Home/ 水野 善丈 水野 善丈 執筆者:水野 善丈 広島第二選挙区支部長 HS政経塾5期卒塾生 ドイツ発の衝撃!!「インダストリー4.0」 2016.01.19 文/HS政経塾5期生 水野善丈 ◆時代を新たなステージへ引き上げる「IoT」 「IoT」、昨年より雑誌やTVなどでも聞くことが多くなったこの言葉。みなさんは意味をご存知でしょうか。 「IoT」とは、「Internet of Things」の略で、身の回りにあるモノにセンサーが組み込まれて直接インターネットにつながる世界のことを言います。 具体的な事例としては、昨年販売された、米テスラ・モーターズの電気自動車「Model S」があります。 この車の特徴は、車とインターネットが繋がっていることで、パソコンのようにソフトウェアアップデートされ、常にテスラが開発した最新の機能(急ブレーキや車線変更など)が車に更新されるようになりました。 「IoT」により車という「ハード」が「ソフト」化してしまったのです。 このようにあらゆるモノがインターネットと繋がることにより、私達のライフスタイルが変わるだけでなく、ビジネスの幅も一段と広がり、「IoT」を駆使した産業が現れてきています。 そして、この「IoT」を国家戦略として取り入れ「インダストリー4.0」プロジェクトを進めている国が「ものづくり大国」ドイツです。 ◆ドイツ発「第4次産業革命」 「インダストリー4.0」とはドイツ政府が産官学共同で進めている国家プロジェクトで、ドイツの主要産業である製造業の競争力強化を狙い2011年に構想を打ち出されました。 そして、その中核となっているのが「スマート工場=考える工場」です。生産に関わるあらゆるデータをネットワークにつなぐことで、工場が自律的に動き、顧客の要望に合わせ必要なものを必要なだけ生産するということが可能になりました。 また、その経済効果は、ドイツ国内だけで2025年までに11兆円、経済成長を1.7%押し上げるということまで言われています。 ドイツは、国家戦略としてこの「スマート工場」を世界で標準化させることを狙っており、中国の進めるAIIB(アジアインフラ投資銀行)にもいち早く参加し、世界の製造業を手中に収めようと躍進しています。 ◆世界で起きる「IoT」覇権争い また、それにアメリカも黙ってはいません。GE、IBM、インテル、シスコシステムズなどシリコンバレーのトップ企業180社が集まり、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムを発足し、世界の産業全体を広くネットワークでつないでいこうとしています。 今後、世界中で、モノづくり企業や産業界がインターネットで繋がることが予想されます。 そして、デジタル通信やデータ分析などの手法をどこがいち早く国際標準化するかということが急がれ、「IoT」の世界では、各国による激しい覇権争いが熾烈化していくでしょう。 ◆ライフスタイルの変化 こうした「IoT」化の流れの中で私たちの社会環境や働き方も一段と変化してきます。 たとえば、ドイツの「スマート工場」では、多品種少数生産、究極にはそれぞれの消費者の好みにあった“オーダーメイドビジネス”が実現されるようになります。 また、仕事現場では、「IoT」化が進みセンサーが吸い上げた膨大なデータにより、故障に繋がる異常を発見し、自動ですべて改善されるようになります。 また、現代社会問題でもある少子高齢化により先進国でも働き手が不足していく中で、「IoT」を駆使したロボットや人工知能など普及により、労働負担も削減され熟練工の定年も延ばせるようになることも期待されます。 ◆技術の進歩と人間の係わり しかし、一方で「IoT」化が進み「人の仕事がなくなるのでは?」という声もあります。 これには「インダストリー4.0」を進めるドイツのメルケル首相が「人の仕事は、なくならない。より創造的な仕事に従事するようになる。求められる仕事も変化していく。社会が新しい仕事をつくっていく必要がある。」と言っています。 これに関しては私もそう思います。「IoT」を「目的」ではなく「手段」として使い、より新しい付加価値・仕事を作り上げていくことができれば更なる発展へと向かえるものだと考えます。 ◆求められる「ジョブクリエーション」 いくら技術革新が進んだとしても、人間の判断は必ず求められます。 P・F・ドラッカーが著書『断絶の時代』で「知識社会においては最も重要な問題が、知識に関わる意思決定である。」と言っています。 「IoT」化により集められたデータや情報が集約されたとしても、それを次なる付加価値へ繋げていくのは、人間の意思決定である点は何も変わらないのです。 つまり、こうした技術革新が進めば進むほど、人間にはより創造的なことが求められ、新しい仕事をつくっていくこと「ジョブクリエーション」が重要になってくるのです。 ◆「ジョブクリエーション」を促進する経済政策 しかし、そんな中で後れを取っているのが日本の現状でもあります。 日本は、高度経済成長以降、急速に産業が発展し、世界にも引けを取らない技術力もあります。その一方で、90年代より長年続いたデフレ不況により設備投資が抑制され、設備の老朽化が著しくなっています。 特にソフトウェアの後進を怠った工場が多く、古いシステムがそのまま稼働している例も少なくありません。(平成25年度経済財政白書「設備年齢の国際比較」参照) こうした現状を打破するためにも、デフレ脱却からの経済成長を目指さなければいけません。現在、安倍政権下で「消費税増税」がなされようとしています。 しかし、そうではなく「減税政策」により民間の活力を取戻し、設備投資ができる下地を作ることが今の政府には求められると思います。そうしてこそ、これからの日本の未来産業を構築していくスタートが切れるのではないでしょうか。 ◆ドイツのリーダーシップに習う「未来産業促進」 またドイツでは、旧東ドイツ出身の物理学者であったメルケル首相ならではのリーダーシップが取られ「インダストリー4.0」プロジェクトが政府主導で行われていますが、政治家がやはり国に対して未来ビジョンを指し示していくことも重要な役割です。 日本も世界に突出した未来産業を構築すべく、民間では進めることが困難なリニアモーターカーや航空・宇宙産業などに政府がリーダーシップをとり推し進めていくことも必要だと考えます。 やはり未来は志すところから拓かれていくのです。 参考文献 ・「正義の法」大川隆法 ・「断絶の時代」P・F・ドラッカー ・週刊ダイヤモンド「いまさら聞けないIoTの全貌」 ・「決定版 インダストリー4.0」 尾木蔵人 ・平成25年度経済財政白書 「自由」を基盤とした経済政策の必要性 2015.11.24 文/HS政経塾5期生 水野善丈 ◆最低賃金決定に異例の政権介入 企業の最低賃金の水準は毎年夏に、労使の代表が厚生労働省の「中央最低賃人審議会」という場で議論され決められています。 この議論に歴代の政権は口を出すことはありませんでしたが、今夏、安倍首相は「賃金の大幅な引き上げ」を要求、そして、来年度賃金を3%増やすように企業に要請しました。 ◆企業の内部留保に課税? さらにこれだけに止まらず、最低賃金引上げの為に、企業の内部留保への課税も政府・与党内で議論が進められています。 内部留保とは、企業の最終利益から配当などにお金を回した後に残る企業が自由に使えるお金のことをいい、企業にとっては体力の部分といえます。 そこに対して、政府は内部留保に課税することによって、企業に投資や賃金を増やさせる狙いを考えているのです。 ◆目的は個人消費を上げるため? では、なぜ政府はここまでして市場に介入し賃金を強制的に上げようとするのでしょうか。 その狙いとして政府は、「最低賃金を上げることによって、落ち込み傾向にある個人消費を増やすこと」を考えています。 なぜなら、安倍首相は2020年までにGDPを600兆円に増やすという目標達成を目指しており、それを達成するためには、GDPの6割を占めている個人消費を増やしていかなければならないと考えているからです。 ◆矛盾した政策 しかし、ここまででちょっと考えてみれば、政府が矛盾した政策をしているのが分かると思います。 そもそも、安倍首相がGDPを増やしていく上で大切だと考えている個人消費が冷え込んでしまったのは、今年、消費税が5%から8%の増税されたことが原因であることが明らかです。 そして、それに懲りず、2017年には10%へのさらなる消費増税をしようとしています。 この状況をみるにつけても、自分たちで立てた目標(GDP600兆円)に対して、答えの道(個人消費の活性化)を知っているにも関わらず、そこに自ら障壁(消費税増税)を持ってきて通れなくし、国民に更なる負担を強いる政策をしていることが分かると思います。 ◆消費減税ですべて解決 つまり、安倍首相が本当にGDP600兆円を目指しているならば、国民生活を縛り経済成長を押しとどめている消費税増税を止めて、消費減税をすることが先決なのです。 その結果、政府が心配している「GDPの6割を占める個人消費」が回復し、真にGDPを増やすことができ、財政赤字も縮小することができるのです。 ◆徴税強化策は自由を奪う また一方で、政府が増税ありきの政策を実行する時は、必ず国民の自由が阻害される方向に行くということも知らなくてはいけません。 今年に入り消費増税だけでなく、所得税・相続税の最高税率の引き上げも行われ、徴税強化が進められています。 それに伴い、政府による市場介入が増え、マイナンバー制度の導入による国民の私有財産の監視強化も進められ、ますます国民の自由が狭まっているのです。 ◆「自由からの繁栄」が大切な理由 幸福実現党はこうした「自由」の観点からも、現在の政府が進めている「国民から税金をいかに取り、それを使うか」という「大きな政府」の体制に対して、警鐘を鳴らしています。 政府が勘違いしてはいけないのは、国家の主役が「政府」ではなく「国民」であるということです。 幸福実現党がなぜ「自由からの繁栄」を訴えているのかというと、「一人一人の国民を最大の価値・主役として、それぞれに与えられた天性や才能を発揮させる方向に向かってこそ国家が繁栄する」からなのです。 政府は、政府中心の徴税強化の考えを白紙に戻し、減税政策・規制緩和といった国民の自由を広げる方向で経済政策を考えるべきだと思います。 「自由」から観たマイナンバー制度の考察 2015.10.06 文/HS政経塾5期生 水野善丈 ◆マイナンバーの手続き開始 いよいよ10月よりマイナンバー法が施行され、来年2016年1月よりマイナンバー制度の運用がはじまります。 全ての国民・企業に関わる重要な制度ですが、その内容を理解している人は少ないのが現状です。 今回は、「自由」という観点からマイナンバー制度がどのようなものなのかを考察し、「自由」というものの大切さを改めて感じて頂けたら幸いです。 ◆マイナンバー制度で見込まれる拡大利用 そもそもマイナンバー制度とは、国民一人ひとりに番号を割り当て、個人情報を役所が一元化するもののことを言います。 現在政府は「社会保障」「税」「防災」の目的のもと利用するとしていますが、すでに利用範囲拡大は見込まれています。 例えば、9月に成立した改正法では、2018年から本人の任意のもと「銀行口座」の情報と番号を結びつけることが決められ、さらに2021年を目度に、銀行口座への結びつけを強制する方向も検討しています。 このように政府が国民の私有財産まで把握しようとするところまですでに考えられているのです。 ◆ 「社会保障と税の一体改革」による課税強化の補強のためのマイナンバー制度 その背景にあるのが、政治家や財務省・国税庁が考える「社会保障の財源を確保する為に国民から税金を取れるだけとる」という考え方です。 例えば、今年に入ってからも、国税庁の富裕層への課税取り締まりは強化されており、1月には所得税や相続税の最高税率を引き上げ、7月には有価証券1億円以上の保有者の海外移住による課税逃れを防ぐ「出国税」も導入されました。 しかし、そもそもこうした流れは、国内の富裕層への自由を奪う課税だけでなく、増税という景気を悪化させながらも税収が増えない政策であり、社会保障の財源も得られず、根本的な解決は考えられていないことが分かります。 つまり、「国民からいかに税金を取るか」という視点しかなく「いかに無駄なく税金を使うか」といったところの政府の改善は考えられておらず、ただ国民の負担を求める姿勢が顕著に表れています。 こうした姿勢の中には、国民の血税である税金を当たり前に国民から取れるものと軽んじて考えられているのもうかがえます。 ◆導入コストに対するメリットの低さ〜企業にとっては「労務」という「増税」〜 また、3000億円以上の税金を投入して取り入れるマイナンバー制度でありながら国民へのメリットは「あらゆる手続きの簡易化」しかないのも問題です。 それだけでなく、企業にとってはマイナンバー導入そのものが負担でしかありません。 一番の負担となるのが、情報漏洩による厳しい罰則が企業に課せられており、各企業に従業員のマイナンバーの情報管理が任されているところです。 たとえば、全国に1万点以上ある大手コンビニエンスストアとなると、バイトも含め20万件以上の膨大なデータを管理しなくてはなりません。 こうした状況を見るにつけても、日本の99.7%を占める中小企業にとっては、セキュリティ管理ができず、倒産の危険性をはらんでくる企業も出てくるでしょう。 つまり、マイナンバー制度自体、企業にとっては「労務」という新たな「増税」になっているのです。 ◆マイナンバー制度の本質〜監視管理型社会への道〜 以上のことからも、マイナンバー制度は、「国民の自由」を代償に政府を中心とする国、社会主義的な「監視管理型社会」への一歩が踏み出されたものと見えます。 そのため幸福実現党は、マイナンバー制度を受けて、5つの問題点を発表しています。 「実は危険! 「マイナンバー制度」5つの問題点~情報流出リスクが高く、国家による監視社会を招く~ 」 http://info.hr-party.jp/2015/4709/ ◆自由への選択、そして繁栄へ〜選択の豊富さこそ経済成長への道〜 「自由」は選択の豊富さを与え、それが真の発展・繁栄へと導くものだと信じます。 マイナンバー制度導入により考えられている私有財産の監視・コントロールといったものは、逆にこの国から富を奪い逃すものです。 人それぞれに与えられた天性や仏性というものを、選択の豊富さ、自由の中で成長させていくことこそ、この国がより豊かになっていく道であります。 国民のこうした自由を奪うマイナンバー制度に対しては、動向を見ながら今後とも警鐘を鳴らしていかなければなりません。 この国が真に自由からの繁栄を実現することを止みません。 インテリジェンス機能強化へ――真のリーダー国家としての条件 2015.08.04 文/HS政経塾5期生 水野善丈 ◆米国、日本を盗聴 内部告発サイト「ウィキリークス」は31日、米国家安全保障局(NSA)が2006年から日本政府や企業35か所を対象に盗聴を行っていたことを明らかにしました。 これに対して一部の政府高官は「情報の世界では、首相や閣僚は盗聴されていることが当然だと思って対応するのが普通だ」(産経)と述べていますが、今後、防止策はしっかりと考えなければならないでしょう。 日本では、2014年に「秘密保護法」、今月には産業スパイの防止のため「改正不正競争防止法」が可決され、国内からの情報流出を避ける改革を進めている矢先に発覚しました。 ◆世界の情報機関 2013年にも米政府が独メルケル首相を盗聴していたことで話題となりましたが、国際社会においては外交の前段階として、諜報活動や情報収集は国家をあげて取り組まれています。 またその取り組みは、単に情報を集めるだけでなく、情報機関によって分析や評価の加えられた生きた情報、つまり、「インテリジェンス」を吸い上げ国家戦略に生かされています。 こうした「インテリジェンス」を担った情報機関は世界各国に存在しています。 アメリカでは、国家情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)などの15機関があり、イギリスでは、保安局(MI5)、秘密情報部(SIS)などが存在し、フランス、ドイツ、ロシア、イスラエルなど各国もこうした情報機関を持っています。 ◆日本における情報機関の現状 日本には、内閣情報調査室を中心に、警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁、海上保安庁など様々情報機関は存在し、内閣情報会議や合同情報会議など取りまとめる委員会もあります。 しかし、そうした情報機関や委員会があるにも関わらず機能しきれていないのが現状です。 例えば、各情報組織において所掌や予算、定員や影響力などをめぐって競合しており、相互の積極的な情報共有はなく、情報を集約し官邸に伝達する体制が非常に弱くなっています。 また、各組織も人的情報(ヒューミント)手段がほとんど無く、対外情報収集に弱いという弱点もあり、情報機関の力が発揮できていません。 ◆情報力の無さが露呈した事件 この日本政府の情報収集力、分析能力に致命的欠陥があることが露呈したのが、2013年発生したアルジェリア人質事件でした。 当時は現地から政府へ情報は全く入らず、イギリスやアルジェリア政府や海外メディアが流す情報でしか判断することができず、外務省をはじめ各省庁には一次情報を収集する手段すらありませんでした。 また、2014年に起きたISISによる日本人拘束事件も同様な状況で、政府は全力で救出のために努力しましたが、独自で現地の情報を得られず現地に繋がりを持たない日本は外務副大臣を急遽送り対応するしかできない状況でした。 こうした中で、安全保障関連法案が可決の見込みが出て、邦人救出への自衛隊の法整備は改善されつつありますが、まだ諸外国における情報収取力、分析能力に欠けた状況では安全保障上も万全とは言えません。 ◆インテリジェンスに強い国家こそ真のリーダー国家となれる 以上のように、めまぐるしく変化する国際情勢の中で、主権国家としてインテリジェンス機能を保持することは必須です。 そして、在外邦人救出を念頭においても情報収集の機能強化を考えなければいけませんし、今後、日本がリーダー国家として主体性を持ち国家戦略を立てていく上でもインテリジェンスを強化する体制は検討されなければなりません。 また、現実に検討される際には、政府の情報機関を国会や世論がいかに監視しコントロールするかということも極めて大切なキーワードとなっていると思われます。 なぜなら、世界の情報機関では、政府とは別の知らないところで活動し諸外国と軋轢を生じさせ、国家戦略に反する事例もあるためです。 民主主義の政治体制をアイデンティティとする日本は、世界のインテリジェンスを見ながらも日本独自のインテリジェンスを構築してこそ、世界を正しい方向へ導いていける真のリーダー国家へとなれるのだと思います。 核抑止力の必要性 2015.06.09 文/HS政経塾5期生 水野善丈(みずの よしひろ) ◆国際社会における核保有国の立場 先月5月23日、5年に1度行われる核不拡散条約(NPT)再検討会議は、最終文書に合意されず閉幕しました。 イランやアラブ諸国が強く主張していた「中東地域の非核化」問題での合意が成立しないだけでなく、「核禁止条約」構想も同文書より削除されました。 日本においては、広島・長崎が求めていた被爆地訪問も中国の反発で盛り込まれない結果に終わりました。 日本は非核保有国の中でも、唯一の被爆国として広島・長崎を中心に核兵器廃絶を訴えてきてはいるものの、核なき国際社会を実現するのは困難であるのが現実です。 なぜなら、日本自身もアメリカの「核の傘下」に守られているように、核兵器を持つことで自国や同盟国を安定的に守ることができ、それゆえ核保有国にとっては国際社会における発言力を増すものとなっているためであるからです。 ◆核保有を背景に覇権を拡大する中国 現在の中国や北朝鮮を見るにつけても、日本やアメリカに対して発言力を増している背景には、明らかに核兵器を保有していることが発言力に繋がっていると言えます。 特に中国は、アメリカの財政悪化による軍事費の削減が続く中、軍事支出をこの20年間で22倍にも増やし、国防とは考えられないほどの軍事拡大も強めています。 また、近年では「一帯一路」構想を提唱しているように、ユーラシア大陸すべてに覇権拡大を狙っており、その勢いは世界各国を中国の傘下に置こうとしているようにも見えます。 現在の中国は、20年前には考えられないような大国となっており、経済成長とともに軍事力を増強し、核兵器を保持することにより国際社会においても存在感を強めています。 ◆共産主義圏が核兵器を持つ怖さ また、自由主義圏が持っている核兵器と共産主義圏が持っている核兵器とでは、意味あいが少し違うということも認識する必要があります。 自由主義圏の核兵器の使用に関しては、国民の世論によるチェックが効き、さらには国際世論によるチェックも効くため、核実験すら行うには厳しい目が向けられ核兵器使用の抑止となっています。 実際に過去フランスで核実験が行われた際は、国際社会に予告もされ、それに対して国際世論から非常に非難を受けています。 自由主義圏では、核に関して、こうした透明性があるのです。 しかし一方で、共産主義圏である中国は、国家主導で情報遮断が行われ、国内においては言論の自由、出版の自由など国民の自由が制限されているので、国民が戦争や核兵器に反対することができません。 このように共産主義圏では核兵器の透明性は皆無に近いのです。 実際に、中国は1995年5月のNPTの無期限延長に署名をした数日後に、新型の核弾頭の実験を行い、自国のアジア・太平洋における力を誇示させ国際社会を驚かせました。 同様に独裁国家である北朝鮮も本年2015年、日本海に向けてのミサイル発射を行っており、日本やアメリカに向けて脅威を示しています。 これをみても独裁者の一声で核実験やミサイル発射が行われる中国・北朝鮮が核兵器を持つことは、自由主義圏が核兵器を持つことよりも一層恐ろしいことを認識する必要があるでしょう。 ◆日米同盟強化だけで日本は安全といえるのか 現在、中国のアジア・太平洋における覇権拡大に備え、安倍政権では安保法制の見直しがなされ日米同盟は強化されています。 しかし、2020年代になると中国の実質経済規模と軍事予算規模はアメリカを凌駕し、世界一の規模になると予想されています。 もし中国の経済力・軍事力が世界一になったときに、アメリカが日本を守ってくれるか保障はありません。 米政治学者のミアシャイマー教授も著書で「中国の経済規模がアメリカよりも大きくなれば、中国は巨大な軍事能力を獲得し、アメリカに対して数多くの屈辱を与える能力を持つ国になる」と分析しています。 中国がアメリカを超えるパワーを持ったとき、日本人の命を守るためアメリカ人が犠牲になることはまずないと考えられます。 つまり、現在進めている日米同盟強化は重要なことではありますが、それで日本の防衛が十分であるかは別の話であるということなのです。 ◆日本は精神的脱藩し自主防衛体制を整えるべき アメリカの「核の傘」で守られてきた日本でありましたが、これからは真剣に「自分の国は自分で守る」ということを考えていかなければいけません。 日米同盟を堅持しつつも、中国・北朝鮮の核兵器の恫喝に屈しないため必要最小限の自衛能力として「自主的な核抑止力」も持つべきであるでしょう。 しかし、この核兵器の保有の議論は長らくアメリカや日本国内における反発により進んでこなかったのです。 こうした現実に則した国防の議論を進めていくためにも、アメリカに頼りっぱなしの精神、そして、戦後70年間、日本国民が持ち続けてきた自虐史観から精神的脱藩をしなければならないときが来ているのではないでしょうか。 農協の実態と改革――農業に自由を!! 2015.04.13 文/HS政経塾5期生 水野善丈(みずの よしひろ) ◆安倍政権の農協改革始動 政府・自民党は2月9日、全国農業組合中央会(JA全中)の地域農協に対する監査・指導権を廃止することなどを柱とする農協改革草案を決定しました。 4月9日にはJA全中の万歳章会長も辞任を決めるなど、農協改革が少しずつ進みつつあります。 しかし、実質的な農業全体の競争力を高めるまでにはいっていないのが現状であります。 では、今後日本の農業改革はどうされるべきなのでしょうか。それを知るためには、現在の農協の実態を知ることが大切です。 ◆そもそも農協ってなに? そもそも農協とは、「農業協同組合」の略語であり「JA」のことです。 農協が作られた目的は、「農協法」の第一条に「農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進および農業者の経済的社会的地位の向上を図り」と定めてあるように、農業全体の発展を考えたものでした。 その背景には、戦前から貧しかった農村や農業の改善や終戦直後の食糧難の時代に「農業生産力の増進」による食料増産が国政の最重要課題であったことがありました。 一方で、農協は大きな権限を有した組織でもあります。協同組合であるがゆえに独占禁止法から適用を除外されて、銀行も生保も損保もできる、日本で唯一の万能な法人になりました。 そして、組合員を多くもつ農協は政治的にも影響力をもつ組織となっていったのです。 こうした農協の権限が今日に至るまで残されてきたことが、農業の衰退をもたらす原因ともなっているといえます。 ◆農協組織はピラミッド型組織構造 農協組織は、協同組合であるにもかかわらず、上下関係によって階層的に秩序づけられ、「全国組織」「都道府県組織」「市町村組織」という序列のピラミッド型の組織になっています。 本来、協同組合というのは、組合員が組織したものであるので、「助け合い」が本質であり、上下関係はなく、生協をみても分かるように連合会を通さなくても自由に取引ができるようになっているのが当然です。 しかし、農協は、農業“協同組合”と言いながら、完全に「全国組織」が統治する組織となってしまっています。 ◆「農業」の衰退による「農協」の繁栄 そうした組織であることが顕著に分かるものとして「整促事業方式」と呼ばれる制度があります。 「整促事業方式」とは、地域の農協や県連が、「全国組織」の全農を通さないで独自に肥料や農薬を買ったり、農産物を販売したりすることを禁じる制度のことです。 この制度により、農家のコスト削減の選択の自由は蝕まれる一方で、全農は手数料で収益を得ることができ、農産物のコスト上げも引き起こされました。 その結果、農協の農業部門は赤字を出しています。では、その赤字はどこで補填しているのでしょう。 それは、JAバンクやJA共済です。JAバンクは、90兆円もある預貯金の7割をウォール街で運用し、その利益で農協の体制を賄っています。その一方で、本来融資されるべき農業には預貯金の1~2%しか融資されていません。 そして、この預貯金や保険加入者を賄うために、准組合員(農業に関係ない人々)を増やし、零細兼業農家を保護する路線をとり、農地が主業農業者へわたる機会も失わせています。 これが、補助金を出してまで組合員を残そうとする理由でもあります。 このように農協は冒頭に述べた「農業法」の第一条に書かれた「農業者の協同組織の発達を促進する」は果たしていますが、一方で本来の目的である農業の発展・繁栄を成し遂げてきたかと言うと、そうではないように思われます。 ◆日本の農業は強い!!自由からの繁栄を目指せ!! 日本の農業生産は世界で第7位であり、先進国の中ではアメリカに次ぐ2位です。 現在では、農協を脱退し、業績を上げる愛知県の岡本重明さんの作った「有限会社新撰組」のようなところや、IT農業による品質UPで高付加価値農業の更なる期待もみられています。 日本の農業にはまだまだ可能性に満ち溢れているのです。 そういった日本の農業の可能性を引き出すために必要な事として、3点を提案します。 (1)自由な農協へシフト 過度の補助金を廃止し、農協から農林中金や共済を切り離し、全農を株式会社にするなど、現在の農協を解体する。組合員が主体の自由な地域農協を作ることのできる体制を整える。 (2)農業ビジネス拡大に向けての規制緩和 主業農業者の規模拡大や新規農業ビジネスが始められるように、農地規制を見直し、日本の農地を最大限に生かせる体制を整える。 (3)TTP参加により官民一体で農業を輸出産業へ 官民一体となり、日本の農産物を世界に弘め、世界の食糧問題への積極的な解決へ貢献していく。 幸福実現党は、農業にもっと自由をもたらし、農業に従事する多くの人たちの可能性を引き出し、日本を世界の食糧問題も解決する農業大国へと押し上げてまいります。 <参考文献> ・『農協解体』 山下一仁 ・『農協との「30年戦争」』 岡本重明 ・『The Liberty』 5月号 すべてを表示する « Previous 1 2