Home/ エネルギー政策 エネルギー政策 【COP28】「脱炭素」は姿を変えた共産主義 2024.01.13 https://youtu.be/2pgch65UnaI 幸福実現党党首 釈量子 ◆中東の産油国で開催されたCOP28 2023年11月30日から12月12日にかけて、UAE=アラブ首長国連邦のドバイ、エキスポシティで、気候変動対策を話し合うCOP28が開催されました。 しかし、10月7日のハマス攻撃、2022年からのウクライナ戦争と、世界中が温暖化防止よりエネルギー安全保障や経済を優先せざるを得なくなり、温暖化防止への熱意は失速してきています。 昨年ウクライナ戦争で石油価格が高騰したので、バイデン大統領はOPECに石油の増産を求めました。 ところが普段は「温暖化防止だ、石油を使うな」と言っておきながら、増産を頼み込むバイデン大統領への反発は大きく、ほとんど増産に応じませんでした。 逆に中国の仲介で、昨年3月にサウジとイランが外交を正常化するなど、存在感を見せてきました。 ◆「CO2温暖化説」はfake science 今回のCOP28の議長は、UAEスルタン・アル・ジャベル産業先端技術大臣ですが、11月21日のオンラインイベントで化石燃料の段階的廃止の必要性を問われ、「科学的根拠はない」などと発言をし、批判の声が上がりました。 「人為的CO2温暖化説」は「fake scienceだ」とする科学者は世界中いて、アメリカ人の過半数の人は、脱炭素などまったくの無駄だと考えています。 ◆グローバルストックテイク 今回の合意内容をみると、「パリ協定」の枠組みの下、「グローバルストックテイク」について初めての決定が採択され、特徴は二つあります。簡単に言うと、「トップダウン」と「ボトムアップ」です。 (1)トップダウン型 トップダウン型の「世界共通目標」として、「産業革命以降の気温上昇を2度以内に抑え、できれば1.5度努力する」などの枠組みを決めました。 (2)ボトムアップ型 その共通目標のもと、各国が、国情に合わせて「自主目標」を設定します。 日本は「2030年までに、13年度比45%削減、さらに長期的には2050年にカーボンニュートラルを達成する」という目標を立てています。 この「自主目標」を実効あらしめるため、進捗を定期的に評価する仕組みを「グローバル・ストックテイク」です。「ストックテイク」とは「棚卸」の意味です。 ただ、自主目標なので、各国の目標を積み上げると2030年には2010年比で14%増えてしまいます。 さらにCOP26のグラスゴーで「1.5度目標、2050年カーボンニュートラル」を強調したために、2030年までに2010年比で45%の削減、すごい勢いで減らさなくてはなりません。 コロナで経済活動が停滞した2020年で、わずか5.8%減なので、中国のように2030年をピークに、その後から減らします。またインドのように2030年以降も排出を増やす国もあるので、形骸化は確実です。 ◆合意内容 ではCOP28の合意内容を見てみます。 ・およそ10年間で化石燃料からの移行を加速 ・2030年までに世界の再エネ設備容量を3倍に ・途上国を支援する基金への先進国の一層の貢献を呼びかけ(ロス&ダメージ基金) 最大の争点は「化石燃料」の扱いです。これまで言及されてこなかった石炭や石油、ガスなどすべての「化石燃料からの脱却」を、産油国開催のCOPで打ち出せるかが焦点になっていました。 ところがやはり、各国の合意を取り付けることができませんでした。 当初は「化石燃料を削減する」という言葉でしたが、化石燃料の消費と生産の両方を削減する。最終的には、化石燃料からの移行を進め、この重要な10年間の行動を加速するという文言になりました。 また、「排出削減対策を講じない石炭火力」についても、当初案では、「段階的廃止(フェーズアウト)」という主張があったのですが、サウジアラビアや、ロシア、中国などの反対で「段階的削減に向けた取り組みを加速」という表現に「後退」しました。 「加速」について定義があるわけではないので「抜け道だらけ」と言えばその通りです。 ◆「化石燃料の脱却」は極めて非現実的 では、化石燃料から「脱却する」ことはできるのかというと、無理です。 現状、世界の一次エネルギー(加工されていないエネルギー)のうち、8割は化石燃料に依存しています。 温室効果ガス・世界最大の排出国である中国を筆頭に、多くの国がエネルギーの8割以上を化石燃料に依存しています。現代文明に必要な鉄鋼やプラスチック、農業で必要な肥料もCO2排出が前提です。 アメリカも「化石燃料を削減すべき」としていた欧州に同調していますが、「削減する」どころか、今、欧州向けの石油を増加させています。 米国エネルギー情報局(EIA)によると、ウクライナ紛争でロシア制裁の一環でロシア産石炭を輸入禁止措置が取られるようになってから、2022年8月~23年7月までの一年間、アメリカ産石炭の欧州への輸出が前年比22%増の3310万トンに拡大しています。 また、米国を含めた北米(米国、メキシコ、カナダ)で、LNG(液化天然ガス)の輸出基地建設が急拡大しています。2027年までにLNGの輸出能力は現状からほぼ倍増の見込みです。 二枚舌のアメリカのリーダーの姿を見れば、他国が真面目に取り組むわけもありません。 ◆中国を利するだけの再エネ目標 COP28の合意内容の2点目」は、「世界全体で再エネ設備容量を2030年までに3倍」という目標が掲げられました。 再エネの太陽光や風力発電の設備には、重要鉱物が必要ですが、これは、世界のシェアを占める中国への依存を強めることになります。 参考;山本隆三「COPで表明、再エネ3倍増 阻む重要鉱物の中国依存」 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32285 ◆途上国支援で環境マネーは国際規模に 3点目に、「ロス&ダメージに対応するための基金」を含む、途上国支援のための先進国の支援の大枠が決まったことです。 ロス(損失)というのは、気候関連災害で失われたもの、ダメージを受けた被害を指します。 基金は世界銀行のもとに設置し、立ち上げ経費は先進国が出すことなどが決まり、日本を含む各国から「いくら出します」という誓約(プレッジ)が行われました。 岸田文雄首相も、立ち上げ経費として1000万ドル(約15億円)の拠出を表明しています。これまでのところ、世界で合わせて7億9200万ドルが拠出されています。 「支援を受けるのは気候変動の影響が大きい脆弱な途上国」に絞り、「先進国を中心に、義務でなく、自主的な資金拠出を求める」などで合意しましたが、ウクライナ戦争でも「支援疲れ」が起き、自国の防衛に回す必要も高まっています。 となると、途上国は「支援がなくなれば削減しません」ということになるのは必定だと思います。 化石燃料を使って豊かになった先進国が、途上国の経済発展に必要な化石燃料の利用に反対して太陽と風力だけというのは、価値観の押し付けだ、エコ植民地主義だという反発も当然でしょう。 本質的には、先進国からお金を吸い上げようとする「共産主義」の発想で、今回支援のための金額は過去最大に増加しました。 しかし、これらの資金公約は、計画を実施し、途上国を支援するためにははるかに及びません。途上国を交えてこの目標を達成するには、金額ベースで、年間1000億ドルという資金が必要で、現実的ではありません。 ◆「脱・脱炭素」が必要 今回のCOP28で掲げられた目標は、実現すれば西側先進国の没落の引き金ともなるものばかりです。 岸田首相は「すでにおよそ20%を削減し、着実に進んでいる」と世界にアピールしましたが、その陰で、莫大な負担に苦しむ国民がいます。 民主党政権時代から始まった「再エネ全量買い取り制度」で太陽光発電を大量導入した結果、再エネ賦課金として、いま国民は毎年2.7兆円を電気料金に上乗せされています。 また日本政府は「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」と称して、官民合わせて今後10年間で150兆円を超える脱炭素投資を行うとしています。そのうち、20兆円規模は政府がGX移行債を発行して調達します。 その償還には「カーボン・プライシング」、つまり企業などの排出するCO2に価格をつけ、それによって排出者の行動を変化させるために導入する政策手法を導入すると見られます。 日本は大きな目標を掲げ、国際舞台で資金を拠出しているうちに、国内は倒産、失業の山になるでしぃう。 日本の全産業を停止させて化石燃料を全く使わなかったとしても、世界の排出量の5%しか現象せず、それで下がる気温は0.00002~0.00004度と言われます。 来年のアメリカ大統領選でトランプ大統領が復活すれば、「パリ協定」どころか「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」からの脱退の可能性もあると言われています。 日本も世界統一政府のような全体主義的な動きから距離を置き、無駄な脱炭素方針を根本的に見直しすべきです。 最適なエネルギー政策が必要ですし、また、それを支えるため、いまは無き「長銀」のような、強靭な金融を復活させなければなりません。 ◆原子力の設備容量を2050年までに3倍に 一つだけ良かったのは、COP28の合意文章で初めて、原子力への言及があったことです。 「世界全体で原子力の設備容量を2050年までに3倍にする」という宣言には、アメリカや日本をはじめ22か国が署名しました。 脱炭素に向けた電源の大量確保という文脈で出てきた文面とは言え、日本にとっても国益に適うものです。 経済同友会が、「縮・原発」から「活・原子力」に転換するという提言を出しましたが、政治の責任として、再稼働・新増設に向けて迅速に舵を切るべきです。 世界の海運・石油大手も紅海ルートを避け、喜望峰を迂回する航路へ切り替えています。石油の95%を中東に依存する日本は安穏としていられません。 最後に、幸福実現党の大川隆法総裁は、2009年の立党時に、次のように述べておられました。 「CO2の増加によって、地球が温暖化し、破滅的な最後になる」という考え方は、一種の終末論」と喝破され「そうなることはありえません。必ず地球の自動調整装置が働きます。CO2の増加と温暖化とは特別な因果関係はないのです。(『幸福維新』/第一部 夢のある国へ2009年7月3日「ミラクルの起こし方」) そして、「姿を変えたマルキシズムに気をつけなければいけない」と警鐘を鳴らされました。 いま、私たちの住む地球のシステム自体が人間の想像を超え、はるかに安定的であることも分かってきていますが、人間の浅知恵では計り知れない地球を創造された神の叡智に、思いを馳せる必要もあると思います。 GX(グリーン・トランスフォーメーション)で日本壊滅。中国だけが得する驚愕の中身とは?【後編】 2022.08.12 https://youtu.be/usNSYF8TXcU 幸福実現党党首 釈量子 ◆GXは壮大なムダ そもそも、政府が思い描いているような、官民合わせて150兆円の「GX投資」が行われたとしても、企業、あるいは国にとっては経済成長につながるどころか、マイナスの方が大きいことは間違いありません。 「グリーン」関連だけは一部儲かるところもあるかもしれませんが、全体的に見れば、企業の利益が増えるわけでもなければ、国の成長につながるわけでもありません。 むしろ、成長を大きく阻害する要因に他なりません。 企業にとっては、確かに、「GXに向けて動いている」あるいは、「環境を意識した投資、いわゆる『ESG投資』の『E』に配慮している」と言えば、今の日本なら、企業イメージの向上につながって、一時的に株価が吊り上がることもあるかもしれません。 しかし、実体のある「富」を生み出さなければ、株価もいずれは下がります。 むしろウクライナ危機以降、欧米金融機関では、ESG投資の見直しを始めており、安全保障を重視して化石燃料の価値を再評価しています。 現在、最も株価が上昇しているのは石油や天然ガスなどの銘柄です。 そもそも、「炭素税」を提唱した米国の経済学者W・ノードハウスは、排出量を実質ゼロにするために必要となるコストは全世界で50兆ドル以上となり、(排出量を実質ゼロにせず)地球の平均気温が3度上昇した時の経済損失の10倍以上になるとしています。 つまり、お金をかけてCO2排出を抑えたところで、経済的な意味は全くないのです。 グリーン投資は全く割に合わないグリーン投資を非効率な投資を、政府が主導することは、まさに「政府の失敗」です。 投資の是非は民間が自由に判断し、政府は脱炭素政策を撤廃して、こんな無駄なお金を使うことをやめ、もっと政府が「減量」しなければなりません。 ◆中国だけが得するGX さらに、GX戦略で想定している脱炭素実現に向けた「10年間で150兆円の投資」を見ると、かなりの資金が中国に流出する点にも言及しなければなりません。 現在、太陽光パネルの中でも最も安価であり、大量に普及しているのが「多結晶シリコン方式」です。 この心臓部にあたる多結晶シリコンの8割が中国製であり、さらにその半分が新疆ウイグル自治区で生産されているのです。全世界で見れば、同シリコンのウイグル産のシェアは約45%と推計されています。 電源の脱炭素化のうち「原子力」だけはサプライチェーンのほとんどが国内にあり、再稼働をするだけで国内の産業に莫大なお金が回り始め、海外からの燃料の輸入を削減できます。 その意味では、最も費用対効果の大きな経済政策は、原発再稼働と言えます。 しかし、太陽光や風力では、中国製品の輸入が進むだけであり、日本の産業にはほとんどお金が回りません。 こうして中国企業の太陽光や風力が国内で増えていき、中国製品が多く接続されることは、サイバー攻撃に対して弱い体制をつくることにもなり、経済安全保障上の重大な問題が懸念されます。 ◆GX で日本壊滅 このように見ましても、温暖化が仮に真実だとしても、グリーン投資やGX戦略は無駄だということがおわかり頂けたかと存じます。 そもそも、CO2により温暖化が進んでいるとする説は、科学的根拠がなく、フェイクとも考えられています。 「気候危機」を叫ぶ環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏が広告塔となって、世界は「脱炭素」一色に染まりました。 「我先に」とグリーン投資の拡大がブームとなっていますが、儲かるのは中国と関連するグローバル金融機関だけであり、日本とそのほかの西側先進諸国は、没落の道に歩むことになります。 そして特に、物価高の今、行うべきは、脱炭素ではなく、原発再稼働に他なりません。 しかし、ウクライナ危機以降、欧米先進国の議論もかなり変わり始めていて、「脱炭素」の看板は下ろせないものの、脱炭素一辺倒から安全保障重視に変わりつつあります。 また、投資家もグリーンだけでは儲けられなくなり、化石燃料株が見直されています。いまこのタイミングで「グリーン」に固執する日本の政府は、かなりの周回遅れとも言えます。 日本が奈落の底に落ちる前に、今こそ、軌道修正を図るべきではないでしょうか。 GX(グリーン・トランスフォーメーション)で日本壊滅。中国だけが得する驚愕の中身とは?【前編】 2022.08.11 https://youtu.be/usNSYF8TXcU 幸福実現党党首 釈量子 ◆GXとは何か 今回は、現在、政府が進めるGX(グリーン・トランスフォーメーション)戦略について考えて参ります。 7月27日、政府は岸田総理を議長とする「GX実行会議」の初会合を開き、GX実行推進担当大臣として、萩生田光一経済産業相を担当大臣に任命する人事も発表されました。 「GX」とは、2020年10月の臨時国会で「脱炭素社会の実現を目指す」と宣言して以降、市場で注目を集めるようになった言葉です。 2050年までの脱炭素、カーボンニュートラルの実現に向けて、温室効果ガスの排出につながる化石燃料などの使用を、再生可能エネルギーなどに転換することで、社会の変革を目指すと理解されています。 世界が脱炭素に向かう流れは避けられないと考え、政府や経団連は、CO2を減らすことを成長の機会ととらえて、官民連携で成長戦略の柱にしようとしています。 このGXは、岸田政権が目指す「新しい資本主義」の目玉政策にもなっています。 しかし、脱炭素には莫大なコストがかかります。政府が言うように産業構造を根底から作り変えれば、自動車はじめ製造業の方々は失業するのではないかと戦々恐々としています。 基幹産業を潰し、新たな雇用を生み出すことができるのかは切実な問題です。 ◆増税につながるGX 岸田政権は、GXの実現には、今後10年間で官民合わせて150兆円規模の投資が必要としています。これはGDPの3分の1弱くらいですので、かなり大規模になります。 政府は20兆円の資金を財源に、「GX経済移行債」、いわゆる「GX国債」を発行するとしています。 日本には既に1200兆円を超える政府の借金があるのに、さらに新しい国債を発行しようとしているわけです。 GX実行会議のメンバーの一人、経済学者・伊藤元重東大名誉教授は、民間企業の投資を引き出す「呼び水」として、「GX国債を発行した分は増税などで償還する仕組みをつくる」と述べています。 民間投資を引き出す「呼び水」というのは、官民連携の際に公的支出を正当化する、いわば政府の「決まり文句」です。 脱炭素が本当に経済成長につながるなら、公的支出などなくても、民間企業は勝手に投資してどんどん脱炭素が進むはずです。 しかし、おそらく脱炭素に130兆円もの民間投資を引き出すことは不可能で、「GX国債」を追加で発行して、政府債務がさらに膨らむことになりかねません。 当然、債務を返していくために、「GX実行会議」でも、いわゆる「大型炭素税」の導入も議論に上がっていました。 炭素税というのは、その名の通り、石炭・石油・天然ガス等の化石燃料にCO2の含有量に応じて払わされる税金です。 現在でも、「炭素税」に当たる税金は存在します。化石燃料に石油石炭税が課税されており、その中に炭素税に当たる「地球温暖化対策のための税」、いわゆる「温対税」が平成24年10月1日から導入されています。 1トンのCO2あたり289円、税収約2,600億円の規模です。このほかに、自動車の燃料には揮発油税が課税されています。課税規模は約2.1兆円です。 こうした「炭素税」に加え、化石燃料などに対する税金がさらに上積みになることになります。 このように課税が増えていけば、電気料金の高騰はもちろんのこと、鉄鋼、セメント、石油化学、自動車など、日本の製造業の全てにそのコストが重くのしかかり、日本の製造業を直撃します。 政府は「GX国債」を呼び水にして、経済成長を期待しているようですが、こんなに高コストでは日本の製造業は海外に移転してしまい雇用も失われ、日本経済は崩壊してしまいます。 インフレで生活必需品等、物価が高騰し、さらに生活がより厳しくなるのは避けられません。 (後編につづく) 電力危機列島ニッポン、原発再稼働が進まない3つの理由【後編】 2022.07.31 https://youtu.be/OgpA5T1Lk_I 幸福実現党党首 釈量子 ◆法的根拠なく停止している日本の原発 日本では福島原発事故後の2013年に、世界で最も厳しいとされる「新規制基準」が導入され、既存の原発にも遡って適用されました。 本来、法律というのは遡らない不遡及の原則があります。しかし、電力会社は、既存の原発も含め新規制基準に適合するよう、安全対策の工事を行い、原子力規制委員会の安全審査に合格しなければいけなくなりました。 本来は一度許認可を受けて運転されていた原発が、規制基準が見直されたから原発を止める必要はありませんでした。 しかし、止まった理由は、民主党政権のとき、当時の菅直人首相が浜岡原発を「依頼」お願いで止めたことが前例になってしまったからです。 またその後、原子力規制委員会の田中委員長が私的に書いたメモ、いわゆる「田中私案」も根拠になっていると言われています。 「依頼」も「メモ」も当然、法律的なものではないので、原発を止める筋合いはなかったのです。外国でも、このような不合理な運用をしている国はありません。 原発の規制基準は、今後も新しい知見を採り入れて見直される可能性が当然あるわけですが、規制基準が変わろうとも、原発を運転しながら対策工事や審査を行うのが、本来のあるべき姿です。 そもそも、「新規制基準」があまりに厳しすぎることや、審査が遅いことも、大きな問題です。 原発を再稼働させるためには、テロや大規模な自然災害が起きた場合に、十分対応できる施設を備えなければならなくなりました。 例えば津波に耐える防波壁、耐震補強、電源喪失時の予備電源の設置、消防車の高台へ常備され、とにかく過酷な事故に対応した安全対策が盛り込まれています。 これ自体は、過剰な設備とは言えないところもありますが、ただ、10万年前の断層など、過剰と思われる想定もあります。 ◆遅々として進まない原子力規制委員会の審査 もう一つが、原子力規制委員会の審査が、遅々として進まないことを挙げられます。 例えば、北海道電力は、2013年7月、「泊原発」の新規制基準への適合性審査を申請しましたが、申請からおよそ8年も経過しているにもかかわらず、原子力規制委員会は「適合性」があると認めていません。 理由としては、「約12~13万年前の断層」をあげています。そこには「耐震設計上重要な施設を設置できない」とする基準を原発に適用しています。 泊原発は、世界最高水準の安全対策を施しているにもかかわらず、非科学的な理由で適合性を認めず、冬の北海道を危機にさらしています。 ◆政府が本来やるべきこと 政府は今、「節電」を呼びかけており、プログラムに参加した家庭に2000円相当のポイント、中小企業に20万ポイントを付ける対策を検討しています。 しかし、政府の本来やるべき仕事は本来、経理課長レベルの「節電」の呼びかけではなく「発電」を押し進めることにほかなりません。 安全性が格段に高まっているにもかかわらず、原発が今止まってしまっているのは、新規制基準を元々ある原発に当てはめる際に稼働を停止するという、不合理な運用を行っていることに原因があります。 諸外国では規制基準を見直す場合であっても、原発を運転したままその変更を行うとの対応が取られてきました。やはり、審査は稼働中のまま行えば良いのです。 さらには、厳格すぎる新規制基準の見直しとともに、審査の迅速化を進めなければなりません。 資源のない日本は、ひとたび戦争が起きれば安全保障の環境が激変します。燃料が途絶えれば国民の生命と財産が脅かされます。 それが現実化しているのに、政府は危機感がなさすぎるのではないでしょうか。今は特に、ゼロリスクの追求ではなく、いかに安定的な電力供給を確保するかを考えなければなりません。 また、審査が長期化すれば莫大な経済的損失が発生し、国民の財産が損なわれるほか、電力の安定供給を阻害し、国民の生命、健康、わが国の安全保障を脅かすおそれもあります。政府は規制委員会に対し、審査を迅速にさせるべきです。 原子力エネルギーは国家の独立と安全保障の基盤です。政府は、法的根拠のないような縛りで止まっている原発に関しては、責任を持って、今ある既存の原発の速やかに再稼働させるべきです。 また、新増設や、建て替え、つまり廃炉する原発を新しいものに入れ替えることなどの方針を早期に明示することで、中長期的な観点からも電力の安定的な供給を図るべきと考えます。 電力危機列島ニッポン、原発再稼働が進まない3つの理由【前編】 2022.07.30 https://youtu.be/OgpA5T1Lk_I 幸福実現党党首 釈量子 ◆岸田首相が「原発稼働」方針 先日、岸田首相が記者会見において「原発最大9基を稼働する」という方針を発表しました。これで、国内消費電力の約1割の電力を確保するとしています。 当初は、ネットなどで「岸田さん、ようやく決意してくれた」という喜びの声があがり、東電の株価も上がったものの、すでに稼働する予定の原発について触れただけだということが分かりました。 電気事業連合会の池辺和弘会長は「(原発を)きちんと冬に運転できるように、工事や検査に取り組みなさいという叱咤激励だと思う」とは言うものの、岸田首相の「指示」だけでは、冬の電力逼迫解消にはつながらないのというのが実態です。 ◆予想される電力逼迫 昨今、石油、石炭、液化天然ガス(LNG)などの燃料の調達が世界的に厳しくなり、ウクライナ危機以降はエネルギー危機に拍車がかかっています。 特に、電力については、経済産業省が令和4年度の夏季・冬季について非常に厳しい需給の見通しを公表しています。 供給予備率(電力需要のピークに対し、供給力にどの程度の余裕があるかを示す指標) で、この冬については、令和5年1、2月には全国7エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できず、特に東京エリアでは1月で1.5%、2月で1.6%と、極めて厳しい見通しです。 真冬に電力が使えなければ、多くの生命が失われる事態にもなりかねません。(※1) (※1)電力需給対策について 2022年 6月30日 資源エネルギー庁 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/051_03_01.pdf ◆今後の予定を説明しただけの岸田首相の記者会見 そこで岸田首相の「エネルギーの安定供給のために、最大で9基の原発の稼働を経済産業相に指示した」という発表に期待が集まったわけです。 しかし、実態は、すでに、10基は原子力規制委員会の安全審査に合格し、地元の合意を経て、一度は再稼働を済ませています。 10基のうち、先日発電を再開した大飯原発4号機を含め、6基が運転中です。 運転中の九州電力・玄海原発4号機については、9月から来年2月まで定期検査で止まる予定です。 現在止まっている4基(関西電力・美浜原発3号機、高浜原発3,4号機、九州電力・玄海原発3号機)については、定期検査が済めば、7月下旬から順次、運転が再開される予定となっています。 つまり、岸田首相はもともと予定されていた9基の再稼働を「しっかりやれ」と指示したのであって、別の原発を新たに再稼働するという指示ではなかったのです。 尚、高浜原発3号機では、検査中にトラブルが発生して一時的な停止を余儀なくされています。 他の原発の運転についても、実際にスケジュール通り進むかどうかは不透明ですが、それでも、9基が同時に稼働するのは、来年1月下旬〜2月中旬のわずか一か月にも満たない期間となっています。 だから「最大」9基と言っているのです。 そして、ここからが大変大事な部分ですが、先般発表された電力の需給見通しは、この9基が再稼働することが織り込み済みになっているために、今回の首相の指示では、電気事業連合会の池辺会長も述べたとおり「安定供給の改善にはならない」ということが重要です。 例えば、柏崎刈羽原発が稼働すれば東電は5%以上の予備率にたしますのでこれ安定供給には届きます。しかし、これができないわけです。 ◆原発はなぜ再稼働できないのか 東日本大震災が起こる前の2010年には、全国に54基の原子力発電所があり、日本は米国、フランスに次ぐ世界第3位の原発大国でした。 そして今、「廃炉が決まっていない発電所だけで30基近く、3000万キロワット分くらいあるにもかかわらず、電気が足りないと言って喘いでいる国は他にない」と言われる状況です。 福島第一原発以外は設備が損壊しているわけではないため、技術的には運転継続が可能ですが、全国の原子力発電所の再稼働が遅々として進んでおりません。 ではなぜ原発は再稼働できないのでしょうか。 (後編につづく) 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【後編】 2022.06.10 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆安易に「強制力」を使いたがる政治の危険性 前編では、「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理について指摘してきしました。 結論を言えば、新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化は、企業活動の自由を圧迫する政策と言わざるをえません。 CO2削減を錦の御旗にして、環境確保条例で、住宅メーカーに負担を上乗せしたがっています。 「CO2を削減しなければ大変なことになる」という論理を使い、経済を権力で統制しようとしているのです。 危機を理由にして、経済統制を行いたがる傾向は、最近の中央政府の政策にもみられます。 5月27日、経産省は、本年の冬に電力需給が逼迫することを想定し、大規模停電の恐れが高まった時、大企業などに「電気使用制限」の発令を検討すると公表しました。 これは、違反した場合は罰金を伴います。 「需給がひっ迫したらしかたがない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、原発の再稼働を進めずに、企業に罰則つきの電力制限を課するのは筋が通りません。 2022年6月9日の時点で、稼働している原発は3基しかありません。 電力の供給が少なくなるというのなら、まず、発電能力を高めるのが先決です。 それをなさずに、足りない電力をいかに「分配」するかだけを考え、企業活動の自由を統制しようとするのは間違っています。 危機を理由に、経済統制を行う傾向は、コロナ対策の頃から強まってきました。 大川隆法党総裁は、2021年に「『緊急事態』と称して全体主義が入ってくるので、気をつけなければいけないところがあると思います」と警鐘を鳴らしました(『コロナ不況にどう立ち向かうか』)。 政府が強制力を駆使する前に、なすべきことがあります。 原発を十分に稼働させずに、無理に太陽光ばかりを推進したり、企業に罰則つきの電力制限を課したりするのは、筋が通りません。 幸福実現党は、こうした現状を打破してまいります。 原発を早く再稼働させ、日本経済が健全に発展する基盤をつくります。 不安定な太陽光発電に比べると、原発には安定電源としての強みがあります。 また、燃料費が高騰している今、火力発電だけに依存するのは望ましくありません。 バランスのとれた電源構成を再構築しなければいけないのです。 【参照】 大川隆法著『コロナ不況にどう立ち向かうか』幸福の科学出版 「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について~カーボンハーフの実現に向けた実効性ある制度のあり方について~(中間のまとめ)」(2022年5月 東京都環境審議会) 週刊ダイヤモンド「消費者と住宅メーカーが両損 『太陽光発電義務化』の無理筋」2022/6/4 東京新聞(WEB版)「太陽光パネル義務付け条例制定に向けて東京都がパブコメ開始 反対論に小池知事『おかしなことでない』」2022年5月27日 杉山大志「新築住宅への太陽光義務化 見送りは妥当か否か」(2021.8.2) キャノングローバル戦略研究所HP 原子力規制委員会HP「原子力発電所の現在の運転状況」 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【前編】 2022.06.09 http://hrp-newsfile.jp/2022/4284/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化」とは 東京都は、2030年までにCO2を2000年比で半分にする(50%減)という目標を掲げています。 それを実現するための政策の一つとして、全国に先んじて、新築の一戸建てやマンションへの太陽光の発電パネル設置を義務化する方針が出されました。 昨年12月、小池都知事が、新築住宅を対象にして、住宅メーカーに太陽光パネル設置を義務化する方針を打ち出しました。 その半年後、5月に開催された都の有識者検討会(東京都環境審議会)の答申案(※)にも、その内容が盛り込まれました。 ただ、この政策は、まだ、国レベルでは実施されていません。 昨年の6月、政府が公共建築物を新築する場合、原則として太陽光発電設備を設置する方針を決めましたが、負担の重さなどを理由に、新築住宅への設置義務化は見送られたのです。 しかし、この政策が、今後、国や他の自治体に取り入れられる可能性があるので、注意する必要があります。 (※本稿で参照する「答申案」の出典は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について~カーボンハーフの実現に向けた実効性ある制度のあり方について~(中間のまとめ)」) ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(1) パネルを付けた後にビルが建ったらどうする? 新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化といっても、一応、答申案では「隣接建物による日陰等」と例をあげ、「設置に不向きな場合を考慮する」としています。 (※日当たりが悪い地域では、代替案として他の再生可能エネルギーの設置や再エネ電力購入などを講じる方針) そのうえで、答申案は、85%の住宅がパネル設置に「適」しているとしています。 しかし、そこには、「条件付き」の「適」が含まれています。 (※これは「東京ソーラー屋根台帳」という小平市の「環境部 環境政策課」が作成したWEBマップの数字) 統計や地図上では可能に見えても、現地の「条件」を見たら無理だった、ということがありえるわけです。 太陽光パネルの設置前には、高層ビルの有無や、土地の高低差、近隣の建物の並び方、日射取得率などから発電のシミュレーションを行います。 また、日影規制や斜線制限(建築基準法)、高度地区の高さ制限(都市計画法)といった規制に合わせなければいけません。 一つ一つの案件を見ていかなければならないので、太陽光パネルの設置は、一律の「義務化」にそぐわないところがあります。 さらに言えば、家を建てた時は太陽光発電ができても、その後、近隣にビルが建てば、十分な発電量が確保できなくなります。 住宅が太陽光パネル設置に適していると判定されても、その状態が続くかどうかは限らないわけです。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(2) メーカーの負担増 住宅販売減 もう一つの問題は、太陽光パネルの費用(100万円程度)が住宅価格に上乗せされるということです。 木材などの資材の価格が上がる中で、さらに値上がりするのです。 また、半導体不足で太陽光パネルの供給が遅れているという問題もあります。 その中でパネル設置を義務化すれば、住宅の完成も遅れます。 住宅をつくる際にも、売る際にも、マイナスの影響が出ます。 「太陽光パネル設置の初期費用は、パネルの余剰電力売却金で回収できる」という意見もありますが、家の値段は高いので、消費者の中には「パネル代まで払えない」という人が出てきます。 また、「初期費用を住宅メーカーが負担し、後で、それをパネルの余剰電力売却金から回収する」という方法も考えられています。 しかし、この場合でも、回収が終わるまでの負担がメーカーにのしかかります。 政府が企業や消費者を補助金で支援したとしても、結局、そのお金の出どころは税金か国債です。 やはり、この政策が国民の負担増につながることは否定できません。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(3) 義務目標が未達の場合、事業者名を公表 答申案の内容から「義務化」の対象になるのは、大手住宅メーカー50社程度とみられています。 (「環境審議会がまとめた案では、一戸建てなど中小規模の建物では、建築主ではなく、中小規模の建物の供給量が都内で年間2万平方メートル以上の住宅メーカーに義務が課される。都内で年間に販売される新築住宅の5割強が対象になる見通しだ」東京新聞WEB版 2022年5月27日) 都は住宅メーカーなどに、環境対策についての報告を求め、基準未達成の場合は「都による指導、助言、指示、勧告、氏名公表などを通して、適正履行を促していくべきである」と書かれています。 従わなければ業者名を公表し、国民の前でさらし者にするという、恐怖政治的な手法が取り入れられているのです。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(4) ウィグル自治区でつくられた太陽光パネルでもおとがめなし? この政策は事業者にとっては負担増になるため、コストを切り詰めなければいけなくなります。 この政策が実施されれば、多くの企業が、中国製の安い太陽光パネルを使うことになりそうです。 しかし、キャノングローバル戦略研究所の杉山大志氏によれば、最も安い結晶シリコン方式の中国製パネルのうち、半分近くが新疆ウイグル自治区で生産されているそうです。 「いま最も安価で大量に普及しているのは結晶シリコン方式であり、世界における太陽光発電用結晶シリコンの80%は中国製である。そして、うち半分以上が新疆ウイグル自治区における生産であり、世界に占める新疆ウイグル自治区の生産量のシェアは実に45%に達する。」 (杉山大志「新築住宅への太陽光義務化 見送りは妥当か否か」(2021.8.2) キャノングローバル戦略研究所HP) しかし、都の有識者会議の答申書では、なぜか、この問題は取り上げられていませんでした。 (後編につづく) 脱炭素の嘘を斬る――最新研究からわかる海洋汚染の実態 2022.04.13 https://youtu.be/cjtRhJHYXuY 幸福実現党党首 釈量子 ◆プラスチックによる海洋汚染 前回は、4月から施行された「プラスチック新法」の問題点を指摘してきました。 ■違反者は50万円以下の罰金?――天下の悪法「プラスチック新法」 http://hrp-newsfile.jp/2022/4248/ 「プラスチック新法」ができた背景には、気候変動の問題に加え、プラスチックごみによる海洋汚染があります。 プラスチックによる海洋汚染は2000年代に入ってから劇的に増加し、最近では、5ミリ以下のマイクロプラスチックが魚などに蓄積されていることが問題視されています。 自然に分解されず長期にわたって残留する性質が高いプラスチックごみを廃絶するため、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が2004年に締結し、現在152か国が加盟しています。 ◆日本のサイクルの現状 日本が廃棄している国民1人当たりのプラスチックごみの量は世界第2位、年間32kgに相当します。(※国連環境計画UNEPの報告書2018年より) しかし、日本は「分別収集」においては世界トップクラスで、国連の報告書(2018年)でも「見習うべきだ」とされています。 日本のプラスチックリサイクル率はどうなっているかというと、84%(プラスチック循環利用協会 2016年)ですが、この数字をどう見るかです。 リサイクルの方法は大きく3種類あます。その84%の内訳は、ケミカルリサイクル(4%)、マテリアルリサイクル(23%)、サーマルリサイクル(約57%)です。 「ケミカルリサイクル」は、プラスチックを科学的に分解し油化して、再び製品に戻すリサイクル技術です。 ペットボトルをペットボトルにするなど、「水平リサイクル」とも呼ばれます。 「マテリアルリサイクル」は、プラスチックのまま熱で溶かして形を変える再利用ですが、品質は落ちます。 「サーマルリサイクル」は、燃やした時に発生する熱を回収してエネルギーとして利用することです。 つまり、ゴミを処理場で燃やすときに、一緒に発電し、熱をボイラーや温水プールに使っています。 ゴミ発電は、バイオマス発電に分類されるので、再生可能エネルギーの一種です。 2019年度の実績では、バイオマス発電の38%分、再生可能エネルギーの5%分で、それだけ、石炭や天然ガスの使用量が減ります。 ◆「燃やす」選択肢の妥当性 「脱炭素」に突っ走る欧州では、「サーマルリサイクル」を認めていないため、日本のリサイクル率は低い評価となります。 しかし、ケミカルリサイクルやマテリアルサイクルがサーマルリサイクルと比べ環境に優しいのかと言えば決してそうではありません。 理由は、これらのリサイクルは、リサイクルする間に大量の電気を使うからです。 特にマテリアルリサイクルは、エネルギーの削減効果はサーマルリサイクルの3分の1程度です。 ですから、資源が乏しい日本としては、EUの環境全体主義に負けることなく、主張すべきことは主張して、自国の利益を守るべきです。 サーマルリサイクルは日本の得意分野で、「焼却とエネルギー回収」は加盟国平均20%を超え71%でダントツの1位です。 日本は「燃やす」という選択肢を、断固、維持すべきです。 そもそも、海のプラゴミの大きな割合は漁のアミやブイによるものなので、陸の上でいくら分別しても効果は限定的です。 ◆新たな解決策 また定説として、プラスチックは高分子構造で水が浸み込みにくく、微生物が食物にできないので、分解するのが難しいとされてきました。 しかし、2021年10月、スウェーデン・チャルマース工科大学の研究チームは、世界各地で「プラスチックを分解する細菌」が出現していることを発表し、注目されています。 地中海や南太平洋など汚染が深刻な場所に、多くのプラスチック分解酵素が存在することがわかったということです。 他にも、プラスチックの海中での分解は、地上の百倍、千倍かかると言われてきましたが、世界で初めて日本の企業「カネカ」が海中でも分解できる素材を開発しました。 ◆日本の産業を守るために 経済全般に無理な目標を押しつけることで、産業そのものを破壊していくことは断固反対です。 脱炭素も、異論・反論を許さないという風潮がありますが、同様の現象が、ここにもあるように思います。 幸福実現党としては、こうした要らない法律は、今すぐ無くして、やらなくてよい仕事を「減量」していくべきだと考えます。 日本経済を「脱炭素地獄」に続き「脱プラ地獄」に突き落とさないためにも、冷静になって、プラスチックを目の敵にするような空気をつくってはなりません。 マスコミが報じない「電力需給危機」のなぜ【後編】 2022.03.31 https://youtu.be/2eYPf6vP6LY 幸福実現党党首 釈量子 ◆「電力自由化」の誤り エネルギー政策、第三の誤りは、「電力自由化」です。特に2016年からの小売全面自由化と、2020年からの発送電分離という制度があるからです。 当初、「電力自由化」というと、「電気料金が下がる」ともてはやされました。ところが、日本より前に電力自由化を行ったヨーロッパの国では、電気料金は上昇していました。 そして、日本でもやっぱり電気料金は上がっています。 前述の通り、太陽光発電のような再エネの不安定さをバックアップするために火力発電が必要です。 しかし、「電力自由化・発送電分離」で、発電する会社と送電する会社を分けています。 送電は、旧大手の電力の仕組みのままなので、発電する会社は、稼働率の低い火力などを、いざというときのために残しておくと経営悪化につながるため、切り捨てていきました。 「電力自由化・発送電分離」の前には、電力会社は供給義務を負っていました。 停電を極力させないように十分な設備を維持する一方、そのコストを長期的に回収できるよう、電気料金を国が規制する「総括原価方式」が取られてきました。 これは優れた考えで、「電力の安定供給」と「安い電気料金」の落としどころを探る制度であり、「電力の鬼」と言われた松永安左エ門氏の智慧ともいうべきものです。 ところが、電力自由化・発送電分離によって、発電会社は自由にフリーダムとなり、送電網だけを持つ会社が、供給義務を負うという図式になってしまったのです。 ◆エネルギー政策の見直しを さらに、「脱炭素」の大号令のもとで、太陽光発電などの再生可能エネルギーが急増し、これらを火力発電よりも優先して供給する措置が取られています。 政府が主導して進めた電力自由化・発送電分離で、電力の安定供給に誰も責任を負わなくなってしまったという、究極の「無責任体制」と言っても過言ではありません。 さらに、固定価格買取制度(FIT)で実質的な補助金をばらまき、「すねかじり」のような発電業者をたくさんつくってしまいました。 結局、現在の電力の安定供給を軽視している現状を改めない限り、同じような電力のひっ迫は繰り返し起こり、本当に大規模停電の事態が引き起こされてしまうと思います。 現在、世界は戦争状態であり、エネルギー価格も高止まりしていて、まさに緊急時の状況が続く見通しです。 現在の電力自由化・発送電分離を白紙に戻し、電力体制を見直していかなくてはなりません。 FITなどの実質的な補助金による再エネ優遇を見直し、安定供給を行うため、石炭火力の投資を進め、そして原子力発電を再稼働させるべきです。 ◆ロシアとの関係も重要 また、今回の停電危機とは直接的な関係はありませんが、危機に強い電力体制をつくるという意味では、ロシアとの関係も重要です。 台湾有事などで南シナ海のシーレーンが麻痺すれば、中東などからの石油や天然ガスは入ってこなくなってしまっています。 一方、ロシアのサハリンからの輸入であれば、そうした有事の際も、供給を続けることができます。価格面でもロシアからの撤退は大きな影響が出るようです。 長期契約しているサハリン2から撤退すれば、短期の購入契約しか方法はなくなり、世界のLNG争奪戦に巻き込まれて高いLNGしか買うことはできなくなります。 日経新聞の試算になりますが、サハリン2の撤退によって、21年のLNG輸入額は約4.3兆円が、約5.8兆円となり、35%増えると見積もられています。 日本エネルギー経済研究所の2017年の試算によれば、LNGの価格が10%上昇すると、電気代が2.2%上昇します。 35%であれば、電気代が7.7%上昇することになり、家計のダメージは大きなものとなります。 また安定した供給が止まってしまえば、国家存亡の危機です。政府には、今回の停電危機を単なる一時的な問題で終わらせることなく、抜本的な解決を求めます。 マスコミが報じない「電力需給危機」のなぜ【前編】 2022.03.30 https://youtu.be/2eYPf6vP6LY 幸福実現党党首 釈量子 ◆大停電の背景 3月22日、季節外れの大寒波の中、電力が足りなくなり、あわや200万~300万の大停電かという事態にまで発展しました。 規模でいうと、一時405万戸が停電した2011年の東日本大震災に次ぐ規模でしたが、多くの事業者や個人が節電の呼びかけに応え、今回は最悪の事態を回避できました。 今回の電力不足の直接的な原因は、3月16日の夜遅くに発生した福島県沖地震です。 一時は14基の火力発電所が停止し、新地火力発電所の出力100万kWや広野火力発電所6号機の出力60万kWなど合わせて647.9万kWの電力が失われました。 現場の懸命な作業で8基分が復旧しましたが、22日時点では、334.7万kW分が動かすことができませんでした。 これに加えて、横浜市の磯子火力発電所1,2号機が、地震とは関係のないトラブルで19、20日と相次いで停止しました。 これで失われた発電の供給力は、それぞれ60万kWで合計120万kWです。つまり、合わせて450万kW以上の火力発電が動かない状態となっていました。 電力は地域間で融通し合いますので、東北での停止は東京にも影響します。 こうした背景で、東京電力は、22日の8時から23時に累計で6000万kWhの節電を要請しました。これは想定された需要に対し、10%の節電になります。 ◆「原発再稼働」の声 そこで、「原発再稼働」の声が上がっているわけです。 今回、福島県沖地震は震度6強ですが、原子力発電所は、安全性の観点から地震に非常に強く設計され、東日本大震災以降、よりハイレベルの対策も取られるようになっています。 また、今回の地震のケースでは、新潟県の柏崎刈羽原発は無傷で動かすことができたはずです。柏崎刈羽原発には7つの発電設備があり、総出力は約821万kWです。 今回の東電の節電要請6000万kWhを、単純に8時から23時まで15時間で割れば、1時間あたり400万kWになります。 柏崎刈羽原発が動いていれば、そもそも節電要請自体が必要ありませんでした。 電力は、地域を分散させて、安定して供給できる多様な電源を持つことが大事です。 昨年21年の1月上旬にも大寒波による急激な電力需要の高まりで停電の危機がありました。また21年夏頃からは、エネルギー価格がじわじわと上昇し始めました。 このように、原発再稼働の機会は何度もありましたが政府は動きませんでした。 ◆欧米ではエネルギー政策を見直し 欧米では、ウクライナ危機を通じて、エネルギー政策を根本的に見直しています。 ベルギーも3月18日に2025年までに閉鎖する予定だった原子力発電所2基の稼働を10年間延長することを決めました。 ドイツは今回のウクライナ危機を受けても、結局、原発の復活は難しいという結論になったようです。 これは原発の技術者がいなくなってしまうなど、既に脱原発が後戻りできないレベルまで進んでしまったことが原因です。 ◆「脱原発」の誤り 日本は、今であれば、脱原発の見直しは間に合います。しかし、時間が経てば経つほど、技術の継承は難しくなります。 資源のない日本はこうした観点からも脱原発の撤回を進めるべきです。 しかし、政府は依然として原発の再稼働に及び腰で、3月22日の電力需給ひっ迫では、何とか大規模停電を回避できましたが、次も回避できる保証はどこにもありません。 ◆「太陽光発電」の誤り エネルギー政策の第二の誤りは、太陽光発電を爆造です。 太陽光発電の問題は、真冬のように暖房をつけたくなり、電気が必要になっているときに、雪が降ったり、曇ったりしていて発電量が大幅に下がります。 太陽光発電は、東電管内で仮にフル稼働すれば1600万kW分ですが、冬の最大電力需要は4500万から5000万kWで、3分の1弱くらいです。 実際に、22日の太陽光発電を「貢献度」で見ると、8時から18時から電力供給の全体の実績に対し、太陽光発電からの供給はわずか3%で、いざというときに頼りにならない発電でした。 状況によって発電量が大幅に変わる太陽光発電などの再エネ発電の不安定さをバックアップするためには火力発電が必要です。 今回の大停電は、火力発電が止まったので電力がひっ迫したわけです。 (後編につづく) すべてを表示する 1 2 3 … 17 Next »