.html これによると、2018年5月20日(日)11:00頃、エリア需要2,616万kWのうち952万kWをPVが供給。2018年7月23日(月)14:00頃、エリア需要は5,653万kWのピークに達し、そのうち611万kWをPVが供給。 ※4 平成29年度(2017年度)エネルギー需給実績(確報) 資源エネルギー庁 2019年4月12日 https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/stte_025.pdf ※5 日本のエネルギー2018 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2018.pdf なお、買取費用から電力会社の回避可能費用等を減じたものが、賦課金の額となる。 ※6 「固定価格買取制度(FIT)による買取総額・賦課金総額の見通し(2017年版)」 電力中央研究所 2017年3月 https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/pdf/Y16507.pdf ※7 「再生エネ買い取り5年 国民負担は電気代の1割に拡大 論説委員・井伊重之」 産経新聞 2017年7月2日 https://www.sankei.com/premium/news/170701/prm1707010025-n1.html ※8 「経産省、再エネ固定価格買い取り制度を抜本見直しへ」 日本経済新聞 2019年4月25日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44175090V20C19A4000000/ ※9 Renewable Power Generation Costs in 2017, International Renewable Energy Agency https://www.irena.org/publications/2018/Jan/Renewable-power-generation-costs-in-2017 ※10 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※11 「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた今後の論点~第5次エネルギー基本計画の策定を受けて~」 資源エネルギー庁 2018年8月29日 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/007_01_00.pdf すべてを表示する 1 2 Next »