Home/ 経済 経済 為替介入をどうみるか 2011.11.02 日本政府は10月30日、今年に入って3回目の為替介入を行いました(介入規模は7兆円規模と推定される。WSJを参照)。 安住淳財務相は、「納得いくまで介入する」と発言していることから、政府の「本気さ」を評価する向きもあります。腰の重い日銀も、5兆円規模の追加金融緩和を行い、一時は円・ドルレートは79円まで下がりました。 日本経済には、大企業から中小企業まで輸出企業が多いため、行き過ぎた円高は短期的に企業収益を圧迫します。業界にもよりますが、自動車業界では1円の円高が数十億円の損失につながるとも言われ、為替相場が高くなることに相当の神経を使っているのは事実です。震災や原発事故に加えて円高が追い打ちをかけている以上、為替介入をすることによって企業を救うという気持ちは十分に理解できます。 さて、今回の為替介入に関しては、世界の投資家や金融関係者はどのようにみているのでしょうか。残念ながら、今回のように日本単独で行う為替介入は評価されていません。為替介入は、よほどの経済的混乱が生じない限り行われません。実施するとしたら、協調介入が定石です。 その証拠に、日本政府の為替介入に関して、世界銀行のゼーリック総裁は、協調介入を原則とする旨を強調し、今回の日本政府の対応に「失望した」と批判しています。また、米財務省のブレイナード次官は、「為替相場は無秩序な状況と過度な変動がない場合においては、市場で決定するべきだ」と言及しており、やはり為替介入に否定的です。 アメリカのWSJでは、一部の投資家は為替介入の効果を疑問視して円を買戻したことと過去2回の為替介入後に円相場が円高に振れていることを指摘。介入の効果がいまいちだということは市場の動向をみてもわかります。 もう一点、為替介入に関する問題点を挙げておきましょう。 実は、為替介入は国民からの借金によって行われています。償還が半年以下の政府短期証券を発行して資金調達し、円を売ってドルを買うわけです。これが為替介入のメカニズムです。政府短期証券は、為替介入を繰り返したために60兆円も増え、171兆円を超えました。震災以降続いている円高を阻止するために、1年分の税収を超える借金をして為替介入をしていたのですが、効果は全く現れずに円高が継続しました。 金融緩和を怠るとすぐに為替は元の水準に戻るか一層円高が進みかねません。そうなれば、購入したドル建て債券は目減りしてしまいます。だからこそ、金融緩和をして円が高くならないようにする必要があるのです。為替相場が下落したことをもって安心してはいけないのです。 為替介入の効果が限定的である以上、根本原因であるデフレの脱却をしないかぎり、同じことが起こり続けます。政府が本当に円高対策をしたいのなら、日銀を動かして金融緩和を迫ることが先決です。(文責:中野雄太) 復興財源――なぜ、復興債の日銀直接引受か 2011.10.12 幸福実現党は、東日本大震災の復興には、増税ではなく復興債の発行と日銀の直接引受を主張しています。理由は、迅速に財源が確保できることにつきるでしょう。そして、早急に復興支援対策として財政出動ができることが主な理由です。 確かに、野放図に直接引き受けを行えば、インフレとなる可能性はありますが、現時点は被災地の被害総額とデフレギャップを加味した金額は20兆円強だと推計されています。裏を返せば、20兆円程度までならインフレは起きないことを意味しているのです。 また、同じような金融政策に、日銀による国債買い切りオペというのがあります。言葉は難しいですが、既に発行されている国債を金融機関などから購入することを指します。つまり、既発国債の購入を買い切りオペ、新発国債の購入を直接引受と言って区別しています。 両者の違いをもう一点付け加えるとすれば、買い切りオペは日銀が金融市場から調達するのに対して、直接引受は財政法5条の例外規定によって政府が日銀に指示ができます。買い切りオペの場合は、政府が日銀に指示できるものではない点、実効性は不明だと言えるでしょう。 しかしながら、日銀はどちらの政策にも否定的な見解を示しており、このままでは政府と財務省主導の増税路線が先鋭化してしまいます。 政府は、復興対策として増税を検討しています。特別会計から財源を確保して、できる限り増税額を圧縮しようとする努力は見られますが、デフレと震災不況が蔓延しており日本経済で増税をかけるのはあまりにもリスクが高すぎます。 加えて、増税の場合は税収が確定するのが来年度以降となりますので、それだけ復興財源が確保するのが遅くなることを意味します。被災地の復興を考慮すれば、国債を発行して日銀に直接引受をしてもらい、一日も早く財源を確保するのが第一の任務です。 「復興には数年を要するので、増税によって獲得した財源を来年度以降に使うからよいではないか」というご意見もありますが、この議論の弱点は、増税による経済へのマイナス効果を過小評価していることです。 消費税のような間接税(税金を支払う主体と納める主体が違うケース)であろうが、所得税や法人税のような直接税(税金の支払いと納める主体が一致しているケース)であろうが、増税によって国民の可処分所得(税引き後の所得のこと)は確実に減ります。 実際、1990年以降の日本経済では、増税によって税収が増えているとは言えません。かえって、トータルの税収は減っています。 一番顕著な例は、1997年です。消費税、特別減税の廃止、医療費上昇などの総額は9兆円にも上り、97年までは2%台の成長率だったものが、98年にはマイナス1.9%まで低下しました。一般税収もわずか1年で54兆円から49兆円強まで落ち込んでいます。 97年には、東アジアで通貨危機や山一證券の破綻といった金融危機も起こったことも強く影響しているのは言うまでもありません。 このように、90年の「バブル崩壊」から少しづつ回復していた日本経済が、増税路線によって見事にマイナス成長となった事例を忘れるべきではありません。同じ過ちをわざわざ繰り返す必要などないのです(実際、橋本首相は当時の政策が誤りであったことを国民に謝罪した)。 当時は、まだ成長段階でしたが、現在は震災と原発事故による経済的損失も加わっています。財政法5条には、「特別な事由」がある限り、国会の議決を経た範囲内で日銀の直接引受を行うことができます。 「千年に一度」と言われる未曾有の震災と言われている以上、日銀の直接引受を行う正当性は法的にも担保されているのです。 財政学の原則でも、人災の被害を最小化するには、増税ではなく国債の発行です。原理原則に即して考えても、増税が復興支援になるとは言えないのです。 以上、幸福実現党が復興増税ではなく東日本復興債(破壊されたインフラ整備をする以上、建設国債が妥当)の発行と日銀直接引受を主張する理由を述べました。 日銀の直接引受と聞いただけで拒否反応を起こすような論調が目立ちますが、私たち幸福実現党は、理論と関連法案、経済史などを考慮して日銀直接引受を主張しています。 震災復興という特殊な環境下での政策ですので、永久に実施するものではありません。今、必要なのは「非常事態の経済学」なのです。日銀の直接引受は、その最たるものなのです。(文責・中野雄太) 【追悼】未来を創ったスティーブ・ジョブズ氏――企業家が元気になれる日本に! 2011.10.10 10月5日に亡くなられた米アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏の葬儀が7日に行われました。この場をお借りして、尊敬するスティーブ・ジョブズ氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 まだまだ働き盛りの年齢であったジョブス氏の死は世界中から惜しまれています。日本でもアップル社の熱狂的なファンは数多く、都内のアップルストア店頭には、ジョブズ氏の死を惜しむたくさんの花束が置かれていました。 ジョブズ氏は、自らが創業したアップル社から解雇された苦い挫折の経験を持ちながらも、再起して今日のアップルを築きあげることができた理由として、以下のように語っています。 「人生には頭をレンガで殴られる時があります。しかし信念を失わないこと。私がここまで続けてこられたのは、自分がやってきたことを愛しているからということに他なりません」 ※05年の米スタンフォード大学卒業式で行われたスティーブ・ジョブズ氏のスピーチより ⇒http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=qQDBaTIjY3s ジョブズ氏は「宇宙に衝撃を与えることが僕らの仕事だ」と語っていました。ジョブズ氏は、ITを通じて世界の人々に利便性、快適性を提供し、それが新たな文化となる程の大変革をもたらしました。 アップル社発展の原動力には、ガレージ発の企業が世界を変えようとする、一種の「狂気」があり、その「狂気」を受け容れる器がアメリカのシリコンバレーにあったからです。 シリコンバレーからはアップルのように、「ガレージ創業」から未来の産業を担う多くのIT企業群が育っています。最近ではHewlett Packard(HP)やGoogleなどが有名です。 一つの企業の発展は数千、数万、時には数十万の雇用を生み出し、国をも潤します。それが国民生活の安定をもたらし、米国経済の基幹産業ともなっています。 そこで生み出された企業価値は、世界の人々まで魅了し、大きな文化となって波及し、さらには世界の平和にも貢献していくことがあります。 一方、日本では民主党政権になって、ますます日本経済の見通しは暗くなり、起業家精神が大幅に低下しています。実際、国内の上場社数は3年連続で減少。2010年末時点で東京や大阪など5つの証券取引所に上場する企業数は3,646社で、前年より93社減っています。(日経新聞2011年1月20日) 野田政権は真っ先に大増税を打ち出していますが、まだ具体的な経済成長戦略や雇用政策は打ち出されていません。 「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と言った菅前首相が行ったのは、雇用を行った企業への補助金のバラマキでした。自由な環境の中で、厳しい切磋琢磨がなされてこそ、世界に飛翔する企業が誕生します。優しいバラマキ政策では企業は決して育ちません。 本来は、減税や規制緩和、金融緩和を通じて、企業努力を発揮しやすい経済環境を整備したり、政府が先頭に立って、莫大な投資が必要となる未来産業の創出を行わなければ、中長期的な経済成長は不可能です。 特に、この不況下での増税はナンセンスです。消費者マインドを冷え込ませ、より一層、企業の収益を圧迫するからです。 日本企業を元気にするためには、世界一高い法人税率を下げ、法人税は現行の半分程度に減税すべきです。現在のように世界一高い税率が続けば、国内の企業家は海外に逃亡し、海外の企業も日本への投資を回避します。 民主党政権は、そうした戦略的な経済成長戦略に欠けているばかりか、国家としての経済成長の努力を怠り、税収が足りないからと言って、国民や企業から増税して私有財産を巻き上げようとしています。 日本経済にとって、民主党政権の存在は「百害あって一利なし」です。 今、必要な政策は、企業家の活躍の後押しして景気を良くし、国民を豊かにしていくことです。景気が良くなれば、それに伴って税収が自然に増えるのは自明の理です。(文責・佐々木勝浩) ウォール街デモ報道――時代遅れの「マルクスの亡霊」に取り憑かれた朝日社説 2011.10.09 10月9日(日)の朝日新聞社説の「ウォール街デモ『99%』を政治の力に」では「ニューヨーク・ウオール街デモが勢いを増している」と強調しています。 社説では「『金持ちは1%、われわれは99%』『富める者に税金を、貧しい者に食べ物を』――失業者、銀行の貸し渋りで経営難の中小事業者、学資ローンが返せないなど、リーマン・ショック後の不況で生活が暗転したままの人々が声を上げた」と記述。 「国民の間で格差が広がっている。日本や欧州にも共通する構図だ」と述べ、日本も同様の問題があると指摘しています。 そして、「優勝劣敗を旨とする茶会の極端な主張には疑問がある」と、保守層を基盤とした「小さな政府」「増税反対」を主張するティーパーティーを批判しています。 これは「不満を煽れば売り上げが伸びる」というマスコミの習性があぶり出された社説であり、資本主義の行き詰まりを起こし、自由主義の時代を終わらせたい左翼思想家と、政権維持を図りたい民主党の安保闘争世代の願いを代弁した朝日新聞らしい社説です。 1990年代に冷戦の終結で、自由主義陣営が勝利しました。しかし、日本では左翼系マスコミが滅亡せず、不況の中で、「蟹工船ブーム」など「格差批判」を展開して息を吹き返し、「マルクスの亡霊」に取り憑かれた時代遅れの種族が生き延びています。 ウォール街のデモの根本には、オバマ大統領自身の「考え方」自体にも原因があります。 オバマ大統領は同デモに理解を示し、大企業批判を行い、金融規制を進めようとしていますが、「アメリカン・ドリーム的な考え方は間違いだ」「ウォール街で一攫千金の儲け方は間違いだ」との思想があり、金融界や経済的富裕者に対して、あまり良い感情を持っていません。 ウォールストリートのデモは、オバマ大統領の潜在意識の投影でもあります。 しかし、アメリカが世界最強なのは「金融」「軍事」ですが、オバマ大統領は世界最強の部分に否定的です。 もはや約半数の米国民が「アメリカン・ドリーム」を信じていないと報道されていますが、「自由の大国」アメリカには是非、繁栄を求め、人々が「アメリカンドリーム」を信じ、富める者を祝福できる世界一の誇り、プライドを失ってほしくはありません。 ウォール街のデモは、失業やリストラ、経営難などの解消を求めていますが、これは「貧しさの平等」をもたらす「格差是正」政策では解決せず、「米国経済の力強い復活」こそ必要なのです。 リーマン・ショック後、信用バブルが弾けた米国は今、バブル崩壊後の日本の「失われた10年」を後追いしているだけのことです。 米国も欧州も、深い経済的混迷の中にあって、今、世界は日本の力を求めています。 「坂の上の雲」を目指して、戦後の焼け野原から世界の大国になった日本が、M9.0の大震災を乗り越えられないはずはありません。 不況や震災は過去何度も起きましたが、日本の先人の方々は、汗を流し、知恵を振り絞って幾度も試練を乗り越えました。 問題は、アメリカやヨーロッパが、もはや教師ではなく、手本ではなくなったということです。 日本こそ、新たな世界のモデル国家です。なぜなら、中国の脅威に怯えるアジア諸国も、「アラブの春」で民主化を実現したい中東諸国も、日本の力に大きな期待をかけています。 世界の希望のために、日本は自ら道を切り拓き、「世界のリーダー」とならなくてはなりません! そのためには、「左翼貧乏神」を信奉する左翼マスコミの扇動に流されてはなりません。 朝日の社説を見れば分かりますが、旧ソ連が崩壊した時点で引退すべき人々がいまだ中核にいて世論を作り出し、小説「蟹工船」に描かれる貧しさ、年越し村の配給の風景、泥沼にまみれたドジョウを愛する民主党政権と一体となって、日本に「貧乏神」を呼び込んでいるのです。 こんな「時代の逆流現象」と闘いましょう!いまさらマルクスの亡霊に取り憑かれてはなりません! 時代の川は下って、一路、大海原へと向かっています! 世界は日本の力を待っています!「未来は明るい、日本の繁栄は絶対に揺るがない」と信じ、「日本再建」を果たしてまいりましょう!(文責・竜の口法子) 2012年、中国経済バブル崩壊の危機 2011.09.29 近年の中国経済の膨張は、バブル絶頂期の日本と極めて酷似しており、いつ中国経済が崩壊するか分からない状態にあります。 北京オフィスビルの空室率50%に達しているとの報道もありますが、マネーゲームに狂奔し、実体経済との乖離が大きくなればなるほど、急激にバブルがはじけることは歴史の必然です。 中国は、国内のバブル崩壊の不安を払拭させるため、中国紙『証券日報』を通じて「不動産バブル崩壊説」に反論し、「中国は日本のように不動産バブルが弾ける可能性は極めて少ない」と弁明しています。(2010年3月30日レコードチャイナより) しかし、今年に入って米国の『ニューヨークタイムス』が「中国のインフレが世界経済の脅威をもたらしつつある」と報じ、また米有力雑誌『アトランティック』は特集「中国不動産バブル」を組んでいます。 中国政府のバブル崩壊の否定の陰で、中国経済のバブル崩壊の兆しは、着実に始まっています。 その証拠に、中国銀行の周小川行長(日銀総裁に相当)は2010年10月22日、経済関係のフォーラムで「中国経済はインフレのリスクが高まっており、我々は、厳しい局面に直面している」(2010年11月4日産経)と重大発言を行っています。 2007年に日本帰化し、中国問題に取り組んでいる石平(せきへい)氏は、「過去30年、中国の高度成長は通貨の過剰供給(この31年間で供給されたおカネの量は702倍)によって支えられてきた。その結果、今や中国では深刻なインフレ、物価の暴騰が起きている。 これをこのまま放置することは出来ず、いずれ中国はインフレ対策として、金融引き締めに方向転換せざるを得ない。それによって引き起こされるのが、不動産バブルの崩壊。中国は社会的大混乱を避けられない」と指摘しています。 中国の経済バブル崩壊は、中国経済との結びつきの強い日本経済にも大きな及ぼすことは間違いありません。 しかし、もう一つ重要なことは、「バブル崩壊」がもたらす人民の不満や憤りの矛先が、中国政府によって意図的に「反日運動」に転嫁される可能性があることです。 中国政府は、これまでも人民の不満が自分たちに及ばないよう、人民の関心を「反日運動」に向けさせ、人民のガス抜きをして来ました。 今後、尖閣諸島などを材料にして反日感情に火をつけ、人民の不満を日本へ向けていく情報操作を行ってくることは十分予測されます。 しかし、野田首相は、中国から聞かれてもいないにも関わらず、「靖国参拝」を自ら否定し、中国を刺激しない外交姿勢を示すなど、ひたすら中国におもねる低姿勢を貫いています。 このままでは、日本はドジョウ総理によって「大増税不況」のみならず、外交・国防面においても、中国の強権的な強行外交に揺さぶられ、深い水底の泥沼に引きずり込まれてしまいます。 各国の利害が衝突する国際社会で相手国におもねっていては足元を見られるだけです。特に、中国に対しては毅然とした態度で外交交渉を行い、その矜持を示すことができなければ首相としては失格です。(文責・やない筆勝) 中小企業対策 2011.09.20 政府が第3次補正予算をつかって積極的な中小企業対策に乗り出すことを発表しました。 ただ、支援策が低利融資以外には目立った政策がないことが懸念材料です。なぜなら、既に日本ではゼロ金利近傍にあり、これ以上の低利融資には目立った効果は期待できないからです。 また、海外展開する中小企業をどのように支援していくのか。税制上の優遇を取り入れるのかも未定です。 野田首相は、東京都大田区の中小企業を視察した後に支援策を打ち出しました。現場の声を聞いた上での対策なのでしょう。 首相が現場の意見をしっかり聞くということは素晴らしいことです。そして、迅速に政策にまとめていけば問題はありません。しかしながら、問題は中小企業だけに限定しては方向性を誤りかねません。 本質は、マクロ的な問題です。それは、デフレと不況が深刻化していることです。そのため、雇用者の給与は下がり、企業収益も上向く要素が少ないと言えましょう。 また、今年は3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故、原発停止問題に見られるように、企業サイドにとっては二重・三重のショックが続きました。消費者の自粛ムードも加わり、中小零細企業の生産ラインは、縮小を余儀なくされたのは事実です。 中小企業にとって、震災以後は円高が続いていることも懸念材料です。首相が視察した東京都大田区は世界の「オオタク」であり、世界経済にとって必須のサプライチェーンでもあります。多くの工場から世界に向けて部品などが輸出されているので、急激な円高は極めて「不都合な真実」であることは事実です。 デフレ、不況、円高が根本的原因であれば、政府がやるべきマクロ政策は財政金融政策です。くれぐれも温暖化対策税や復興増税はご法度です。 今やるべきことは、増税ではなく国債発行による財政出動であり、民間に少しでも資金が回るための金融緩和です。 そして、毎回のごとく主張していますが、即効性のある政策が国債の日銀引受です。デフレギャップの20兆から30兆円程度であれば、インフレになりません。むしろ、急激な円高とデフレを一気に解決することができます。 インフレが怖いならば、消費者物価指数上昇率を3%程度に設定しておけばよいでしょう。いわゆる、インフレ目標値の導入です。 中小企業への低利融資は、ミクロ的な政策としては十分検討に値しますが、対処療法にすぎません。 現在の日本は、デフレ不況という「低温症」なのですから、まずはここからはじめなければなりません。補正予算を小出しにするよりも、国債の日銀引受によって大量の資金を迅速に投入するほうが効果は高くなります。 日本の財政・金融政策の誤りは、政策を小出しにする癖があり、大胆さと迅速さが欠けています。中小企業支援策は大変素晴らしいのですが、やはり根本原因である日本経済への処方箋を出すことが先決です。 政府には、大局的見地から、経済政策を実行して頂きたいと思います。 (文責・中野雄太) 経済成長なくして、財政再建なし 2011.09.05 野田首相は組閣を受けた会見で「私は財政原理主義ではない」と語りましたが、同時に「財政が安定し、政治が信頼され、課題を乗り越えたところで、ようやく外交力の源泉が生まれる」と健全な財政が政策実行の前提であるとの考えを示しました。 しかし、この考えはやはり「財政原理主義」「財政再建至上主義」に近いと言わざるを得ません。 幸福実現党は、財政再建は「経済成長」を実現した結果、達成されるのであり、「財政再建」を目的としたら、経済成長も財政再建も失敗すると指摘しています。 例えば、財政赤字削減に取り組んでいるギリシャでは、付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)の増税や歳出減による緊縮策が取られています。 しかし、緊縮策により景気後退が予想以上に悪化。ギリシャ経済は今年、最大5.3%のマイナス成長が予測されています。 その結果、増税による歳入増も予想以下になる見込みで、ギリシャ政府は9月2日、今年の財政赤字の削減目標が達成困難になったと発表しました。 9月2日付WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)によれば、ギリシャ政府当局者は「多くの国民は納税すべきお金を持っていない。景気を拡大させなければならないが、緊縮政策が全ての足かせとなっている」と述べています。 景気が悪化し、GDPが減少すれば、当然、財政赤字の対GDP比が増大し、財政指標が悪化します。家計に例えれば、借金は変わらないのに、年収が減少すれば借金の負担が重くなるのと同じです。 今後、ギリシャ政府は更なる付加価値税増税に踏み込む方針ですが、悪循環に陥っていると言わざるを得ません。 野田首相が復興増税や消費税増税、公共事業削減などの緊縮政策を取れば、景気は悪化し、日本もギリシャと同じような悪循環に陥ることは避けられません。 幸福実現党は、大胆な財政政策や金融緩和、規制緩和、未来産業の育成等の複合政策による「高度経済成長政策」を打ち出しています。 高度経済成長が実現すれば、GDPが増大しますので、財政赤字や債務残高の対GDP比率が小さくなり、財政指標が大幅に改善されます。家計に例えれば、年収が倍増すれば、借金負担が半分に軽くなるのと同じです。 財務官僚の振り付けによって「財政再建なくして経済成長なし」として増税を唱える野田氏に対し、「経済成長なくして、財政再建なし」との立場から、幸福実現党は増税に絶対反対、高度経済成長の実現を訴えてまいります。 (文責・黒川白雲) 野田首相の増税路線を警戒する市場 2011.08.31 2009年の「政権交代」から早くも三人目の総理大臣として、野田佳彦氏が指名されました。 野田氏は、直前まで財務大臣だったことも強く影響しており、外国為替市場からは「財政再建至上主義者」とも揶揄されております。 同じ金融市場でも、債券市場と外国為替市場では、新総理に対する評価が分かれています。 例えば、債券市場では、野田首相の財政再建路線への安心感が評価されており、今後は国債などへの投資が増えると予測されています。一方、外国為替市場では、増税による景気悪化への懸念から、相場は「先安観」が強いと判断されています。言い換えれば、野田首相の経済政策では、先々株式相場が上昇する可能性は低いと判断されているわけです。 その証拠に、野田首相誕生に併行して、株式市場は8月19日以来、約2週間ぶりに8900円台を記録しても、「ご祝儀相場ではなく、アメリカ株式市場が急伸したため」と見る投資家もいるほどです。 さて、上記の記述から分かる通り、幸福実現党の見方は株式市場に近いと言えましょう。 既に、ついき党首による声明文で触れていますが、わが党は野田氏の増税路線を批判しています。 理由は簡単で、デフレと不況が深刻化している際の増税は、家計の消費と企業の投資を冷え込ませるからです。 その結果、日本経済全体で不況が深刻化する可能性が高く、税収が伸びる見通しは低くなります。経済政策的には、海江田万里氏が主張した金融緩和の方が正しく、日銀の国債直接引受まで含めた対策を打てば、行き過ぎた円高対策にもなります。 大手証券からは、売り上げが増えない中での増税は、円高メリットを受けている業者をはじめとした幅広い銘柄にまで悪影響が出ると予測しています。この見方は実に正しいと思われます。復興増税を行えば、被災地の東北以外にも増税負担が及ぶ論理と同じで、増税による影響は、日本経済全体に及びます。短期的な財源確保としての増税は、復興を遅らせるだけではなく、日本経済まで萎縮させる愚行なのです。 このまま、野田首相が財務省の振り付けどおりの政策を実行すれば、デフレと円高の解決は遠くなることを意味しています。 経済に暗い総理が三代も続くことは、日本経済にとっては極めて深刻です。 国民を豊かにし、増税なき財政再建と経済成長を目指す政治家が求められているなか、現在の日本は真逆の選択をしています。一部を除き、マスコミも増税を支持する論調が強いのも問題です。そのため、国民の皆様が「増税やむなし」という意見に反映されています。このままでは、日本経済は貧しくなることを自ら選択しているようなもので、誠に奇異な行動をとっていると言わざるを得ません。 幸福実現党は、安易な増税路線を批判し、デフレ不況と円高、そして復興を見据えた大胆な財政金融政策を訴え続けて参ります。 そして、「まだまだ日本の繁栄は揺るがない」という信念でもって、政治活動を展開していく所存です。 (文責:中野雄太) 日本国債格下げをどう見るか 2011.08.24 米国の格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、日本国債を21段階の上から三番目の「Aa2」から「Aa3」へと格下げしました。同社による日本国債格下げは、実に9年3ヶ月ぶりとのことです。 格付け会社による評価には、各社による独自の推計法があるために、客観的な指標とは言えない面はあるでしょう。 しかしながら、米国格付け会社の情報が国際金融市場に与える影響は無視できません。 興味深いことに、同社による格付けの見通しは「安定的」とされています。 多くの方は、格下げをしているのに「なぜ?」と思われるでしょう。 結論は後ほど述べるとして、まずは安定的という言葉から見る必要があります。 まず第一に、日本政府には累積粗債務が1000兆円ほどありますが、その一方で700兆円弱の資産があること、国債購入者の95%が日本人によるものであるため、対外的なリスクからみて「安定的」だといういうことができます。 第二に、今後も日本は国債を消化する能力があるかどうかという視点があります。 拙著『日本経済再建宣言』第三章196ページには、日本国のバランスシートを掲載しています(出所:日本銀行の資金循環統計2010年3月末時点)。 統計を見れば、家計には、資産から負債を引いた純資産は約1010兆円あります。また、国債を購入する金融機関の純資産は約11兆円あります。この二つをあわせた(家計だけを原資とする意見もある)1021兆円が国債購入の原資と考えられます。GDPの2倍強の原資があれば、まだまだ日本には体力があると判断できるわけです。 要するに、わが国は、政府と企業以外は黒字体質で、国家全体では268兆円もの純資産を持っています。政府の財政状態は決してほめられるものではないにせよ、日本国全体としては黒字なので、まだまだ「安定的」に国債を消化することが可能なのです。 客観的に分析すれば、日本国債の格下げは解せない点が多いのですが、格下げをされたということは、上記の指標以外の要因があるのです。同社の発表では、粗債務の累積額とデフレ基調、そして総理が頻繁に変わる政治的不安定さを挙げています。これは予想された見解ですが、もっと大事な論点が隠されています。それは、適切なマクロ経済政策が打たれていないことや、震災復興に向けての具体的なビジョンと方法論が定まっていなことの結果として成長率低下を招いているという事実です。 日本の経済政策とパフォーマンスの貧弱さは、国際機関の見通しも暗くしています。 例えば、IMF(国際通貨基金)は、4月末時点では1.4%の成長率を予測していましたが、6月にはマイナス0.7%へ下方修正しています。一方、OECD(経済協力開発機構)は、4月時点では0.8%の予測に対して5月末にはマイナス0.9%へと、やはり成長率の見通しを大幅に修正しました。両者は、日本の債務に対して増税を主張するなど、一概に納得できない点も多数あるとはいえ、日本経済のトレンドとしては低成長であることを指摘しています。 今後も低成長が続けば、所得と企業収益が伸びないため、税収の伸びも緩慢となります。同時に、子ども手当てなどのバラマキが継続した場合、赤字国債の発行も嵩みますので、ますます日本の財政は逼迫することも予想されます。よって、現時点の経済状況と政策の貧弱さを見る限りは、格下げされても仕方ない面もあることは認めるべきでしょう。 ただ、格付け会社は国際機関が発表している数字や日本政府の経済政策の動向も見守っています。 よって、まずは政府がデフレ脱却と経済成長への決意を表明し、且つ実行に移すことが先決です。 次に、成長率や債務GDP比率の低下など、具体的な数値が付いてくれば、再び日本国債が格上げ要因となります。 まもなくはじまる民主党の代表選。 増税や原発への対応など、さまざまな論点が出ています。 やはり、デフレと円高の是正や経済成長は欠かすことはできません。 米格付け会社によって、わが国の国債が格下げされたなら、「1年以内に格付けを上方修正させます」と言い切る人材が総理でなくてはなりません。現在の代表選候補からは何もコメントは出ていないのは誠に心もとない限りです。 幸福実現党は、既に日本経済再建の道筋を提示しました。 私たちの使命は、先人たちが築き上げてきた繁栄を守り、未来につなげていくことです。 このまま、格下げに意気消沈するわけにはいきません。 今こそ、日本を再建する経済政策を断行する時です。 (文責:中野雄太) 後手にまわる円高対策 2011.08.23 急激に進む円高に対して、日本政府の対応が後手後手にまわっています。 21日にようやく緊急経済対策において、2011年度予算の予備費を使用して輸出企業への資金支援をする方向で調整に入ったところです。 一方、日本銀行(以下日銀と明記)も22日以降、円高が進行した場合は追加金融緩和を政府に平行して行うことを明言しています。 政府が動いたことに対しては一定の評価はできますが、問題は、対応の遅さです。 円高基調は、3月11日以降から続いており、震災から5ヶ月が経過しても史上最高値を記録しています。トレンドとしては円高であることは明確なのですが、政府の「予想」に反して円は強くなっています。 日本政府は、「なぜ円高が進行しているのか」という根本原因を理解できていません。現在、円高が進んでいるのは、日本が他国と比較して通貨供給量を絞っているからです。 もちろん、欧米経済の不調により、資金の行き場がないためい、「少しはマシ」だという理由で円が買われている側面はありますが、国際金融市場の気まぐれさを考慮すれば、円高の根本原因ではありません。 根本原因が通貨供給量の不足にあるならば、通貨供給量を増やすことです。伝統的な金融緩和として、買いオペ(日銀が民間の債券などを購入すること)があります。ゼロ金利となっている今、日銀が出来ることといえば、買いオペか量的緩和です。その中には、国債の日銀直接引受もあります。 要するに、今政府がやるべきは財政金融政策です。予算の組み換えや小手先だけの市場介入では不十分です。 特に、円高と震災復興を克服しようとすれば、幸福実現党が「日本再建宣言」で主張している日銀直接引受です。 政府は、現時点では財源を小出しにして第三次補正予算まで見据えているようですが、早急に財源を確保したければ東日本復興債を発行し、日銀に買わせれば済むのです。規模としてはデフレギャップの20兆円分程度は必要ですが、この範囲ならインフレは心配不要です。 加えて、財政法5条の但書きにも明記されている以上、法律的根拠もあります。日銀が拒否をしていますが、震災のような「特別の事由」にあたる事象がある以上、彼らの反論は説得力を欠いたものと言わざるを得ません。 確保できた財源は、早急に東北の被災地復興のために投入するべきでしょう。 間違っても、デフレと不況が深刻化している今、復興財源を増税で行えばさらにデフレ基調となり、円高は止まりませんし、結果として不況が深刻化して復興が遅れる可能性が高くなります。 民主党の次期代表選が近づいていますが、円高対策や復興対策をきちんと対応できる方がならないと困ります。小手先だけの円高対策ではしのげないということを認識し、円高と震災復興の両方が可能となる、国債の日銀直接引受まで見据えた対応をするべきでしょう。 (文責:中野雄太) すべてを表示する « Previous 1 … 76 77 78