Home/ 2019年 April 2019年 April 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【後編】 2019.04.12 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆自民党は「ゆりかごから墓場まで」を目指していた 前編で述べた自民党の「福祉国家の建設」という方針には、イギリスを斜陽国家にした「ベヴァレッジ報告」の影響が濃厚です。 「ベヴァレッジ報告」は、完全雇用を目指すとともに、全国民が同じ社会保険に加入し、老後や病気、失業などに備えることを訴えた政策文書です。 当時のイギリスでは、これに基づき、「ゆりかごから墓場まで」福祉を提供するために、国をつくりかえていました。 そして、高い税金のもとで福祉予算を増やした結果、勤勉の美徳が失われ、かつての大英帝国は見るも無残に凋落していったのです。 こうした「英国病」をもたらした「福祉国家」の思想を、自民党は党の基本文書に盛り込みました。 それは、当時の政治でも、福祉が争点になっていたからです。 当時を知る、元厚生事務次官は、自民党ができた昭和三〇年の頃には「保守合同で自由民主党が生れ」、「左右社会党の統一があって」、「何か国民の福祉で役に立つということが政党の合言葉になった」とも回想しています。 厚生省内では「『ゆりかごから墓場まで』ということはもう当然のごとく語られていた」とも述べているのです。 しかし、高度成長期の日本には勢いがあったので、その病原菌はしばし隠れていました。 それは、少子高齢化が実現した後に正体をあらわし、日本をどんどん高税率の国につくりかえているのです。 ◆地獄への道は善意で舗装されている 福祉予算を増やす場合、その財源は「増税」か保険料の値上げで賄われます。 その結末は、結局、未来の増税と消費不況の実現にすぎないのです。 甘い言葉の代価は高くつきます。 「地獄への道は善意で舗装されている」という格言のとおりです。 幸福実現党は、この「福祉の充実⇒財源不足⇒増税⇒消費減退」という負のサイクルを終わらせるために「小さな政府、安い税金」の実現を訴えてきました。 そのために、消費税増税に反対し、5%に戻すことを訴えてきました。 増税をしてお金を誰かに配るよりも、一律に減税したほうが、公平な「福祉」になるからです。 減税こそが最大の福祉です。 しかし、自民党や公明党、立憲民主党の議員が増えれば、福祉が増えたあとに、増税や保険料の値上げが行われます。 そして、消費不況が繰り返されるのです。 こうした「未来を犠牲にした福祉」は、「その場しのぎ」にすぎないので、日本経済のパイを大きくすることができません。 幸福実現党は、GDPの6割を占める消費を活性化させてこそ、日本経済そのものが大きくなり、税収も増え、そこから福祉に回るお金も出てくると考えています。 日本経済の未来は、消費税5%への減税から生れてくるからです。 【参考】 ・枝野幸男×荻原博子「そろそろ昭和の成功体験から抜け出そう」(『女性自身』HP、2019/1/21) ・総務省統計局「家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 ・自民党HP「高校授業料無償化の問題点!」〔2010年3月16日〕 ・自民党HP「党の性格」(昭和三十年十一月十五日) ・菅沼隆ほか『戦後社会保障の証言』(有斐閣)※引用部分は幸田正孝元厚生事務次官の発言) 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【前編】 2019.04.11 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【前編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「福祉の充実」という甘い言葉にご用心 現在、地方選において、かつて消費税増税に合意した自民、公明、立民の3党が「福祉の充実」を訴えています。 自民党と公明党は消費税の増税分を用いた教育無償化、立憲民主党は格差の是正などを強調しているのですが、どちらにも、大きな問題点があります。 福祉が増えたら、その分だけ税金や保険料の支払いが増えるということです。 つまり、この三党の福祉政策が実現したら、「行きはよいよい帰りは怖い」という言葉の通り、増税が待っています。 そして、増税はさらなる消費の冷え込みを招きます。 これは、すでに起きた現実なのですが、こうした不都合な話は、真正面からは取り上げられていないのです。 ◆消費の冷え込みは「福祉のための増税」でもたらされた 「福祉の増加⇒財源不足⇒増税⇒消費減退」という負のサイクルは、ここ10年の歴史から確認できます。 まず、2009年に福祉の充実をうたった民主党政権ができ、その後、「財源が足りない」という話になり、消費税増税が決まりました。 その結果、消費が冷え込み、かつて月あたり32~34万円で推移していた家計消費の水準を取り戻せていません。 これは2000年から07年までの水準ですが、2018年の家計消費は、31.5万円(※二人以上の勤労者世帯)にすぎなかったのです。 立憲民主党の枝野代表は、本年の1月に「当面、大衆課税は無理ですよ。日本の今の消費不況からすると、そんなことをやれる状況ではない」と言っていましたが、自分たちがその原因をつくったことに責任は感じていないようです。 立憲民主党の枝野代表、蓮舫副代表、最高顧問である菅直人氏、海江田万里氏などは、政権にいた頃、「福祉のために」と称して増税の道筋をつくってきた方々です。 彼らのおかげで消費税も所得税も上がり、相続税が「中金持ち」にまでかかるようになりました。 その結果が「消費不況」です その判断には「先見の明」がかけらほどもありませんでした。 ◆かつての民主党と同じく「教育無償化」を推す自公政権 増税路線は、民主党と自民党、公明党の三党合意で固まりました。 合意したのは、今、まさに福祉の充実を訴えている政党の方々です。 そして、この三党は、みな「教育無償化」を推進しています。 しかし、その財源が、結局、消費税の増税であるのは大きな問題です。 彼らは、消費の冷え込みをもたらした増税を反省していません。 この教育無償化は、もともとは民主党の政策でした。 自民党は民主党政権の教育無償化を「バラマキだ」と批判していたのです。 (※本稿作成時点では、まだ自民党HPに「高校授業料無償化の問題点!」〔2010年3月16日〕という記事が残っている) しかし、自民党は、政権をとったら票稼ぎのために路線を変えました。 自民党の公約の中には、民主党と同じようなバラマキ政策が入り込んでいます。 そうした政策が実行されたら、我々は、10%への消費増税のあとにも、また「財源不足」だという話を聞かされるはずです。 そして、もう一度、「福祉のために増税」という論理が繰り返されるのです。 ◆自民党は、結党時に「福祉国家の実現」を宣言 結局、自民党も公明党も、立憲民主党も、甘い言葉で福祉を語り、国民に重税を強いる政党です。 有権者の皆様の中には「自民党は保守政党だから、バラマキ政党とは違う」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、歴史を振り返ると、自民党も、立党以来、「福祉国家の建設」を目指してきました。 結党した時(1955年)に書かれた文書(『党の性格』)には「社会保障政策を強力に実施し、完全雇用と福祉国家の実現をはかる」と書かれています。 もともと、自民党は「大きな政府」を目指していたのです。 (つづく) 「日本を再び偉大にする」ための法人税減税 2019.04.09 「日本を再び偉大にする」ための法人税減税 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆法人税減税に消極的な自民党 本年は消費税の引き上げが注目されていますが、それ以外にも重要な税金があります。 その一つが法人税です。 前回の選挙で自民党は消費税増税を掲げましたが、公約では法人税減税を取り上げませんでした。 なぜかというと、当時、消費税増税に反対した野党が、大企業に増税をすべきだと訴えていたからです。 ここで自民党が法人税を減税したら、「庶民に増税、企業に減税」となるので、17年の選挙では、この話題は取り上げられませんでした。 ただ、その後、アメリカで法人税が減税されたので、安倍政権も対策を打ち出しました。 わずか3年間に限って「大企業は前年度比で3%、中小企業は1.5%の賃上げを条件にして減税する。IoTへの投資なども税から割引く」と決めたのです。 しかし、範囲が狭く、期間も短いので、「法人税が安くなった」とまでは言えません。 自民党は、2014年や16年の選挙で「法人税の実効税率を2割台にする」と公約したのですが、これに関して、現在は沈黙を守っています。 どうやら、最近は「29.74%」の実効税率でよいことになったらしいのです。 ◆法人税の減税が必要な理由とは しかし、法人税の減税は必要です。 それは、国をまたいだ企業の熾烈な競争が続いているからです。 例えば、シャープは2012年に経営危機に陥りましたが、当時、シャープとサムスン電子を比べると、日韓の税率差がサムスン電子に約1600億円の余裕資金を生み出していたと見積もられています(経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28)。 1600億円は、シャープの亀山第二工場の投資額(約1500億円)を超える規模です。 こうした税率差が企業の重荷になり、法人税が高すぎると企業が海外流出したり、外国企業がやってこなくなったりします。 そのため、法人税の税率は、諸外国の動向も見ながら決めなければなりません。 ◆主要国が減税にかじを切った 現在、主要国では法人税が下がっています。 アメリカでは、2018年から連邦が集める法人税が35%から21%に下がりました。 この上に各州の税率を足した平均税率は25.7%になります。 さらに、中国は25%の法人税に対して、控除の拡大や中小企業への優遇税制などの改革を行いました。 2020年までにイギリスの税率は19%から17%になり、フランスは33%から25%まで減税する予定です。 しかし、日本は約30%の税率のままなのです。 (※米国の平均値は米シンクタンク「TAX FOUNDATION」の記事を参照) ◆世界の法人税率の平均は23~24%程度 KPMGコンサルティング社の調査によれば、世界の法人税率の平均は23.8%です。 先進国が数多い「OECD」の平均は23.4%。 EU平均、アジア平均はどちらも約21%です。 中国以外のアジアの国々を見ると、韓国とインドネシアは25%、マレーシアは24%。 タイやベトナム、台湾は20%で、シンガポールは17%、香港は16.5%でした。 このあたりの国とは1割前後の税率差があります。 ※本節の税率はKPMGの「Corporate tax rates table」を参照。正確には、世界平均は23.79%、OECD平均は23.38%、EU平均は21.16%、アジア平均は21.09%。 ◆「世界で減税、日本も遅れて減税」でよいのか 安倍政権も、一応、法人税(実効税率)を35%から30%に下げました(34.62%⇒29.74%)。 しかし、減税幅は米国に比べると小さいのは事実です。 2000年以降、すでに減税した国々との税率差は、大きく変わらないでしょう。 OECDによれば、中央政府と地方政府を併せた税率の平均値は、2000年に28.6%でしたが、2018年には21.4%まで下がっているからです。 2010年代に日本も法人税を下げましたが、これに対して、評論家の大前研一氏は、「法人税率を戦略的に考える場合、外国企業の誘致を目的にするなら10%台、企業に国内から逃げられないことを目的にするなら20%台半ば」にすべきだと述べていました。 「ライバル国が10%台に引き下げて『我が国にいらっしゃい』と言っているのに、『30%まで下げました。ぜひ日本へ』と叫んでも誰も振り向かない」(大前氏)からです。 アメリカのムニューチン財務長官は、減税法案が成立したあと、「我々は法人税を引き下げる。それで多数の雇用が米国へ戻ることになる」とも述べていました。 こうした大胆な決断がなければ、企業経営者の心は動きません。 ◆レーガン減税で「再び偉大になった」アメリカ 「減税後」の税収減を恐れる方も多いのですが、米国では、レーガン政権の大減税がその後の繁栄の礎となっています。 当時、所得税だけでなく、法人税も減税が行われ、1986年の改革で税率は46%から34%に下がりました。 法人税は12%も下がりましたが、その後、米国経済は復活。 「米国を再び偉大にする」というトランプ大統領のスローガンは、レーガンの先例にならったものです。 大胆な減税で繁栄の礎をつくることが大事です。 そのために、幸福実現党は「1割台まで」という大胆な法人税減税を掲げています。 ◆米中よりも高い法人税で企業を競争させるのか 日本より市場規模の大きな米国と中国が2割台の税率なのに、我が国は約30%の税率を守り、高飛車に構えています。 しかし、今の日本経済に、米国よりも高い税率でも海外企業が集まるほどの魅力があるのでしょうか。 また、中国よりも高い税率で競争に勝てるほど、日本企業に勢いがあるのでしょうか。 今、米中の企業群が世界最先端を目指して、熾烈な競争を開始しています。 その中で、日本が両国よりも高い税金の上にあぐらをかいているのは危険です。 そのため、幸福実現党は、法人税の実効税率を10%台まで下げるべきだと訴えています。 これは、安倍政権のような「最低限の減税」ではありません。 幸福実現党は「最大限の減税」で「日本を再び偉大にする」ことを目指してまいります。 【参考】 ・経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28 ・Kyle Pomerleau “The United States’ Corporate Income Tax Rate is Now More in Line with Those Levied by Other Major Nations”(TAX FOUNDATION2018,2,12) ・KPMGコンサルティング「Corporate tax rates table」 ・大前研一「選挙目当ての税制論議はもう止めてほしい」(日経BPネット 2010/4/6) ・日経電子版「[FT]米国の法人税制改革、トランプ流なら企業行動激変」2016/12/2)。 【釈量子の未来対談】マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密 2019.04.07 【釈量子の未来対談】マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密 幸福実現党 広報本部 3月13日、釈量子党首がパシフィック・アライアンス総研所長の渡瀬裕哉氏と「マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密」と題して対談をいたしました。 渡瀬氏は、トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍されています。 渡瀬氏は、今回の釈党首との対談直前までアメリカで開催されたCPAC(アメリカ保守政治行動会議)に参加しており、その中で2月末に行われた米朝首脳会談直後のトランプ大統領の演説を聞かれています。 CPACでのトランプ大統領の演説時間はそもそも50分でしたが冒頭で「みんなは原稿読むだろう。俺は一切読まないから」という話から始まって、ずっと漫談みたいな話を2時間もしたそうです。 米朝首脳会談の決裂直後とは思えない自信がトランプ大統領にはあるのかもしれません?そんなトランプ大統領の経済政策はすでに成果が出始めています。 今回は、最新のアメリカ事情を見てきた渡瀬氏と釈党首が日本のマスコミが報じないアメリカの最新事情を語っています。 下記よりご覧ください。 ◆未来対談vol.4 トランプ大統領がCPACで2時間演説!マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密 【対談】釈量子党首 ×渡瀬裕哉氏(パシフィック・アライアンス総研所長) https://info.hr-party.jp/2019/8616/ (主な内容) 【CPAC2019】 【好景気に沸くアメリカ経済の現状】 ◎トランプ政権の経済政策① 雇用の改善 ◎トランプ政権の経済政策② 規制の撤廃 ◎トランプ政権の経済政策③ 大幅な減税 【宇宙産業とAIについて】 【台湾との関係について】 【アメリカ政治と宗教】 ■過去の「未来対談」(動画) ◆未来対談vol.1 「首都直下型地震 日本の防災を考える」 釈量子 × 濱口和久 (防災教育推進協会常務理事) https://info.hr-party.jp/2018/7722/ ◆未来対談vol.2 「二宮尊徳精神が日本を変える」 釈量子 × 上田博和 (日本政策学校理事長) https://info.hr-party.jp/2018/7990/ ◆未来対談vol.3 「米中新冷戦、どうする日本!?」 釈量子 × 河添恵子 (ノンフィクション作家) (動画で観る) https://info.hr-party.jp/2019/8097/ 中小企業の知的財産権が守られる社会をつくる 2019.04.06 中小企業の知的財産権が守られる社会をつくる HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆日本商工会議所が「知財防衛」のための改革案を提言 3月20日に、日本商工会議所(日商)は、「知的財産政策に関する意見」と題した政府への要望を発表しました。 そこには、お金に余裕のない中小企業でも知財(知的財産)を守れるようにするための具体策が並べられています。 心血を注いで生んだ知財が侵害され、「泣き寝入り」になる企業を減らすために、日商が改革案をまとめたのです。 ◆なぜ、今、知財が大事なのか この意見書は、いくつかのデータをあげ、中小企業の特許取得を支援すべきだと訴えています。 ここ10年間で、世界では特許出願件数が1.7倍になっているのに、日本では2割ほど減りました。 一国の特許出願件数のなかで中小企業が占める割合で比較すると、今や日本は15%しかなく、26%のアメリカ、70%を超える中国とは大きな差がついています。 そうした現状を踏まえ、トランプ政権の知財防衛策などを例に取り、日本政府は競争力を強化するために、法制度を整えるべきだと主張しています。 ◆中小企業の特許取得が進まない理由 では、どうして中小企業の特許取得が進まないのでしょうか。 それは、手間がかかるわりには、知財を侵害した相手の罪を証明し、賠償金を得るのが難しいからです。 日商の意見書には、公開された特許を侵害するのは簡単だが、その証拠は加害者の手元にあるので、被害の証明が難しいとも書かれていました。 理屈上は知財侵害をめぐる刑事裁判もできるようにはなっています。 しかし、侵害の有無の判断が難しいため、実際は、なかなか起訴にまでは至りません。 結局、「労多くして益少なし」なので、特許を取らない中小企業も多いわけです。 ◆知財を侵害され、「泣き寝入り」に終わる例も多い しかし、それでも知財侵害は起きています。 日商の意見書はいくつかの例を上げていました。 ○1:他社の特許を侵害しながら、見つかったらライセンス交渉をすればよいと開き直る ○2:特許侵害が判明したあとにライセンス交渉を引き伸ばし、逃げ切りを図る ○3:中小企業の人材難や資金の乏しさを見越して、裁判の長期化を図り、訴えを取り下げさせる この場合、訴訟費が損害賠償額を上回ることが多いので、中小企業からは「泣き寝入りせざるをえないという声があがっている」とも指摘していました。 ◆知財侵害を訴えても、うまくいくとは限らない 実際、この種の訴訟で、被害者が救われるとは限りません。 日商の意見書には、驚くべき数字が並んでいました。 まず、知財が侵害された証拠を手に入れるのが難しいために、被害者(原告)の6割以上が敗訴しています。 さらに、侵害者が「特許は無効である」と言って対抗してきた場合、37%もの特許が無効にされています。 そのうえ、特許侵害の裁判は専門性が高いため、債権回収の訴訟の約3.5倍の弁護士費用がかかるのです。 これで特許取得が進むわけがありません。 ◆事態は深刻。日商の改革案とは 事態はきわめて深刻なので、日商は多くの改革案を出しています。 ○1:損害賠償額の引き上げ(「通常の特許実施料相当額」以上にする) ○2:諸外国を参考にして、知財侵害者に利益が残らないようにする ○3:証拠集めを支援し、見込み違いの提訴を防ぐために、訴訟提起前にも査証を導入する (※この査証で新たな証拠収集手続きが追加される) ○4:査証に一定の強制力を持たせ、証拠を侵害者に提出させる ○5:海外の侵害者を罪に問うことが難しいので、米中と同じく、懲罰的な賠償制度を導入する ○6:知財を持つ企業のために税制優遇制度や低金利の融資制度を設ける ○7:特許侵害者に訴訟費を負担させる そのほか、「大学や研究機関の特許を中小企業が事業化評価をする間、無償開放し、事業化後に有償契約に移行する制度を整備する」という案も出ていました。 ◆知財防衛なしに企業はメジャーになれない 知財は、企業が新たな発明を行い、ブランドを確立する際に、もっとも重要な価値の源です。 有名な例をあげれば、世界を制した「コカ・コーラ」も、1886年に一人の薬剤師(ジョン・S・ペンバートン博士)が1杯5セントの試作品を4軒の店(場所はアトランタ)で売り出したことから始まったのです。 その後、社業は別の経営者に委ねられましたが、コカコーラ社は、原液の作り方を秘密にし、それをブランドに高めることで、130年以上も巨大な価値を生み出してきました。 しかし、そうなるまでに「知的財産権」が守られなかったら、われわれは「コカ・コーラ」を違う名前で呼ばなければいけなくなったことでしょう。 ◆知的財産権が守られなければ、天才や熱意ある個人は出てこない 知的財産権を守ることは、一人の発明が広まり、地域から国家を超えて人を潤していく歴史を守る行為でもあります。 一つの商品の中には、それを発明した人の、熱い願いが宿っています。 それが守られなければ、多くの人の幸福を願って、発明に心血を注ぐ天才が出てこなくなるのです。 かつて豊田佐吉は、日本にも特許制度ができたことを知り、発明の道を志しました。 「これから何かお国のためになるものを考え出さねばならぬ」 彼はそう心に誓い、豊田式織機を発明しました。 その後、織機から自動車に本業が変わるわけですが、特許が守られなければ、トヨタ自動車の礎が築かれることもありませんでした。 ◆「知財」は経済の礎――これを守らなければ、国は衰退する 知財が守られなければ盗み放題なので、努力が報われない社会へと堕落していきます。 幸福実現党は「個人的自由、起業の自由、自由主義経済による繁栄に軸足を置いている」政党です。 我々は「国民がセルフ・ヘルプの精神を失った国家は必ず衰退していく」と信じています。 これが幸福実現党の創立者である大川隆法総裁が『政治の理想について』という著作で訴えた精神です。 その精神に則って、国民が心血を注いでつくった「知財」を守るべく、力を尽くしてまいります。 【参考】 ・日本商工会議所HP「知的財産政策に関する意見」 ・日本商工会議所HP「『知的財産政策に関する意見』について」 ・日本商工会議所HP「知財紛争処理システムの改革を」 ・日本コカコーラ株式会社HP「年表から見るコカ・コーラの歴史」 ・楫西光速(著)『豊田佐吉』吉川弘文館 ・大川隆法(著)『政治の理想について』幸福の科学出版 環境省「火力発電の新増設停止」の不条理 2019.04.04 環境省「火力発電の新増設停止」の不条理 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆原発再稼働が進まないのに、火力発電の「新増設を停止」? 3月28日、原田環境相は、大型火力発電の新設や増設を認めない方針を出しました。 これはパリ協定に基づく二酸化炭素(CO2)の排出削減目標を達成するための措置です。 環境省は、「経済的観点からの必要性しか明らかにされない」場合や、CO2削減の「目標達成の道筋」がはっきりしない場合には、新設や増設の計画を認めないことを決めたのです(「電力分野の低炭素化に向けて」)。 石炭火力は、最新鋭の設備でも、LNG火力の約2倍のCO2を出すので、特に、後者の条件を満たすのは困難です。 つまり、この方針が実施されれば、事実上、石炭火力は増やせなくなるのです。 ◆朝日新聞は、日本は「脱石炭」に後ろ向きだと批判するが・・・ このニュースを夕刊一面で報じた朝日新聞(3/28)は「温暖化に歯止めがかからないなか、世界的に『脱石炭』の動きが広がっており、後ろ向きな日本は批判を浴びている」と書き立てていました。 現在、約30の火力発電所を新増設する計画があることを指摘し、「世界が脱石炭にシフトするなか、日本の動きは国際的なトレンドに逆行している」と述べているのです。 まるで日本が悪いことをしたかのような書きぶりですが、それは本当に正しいのでしょうか。 ◆世界の石炭消費量は「大幅に増えた」あとに「減った」 まず、「脱石炭」についてですが、アジアやアフリカ、南米などでは石炭消費量が増えています。 世界のすべての国がヨーロッパのような「脱石炭」に賛成しているわけではありません。 なかでも、最大の消費量を抱える中国、経済が伸び盛りのインド、資源輸出国のオーストラリアやロシア、インドネシアなどは、石炭火力を放棄できません。 朝日新聞は「脱石炭」を「国際的なトレンド」と見ていますが、世界の石炭消費量は、2006年から16年までの間に2割増しになりました。 政府系団体の調査によれば、2006年の消費量は61億トン。16年の消費量は75億トンでした (※以下、石炭消費量の数値はJOGMEC〔石油天然ガス・金属鉱物資源機構〕の調査による。数値は四捨五入) 2013年の80億トンがピークで、16年までに5億トン減ったものの、10年単位で見ると増えた額のほうが大きいのです。 近年、減っていても、それ以前にもっと大きく増えていたわけです。 ◆石炭を最も消費しているのは中国 その次がインド 2016年の世界の石炭消費量のなかで、トップ3を占めるのは、中国(48%)、インド(12%)、米国(9%)です。 中国の消費量は36億トンです。10年で1.5倍に増えました(2006年:23億トン) インドは9億トン。こちらは10年で約2倍になっています(2006年:5億トン) この2国が、なんと世界の石炭消費の6割を占めています。 アメリカはオバマ政権の頃に石炭消費を減らしましたが、トランプ政権は、環境規制を緩和して石炭や石油産業のテコ入れを図っています。 資源国のオーストラリアやロシアも石炭消費を増やしています。 こうした国々は、「脱石炭」に熱心ではありません。 日本の石炭消費量は2016年で約2億トンです。 世界の2.5%の規模であり、10年前と比べても5%程度しか増えていません。 数字の規模で比べると、中国やインドのほうが、「脱石炭」に後ろ向きであることは明らかでしょう。 ◆CO2削減のために火力発電の進化を犠牲にするのか 2016年に日本が排出した二酸化炭素(CO2)は1年で11億トンです。 日本のCO2排出は4年連続で減っており、昨年11月には、国連環境計画(UNEP)の報告書でも、CO2削減が進んでいる国の一つに名をつらねていました。 CO2削減が進んでいる要因には、原発が再稼働して火力発電の割合が下がったことや再生可能エネルギーの活用などが挙げられています。 これは日本の火力発電の効率がよいことに助けられた数字だとも言えます。 しかし、それでもパリ協定の目標には届かないので、環境省は、火力発電所の新増設を抑える方針を出しました。 この方針には大きな問題があります。 それが実現すれば、「CO2排出の多い中国やインド、米国などは火力発電を強化できるのに、CO2を減らした日本はできない」というおかしな事態になるからです。 2016年のCO2排出量は、中国が91億トン、米国が48億トン、インドが21億トン、ロシアが14億トンでした。 中国やインドはGDP比のCO2削減目標ですから、GDPが伸びれば排出可能なCO2も増え、たいした削減をしなくても済んでいます。 それなのに、パリ条約を厳格に守った日本のほうが火力発電の自粛を強いられるわけです。 ◆日本の火力発電を友好国に国際展開すべき ここで考えるべきことは、パリ条約を「バカ正直」に守ることではありません。 日本の火力発電は、世界最高の熱効率を持ち、環境対応能力の高さで知られているわけですから、これをインドや米国、インドネシアなどの友好国に広め、国内企業を苦しめずに「世界のCO2を削減する」べきです。 経産省の審議会では「石炭火力の需要が増大するアジア諸国」などに「次世代技術」を広めれば、最大で「15億トン」のCO2削減効果が期待できるとの試算も出されています(「次世代火力発電に係る技術ロードマップ 中間とりまとめ(案)」2015年7月) (※資源エネルギー庁には「12億トン」との記述もあり) この方式であれば、日本の火力発電の国際展開に関して、他国に何ら非難される筋合いはありません。 CO2削減のために日本の火力発電の新設・増設を封印するのは愚の骨頂です。 また、原発を再稼働することで、火力発電への依存率を下げることも可能です。 後ろ向きな政策で、世界最高水準の火力発電の進化を止めるべきではありません。 世界の火力発電市場は「2040年にかけて石炭火力では約520兆円、LNG火力では約560兆円」の規模が見込まれています(「次世代火力発電に係る技術ロードマップ)。 この市場で日本のシェアを高め、火力発電の先進化によって、実益と国際貢献を両立させるべきなのです。 参考 ・環境省HP「電力分野の低炭素化に向けて ~新たな3つのアクション~」 ・朝日新聞夕刊(2019年3月28日付) ・新エネルギー・産業技術総合開発機構「平成21年度 海外炭開発高度化等調査『世界の石炭事情調査 -2009年度-』」 ・同上「「平成29年度 海外炭開発高度化等調査『世界の石炭事情調査 -2017年度-』」 ・マット・マクグラス(BBC環境担当編集委員)「世界のCO2総排出量、4年ぶりに増加=国連」(2018/11/28) ・共同通信「温室ガス排出量、4年連続減少 17年度、再生エネ導入と原発で」(2018/11/30) ・環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量(2016年)」 ・次世代火力発電の早期実現に向けた協議会「次世代火力発電に係る技術ロードマップ 中間とりまとめ(案)」(2015年7月) 「増税延期がリスク」だなんて、とんでもない。「お上の論理」にNOを! 2019.04.02 「増税延期がリスク」だなんて、とんでもない。「お上の論理」にNOを! HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆消費税は平成不況の象徴 平成の世も終わりが近づいていますが、政府は、1989年以降の経験から学ばず、消費税を10%に上げようとしています。 過去を振り返ると、1997年に消費税を5%に上げてから、税収が97年の水準(54兆円)を下回る時代が、2013年まで続いてきました。 そのころの税収は40兆円代の年が多く、政府が欲を出したことが裏目に出てしまいました。 税収は景気に連動するので、必ずしも「税率増=税収増」となるとは限らないのですが、消費者心理を読めない政府は、増税に踏み込んだのです。 ◆セブン&アイ元会長も消費増税による景気悪化を警告 こうした政府のあり方を、心ある経済人は大いに憂いています。 セブン&アイ元会長の鈴木敏文氏は『文芸春秋(2019年1月号)』にて、日銀が目標を達成できず、国民が老後不安を抱える中で消費税を上げるべきではないと警鐘を鳴らしました。 「消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけでなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」 そう訴え、日本人の消費マインドは「数字以上に敏感」なので、消費増税には税率の「数字以上」の影響力があると指摘していたのです。 1998年に北海道のイトーヨーカ堂で一律5%を値引いたら(消費税分還元セール)、売上高が前年比で165%になりました。 このセールは全国でも展開され、似たような結果となったことから、消費者は、必ずしも「2割引セール=2割売上増」という動き方はしないとも述べています。 ◆10%増税の「心理的効果」は無視できない 同じような見方をしている人に、京大大学院教授の藤井聡氏がいます。 この人は内閣官房参与でしたが、昨年末で辞め、本年からは「自由な立場」で消費増税の危険性に警鐘を鳴らしています。 藤井氏は、10%増税の「心理的な影響」にも注意を促していました。 「10%」という数字は3%や8%よりも区切りがよく、税負担を計算しやすくなるので、消費者が嫌でも負担を感じるようになるからです。 実際、藤井氏は、京都大学で男女100名ずつを対象に10%増税が起きた際の「買い控え」の度合いを測ったら、今回の増税には、2014年の増税の「1.4倍」の消費を減らす効果があることがわかったと述べています(藤井氏フェイスブックを参照)。 ◆今回の増税には、2%以上の「重税感」がある? そのほかにも、元東京都知事の舛添要一氏が、今回の増税の「重税感」は「2%増しどころではない」と述べていました。 税率が二ケタになり、計算が簡単な分だけ重税感が増すので、「1割という消費税率が消費を抑制する効果は、2%の税率との差以上になると考えたほうがよい」と警告していたのです。 舛添氏は「13750円」という複雑な値段を例にとり、8%だったら電卓でも使わなければ税金が1100円になるのはわからないが、10%だったらすぐに1375円だとわかるとも述べています。 たしかに、普段の買い物の時にいちいち消費者は電卓で計算しません。 そのため、簡単な税率になることで、今までに意識していなかった税額が「見える化」され、重税感を感じるわけです。 (※なお、舛添氏は必ずしも増税に反対ではなく、景気情勢の悪化のため他の選択肢もありえるという見方) ◆「消費者の目線」に立って見た経済観が大事 昔を振り返ると、増税判断を前にした2013年参院選の頃にも、鈴木敏文氏は、増税は「消費回復に水を差すことになる」と述べたことがありました。 当時も、マスコミに問われた時には、「増税は延期すべきだ」と訴えていたのです。 「消費税率を5%に引き上げた時や総額表示に切り替えられた時は、消費が落ち込み、その影響が長く続きました」(鈴木氏) 過去の小売の経験から、「日本人は税金に対してたいへん敏感」であることに注意を喚起していました。 やはり、大事なのは、お上の目線ではなく、こうした消費者目線に立った経済観なのではないでしょうか。 ◆安倍政権にとって「増税延期はリスク」? 幸福実現党も、立党以来、そうした消費者の目線に立って、増税の危険性を訴えてきました。 日経朝刊(2019/3/28)によれば、安倍首相は、3月19日に藤井聡氏と食事した時に「増税延期」を促されたのですが、結局、「予算を崩す方がリスクが大きい」と周囲にもらしていたそうです。 しかし、この「リスク」は、国民が負うリスクではありません。 「増税」という衆院選の公約を覆した際に「安倍政権が負うリスク」にすぎません。 幸福実現党は、「日本経済にリスクをもたらす」消費税増税に反対しているのです。 参考 ・鈴木敏文「『消費増税』猛反対された還元セール」(『文芸春秋』2019年1月号) ・セブン&アイホールディングスHP「[対談] イノベーションの視点 デフレ脱却へ いま、生活者の視点が日本経済のカギを握る」 ・舛添要一「消費税10%の重税感、今の2%増しどころではない」(JBプレス 2019/3/30) すべてを表示する « Previous 1 2