Home/ 吉井 利光 吉井 利光 執筆者:吉井 利光 HS政経塾部長(兼)党事務局部長 経済成長のときは今!東京スカイツリーに見る「富を生み出す投資」のあり方 2012.05.24 5月22日、遂に東京スカイツリーが開業しました!久しぶりに活気あるニュースだと思われた方も多いのではないでしょうか。 高さ634メートルの世界一のタワーの開業当日は、隣接する商業施設の東京ソラマチと合わせて約21万9千人もの人々が来場したそうです。 展望デッキ(350メートル)と展望回廊(450メートル)を結ぶエレベーターが強風の影響で一時停止したこともあり、運営面では改善点が指摘されているものの、完全予約制となっている個人入場券は、7月10日までほぼ完売していることからも国民の期待の高さが伺えます。 東京スカイツリーの目的は、携帯端末向けのデジタル放送サービス「ワンセグ」のエリアの拡大が挙げられますが、開業した今や、その経済効果に注目が集まっています。 そこで、東京スカイツリーを(1)経営戦略、(2)凝縮された技術、(3)経済波及効果の観点から考察したいと思います。 (1)経営戦略・高付加価値路線 事業主体の東武鉄道は、東京スカイツリーと東京ソラマチを合わせた年間入場者を年間3200万人と見込んでいます。これは東京ディズニーランドの入場者数より700万人多いそうです。海外の観光客をはじめ、東京に新しい人の流れを呼び起こしそうです。(5/22 読売) 東京スカイツリーの収支構造はどのようになっているのでしょうか。約1400億円もの投資を20年程度で回収する計画のようです。(5/23 日経) 今年度は201億円の収入を見込んでおり、その柱は以下の3本です。 ・オフィスからの賃料収入 ・テレビ局からの施設利用料 ・入場料収入 東京スカイツリー内のコンテンツを充実させて、入場料収入を高めに設定している点が特徴です。今後、客単価を高く維持するためにどのような集客策を打っていくのか注目です。 (2)凝縮された技術:最先端技術と伝統の技術 東京スカイツリーは技術面でも誇るべきものがあります。例えば高さ350メートルの展望デッキまで40人を約50秒で運ぶエレベーター、ライトのLED化による消費電力の5割削減など、最先端の技術が凝縮しています。 また、法隆寺五重塔でも使われている工法を採用しており、「心柱(しんばしら)」という円筒がタワーの中央を貫いているそうです。凝縮された技術の結晶である東京スカイツリーの開業当日、関連する企業の株価が上がりました。 (3)経済波及効果 地元墨田区の中小企業にも、自社製品をPRする絶好の機会としようという取り組みが始まっています。(5/22日経) 「重ね染め」という独自の染色技術を活用した手ぬぐいの販売や、1947年~89年に販売された「トーキョーサイダー」の復刻など、地元企業の販路拡大に向けて動き出しています。 墨田区は、東京スカイツリーの「天空効果」によって1746億円の経済効果があるとしています。この他にも、街の将来性を見込んでマンションや商業施設などの不動産開発も活発化しており、さらに経済効果は広がりそうです。 やはり「世界一」という言葉には夢があります。東京スカイツリーの開業からも、夢やロマンがもたらす力、経済効果の凄さを伺い知ることができるのではないでしょうか。 大きな理想を掲げ、持てる限りの努力をして実現する。そのプロジェクトに関わった人々から、次はそれを利用する人々に夢が伝わります。このような「感動の連鎖」こそ、富を生み出す投資の姿といえます。 最近のフランスやギリシャにおける緊縮財政反対の動き、さらには5月19日の主要国首脳会議(G8)でも「再建と成長の追及」という見解で一致しました。このことからも、緊縮財政一本やりの増税政策では、誰も救えないということが白日の下にさらされたといえます。 歴史的事例を見ても、19世紀前半のイギリスはフランスとの戦争により、債務が増大しました。イギリス政府の債務残高は1819年にはGDP比337%もありました(「国債と金利をめぐる300年史」)。 この状況からいかにしてイギリスは立ち直ったのでしょうか?その答えは緊縮増税政策とは正反対の、産業革命を背景とした「経済成長」だったのです。 テレビ報道の多くは、日本経済に対して悲観的なコメントをよく述べますが、極めて一面的な議論です。なぜなら、日本は21年連続で対外純資産は世界一であり、円高を背景として企業のM&Aが活発化し、着々と力を着けている企業も出てきているからです。日本の次なる発展を可能にする萌芽は確かにあります! 経済成長の時は今です!日本は世界の大国として、各国にこれから向かうべき方向性を指し示さなくてはなりません。 日本政府は、一刻も早く消費税増税路線を撤回し、東京スカイツリーに見るような、夢や希望を喚起する民間投資を支援する規制緩和・減税政策といった「経済成長戦略」を打ち出すべきです。(文責・吉井としみつ ) 脱・無責任外交――日本から平和と秩序を世界に発信する気概を! 2012.04.12 4月11日に、金正恩氏が北朝鮮労働党の「第一書記」に就任しました。父・金正日を「永遠の総書記」とし、金正恩氏が新設した、北朝鮮労働党の「第一書記」に就任の背景には、父・金正日の権威を高め、その「遺訓」に従って統治をしていくことを宣言することで、3代世襲を正当化して、金正恩体制への求心力と安定化につなげる狙いがあるようです。 4月12日から、先軍思想(軍事優先)路線の象徴と見られる、衛星と称した長距離弾道ミサイルの発射予告期間に入りました(発射予告期間は、4月12日~16日:午前7時~正午)。 12日に発射は行なわれませんでしたが、今後も万全の対応が必要です。ロシアのインテルファクス通信は、北朝鮮が「衛星打ち上げ用運搬ロケット」と説明する長距離弾道ミサイルの発射は14日になる見通しと報じています。 今後も4月13日に、金正恩氏が最高人民会議で国防委員長に就任予定、4月15日に金日成主席生誕100周年と、大きな節目が続きます。 衛星と称した長距離弾道ミサイルの発射の動向にも十分な警戒が必要なことはいうまでもありませんが、さらに、これからの「日本の防衛をいかにするか」についても政府は考えを示すべきです。 なぜなら、過去の長距離ミサイル発射後(2006年7月、2009年4月)の数ヶ月以内に「核実験」を行なっており、日本の安全への大きな脅威が生じうるからです。 実際、北朝鮮が北東部・咸鏡北道豊渓里(プンゲリ)の核実験場で3回目となる核実験を準備しているとの見方を韓国政府消息筋も明らかにしており、アメリカの商業衛星からもその状況が確認されています。 日本は、国連安全保障理事会で「追加制裁決議採択」を目指し、国際社会で適切に対処する方針を、アメリカのクリントン国務長官と確認しています(4/12 産経)。 また、米ワシントンで開幕した主要8カ国(G8)外相会合の冒頭で、「われわれ(8カ国)は朝鮮半島の安定という強い利益を共有していると考える。そのために最善策を話し合う」とし、国際社会の連携を深める模索をしていますが、北朝鮮に大きな影響力のある中国が不在であることから、効果が疑問視されています。 さらに、忘れてはならないことは、2009年の北朝鮮のミサイル発射の際に、安全保障理事会での決議を求めましたが、当時は、中国とロシアが「強硬だと反対」し、法的拘束力のない「議長声明」としてアメリカが妥協したことです。アメリカ任せにも限界があります。 また、韓国では4月11日に総選挙の投開票が行なわれ、保守系与党のセヌリ党(旧ハンナラ党)が、全300議席のうち過半数となる152議席を確保し勝利しましたが、対北朝鮮政策は争点化せず、経済成長や福祉が主要な争点であったようです(4/12東京)。 対北朝鮮については、日本から率先して、韓国に働きかけていく必要があります。やはり、他国任せではなく、日本として自国の安全を守り、また他国に対して働きかけていくのかという「安全保障戦略」をしっかりと提示する必要があります。 そのためにも「武器協同開発戦略」をはっきりと持つ必要があるのではないでしょうか。 日本は、武器輸出三原則の緩和を受け、防衛装備品の共同開発と生産に乗り出すことを、イギリスと合意しました。イギリスとの共同声明には、日本の国連常任理事国入りを支持することも盛り込まれています(4/11毎日)。 イギリス以外にも、フランス、イタリア、豪州などから、水面下でのオファーもあるようです。日本の高い技術力への期待はもちろんあるでしょうが、日本としては、どの国とパートナーシップを組むかを戦略的に考えることは、日本としての安全保障の考え方を打ち出すことにも繋がります。 日本としては、シーレーン防衛など、国益の観点を踏まえて、アジア諸国とも、パートナーシップを広げるべきです。 武器輸出緩和すること自体が争いを助長するという反対の声もありますが、日本が平和を愛する国なのであれば、日本からの意見を発信して、争いの火種を刈り取るためにも、日本との価値観―「平和を愛する諸国民への信頼」―を共有できる国とのパートナーシップを構築するべきです。 日本では、税金など国内問題ばかり議論していますが、集団的自衛権の解釈、憲法9条の改正など、日本のこれからの防衛のあり方を論ずるべきです。 自分の国は自分で守る。これは国民の幸福の前提です。弱腰外交、他国任せ、日本海にミサイルが打ち込まれても何もいえない、「無責任外交」はもうやめにしなくてはなりません。 日本は大国です。自分の国のことだけを考える段階はとっくに過ぎています。むしろ、日本が世界の中心となって、平和の価値観と秩序を築き上げる強い決意と行動が必要なのではないでしょうか。(文責・吉井としみつ) AIJ問題の教訓から考える“本当に”安心の年金とは? 2012.03.01 AIJ投資顧問が受託した企業年金の約1,852億円の損失を契機に、企業年金の不安が広がっています。2月28日の厚生労働省の発表によると、少なくとも約88万人が影響を受けると考えられます。 さらに、AIJ投資顧問は、今年の1月23日まで勧誘を続けていたことから、新たに被害が判明する基金が出てくることが予想されます。 2月29日の日経新聞でも、2011年12月時点で94の年金基金が投資顧問会社「AIJ投資顧問」に加入していたと報じられています。 問題は「AIJ投資顧問」に運用委託された年金基金の運用虚偽です。運用開始直後から損失が出ているにも関わらず、運用の失敗を隠すための虚偽の運用実績を財務局に報告し続け、さらに顧客に対して高い運用利回りを保障するとして勧誘を続けていたようです。 顧客から集めた資産を、香港のプライベート・バンクに移した後の資金の流れに不透明な点も多く、全容解明にはまだ時間がかかりそうです。 今回の企業年金の事件から、今後の年金を考える3つの教訓を考えてみたいと思います。 第1に、「投資家保護」と「投資判断の自由」のバランスです。 金融庁は、今回の事件を受けて、投資顧問265社に対して、金融商品取引法に基づく報告命令を出しました。リスクが高く、深い調査が必要と判断した投資顧問には2次調査を実施する方針です。 「投資家保護」という観点から、年金運用実績の虚偽報告は絶対に許されることではなく、投資顧問会社は高い倫理観が必要とされます。だからこそ、透明な情報開示のルールの徹底がなされるべきです。 第2に、「厚生年金基金の仕組みの見直し」です。 厚生年金基金は企業年金の一種で、現在約450万人が加入しています。国が運用する厚生年金の一部代行と、独自の掛け金で運用し、高い利回りを出すことで、年金支給額を高めることを目的として1967年に創設されました。 しかし、多くの基金が、想定していた運用実績を上げられず、結局、足りない部分を基金の母体企業が穴埋めする構造になってしまいました。 そこで、資金が豊富な大企業の基金の多くは、代行部分を国に返上し、独自の掛け金のみの運用に移行しています。 一方、自社だけで運用できない中小企業は、代行部分を国に返上できず、厚生年金基金の仕組みを抜けたくても抜けられない結果、高い利回りでどうにか積立金を増やしたい誘惑にかられやすい状況といえます。 今回の事件では、被害を受けた94年金基金のうち(今後増える可能性あり)、その大半の73基金が、地域・同一業種で集めた中小企業でつくる厚生年金基金であり、投資判断の責任はありますが、厚生年金基金の構造的な問題も考えられます。 今後、厚生年金の代行部分の補填に焦るあまり、投資内容が不透明な商品に手を出して損失を拡大しないためにも、代行部分と独自の掛け金の部分を厚生年金基金から切り離し、その基金が自ら運用できるよう検討する必要があるのではないでしょうか。 第3に「景気回復に向けた経済政策が不可欠である」ということです。 年金基金の減少の大きな原因には、運用している株式の下落があります。株価の上昇と活力ある経済とは密接な関係にあります。「活力ある経済」という土台に、年金という柱も建つわけです。 土台がグラグラしているにも関わらず、柱だけを修復しても根本的な解決には繋がりません。今回の焦点は企業年金でしたが、「国が運用する国民年金・厚生年金は大丈夫なのか?」という疑問も出てきます。 国民年金と厚生年金の積立金の推移を見ますと、2005年度末の約150兆円から、2011年度末の約112兆円と大幅に減少しています。 こうした状況にも関わらず、厚生労働省が想定する年金積立金の運用利回りは4.1%であり、現実とかけ離れていると言わざるを得ません。 本当に安心できる年金には、「活力ある経済」が不可欠です。 その意味からも、政府が推進している「税と社会保障の一体改革」はピントが外れています。なぜなら、消費税を増税しても経済は回復するどころか縮小するからです。「土台なくして柱なし」です。 私たち国民一人ひとりも「経済成長」を志向し、政府は、その意欲に応えて、景気回復の環境づくりをする――これこそ、国民の幸福に奉仕すべき政府の責務であります。(文責・吉井としみつ) すべてを表示する « Previous 1 … 4 5 6