Home/ しろとり 良太 しろとり 良太 執筆者:しろとり 良太 幸福実現党広報本部 ラファ侵攻は絶対に譲らない?イスラエル・ネタニヤフ政権の暴走が止まらない背景にあるもの 2024.05.04 https://youtu.be/PpgoGiI2VQc 幸福実現党広報本部 城取良太 ◆ネタニヤフ首相が戦争犯罪者に? 開戦より半年以上が経過し、ガザでの死者が34,000人を超えてしまったイスラエルとハマスの戦争に対して、ICC(国際刑事裁判所)が動き始めています。 4月下旬、ICCはネタニヤフ首相やハマス指導者など双方の責任者に対して逮捕状の発行を準備、戦争犯罪や人道に対する罪を問う姿勢を見せています。 これに対して、イスラエル、ネタニヤフ首相は猛反発。「イスラエルの行動に影響しない」と断じながらも、「兵士や公人を脅かす危険な前例となる」とICCに警告。実効力はほぼないものの、「反ユダヤ主義」の高まりなど、国際社会における逮捕状が及ぼす影響力は小さくないと危惧し、アメリカ・バイデン大統領にも助け船を求め、発行を阻止する動きを見せています。 この一件について逮捕状発行には反対の姿勢を示すアメリカですが、ガザ地区南部のラファへの本格的侵攻を間近に、イスラエル・ネタニヤフ政権とは意見の食い違いを深めてきました。 ICCの一件をいわばテコにして、アメリカとの事前協議なくラファ侵攻はしないとようやく保証させたという点から見ても、ラファ侵攻を断固止めるつもりのないネタニヤフ政権に振り回され続けるバイデン政権が浮き彫りになってきます。 ◆アメリカのユダヤ人リーダーからも見限られつつあるネタニヤフ首相 イスラエルとほぼ同じ600~700万人、世界最大のユダヤ人社会を有し、イスラエル建国から支援を続けてきたアメリカから見て、今のネタニヤフ政権はどう見えているのでしょうか。 3月14日、アメリカ上院議員で民主党の院内総務を務めるチャック・シューマーという方がある演説を行いました。この方は公職にあるユダヤ系アメリカ人の中で最高位にある方と言われていますが、演説の中で、ハマスとの戦争を巡る対応で「道を失った」と断罪。ネタニヤフ首相を猛烈に批判しています。 そして、イスラエルは新たなリーダーを選ぶべきだと述べています。 イスラエル戦争内閣の中心人物の一人であり、ネタニヤフ首相の最大の政敵でもあるベニー・ガンツ氏は4月3日、口裏を合わせるかのように「今年9月には国政選挙をやるべきだ」と発言しています。 この背景にあるのが、戦争を長引かせ、人質を解放させられないネタニヤフ政権に対する国民の根深い不満です。支持基盤である右派層も含め、国民の8割近くがネタニヤフ退陣を支持していると言われています。 このガンツ氏の発言、どうやらアメリカ側の意図もあるように思えます。 なぜならガンツ氏は、3月初旬ネタニヤフ首相の猛反対を押し切って訪米、ハリス副大統領やサリバン大統領補佐官、共和党・民主党の議員とも交流を図っています。 いま選挙を行えば、国民からの人気が最も高いガンツ氏の勝利は間違いないと言われており、ワシントンとしても極右化が止まらないネタニヤフ政権よりも、現実主義的なガンツ氏の方が好ましいと考えているからでしょう。 一方のネタニヤフ首相とすれば、出口戦略を示さずに「現状が長引けば長引くほど、首相にとどまる可能性は高まる」という計算から、今はいったん静けさを取り戻している対イラン勢力との戦い、またハマスとの戦闘で強硬路線を貫いているという裏事情が見えてきます。 ◆ネタニヤフ政権が連立を組む「極右政党」の何が危険なのか? 確かに、ここ20~30年間、強大化するイランとの「影の戦争」、またパレスチナのハマスの脅威に対抗するため、与党リクードを中心としたイスラエルの「右傾化」は続いていました。 しかし、組閣に苦しみ、選挙を繰り返してきたここ数年のイスラエルにおいて、1年半ぶりに返り咲いたネタニヤフ政権は今まで以上の強硬路線を採っています。この最大の要因こそ、現政権の連立相手となる「極右政党」の存在です。 120議席あるイスラエルの立法府(クネセト)において、7議席を占める「宗教シオニスト党」、6議席の「ユダヤの力」、1議席の「ノアム」の3つが今回話題となっている「極右政党」です。 では、いったい彼らはどんなことを訴えているのでしょうか。 各党によって若干異なるものの、アメリカでもよく議論にあがる中絶への反対や、世界的にも潮流となっている同性婚やLGBTQなどについては、その宗教的信条から断固反対を掲げており、米国共和党をはじめ、保守系の政党が掲げる極めてマトモな政策が並んでいます。しかし、その中で他国の保守政党の政策には絶対に出てこない特殊な政策が出てきます。それが「入植」という考え方です。 ◆いまパレスチナで行われている「入植」の実態とは ここで言う「入植」とは主に、1967年の第三次中東戦争後にイスラエルが占領したヨルダン川西岸地域のことを指しています。先住民として主にアラブ人が住んでいましたが、ここにユダヤ人が入植を始め、現在では地域の60%はイスラエル軍の支配地域にあります。 国際法違反の裁定があるにもかかわらず、160以上の入植地に70万人以上のユダヤ人が住んでいるとされています。そして、この入植活動が今でも続いているわけです。 ネタニヤフ政権は発足直後から「政府や閣僚の決定が非合理であれば無効にできる」という最高裁の権限を奪おうと司法制度改革に臨み、国民からの大反発を受け、大規模デモが続いていましたが、結局、これもヨルダン川西岸などへの入植活動を邪魔する最高裁の口を封じるためというのが主な目的とされています。 更に、ガザでの戦争が始まってからのヨルダン川西岸はカオス化しているようです。 通常は入植者とパレスチナ人の間に入るイスラエル軍が手薄なこともあり、4月12日以降、強硬な入植者たちによって17ものパレスチナ人の村々が攻撃され、家や車が燃やされたり、居住者が銃撃され、死傷者も出ています。 また、本来治安を維持する役割の軍とパレスチナ人たちとの間でもガザ侵攻以来、緊張が高まっており、今までに多くの非武装の民間人を含む430人以上のパレスチナ人が殺害されているようです。 こうしたイスラエルに嫌気がさしているのが、アメリカを始めとした欧米各国です。4月19日にはバイデン政権は暴力的な入植者に経済支援する資産に対し、新たな制裁を課しています。EUも同様の動きを取りつつあります。 こうした過激な入植活動を煽っているのが、ネタニヤフ政権の新パートナーである「極右政党」であることは間違いありません。 実際に、「ユダヤの力」の党首であるイタマル・ベン-グヴィル氏は、1月下旬の集会で行った演説の中で「10月7日を繰り返したくなければ、この土地(ガザ)を支配する必要がある」と述べ、ユダヤ人入植者たちにガザへの「帰還」を呼びかけました。 ◆ユダヤ教における原理主義としての「シオニズム」とは何か? 他の国々から見て、どうしても理解しがたいこの「入植」という考え方ですが、この元にあるのが「シオニズム」「シオン主義」といいます。 聖都エルサレムの南西にある「シオンの丘」が直接的な由来ですが、古代イスラエルでは、エルサレム自体がシオンという名称だったと考えられており、要するに「民族の故郷に帰ろう」という運動です。 西暦66年、「マサダの砦」に立てこもり、ローマ帝国に反乱を企てますが、数年間の激闘の末、集団自決。このパレスチナの地におけるユダヤ人は全滅してしまいます。 その後はスペインや東欧などを中心に、欧州・中東圏に離散(ディアスポラ)したユダヤ民族は、それぞれの地域にある程度馴染みながらも、ユダヤ教や独自の文化を守って暮らします。 時代はグッと下って19世紀末。ユダヤ人にとって大きな契機となる出来事が起こります。 それが「ドレフュス事件」です。フランス陸軍参謀の士官だったユダヤ人アルフレド・ドレフュスがドイツのスパイであるとして逮捕されたという事件です。 結局、その後の捜査でこの事件は事実無根の冤罪ということが分かるのですが、この事件の根底にあったものが長年水面下に渦巻いていた「ユダヤ人への反感」でしょう。これがいわば顕在化し、「反ユダヤ主義」となって欧州全土に広がっていきます。 そして、このドレフュス事件を取材したユダヤ人記者テオドール・ヘルツルこそ、この「反ユダヤ主義」の席巻に危機感を感じ、ユダヤ人国家創設が必要だと提唱。これが「シオニズム」の始まりです。 ◆シオニズム運動の盛り上がりと、現代におけるシオニズム その後、イギリスの支援などを得て、「シオニズム運動」は盛り上がりを見せ、欧州と同じく、ポグロムに象徴される弾圧で苦しめられたロシア系ユダヤ人などを中心に、欧州各地やロシアから大量にユダヤ系移民がパレスチナの地に「帰還」するわけです。 しかし一方、迷惑千万なのはその地域に住んでいた先住民であるアラブ人です。 第一次世界大戦の終戦に乗じて、敗戦国オスマントルコの広範な領土を割譲し、利権を漁りまくった悪名高いイギリスの三枚舌外交(サイクス・ピコ協定、フサイン=マクマホン協定、バルフォア宣言)によって、ユダヤ人国家の創設も国際的に約束されてしまいます。 勝手な約束に当然、現地のアラブ人たちは怒ります。パレスチナの地に徐々に増えてくるユダヤ人に脅威を感じるアラブ人との間で衝突が激化していきます。 当時はイスラムテロというよりは、ユダヤ人によるテロリズムが頻発した時代で、間に入るイギリスは対応に苦慮します。 しかし、1930年代から巻き起こるナチス・ドイツによるユダヤ人迫害によって、ユダヤ擁護の国際世論へと流れは急変。移住希望のユダヤ人の急増と共に、シオニズム運動は一気に急拡大していきます。 そして1948年5月14日にイスラエルが建国、翌日から第1次中東戦争が始まり、ここからイスラエルの長い闘争の歴史が始まるわけです。 このシオニズムという思想が現代に至るなかで、何パターンかに類型化されていきます。要するに穏健なシオニズムもあれば、強硬なシオニズムもあるといった具合です。 このうち、最も右寄りと言われるのが「宗教シオニズム」、いわば古代ユダヤ教の教えと一体化したシオニズムのことです。そして、この「宗教シオニズム」を中核としているのが、政権に入閣している「極右政党」です。 ◆過激な入植活動の根底にあるもの 「宗教シオニズム」が主張する過激な入植活動の根底には、旧約聖書の教えに基づいた「宗教的な信条」があります。 要するに、エルサレムはもちろん、ヨルダン川西岸にあるヘブロンなど他の聖地に住むのは当然の権利であり、ひいてはパレスチナ全域を含む「大イスラエル」を手に入れることこそ、シオニストの悲願であると考えます。 なぜなら、神がユダヤ人に約束した土地(エレツ・イスラエル)に入植することでメシア(救世主)の到来が早まると考えるからです。 こうした神との契約を守るために、アラブ系パレスチナ人に対し暴力を使ってでも土地から追い出すということが堂々と正当化されているわけです。 シオニズムという概念自体、古いものではありませんが、3000年以上の時間を超えて、ユダヤ教誕生の時の「神の言葉」を元に、現在おかれたパレスチナの状況を無視して、入植を肯定するという考え方は、極めて原理主義的なものだといえるのではないでしょうか。 このユダヤ人たちのシオニズム運動に関連して、幸福実現党の大川隆法党総裁は『鋼鉄の法』の中で、このように言及されています。 「ユダヤ人たちは、十九世紀の終わりごろからポツポツと祖国の地に帰り始め、戦争(第二次世界大戦)が終わったころには、七十万人ぐらいは入植していたと思います。そして、それを欧米のほうが認めることで、一九四八年に『イスラエル』という国が建ちました。これは結構ですし、よいと思います。 ただ、その後、四回の中東戦争があって、その間にイスラエルは軍事的にどんどん強大になってきました。これについては客観的に見るかぎり、やはり、『フェアではないな』というのが私の感想です。 というのも、ユダヤ人たちは、自分の国ではないのに、あとから入ってきて、パレスチナの土地を分けてもらい、国を建てさせてもらったわけです。あとから来た者は、もう少しおとなしく、行儀よくやってはどうかと思うのです。(中略) それなのに、イスラエルは、いつの間にか、核兵器で武装して、核ミサイル、核爆弾を何百発と持っています。これは、少し行きすぎではないでしょうか。そのように思います。」(『鋼鉄の法』より) ◆ユダヤ教・イスラム教の「原理主義的な部分」のぶつかり合いが止まらない現代 ちなみに、イスラエルと長い対立関係にあるイランですが、イスラム教を中心とした全体主義的な色彩は色濃く、自由が大きく制限され、イスラエルと比べれば、人々が強く抑圧されていることは確かです。 しかし、イランの現体制はユダヤ教への信仰自体を否定しているわけではありません。 実際イラン国内には、中東最大規模となる2万人のユダヤ教徒が住んでおり、一応ユダヤコミュニティを保護しています。イラン指導部が真っ向から否定しているもの、それがこの「シオニズム」であり、「シオニスト政権」であるわけです。 イスラム教とユダヤ教の宗教対立を加速させるものの正体として、ユダヤ教の中にある「排他的なシオニズム」、それに対してテロリズムをも肯定するイスラム教の「好戦的なジハード主義」といった、元々は決してマジョリティではない「原理主義的な考え」がぶつかり合う中で、争いが止まらず、双方の不信が深まり、徐々に全体が右傾化しているというのが真相ではないでしょうか。 こうした争いを完全に終わらせるには、それぞれが唯一の神と信じる存在が、地球神として同一の存在につながっているのだという宗教的真実の広がりを待つしかありません。 こうした宗教的真理が広がるまで、この一神教同士の争いが破滅の道を辿っていかないように、「可能性の技術」とも言われる政治こそ、使命を果たすことが求められているように思います。 イスラエル・イラン対立の真相。新たな中東戦争にエスカレートするのか? 2024.04.17 https://youtu.be/Ha6CmHVmKps 幸福実現党広報本部 城取良太 ◆イランによるイスラエル領内への史上初の直接攻撃 ハマス奇襲に端を発するイランとイスラエルの対立が新たな局面を迎えようとしています。 4月14日未明、イランは300発以上にのぼるミサイルやドローンをイラン本国などから発射。ほぼ「99%」がイスラエルや米英などの迎撃により、本土に届く前に撃ち落とされたとされ、イスラエル側の被害は負傷者1名と軽微なのが現状です。 この発端となったのが4月1日、シリア・ダマスカスにあるイラン大使館に対して行われた、イスラエルによるミサイル攻撃でした。 この攻撃によってイラン革命防衛隊の司令官クラスを含む7名が殺害されています。今回はこれに対する報復という形になっています。 しかし、今回のイラン側の攻撃を見ると、イスラエルに大きなダメージを与えるような攻撃とは程遠く、かなり「抑制的」だったと言われています。 実際に、攻撃の前段階には、核協議の再開などをアメリカに持ちかけるような外交を展開していました。 今回の攻撃もイラン国内の宗教保守層に対するパフォーマンスという面も色濃いように思います。 一方のイスラエル・ネタニヤフ首相は、イラン本土からの初めての攻撃に対し「更なる反撃」を行う準備があると明言。 それに対して、アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に自重を求め、防衛上の支援はするがイラン反撃への参加はしないと述べています。 その後、ネタニヤフ首相は「報復を見送る」と述べたという報道も一部ありましたが、一夜明け、イスラエルの戦時内閣でイランへの反撃で一致しており、「全面戦争が目的ではない」とするも、「明確かつ強力」に反撃することを述べています。 どちらにしても、昨年10月から約半年経過したハマスとイスラエルの戦争が、いよいよ中東全土を巻き込んだ大規模戦争へと、いつエスカレートしてもおかしくない、かなりきわどい状況にあることは確かだと言えます。 ◆以前は良好だったイスラエルとイランの関係 では、そもそもイスラエルとイランはなぜ対立するのでしょうか。 ユダヤ教とイスラム教の宗教対立といってしまえばそれまでですが、個別的に見れば、イスラエルとエジプトなど、宗教を超えた国家間で平和条約が締結されている事例は実際にあります。 ここでイスラエルとイランの対立がどのように深まってきたのかを客観的に整理してみたいと思います。 何より、以前はこの両国は関係良好だったという歴史があります。 1948年イスラエル建国直後に起きた第1次中東戦争から、1973年の第4次中東戦争に至る25年間の戦いは、エジプトを中心としたアラブ諸国とイスラエルの戦いであって、イランは関与していません。 そういう意味で、これからいつ起きてもおかしくはない新たな中東戦争は、過去4回の中東戦争とは意味合いが全く異なると言えます。 当時、王政だったイランは、中東における「アメリカの前線基地」として、実はイスラエルと同じく親米国でした。 実際、イスラエルの諜報機関モサドと当時のサバックというイランの諜報機関は「対アラブ」「対ソ連」で情報協力協定を結んでいるように、同盟関係に準ずるものがあったと言えます。 ◆イスラエル・イラン対立の大きな転機①:1979年の「イラン・イスラム革命」 この両国の関係にとって、1つ目の大きな転機が、1978年から1979年にかけて、イスラム指導者のホメイニ師が求心力となって起こった「イラン・イスラム革命」でした。 ホメイニ師は「イスラム法学者による統治論(ヴェラヤテ・ファキーフ)」を発表、当時パフラヴィー王朝の元、急速に西欧化しようとしていたイラン国内の風潮を危険視し、欧米の植民地主義、またシオニズムによって建国されたイスラエルを痛烈に批判しながら、「将来、ユダヤ人に支配されることをおそれる」とその中で述べています。 この1冊がいわば国の指導原理となり、今の「反米」と共に「イスラエル打倒」を掲げるイラン・イスラム共和国が誕生、今に至る45年間の長きに渡る対立の「原点」となります。 また時をほぼ同じくして、4回の中東戦争を繰り広げたエジプトとイスラエルがアメリカの仲介で平和条約が締結。この「1979年」という年がいかに中東情勢を根底から変える非常に大事な年の一つといえるでしょう。 ちなみに、この大転換を図ったエジプトに代わって、反イスラエルの急先鋒として「アラブの盟主」に名乗りを挙げたのが、イラクのサダム・フセイン大統領でした。 イラクはイスラム教の2大宗派スンニ派とシーア派が入り混じった地域で、イラクでは約2割しかいない少数派となるスンニ派が国を支配していました。 そのためフセイン大統領は、抑圧された多数派であるシーア派(約6割)が、お隣のシーア派国家イランから「革命の影響」を受けることを止めるべく、1980年から8年に及ぶ「イラン・イラク戦争」を起こします。 イラン革命によって飼い犬から手を嚙まれる形となったアメリカは、この時、イラクのフセイン政権を積極的に支援します。 しかし、その後イラクもアメリカに牙を剥くこととなるのは歴史が示している通りです。 ◆イスラエル・イラン対立の大きな転機②:2003年の「イラク戦争」 そしてイランとイスラエルの対立を更にエスカレートさせていくきっかけとなったのが、まさに「イラク戦争」です。 アメリカブッシュ政権は2003年、イラクが所持する大量破壊兵器の脅威から、世界を解放するという大義のもと、「イラク戦争」に踏み切ります。 余談ですが、大量破壊兵器は見つからず、当時の国務長官だったパウエル氏は、CIAの情報を信じ、開戦の大義を語ってしまった自身の国連演説を「人生の汚点」と語っています。 結果的に、イラク戦争によってフセイン政権は崩壊、アメリカ主導によって民主化がなされます。 先ほど申し上げた通り、イラクの宗派バランスから考えると、民主化されたことで多数派のシーア派主体の政党が力を持ち、政権を握っていくことになります。 すると、それまで力を持っていたスンニ派と、抑圧されていたシーア派のパワーバランスが逆転し、スンニ派が押され始めます。 CIA長官まで務めたペトレイアス氏の占領政策によって、一時期は宗派の均衡は見事に維持されていましたが、イラク戦争を「誤った戦争だ」と断罪し、大統領に就任したオバマ元大統領は2010年にイラク駐留軍を大規模に縮小し、宗派間の衝突が激化し、治安が急激に悪化していきます。 このように、良くも悪くもイラクのフセイン大統領、そしてそれに代わる米軍という「重石」がなくなったことで、イスラエル国境に向けて、イラン革命防衛隊など軍事組織が、イラクを超えて、シリアのアサド政権(シーア派系のアラウィー派)、レバノンのシーア派組織ヒズボラなどとの連携を緊密にしながら、直接的に影響力を行使させていくことが出来るようになっていきます。 いわば「シャドウ・ウォー(影の戦争)」が活発化していくわけです。 ◆イスラエル・イラン対立の大きな転機③:2011年から始まる「シリア内戦」 そして、この「シーア派の弧」と呼ばれるイラン勢力圏を更に強大化させるきっかけとなったのが「シリア内戦」です。 イランのこうした急速な影響力の拡大にアメリカやイスラエル、サウジアラビアなど周囲の国々は焦ります。 その頃奇しくも2011年に北アフリカで起きた「アラブの春」によって、民主化のウネリがシリアにも直撃し、アサド政権(シーア派系)の独裁に対して、スンニ派系の反政府勢力が立ち上がり、内戦に発展していきます。 当時のオバマ大統領はアサド政権の打倒を名目として、CIA主導で「ティンバーシカモア」という秘密プロジェクトを立ち上げて、巨額の予算を投じてスンニ派の武装組織に武器の支援や戦い方を教えていきます。 そしてこの時に提供された膨大な武器の多くを闇ルートで手にし、巨大化していったのが、かの「イスラム国」です。直接的なつながりを証明するものはありませんが、間接的にアメリカが「イスラム国」を巨大化させたということは紛れもない事実です。 ちなみにこの「イスラム国」の中枢を担ったのが、元フセイン政権の構成メンバーと言われています。 アメリカとしては、シリアのアサド政権、そしてバックにいるロシア、イランの影響を弱めていくために、弱体化していたスンニ派勢力に力を与えることでシリア・イラク地域における宗派間の力の均衡を保ちたかったという思惑があったようには思います。 しかし、結局「イスラム国」が予想以上に強大化、最終的に、アメリカを中心とした有志連合は「イスラム国打倒」のために更なる資金と大量の武器を投じていきます。 こうした長年の「イスラム国」などとの戦いを通じて、更に力を蓄えていったのが、イランの革命防衛隊を主体とした、前述したシーア派系の武装組織などです。 また、近年では、長年の不倶戴天の敵だったサウジアラビアと中国の仲介によって歴史的な国交正常化に踏み切るなど、イランにとって中東における対立構図というのはイスラエル一国に先鋭化していると言っても過言ではありません。 イスラエルから見ても、イランの強大化というのは、紛れもなく現在の最大の脅威です。 こうした深い懸念こそ、イスラエル政権の極右化が進んでいる主な要因の一つであり、エスカレートが止まらなくなっている訳です。 ◆イスラエルとイスラム教国を巡る対立軸にあり続ける「核兵器」 そして、イスラエルを巡る対立軸の中心にあり続けるのが「核兵器」という要素です。 イラクのフセイン大統領は、イスラエルとの戦争を見据えて、大統領就任当初から秘密裏に核保有を目指していました。それに対してイスラエルは「イラク原子炉爆撃事件(1981年)」などに象徴されるように、軍事力を行使し、爆撃によって力づくで排除します。 前述した「イラク戦争」の開戦前には、現首相であるネタニヤフ氏など一部の閣僚が、「フセインがまた核開発を再開している」と脅威を訴え、ブッシュ政権にイラク戦争をけしかけたとも言われています。 そして、21世紀に入って、核開発の疑惑が浮上してきたのがイランです。 モサドによるイラン人の核科学者の暗殺や核施設の爆破などで、イスラエル側はイランの核開発の妨害を幾度となく繰り返してきました。 しかし、科学国際安全保障研究所の2024年3月の報告書によると「あと5カ月で13発の核兵器を保有する能力がある」と言われています。 内情が見えにくいイランの場合、もっと進んでいる可能性は否めず、核保有が寸前まで迫っている現状を考えれば、イスラエルとしてはいよいよ一刻の猶予もありません。 ◆新たな中東戦争はエスカレートするのか? さて今後はどうなっていくのでしょうか。 今回、シリアのイラン大使館攻撃でイスラエルは明らかに挑発的な姿勢を示しています。 決めつけはもちろん禁物ですが、そうした意味から考えると、今回のイランの反撃がたとえ抑制的であったとしても、国際社会でイラン攻撃の口実となる限り、イスラエルとしては「エスカレート」させたい思惑は強いとも言えます。 また一方で、「ハマスによる奇襲」によって、世界中の目がパレスチナに向けられてきたことを考えれば、イランとしての格好の「時間稼ぎ」にもなっている面も見過ごすことは出来ません。 いま核戦争の発火点となりうるのはロシア・ウクライナ方面、そして今回、中東におけるこのエスカレーションで核戦争の危険性はグッと高まったと言えるのではないでしょうか。 幸福実現党の大川隆法党総裁は『信仰の法』の中で、中東における核戦争の可能性について、このように言及されています。 今、心配されているのは、「核兵器をすでに持っているイスラエルと、核兵器をもうすぐ製造し、保有するであろうイランとの間に、核戦争が起きるかどうか」ということでしょうし、また、「イランの核兵器が使用可能になる前に、イスラエルがイランを攻撃するかどうか」ということでしょう。 そして、イランの核保有を認めたら、おそらく、サウジアラビアやエジプトも核武装をするのは確実でしょう。 今の中東は、「イスラエルだけが核武装をしていて、イスラム教国は核兵器を持っていない」という状況にありますが、それが今度、「核武装したイスラム教国にイスラエルが囲まれる」という状況になったとき、それを黙って見過ごすことができるかどうかです。これが、ここ十年ぐらいの間に懸念される大きな事態の一つです。」 日本人の心理の中には「ノーモア・ヒロシマ」が世界の常識だと思い込んでいる節があります。しかし、残念ながら世界の本音の部分とは大いにかけ離れているといえます。 実際に、日本は神を信じない唯物的無神論国家の核保有国に囲まれています。 いいかげん、きれいごとばかりで表面を繕うお花畑思考から抜け出さないと、日本の存続自体が立ちゆかなくなるという危機感を持たなければならないのではないでしょうか。 政治家の『Think Big』が宇宙開発の未来を拓く 2019.03.31 政治家の『Think Big』が宇宙開発の未来を拓く 幸福実現党 山形県本部統括支部長 城取良太 ◆際立つ日本の技術力と低予算 探査機「はやぶさ2」による快挙からはや1か月。 小惑星「りゅうぐう」への着地に成功し、回収された岩石には水分が含まれることが解析の結果、判明しました。 来年末、はやぶさ2が帰還すれば、水分を含んだ宇宙物質が持ち込まれることは世界初で、そのサンプルがもたらす貢献度は極めて高いものとなりましょう。 重力の関係上、着地が難しいとされる小惑星から物質を回収したこと自体、世界で際立つ技術力の証明ですが、対照的なのがその低予算ぶりです。 はやぶさ2関連の11年間分の総事業費は289億円、年平均で考えても25億円前後にしかなりません。 民主党政権下では、事業仕分けで一時3000万円にまで削減され、そのままならば、こうした快挙はまず起こらなかったでしょう。 宇宙開発全体の予算を見ても、JAXA・防衛省が約3000億円(2018年)に対し、米国は約4兆5000億円、米国と同等と言われる中国と比較しても、15倍の開きがあるのが現状なのです。 ◆「天空」支配を目論む中国の宇宙戦略 いま特に、宇宙で目覚ましい発展を遂げているのが中国です。 その旗印が≪中国製造2025≫と称される中国の国家戦略で、「2025年までに半導体等のハイテク部品の7割を自国で製造出来る体制を作り、宇宙開発などでアメリカを抜き、世界一を目指す」というものです。 もし中国の宇宙技術の進歩が、人類への貢献を目的とするものであれば称賛に値しますが、一党独裁の中国がその技術を「軍事に使う」となった場合、話は全く別物です。 現に、習近平主席は事実上の「宇宙軍」創設を明言し、毛沢東の遺志を継ぐ形で、宇宙技術の軍用化を主眼としていることは間違いありません。 中でも象徴的なのが、解読不能と言われる世界最高レベルの「量子暗号」と、それを搭載した「量子通信衛星」を2016年8月、世界で初めて打ち上げに成功させた驚愕の事実です。 「暗号を制する者が世界を制する」の通り、軍事的にも最も重要な要素の一つとも言える「情報」において、世界で優位にあるのは実は中国なのです。 他にも、昨年末には月の裏面探査にも着手、2022年には独自の宇宙ステーション稼働を計画するなど、分野によっては米国の先を行っている感は否めません。 これらは「一帯一路」とも連動しており、予算の少ない途上国に対して、人工衛星機能の活用を約束するなど、中国の宇宙技術が「懐柔」の大きな武器になっているのです。 ◆かつての宇宙大国を蘇らせた起業家たちの夢 一方、ソ連との宇宙開発競争で凌ぎを削り、圧倒的な地位を占めてきた米国ですが、NASAの官僚化に象徴されるように、宇宙開発は低迷の一途を辿ってきました。 そんな停滞感に風穴を開け、再び活気を取り戻したのが、スペースXのイーロン・マスク(テスラモーターズ)やブルーオリジンのジェフ・ベゾス(アマゾン)といった、異業種のベンチャー起業家たちでした。 彼らは巨額の私財を投じ、ロッキード・マーティンやボーイングの寡占状態にあった宇宙分野で、試行錯誤を重ねながら、僅か十数年で不可能とされた地表への垂直着陸を実現、民間初の有人宇宙船打ち上げも成功させています。 既に、地位や莫大な富も手にしていた彼らをそこまで突き動かしたのは、子供の時から強く持ち続けた「宇宙への壮大な夢」であったはずです。 そんな中、「月を拠点として、最初に人類を火星に運ぶ」と壮大なビジョンを掲げるトランプ大統領の誕生で、米国の宇宙開発は再び本格化しようとしております。 以前と違うのは、完全なる国家主導ではなく、民間の宇宙ベンチャーのノウハウと技術を最大限活かすもので、実業界出身の大統領ならではの官民協力体制に期待感が高まります。 また先月には、米国も「宇宙軍」創設を明言、トランプ政権は宇宙領域においても中国と真っ向から対峙する姿勢を見せています。 ◆米中と比肩する宇宙産業を創るために このように、日本と米中の宇宙構想や規模を比較しても、経済力の差を遥かに超えた大きな「差」があるのが現実です。 ようやく、日本でも民間宇宙ベンチャーの胎動や、トヨタ自動車が宇宙服なしで乗車できる月面車への開発の発表など、日の丸宇宙産業の立ち上がりの気配を徐々に感じさせます。 そんな中、米中と比較し最も不足しているのが、宇宙政策に関する国家の大きなビジョンと十分な予算ではないでしょうか。 日本は重力の小さい天体での強みを活かしつつも、堂々たる大国として「月を拠点に、火星に行く」という米国に負けない壮大な理想も描きたいところです。 また、消費増税という失策への補填で2兆円を使う位なら、米中に比肩するような宇宙産業の創造に投資するなど、国家予算の有効活用を是非ご検討頂きたいと思います。 将来、日の丸宇宙産業を背負って立つような人財を数多く創るため、子供たちが心の底からワクワクするような夢やビジョンを堂々と語り示すことも、これからの政治家に求められる責務ではないでしょうか。 消費税増税は犯罪をも助長する 2019.03.23 消費税増税は犯罪をも助長する 幸福実現党 山形県本部統括支部長 城取良太 ◆消費増税は即、マイナス成長を招く 日本政府は20日、3月の月例経済報告の中で、世界経済の減速を要因に、国内の景気判断について3年ぶりに下方修正しました。 これにより、本年10月に予定されている消費税率10%への引き上げが日本の経済を予想以上に悪化させるのではないか、という現実的な懸念が一気に広がりつつあります。 1月に発表された景気動向指数を見ても、前回増税の先送りを決めた3年前よりも0.5ポイント低く(97.9)、2018年度のGDPは548兆円、経済成長率は0.6%(内閣府・共に名目)と日本経済は前年から約3兆円しか成長していません。 一方、10%への引き上げで政府が見込んでいる税収増は約5.6兆円(GDPの約1%)で、単純に税収として差し引けば、誰が見ても一気にマイナス成長となるのは瞭然です。 軽減税率の導入で何とか軟着陸させたいのでしょうが、複雑化を招き、可視化できないものを含め、軽減税率のコストは未知数で、軽いようには思いません。 何より、増税のインパクトはGDPの約6割を占める個人消費を中心に悪循環を招き、予測以上のマイナス成長で日本経済は立ち行かなくなる危険性が大だと言えます。 ◆新聞メディアは社会の公器としての使命を果たせ その大きすぎる衝撃は個人のみならず、日本経済のエンジンである企業に重く圧し掛かってくるはずです。 企業としては「増税分を転嫁して価格上げを強いられるか」、「価格据え置きで増税分の利益を圧縮するか」の苦渋の選択を強いられることになり、業績悪化を招く要因となるのは必至で、それは従業員の安定にも暗い影を落とすはずです。 そんな消費増税による日本経済への深刻な打撃を前に、高所から「日本の低賃金」を槍玉に、従業員に還元しない企業悪玉論を展開して、官製ベアを継続したい政府の片棒を担いでいる新聞メディアもいます。 一方で、不思議なことに消費税に関しては「社会保障の財源確保のため増税やむなし」の一点張りで、ほとんどの新聞メディアが口を閉ざしてしまいます。 それは飲料食品と並び、新聞も軽減税率の対象となるためで、軽減税率なしでは立ち行かなくなる新聞業界の苦しい経営事情が見て取れます。 しかし、マスコミが自社の経営に縛られて、「社会の公器」としての機能を果たさずにおきながら、他業種の経営に口を挟むというのは言語同断です。 日本経済に責任の一端を担う存在として、消費税増税の是非を多角的・客観的に検証し、健全な世論を形成する役割を果たして頂きたいと思います。 ◆消費増税で得をする人々 国内の家計や企業をすべからく苦境に陥れる消費税増税ですが、一方で増税の恩恵を受ける存在も一部でおります。 それは海外の金密輸業者です。 香港等の非課税国で金を仕入れ、税関を通さずに国内に持ち込み、国内の買取り業者に消費税込みの金額で売却することで、増税分がまるまる彼らの「儲け」になるという仕組みです。 財務省は昨年の摘発件数が大幅減し、取り締まりの強化が功を奏したと喧伝していますが、8%に税率が引き上げられた5年間で件数は約91倍に増えており、10%への引き上げが密輸のモチベーションを更に高める結果となると言えます。 また、摘発件数の減少が意味するものは、密輸手法が高度化し、摘発できない件数が増えているだけとも言え、結局、取り締まりを強化し、そこに労力とコストをかけても、終わることのないイタチごっこになる懸念もあります。 とにかく、日本人が更なる増税で喘ごうとする中、密輸業者にその増税を悪用させてしまっている事実自体、許すことは出来ません。 ◆一貫して消費減税を訴えてきた幸福実現党の10年間 個人消費を冷やし、企業経営を苦しめ、全体の国家税収の減少を招く上、犯罪まで助長してしまう消費税増税はまさに愚の骨頂、全方位的に害悪しかもたらさない最悪の経済政策です。 財務省としては、消費税は非常に徴税コストが安く、脱税の牽制効果があるという点をフル活用したいようですが、密輸業者による脱税が横行し、コストを高めている結果はまさに皮肉です。 そんなに効率的に徴税したいなら、高すぎる税体系や累進課税を改め、公平性の高い一律課税型(フラットタックス)の安い税体系を導入し、納税意識を高めるべきではないでしょうか。 また安倍政権においても、増税の延期は未来の不安を先延ばしするだけで、景気への悪影響は断続的に続いている点を認識し、はっきりと消費税増税を廃止する決断を行うべきです。 幸福実現党は立党より10年間、消費税の増税に反対し、消費減税の必要性を訴え続けて参りました。 (「消費税10%への増税はまだ止められる!」https://info.hr-party.jp/2019/8184/) 国家財政の基は活力溢れた個人と企業が前提にあると確信し、「唯一」の減税路線政党としての使命を今後も果たして参ります。 「賃金」「労働時間」に国家は介入すべきか 2019.03.16 「賃金」「労働時間」に国家は介入すべきか 幸福実現党 山形県本部統括支部長 城取良太 ◆官製春闘は国家社会主義的 安倍首相就任から5年間続いた「官製春闘」が大きな転換点を迎えつつあります。 昨年5月に経団連会長に就任した中西宏明会長は国家介入型のベースアップ(ベア)に反発、米中の貿易摩擦や英国のEU離脱等の世界的な経済リスクや、経営陣の「ベア疲れ」に配慮し、従来通りの自律的な労使交渉をベースとした春闘に転換を図りました。 その結果、各社におけるベアは前年水準を軒並み大きく割り込んでいます。 安倍政権はデフレ脱却を図る一環として、労使介入型のベアを実施してきた経緯がありますが、昨年度は「賃上げ率3%」といった異例の数値目標まで課しました。 ベア介入は財政負担を生まずに、国民に広くに好感を生むという政府の考えはあるでしょうが、「労使自治」という原則から考えれば、国家社会主義的である点は否めません。 それに対し、消費増税や不透明な景気動向に備えて、一度上げると極めて下げづらく、固定費増大につながるベアに慎重なのは、経営側として至極全うな考えだと言えます。 ◆労働時間を規制して生産性は高まるのか? さて、来月から「働き方改革関連法案」が施行され、多岐に渡って労働環境の変化が予想されますが、「官製春闘」と同様、現場感覚とはかけ離れた内容となっています。 その中心が「労働時間」に関する改革です。 今までは「36協定(労働基準法36条)」による労使合意があれば、どれだけ働かせても罰則(行政指導はあり)は科されませんでした。 これが4月以降、年間最大720時間の残業上限が法制化され、抵触した場合は企業側に6か月以下の懲役、または30万円の罰金が科されるようになります。 この規制の趣旨は、慢性化する長時間労働を国が取り締まることで、生産性を高め、過労死等の健康被害から労働者を守るという点にあるようです。 しかし現場からは、部署内での業務量の増加を管理職が吸い込まざるを得なくなり、本来のマネジメント業務が疎かになる事で、逆に生産性は低下するのではという心配の声はあります。 また、ある調査で60%を超える新入社員が「(一時的には)長時間になろうとも意欲的に挑戦したい」と答えている中、彼らの意欲と成長の機会を奪う結果にならないかという危惧もあります。 ◆労働時間を規制して労働災害は減るのか? 1か月80時間以上の残業が「過労死ライン」と呼ばれ、こうした残業が慢性的に続いた場合、発症との関連性は確かに強くなると統計的には考えられます。 一方、実際の労災支給の原因で最も多いのは「仕事量・仕事内容の大きな変化」と共に、「嫌がらせ、いじめ」、「悲惨な事故、災害の経験など」が同数程度挙げられ、一概に「長時間労働」が諸悪の根源とは言えないところもあります。 また、今回の改革で「産業医・産業保健機能の強化」がしっかり盛り込まれており、あえて労働時間を法律で規制せずとも、対応できるのではないかということも言えます。 2017年度の年間総労働平均時間の国際比較(OECD)を見ても、日本が1710時間なのに対し、アメリカ1787時間、イギリス1681時間、イタリア1723時間、韓国2024時間と、日本が飛び抜けて長時間労働という事実は決してありません。 このように、現場の実態と合わない、国による一律的な労働時間の「総量規制」の強化が、生産性の向上と労働者の健康を守ることにつながるのかは極めて疑問です。 ◆更なる労働時間の規制強化は日本社会に悲劇を招く? 「働き方改革」の中には、シニア雇用の促進や、一定以上の年収を得る知的労働者は労働時間規制の対象から除外する「高度プロフェッショナル制度」など、今後の日本経済にとってプラスになるものもあります。 一方、「同一労働同一賃金」のもと、正規・非正規の平等化を図ろうとする流れに関して、先進国で最も解雇規制が強く、雇用調整が難しい日本では、企業側から見た非正規採用のメリットを失わせ、逆に失業率を高めるとも考えられます。 日本経済が飛ぶ鳥を落とす勢いだった約30年前、欧米諸国から日本企業の労働時間の長さが不当競争、社会的ダンピングと難癖をつけられ、欧米先進国並みの年間1800時間を目標と強いられたのが、1987年の労基法改正であったことを忘れてはなりません。 「失われた30年」の発端の一つとなったのが、前回の法定労働時間の見直し(週48時間→週40時間)であったとしたら、今回の規制強化が日本経済に更なる悲劇を招く可能性もあるのです。 そもそも、労働時間一つとっても「残業は非効率だからさせない」「量が質を生むから長時間働ける人材が欲しい」など経営者の考えは様々で、それは労働者の立場からも同じはずです。 あるべき労働環境は一律に国が価値判断し、規制すべきものではありません。 企業と労働者の自由意思に任せた労働市場の創出こそ、「人財」「天職」との出会いを無数に生み出し、日本社会の豊かさと幸福感を最大化させる道ではないでしょうか。 日本人が目を向けるべき中国での宗教弾圧 2019.03.09 日本人が目を向けるべき中国での宗教弾圧 幸福実現党・山形県本部統括支部長 城取良太 ◆加速する「宗教の中国化」 3月5日、中国の国会にあたる全国人民代表大会が北京にて開幕しました。 その中で、寧夏回族自治区がイスラム系少数民族・回族の統制政策を進める方針を明らかにし、習主席が提唱した「宗教の中国化」を先駆けて実行する事を宣言しました。(3/7読売7面) 当自治区では、「ハラル」表記の中国語への書き換えやモスクでの国旗掲揚の強制、建築物の中国様式への建て替え等が行われ、共産党幹部の養成機関では、習主席が行った宗教に関する講話が必須科目となり、「宗教の中国化」を思想的に統一する動きも強化されています。 こうした「宗教の中国化」の成功例として、参考とされるのが新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒の弾圧であり、両自治区は協定を結び、「新疆方式」を取り入れることで連携すると報じられています。 こうした動きはムスリムが多く住む甘粛省でも報告され、一気に中国全土に広がる可能性が高いといっていいでしょう。 ◆世界最大の宗教弾圧が行われているウイグル 約1100万人のウイグル族が暮らす新疆ウイグル自治区では、100万人を優に超えるムスリムが拘束、強制収容所で棄教やウイグル族の言語禁止、共産党礼賛教育が強制的に行われ、従わなければ男女問わず、過酷な拷問に晒されます。 収容所の外でも、AIによる顔認証、指紋・音声やDNAサンプルなどで個人の動向を徹底的に監視し、信仰心や教義知識、海外との繋がりなどを数値管理化し、「要注意人物」を割り出す仕組みが既に出来上がっています。 それに対し、昨夏から国際社会でも中国のウイグル弾圧を取り上げ始め、米トランプ政権も、ウイグル族に対する不当な人権侵害について、初めて本腰を上げる姿勢を見せました。 2月には民族的にも同じ「テュルク系」の国、トルコも恣意的な拘束や拷問、洗脳による同化政策を非難、収容所の閉鎖を求める声を国際社会に発しました。 ◆イスラム諸国が沈黙を続ける理由とは 一方、こうした弾圧に対して、同胞であるはずの他のイスラム諸国は沈黙を続けてます。 2月下旬、習主席は記者殺害事件で欧米からの猛烈な非難を受けているサウジアラビアのムハンマド皇太子を自国に招き、欧米による「内政干渉への反対」を表明、擁護する姿勢を示しつつ、経済関係の更なる深化を約束しました。 一方、オバマ政権以降、対米関係が悪化しているエジプトには、「ニューカイロ」と呼ばれる新首都建設やスエズ運河の拡張、エネルギー施設建設等で、IMFの融資を上回る規模のチャイナマネーが流れ込み、ここ数年で一層存在感を高めています。 イスラム過激派の動向に悩まされるシシ大統領としては、この点でも習主席と利害が一致しており、17年にはエジプトに留学中のウイグル人を拘束、強制送還するという弾圧の助長行為まで行っています。 大国を中心に、「一帯一路」構想に参画するイスラム諸国のほとんどが、同胞への弾圧に沈黙を守り続ける理由の一つが、「中国への経済的依存」を保ちたいためです。 また、もう一点は、「人権よりも社会的安定を優先」という点で中国と「同じ穴のムジナ」であり、非難が自国に跳ね返るリスクがあるからです。 2つの点で利害が一致する中国は、イスラム諸国と米国との隙間風が吹く間隙をぬいながら、関係を深め、同胞たちを弾圧しても、沈黙させるだけの影響力を持ってきたと言えるでしょう。 ◆現代の「防共回廊」のカギはウイグルにあり 関岡英之氏の『帝国陸軍知られざる地政学戦略』には、戦前日本がウイグル、回族とも関係を構築し、独立を支援して、反共親日国家を樹立し、中ソによる共産化の拡大を阻止しようとしたという「防共回廊」構想に関して見事に描かれています。 また、現代人よりも遥かに深いイスラムや当地域への造詣を持ち、彼らの独立という悲願を叶えようと一生を捧げた知られざる先人たちの情熱を再認識させられます。 そうした戦前の先人たちの大いなる智慧を継承し、日本はイスラム諸国で唯一、声を上げたトルコと、ウイグルや中国全土に広がるイスラム弾圧について本格的に連携を深めるべきではないでしょうか。 奇しくも、日本・トルコ間の経済連携協定(EPA)の合意に関連し、6月にはエルドアン大統領が来日する見通しとなっているため、そのチャンスを絶対に活かすべきです。 また、中国の「一帯一路」モデルとは一線を画し、技術力や教育力、メンテナンス等の強みを活かしたインフラ輸出等を更に推進し、中国からの脱・経済依存を図っていくべきです。 何より、幸福実現党は日本の政党として唯一、ウイグル弾圧について国連等、国際社会で堂々と訴えて参りました。 民族の誇りや信仰心を強制的に排除し、人間としての幸福感や自由を奪い、思考能力のない機械人間に変えていく―ジョージ・オーウェルの「1984」さながらの思想洗脳が、同時代に行われているという驚くべき事実を、日本の多くの人々に認識頂き、我々の言論に賛同頂けることを心から願います。 トランプ氏が米大統領であることの価値を改めて考える 2019.03.02 トランプ氏が米大統領であることの価値を改めて考える 幸福実現党・山形県本部統括支部長 城取良太 先月末から今後の極東情勢を占う3つの象徴的な課題が立ち並びました。 ◆その1 米朝首脳会談 まず、2月27~28日ベトナムで行われた「米朝首脳会談」です。 初日、トランプ大統領は金正恩委員長と共に和やかなムードを演出していましたが、翌日は一変、昼食会と署名式は急遽キャンセル、事実上の物別れとなりました。 その理由は、米国側が求める「非核化」と、北朝鮮側が求める「経済制裁の解除」の中身に埋まらない隔たりがあったことです。 具体的には「完全なる非核化」へのロードマップ提示に応じて、人道支援等の見返りを準備していた米国側に対し、北朝鮮は約150か所の核施設のうち、寧辺(ヨンビョン)のみの廃棄と引き換えに、「経済制裁の全面解除」を強引に求めた点にあります。 会談結果に関し、北朝鮮に安易な妥協をしなかった点を評価する一方、「トランプ政権の準備不足だ」という論調もあります。 しかし、イランの核合意破棄で象徴されるように、国際世論を敵に回してでも実効性の低い協定には断固「NO」を突き付けるトランプ大統領と、交渉する準備が欠如していたのは、逆に金正恩委員長側だったのではないでしょうか。 有事間際だった1年前から見れば、考えられない進展であるのは確かですが、今回の決裂によって、「完全な非核化」に向けた米国側のプランの中に再び「軍事的オプション」が加わるといっても過言ではありません。 ◆その2 韓国の3.1独立運動 2つ目が、韓国で行われた「3.1独立運動」です。 今年は日本からの独立運動100周年を迎える記念日となり、反日一色となる事が懸念されていましたが、文大統領は例年以上に直接的な批判を控え、意外にも「(未来志向の)日本との協力強化」をも訴える内容でした。 レーダー照射問題を皮切りに、徴用工裁判、慰安婦問題を巡る天皇謝罪発言など、韓国の一方的なスタンスで冷え切っている日韓関係ですが、10月に行われる海上自衛隊の観艦式に、米国やインド、中国を招待する中、「謝罪しない限り(韓国の)招待はありえない」とし、日本も筋を通す姿勢を求めています。 また、ボルトン米大統領補佐官が訪韓を急遽中止した直後、中国軍機が防空識別圏に進入するなど、韓国メディアも「日米韓の安保体制が確固なら、こうした事態は起こらない」と深まる韓国の孤立を懸念する声を上げています。 更に、トランプ大統領の一貫した姿勢による米朝首脳会談の決裂が、文政権には大きな衝撃を与えました。 なぜなら、文大統領が目指す開城や金剛山等での南北協力事業は、事実上見通しが立たず、南北融和という看板も、有名無実化してしまうからです。 こうした背景から、一時的に反日の冷却化を意図とする演説内容だったかもしれませんが、文大統領が日韓合意どころか、日韓基本条約以前に戻ろうとする「過去志向」を持つ限り、基本的な国家間の関係自体、成り立たないはずです。 ◆その3 米中貿易戦争 そして最後に、昨年から激化する「米中貿易戦争」です。 当初、米国は3月2日から年間約22兆円の中国製品への関税率を10%から25%に引き上げる予定でしたが、協議の進展に伴い、交渉期限を延期、3月中に習近平国家主席との首脳会談を開き、最終決着を目指す意向を表明しています。 焦点は国有企業への補助金、外国企業への技術移転の強要など、6分野における構造改革を要求する米国に対し、中国がどこまで飲めるかという点ですが、共産党独裁政の中国が本格的な経済的開国に舵を切れるのか、甚だ疑問は残ります。 一方、長引く貿易摩擦によって、中国経済の失速は著しく、輸出入共に前年を下回り、1年で最も需要が高まる春節においても、内需は振るわず、一刻も早くトランプ関税から逃れたいのが本音でしょう。 難しい選択を迫られる中国は、ギリギリを狙って交渉するはずですが、「時には、交渉の場から立ち去ることが必要」「急ぐよりも、正しくやりたい」と米朝首脳会談後に述べたトランプ大統領の言葉は、これから交渉を控える中国・習近平主席に向けられた明確な警告とも取れます。 ◆トランプが大統領の今は日本にとっての「黄金期」 「トランプ大統領は、中国の共産主義を真正面から敵と捉え、壊滅させようとしている初めての米大統領」と米国研究の大家、日高義樹氏は述べています。 極東情勢が目まぐるしく変化する中、トランプ大統領の在任期間というのは、日本とアジアの平和を脅かす中国の野望を封じ込めながら、極東情勢を好転させる「黄金期間」であることを改めて再認識させられます。 まただからこそ、国内で足を引っ張られながら、世界規模で立ち回るトランプ大統領を補完する真の同盟国としての役割を果たす義務が日本にはあります。 例えば、「拉致被害者問題の解決」といったお願いを繰り返すだけでなく、その分、沖縄基地問題の早期解決等でしっかりと成果を上げ、対中貿易で米国と100%歩調を合わせつつ、国際世論に呼びかける役割も担うべきです。 そして、何よりも中国が虎視眈々と狙う台湾併合の危機です。 トランプ大統領在任期間に日米と台湾が緊密に連携し、極東地域に「自由・民主・信仰」の価値観を広げ、台湾を危機から救っていく使命が、かつての同胞・日本にはあるはずです。 早められたイラン核合意離脱の真意――トランプ大統領はイラン・北朝鮮の核を許さない 2018.05.09 早められたイラン核合意離脱の真意――トランプ大統領はイラン・北朝鮮の核を許さない 幸福実現党・山形県本部統括支部長 城取良太 ◆早められた合意破棄の発表 米国・トランプ大統領は8日午後、イランと欧米関係6カ国が締結した核合意から離脱することを発表しました。 その会見の中で、トランプ大統領はイランとの核合意を改めて辛辣に批判したうえで、最高レベルの経済制裁を科すと表明。 そして、イランが核開発計画を放棄しなければ「今までにないほどの大問題に見舞われる」と警告を投げかけました。 また、金正恩委員長の名前も挙がり、来たる米朝首脳会談の内容を想起させる言及や、日中韓との協力という言葉が出てきました。 予定されていた12日の発表を大幅に早め、日中韓首脳会談の日に合わせてきたトランプ大統領の意図があるようにも感じます。 ◆イランとの「核」対話路線が中東の混迷を助長させた さて、「核なき世界」を提唱し、就任早々にノーベル平和賞を受賞したオバマ前大統領が、自身の集大成の「レガシー」として注力したのが、このイラン核合意です。 この合意はイランが核開発を大幅に制限する代わりに、国際社会は経済制裁を解除するという取引でしたが、合意に至るまで「イランは未だかつて一度も核兵器開発を目指したことはない」という前提条件で協議されてきました。 しかし、イスラエルは4月末、イランが密かに核兵器開発を推進してきた「アマド計画」に関する証拠文書の存在を公開し、イランの虚偽に基づいた核合意を改めて批判しました。 トランプ大統領も昨日の会見の中で「イランの約束が嘘だという決定的な証拠がある」と述べていますが、当の本人は2016年の選挙戦の最中から、この合意内容の真偽や実効性に対し、既に強い不信感を露わにしており、再協議、または破棄すべきだという事を公言してきた経緯もあります。 オバマ氏は一貫してイランとの融和・対話路線を採ってきましたが、これが皮肉なことにイランの野望を増長させ、シリアを中心に中東全域の混迷を助長する結果となりました。 オバマ氏の8年間で更に複雑に絡み合ってしまった中東情勢を正常化させる第一歩として、トランプ大統領による核合意離脱は歴史的な分岐点と言っても過言ではありません。 ◆核合意離脱は北朝鮮に大きなインパクトを与える また、この核合意離脱は今後の米朝首脳会談の動向にも大きな揺らぎを与えることは間違いなく、少なくとも北朝鮮にとっては大きな衝撃であったはずです。 もともとイランと北朝鮮は80年代からつながりが深く、近年では核ミサイル開発で協力関係にあることは公然の事実であり、トランプ大統領は両国の深いつながりについて明確に認識し、言及もしています。 また、両国が国際社会から経済制裁措置を受けている間も、独自のルートを活用した武器弾薬等の取引が横行し、実際に中東・アフリカの戦場で多くの北朝鮮製の武器弾薬が使用されている痕跡もあります。 要するに、どちらかが核ミサイル開発を完全に成功させれば、どんなに厳しい制裁が引かれていても網の目をかいくぐって、直ちに核兵器が拡散する可能性は極めて高いということになるでしょう。 メディアの中には「イランに対する厳しい核合意離脱に比べ、北朝鮮との非核化の合意形成については楽観的すぎる」という批判的な見方もありますが、核弾頭の開発においてイランを先行している北朝鮮に対して、トランプ大統領が手を緩めるとは考えられません。 「完全なる核廃棄、それが出来なければ先制攻撃を正当化」が持論のボルトン氏の起用、直後のシリア攻撃を両国へのメッセージと考えれば、今回の離脱は北朝鮮に対して「時間稼ぎの対話と秘密裡の開発はこれ以上許さない」という明瞭な一線をトランプ大統領は示したと言えるでしょう。 ◆イスラエル、サウジアラビアから考える日本のあるべき姿 そんな最中、日中韓首脳会談を迎えましたが、日本はどうあるべきなのでしょうか。 シリア、レバノン等でのイランの勢力伸長に大きな危機感を募らせてきたイスラエルは同盟国の判断に完全なる支持を表明する傍ら、国境付近でイラン系勢力との一触即発の状態が続く中、自国防衛のために、米国に依存することなく先制攻撃を辞さない姿勢を示しています。 サウジアラビアも米国協力のもと原子力開発に着手し、核保有の可能性に言及するなど、イラン核保有となった際には、直ちに自国と中東の安定を守る体制を確立しようとしています。 翻って、日本の国会審議では野党のボイコットや国家の一大事とは程遠い枝葉の議論で終始し、憲法改正の議論は遅々として進まない状況です。 北朝鮮の完全なる核廃棄を米国が確実に実現すべくバックアップしながらも、イスラエルやサウジアラビアの姿勢に倣い、いざという時には自分の国は自分で守れる体制を構築すべく、憲法改正を推し進めていく使命が日本の政治家にはあるのではないでしょうか。 環境規制の不都合な真実 2015.12.16 文/幸福実現党・山形県本部副代表 城取良太 ◆有名無実化の可能性が高い「パリ協定」 12日夜、世界196か国・地域が参加し、パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)が「パリ協定」を採択しました。 「パリ協定」とは、気温上昇の原因となるCO2を中心とした温室効果ガスの削減によって、地球の気温上昇を産業革命前の2度未満、できれば1.5度までに抑えるという全体目標を掲げ、各国の応分で排出削減の責務を担うという枠組みであります。 1997年に採択された京都議定書では、先進国のみが削減義務を負ったのに対し、今回は全締約国が自主目標を元に削減を図ることとなりました。 そのため日本が誇る高効率石炭火力発電、電気自動車関連の省エネ技術の輸出に期待が高まっています。 しかし一方で、2030年までに26%削減という日本の目標に対して、「排出量をすぐに激減させる技術革新は難しい」「環境規制の強化で負担も増え、業績にはマイナスになりかねない」という懸念も産業界から少なくないのが現実です。 また、この枠組み自体に正当性があると仮定して、大きな疑問が残るのは「本当に全ての国が目標を尊守するのだろうか」という点です。 この点、目標を達成できなかった場合、罰則を科すという規定には反発が強く、実効性のある具体的な規定についてはほとんど議論されておりません。 結局、世界最大の温室効果ガス排出国の中国を中心に、年数が経つにつれてうやむやとなっていき、この枠組み自体が有名無実化していく可能性が極めて大きいと言わざるを得ません。 ◆「CO2増加=温暖化」は本当に正しいのか 更に踏み込んで述べると、COP21が掲げる気温抑制という目標と、温室効果ガスの削減という責務の間に、相関関係が本当にあるのかという点の検証が必要です。 日本のメディアにおいては、「世界全体で目標を達成しよう」というおめでたい論調が大半ですが、海外メディアにはこの枠組みに対する論調は多様性に富んでいます。 例えば、ウォール・ストリート・ジャーナルの社説では、「政治エリートの意見が一方に偏った時ほど警戒すべき」「気候変動が地球を危険に晒すという事自体を疑っている」「パリ協定の内容では世界はより困窮し、技術的な進歩も見込めない」としっかりとした価値判断を行っています。(12/14ウォール・ストリート・ジャーナル日本版) また、温暖化の研究自体が完璧には程遠く、実際に米共和党内部でも懐疑論が根強いのが実態です。 大気中のCO2増加と温暖化に相関関係がないと考える説としては、たとえばアメリカで2007年に発刊されベストセラーになった『地球温暖化は止まらない』があります。 地球は1500年周期で温暖化と寒冷化を繰り返しており、実際に温暖化自体は1850年から始まり、CO2が増え始めた1940年からの数十年は逆に寒冷化が進んだというデータがある点です。 つまり、近年の温暖化は人間が作り出した温室効果ガスのせいではなく、はるかに長いスパンで観た自然サイクルの一部である可能性があるわけです。 こうした確固たるデータから鑑みても、我々はこの温暖化という現象を、短期的な産業発展の副作用というよりも、生命体としての地球の活動といったより大きな視座から見ていく必要性があるのではないでしょうか。 ◆これ以上の環境規制は「不況による不幸」と「各国のエゴ」を増長させる これに対して、「確かに温暖化の原因はCO2増加以外にあるかもしれないが、不確実性があったとしても、将来に向けて『後悔しない政策』を選択すべきである(12/15朝日新聞)」というご指摘もあるかもしれません。 しかしながら、これ以上の環境規制がもたらすものは、残念ながら世界的不況による不幸の生産か、もしくは更なる自国勝手主義の横行といった極めて好ましくない不公平な未来です。 具体的には、こうした環境規制を健気に尊守すれば、不要な負担感によって経済成長を足止めさせられる一方、罰則が不明瞭な枠組みの中では自国の国益を最優先に考え、ルールを守らない国が続出するはずです。 おそらく日本は、この「温室効果ガスと気温上昇」という相関関係すら怪しい枠組みを、疑いもなく愚直に守ろうとするでありましょう。 まさに社会主義体制によく見られるような「正直者が馬鹿を見るような結末」が待っているように思えて仕方がありません。 ◆真の環境問題解決は日本にしかできない 本来、国際社会において中心テーマとして問題にとりあげるべきは、中国のPM2・5に代表されるような、国際社会を巻き込んで多くの環境被害、健康被害を生み出すような公害問題ではないでしょうか。 この点、戦後の高度成長期、日本は大気や土壌の汚染、水質汚濁に伴う水俣病や四日市ぜんそくといった様々な公害問題に直面し、「このままではいけない」という危機感から日本企業の血の滲むような努力で技術を改良し、自ら解決していった歴史があります。 また、12日同日に合意された日印原子力協定に象徴されますが、公害対策としてはもちろん、百歩譲って「温暖化とCO2増加に相関関係がある」と考えたとしても、世界一の安全性と技術力を誇る日本の原発というクリーンエネルギーこそが、世界の環境問題に対する万能薬になり、「将来に向けて『後悔しない解決策』」になる事は間違いないはずです。 経験的にも、技術的にも日本はどの国にも負けない環境先進国です。 国際社会においても、他の国々に遠慮、追従するのではなく、リーダーシップを取って公害問題、エネルギー問題で苦しむ新興国を実質的に導いていく資格と権利が日本にはあるのです。 参考 『大川隆法政治講演集2009第2巻』――「CO2の濃度が増える前から、温暖化は始まっていた」 『幸福維新』――「不況を促進させるCO2排出削減は大幅な見直しを/CO2による地球温暖化は「仮説」にすぎない」 『地球温暖化は止まらない』シンガー,S.F.著/エイヴァリー,D.T.著/東洋経済新報社 世界に誇るべき日本の文化を守りぬくために 2015.11.04 文/幸福実現党・山形県本部副代表 城取良太 ◆世界で大絶賛の日本文化を体感 我らが誇る日本文化にとって、先日非常に嬉しい知らせが届きました。 10月31日に閉幕したミラノ万博において、日本の食文化等をテーマにした日本館では「行列嫌いのイタリア人を並ばせた」と言わしめるほど、最後まで大行列が途絶えることなく、日本として史上初の金賞を受賞したというニュースです。 筆者自身も先月下旬、中東数カ国に赴きましたが、知り合いのラーメン屋から分けてもらった自家製麺セットが香港人のラーメン通を唸らせたことには驚きを隠せませんでした。 また、イランで出会った初老の男女とは毎度お決まりの「おしん」ネタで盛り上がり、ドバイのショッピングモールでは以前に増して、日本のアニメ・フィギュアコーナーが大拡張されており、多くのファンの心を掴んでいることを目の当たりにし、日本のソフトパワーの絶大さが改めて体感できました。 ◆文化の根底にある「自由と平和」 奇しくも、先日(11月3日)は文化の日でありましたが、戦前、11月3日は明治天皇のお誕生日にあたり、「明治節」と呼ばれていました。 戦後になって1946年11月3日に日本国憲法が公布されましたが、現行憲法で「平和と文化」が重視され、国民の祝日に関する法律第2条に「自由と平和を愛し、文化をすすめる」と明文化されていることが文化の日の根拠となっています。 一方で、国民の自由が徐々に制限されうる法案や政策が散見され、また侵略意図を持った国々から断固日本の平和を守り抜く姿勢があるのかなど、この理念に一定の疑義を挟まざるを得ない現状があります。 ここでは、文化の根底にあるとされる「自由」と「平和」の視点から、国内外の情勢を見渡してみます。 ◆共通番号制度は世界でも問題だらけ 第一に、何といっても「マイナンバー制度」に対する懸念が挙げられます。(既に具体的提言を行っておりますので、詳しくはそちらをご覧下さい。「マイナンバーの『のぞき』政策化に歯止めを」http://hrp-newsfile.jp/2015/2459/) もともと、民主党政権下に提出された法案で、その後誕生した自公政権によって一部修正された法案が13年5月に可決、更に2018年から任意で預金口座等にも活用範囲を拡大する改正案が本年成立されています。 「海外(先進国)では番号制度は常識」が推進派の建前でありましょうが、日本のような「共通番号制度」は実はまだ事例が極めて少ないというのが真実です。 具体的に、イギリスでは「共通番号制度」の構想自体はありましたが制度廃止に追い込まれています。(イギリスでは、2006年に「国民IDカード法」が成立。しかし、2010年に誕生した保守党と自由民主党による連立政権が、プライバシーに問題があるとして廃止を決定。) また、フランスでは社会保障番号はあれども共通番号としては用いないのがルールとなっており、更にドイツでは共通番号制度は「憲法違反」となっています。 共通番号が導入されている米国では番号漏えいによる「成りすまし犯罪」が横行し、韓国では2011年に中国のハッカーによって国民の約7割の3500万人もの個人情報が盗まれるという事件が起こり、制度自体の是非を問う議論が高まっているそうです。 海外の先例から考えても、マイナンバー制度は国民の自由を促進するどころか、経済的自由権や個人情報保護の観点から、国民の自由を大きく侵害する可能性の非常に高い悪法と言えるでしょう。 ◆自衛隊は本当に戦えるのかという米側の疑念 「平和」という観点から考察すると、何といっても中国によるアジア全域における覇権主義の進展、または朝鮮有事の危険性でしょう。 確かに、集団的自衛権の行使容認、米海軍の南シナ海への積極的関与、先日行われた日中韓の首脳会談など、日本を取り巻くアジア情勢が平和に向けて急速に進展しつつあるように見えます。 しかし、米国側の視点から日本の安全保障体制を洞察する日高義樹氏は、日本の国防体制の進展に一定の評価を下しながらも、 「安倍首相はこれからアジアに何が起ころうとしているのか正確に理解しないまま集団的自衛権構想を進めているように見える」 「朝鮮半島有事の際、日本の自衛隊が出動した場合には、(補給兵站だけに限って参加するということは不可能で)米国や韓国と同じレベルの戦闘に加わらざるを得ないと考えている」 など、有事において今の自衛隊がリアルな戦闘を戦い抜くことが出来るのかという米専門家たちの疑念を取り上げています。(「誰も知らない新しい日米関係」) この点、3日にはグレーゾーン事態などにおいて自衛隊と米軍の緊密な連絡・調整を行う協議機関の常設化が合意されましたが、そうした疑念を払拭することが出来るかは今後次第と言えるでしょう。 ◆南シナ海情勢でアメリカは頼りになるのか? 南シナ海情勢に関しては、外交的な押し技と引き技を上手く使い分けながら、虎視眈々と自国の権益を拡大するという中国の常套手段からすると、楽観視は出来ません。 実際、南シナ海での米海軍の技術的優位は歴然としていますが、「地の利」がある中国の数的優位は圧倒的で、「いくつかの状況には量よりも質が重要となり得る」と言えます。 また、イスラム国対策でオバマ大統領はここにきて地上戦力の派遣を決定しましたが、今後の展開次第では中東と南シナ海の二正面対峙が本格化することも考えられます。 オバマ大統領の今までの政権運営から考えると「行動基準によって、米国は事態をエスカレートさせることに消極的となり、(南シナ海から)撤退を余儀なくさせられる可能性がある」という専門家筋の見解には妙に信憑性を感じさせます。(2015/11/2ロイター通信) ◆奇跡の国・日本に相応しい憲法を! 結局、国内においては「世界の間違った常識」を模倣し、国民の自由を徐々に侵害していく一方で、「自分の国は自分で守る」という「世界の常識」を、憲法9条に象徴される平和憲法の足かせによって未だ実現できず、平和が脅かされる未来が待っているというのは何とも皮肉なことです。 我々が世界に誇るべき日本の文化を生み出したのは、戦後の日本人の力でも、ましてや日本国憲法でもなく、日本人が歴史的に紡いできた先人たちの智慧であります。 そして、その智慧を守り、未来に継承していくことこそ、今の日本に生きる我々の役割であり、本来の憲法の使命でありましょう。 その点、現行憲法は戦後の断絶によって、外国人の手によって生み出されたものであることから、皇統が2600年以上も脈々と続いてきた奇跡の国・日本に相応しいものではありません。 幸福実現党は真正保守の政党として、日本の誇り愛すべき文化や慣習、先人たちの智慧を保ち、日本の未来を守るべく、「改憲」という既成概念を超えて、日本に相応しい国体の「創憲」に携わっていく所存です。 すべてを表示する 1 2 3 … 6 Next »