Home/ 川辺 賢一 川辺 賢一 執筆者:川辺 賢一 幸福実現党茨城県本部代表(兼)政務調査会経済部会長 岐路に立つ日本経済――必要なのは減税、減税、そして減税! 2016.02.24 文/HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆アベノミクス3年の評価 アベノミクスが始動して3年以上が経過しました。肯定も否定も、様々な議論がありますが、皆様はどのような感想をお持ちでしょうか。 「有効求人倍率、過去24年ぶり高水準」「企業収益、過去最高」「失業率3.3%、着実な雇用改善」・・・。 確かに一部には経済状況の改善を示すデータもあります。しかし、これらは私たち生活者の実感に添ったものだと言えるでしょうか。 実際、今月16日、総務省が発表した家計調査によれば、1世帯あたりの消費支出は前年比2.7%減(実質)で、2年連続の減少でした。 また家計の支出額は、データの残る2000年以降で、過去最低を記録。国民の根強い「節約志向」は払拭できておりません。 さらにサラリーマン世帯の実質収入は、前年比で0.8%の減少です。つまり国民と政権の一番の約束であった「デフレ脱却」は全く進んでいないのです。 アベノミクスが始まってから3年、「まずは株価から、大企業から、徐々に国民一般に経済効果は波及するから」という説明が続きました。 しかし、今年に入って株価は下がり、円高で大企業の収益にも危険信号が灯っています。果たして私たちはこのまま、自分たちの未来を現政権に委ねていて良いのでしょうか。 ◆マイナス金利は景気に効くのか こうした経済状況に危機を感じてか、先月末、日銀はマイナス金利の導入を発表。このマイナス金利は、経済にどのような影響を与えたのでしょうか。 民間銀行が日銀に預けている預金(日銀当座預金)の一部にマイナス金利が導入されたことで、日銀当座預金から、それと同じくらい安全で、かつ利子収入が見込める長期国債に民間銀行の資金が流れていきました。 その結果、市場で売買される長期国債の価格が、利子を乗せて返って来る償還時の価格よりも高騰し、マイナス金利が長期国債にまで波及。その影響を受け、住宅ローンや自動車ローン等、金利全般が低下していきました。 しかし、政府によるさらなる消費増税が控えているため、どれだけ金利が下がっても、国民の節約志向は深まるばかり、企業もお金を借りて新規事業を始めようとは致しません。 どれだけ日銀が孤軍奮闘、マネーを供給し続け、金利をマイナスに引き下げても、日銀自ら、事業を始めたり、企業に融資したり、お金を直接、使うことはできないのです。 「どこに、何を、どれだけ投資したら良いのか」「何にお金を使えば良いのか」これが日銀には判断できないため、金融政策の限界が来ているのです。 ◆必要なのは減税、減税、そして減税! 一番正しいお金の使い方を知っているのは国民です。また一番、正しい投資先を知っているのも、現場で日夜格闘している企業戦士たちです。 だから減税なのです。国民や日本企業が自由に使えるお金を増やすこと、デフレ脱却の起爆剤として、一番必要なのは、減税、減税、そして減税なのです。 消費税率を8%に引上げて消費不況になったのだから、給付金やバラマキ予算を組むのではなく、もとの5%に税率を戻す。これが最も的確な景気対策になるはずです。 また、安倍政権の肝いりで、今年度中に法人実効税率が32.11%から29.97%へと下がることになりましたが、同じ先進国でもイギリスはすでに20%です。アジアでは中国が25%、韓国24.2%、シンガポール17%です。 29%でも他国と比較すれば、重税という重い鉄鎖に縛られて活動している日本企業の現状は変わらないのです。 「減税をして国債発行や財政赤字が増えたらどうするのか」という声もあるかもしれません。しかし今、むしろ問題になっているのは、日銀の量的緩和やマイナス金利で国債への需要が増大し、市場で流通する国債が少なくなってきていることです。 今の日本では国債は、貨幣と同程度に誰もが欲しがる安全資産になっており、マイナス金利の今だからこそ、政府は国債を発行して、内需を喚起すべきなのです。 幸福実現党は「減税、減税、そして減税!」。国民目線、生活者の立場から本物の景気対策に取り組みます。 金融政策――これまでとこれから 2016.01.13 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆米国の利上げと新興国の危機 安倍政権発足から3年が経過――。今年2016年は、上海株式市場の暴落から始まり、世界経済が大きく変動する予感をされている方も多いのではないでしょうか。 今年、世界経済はどのような方向に変化し、対して日本どのように対応すべきなのでしょうか。また、これまでのアベノミクスに対して、私たちはどのような評価を下すべきなのでしょうか。 本稿では、マクロ経済に最も大きなインパクトを与える金融政策を中心に、世界経済の動向を踏まえ、日本が向かうべき方向性について考えていきます。 そこで重要なのは、昨年12月、米連邦準備理事会(FRB)は9年ぶりの利上げを決定したことです。 以前から2015年中の利上げは予想されていたとはいえ、米国に追随して、中南米や中東諸国始め、利上げに踏み切る新興国は多く見られました。 新興国が米国の利上げに追随するのは、これまで高成長を見込んで新興国に流れていたマネーが高利回りの米国に反転し、新興国の資本流出による、債務危機や通貨暴落、物価急騰を防ぐためです。 しかし新興国にとって米国追随の利上げは、資本流出や債務危機、通貨暴落を防ぐ術にはなっても、返す刀で国内経済を傷つけます。高い金利では、企業は設備投資を、一般消費者はローンを組んだ大きな買い物を、控えるようになるからです。 実際、90年代に中南米やアジアで起こった債務危機や通貨危機の多くは、米国の利上げ局面、ドル高局面で起こっています。2007年のサブプライム・ショックも直接の引き金を引いたのは米国自身の利上げです。 米国の利上げは、国境を越えて、地に足が着かずに膨らんだ経済を崩壊させる傾向があるのです。 ◆日本の金融政策 さて、新興国が米国に追随して利上げに踏み切るなか、日本では利上げの議論が見られないどころか、追加緩和の必要性さえ議論されております。 「追加緩和をすれば、円が弱くなる。これ以上、円を弱くして良いのか」という議論も一部に見られますが、事態は全く逆です。 なぜならば、米国の状況にかかわらず、日本は異次元緩和を継続できるというのは、「円」の本質的な強さを示しているからです。 野党等、一部に安倍政権の円安トレンドを批判しますが、もし現状の政策を変更して、円高にしようとするならば、米国以上の速度で利上げをするしかありません。 それは日本の企業家精神をつぶし、消費マインドを冷え込ませるばかりか、世界経済をも危機に陥れることになります。 異次元緩和の発動以降、日本の失業率は3.3%まで改善し、学生の就職率はリーマン・ショック前の好況時の水準を超えて改善しました。 これは異次元緩和の成果であり、もしも2014年4月の消費増税がなければ、政府が音頭を取らずとも、自然に実質賃金の上昇は始まっていたのです。 ◆日本が描くべき国際戦略 さて、米国の利上げによって新興国経済に不安が広がるなかで、日本はこれを世界のリーダーシップを握るチャンスとして、捉えなければなりません。 IMFに働きかけるだけでなく、日本が中心となってチェンマイ・イニシアティブ等、IMFから独立して、動ける枠組みを強化していくべきです。 また、円の基軸通貨化、国際化に向けても政府として戦略を立てていくべきです。 円の国際化を進めていく上でも、現状の異次元緩和路線を継続、もしくは、より強化していく必要があります。 なぜなら、円の国際化に必要なのは、何よりもデフレから完全脱却し、日本経済の成長軌道を取り戻すことだからです。最終消費市場としての日本の魅力を高め、円で取引をする誘因を高めるためにも、デフレ脱却を最優先すべきなのです。 月と火星に植民都市を!――「宇宙エレベーター」が可能にする人類の夢 2015.10.21 文/HS政経塾2期卒塾生 幸福実現党・埼玉県本部幹事長代理 川辺賢一 ◆映画「UFO学園の秘密」上映 今月10日より、幸福実現党大川隆法総裁、製作総指揮の映画「UFO学園の秘密」が全国の劇場にて上映開始いたしました。 映画では高校生の主人公たちが宇宙人やUFOに遭遇し、様々な惑星を旅する様子が描かれております。 宇宙人やUFOを否定する人もいるかもしれません。しかし、今後、日本が経済的にも政治的にも、国際競争力を維持していくために、宇宙開発への注力が不可欠であることは論を待ちません。 奇しくも今月14日~16日には東京ビッグサイトにて宇宙航空分野の産業見本市「東京エアロスペースシンポジウム」が開催され、併設のテロ対策特殊装備展、危機管理産業展と合わせて、10万人を超える人で賑わいました。(筆者所属の企業も映画には協賛企業として、展示会には出展企業として参加)。 さて、幸福実現党大川隆法総裁は立党以前から、21世紀日本の国家目標として、宇宙開発のあるべき方向性を提示しています。(参照『愛、悟り、そして地球』) それが表題の「月と火星に植民都市を」です。 地球の人口増加によるストレスを新しいフロンティア、すなわち他惑星への移住政策によって解消し、逆説的ではありますが、宇宙時代に向かって大きく踏み出すことで、地球という星の持つ意味や豊かさがわかるというのです。 ◆宇宙エレベーターの建設を しかし現状、「月や火星に出かける」というのは、我々一般人にとって夢のまた夢です。 理由は莫大な費用がかかるからです。この莫大な費用が人類一般の宇宙旅行や月や惑星の探査、入植地の建設を妨げる現状最大の要因となっております。 現在計画されている民間の宇宙旅行計画では、高度100kmの旅行で1200万円以上、本格的な宇宙旅行で約12億円、月旅行で120億円の費用がかかり、NASAの試算ではアポロ型宇宙船で月面着陸した場合、総計約12兆5千億円もの費用がかかるとされます。 では一体なぜ、これだけの費用がかかるのでしょうか。 現在、宇宙開発の中心は主に「ロケットの打ち上げ」です。人工衛星にしても、有人宇宙飛行にしても、地上から宇宙へ人やモノを輸送する手段は、ロケットの打ち上げに限られております。 そしてこのロケットの打ち上げのなかでも、特に地球からロケットを打ち上げて、高度3万6千kmの静止軌道上にまで物資を運ぶのに、莫大な費用がかかるのです。 逆にもし、より安価な方法で、地球から静止軌道上、及びその先まで、人やモノを輸送する手段が確立されれば、例えば月面基地の建設等も20年後と言わず、来年にでも始めることができます。 そして技術的に実現可能で、ロケットと比較して圧倒的に安価な宇宙輸送手段こそ、宇宙エレベーターなのです。宇宙エレベーターとは、高度10万kmの宇宙空間から垂れ流されたケーブルをつたい、宇宙ステーションまで物資を運ぶシステムです。 これまで宇宙エレベーターは、地球から10万kmに及ぶ機構を支える素材がなかったために夢物語でしたが、1999年頃、鋼鉄の400倍の強度を持つカーボンナノチューブが日本人により発明され、現実に実現可能なアジェンダとなりました。 宇宙エレベーターの建造総費用はたった1.2兆円です。10年間、1200億円の支出に耐えられる国や企業、個人であれば建造可能なのです。 これにより宇宙輸送や月面探査の費用は、何と98%も削減され、運搬可能な積載トン数も増加。利用可能な宇宙空間は一気に広がります。 宇宙エレベーター上に建設される宇宙ステーションは、月や惑星に向かうロケットや人工衛星の発着地となり、人工衛星の運用も格段に安くなることで、宇宙関連市場の拡大や新たな通信システムの構築が促進されるでしょう。 何より宇宙エレベーターの建設によって、人類の月や火星への移住と都市建設が初めて現実的なアジェンダとなるのです。 ◆新たな宇宙時代に大きく踏み出せ さて現在、日本の宇宙開発は、米国やロシア、中国等と比べて、遅れを取っております。 しかし、だからこそチャンスなのです。宇宙エレベーターは、これまでのロケット打ち上げ志向の宇宙開発を陳腐化させ、宇宙開発の在り方を根本から変えてしまう「破壊的技術」だからです。 NASA(米国航空宇宙局)では、10~20年先を見越した事業計画が立てられており、官僚機構であるNASAにとって、ロケット打ち上げを前提とした開発計画を破棄し、過去の慣例的な予算配分を変えるのは、とてつもない冒険です。 また宇宙エレベーターの発着地に最適な場所は、赤道付近で南半球の洋上、大陸の西側とされるため、ロシアや中国にとって有利な地域ではありません。(太平洋の東部から中部にかけての洋上が最適な候補地の一つ)。 ゆえに日本こそ、宇宙エレベーター建設に名乗りを上げるべきです。そして月と火星における植民都市の建設を21世紀の国家目標として掲げ、新たな宇宙開発の地平を切り拓いていくべきです。 宇宙には無限の夢が広がります。何よりも私たちが全く予想もしていなかった知見の発見があるはずです。幸福実現党は宇宙に夢を馳せる全ての人たちが宇宙旅行に飛び立てる時代を創造して参ります。 参考文献 『愛、悟り、そして地球』(大川隆法著) 『救国の秘策』(大川隆法著) 『宇宙旅行はエレベーターで』(ブラッドリー・C・エドワーズ、フィリップ・レーガン 共著) これで良いのか日本の民主主義!?――戦後70年談話が象徴するもの 2015.09.09 文/HS政経塾2期卒塾生 幸福実現党埼玉県本部幹事長代理 川辺賢一 ◆粉飾談話で支持率回復 「かつて自民党は歴代政府の政府答弁や法解釈などをずっと引きずってきたが、政権復帰したらそんなしがらみを捨てて再スタートできる。もう村山談話や河野談話に縛られることもない」※1 「村山さんの個人的な歴史観に日本がいつまでも縛られることはない。」※2 これは一体、誰の言葉でしょうか。 どちらも安倍首相が、一度目の総理大臣を辞めた後、在野の衆院議員時代に語った言葉です。 一方、首相に返り咲いて2年半が経った今年8月、同じく安倍首相は戦後70年談話のなかで以下のように述べました。 「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。(一文略)こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」 ここで言う「歴代内閣の立場」とは、文脈上、過去の植民地支配と侵略に対して痛切な反省と心からのお詫びを表明した「村山談話」等だと理解できます。 首相就任のたった半年前の発言と首相になってからの談話で、180度矛盾する見解を表明していて、しかもその後、政権の支持率が回復している。――これは一体、何を意味しているのでしょうか。 私たち国民は建前では「嘘つきは嫌いだ」と言いながら、本音では「正直さ」も「誠実さ」も政治に求めていないのかもしれません。 マスコミに真実を求める姿勢があるならば、この安倍首相の矛盾を徹底的に追及して、首相になる前の発言となった後の談話とどちらが真実なのか明らかにすべきです。 それをせずに都合の良い時だけ政治の汚職や嘘を追求するなら、日本の民主主義は茶番だと言わざるをえません。 ◆政治に誠実さを求めるならば、まず憲法を変えるべき そうは言っても国民の多くは「汚い政治は嫌い」「政治家には正直であって欲しい」と建前上、言うかもしれません。 しかし私たち国民が本心から政治に誠実さを求めるならば、まず憲法を変えるべきです。 談話発表で支持率が回復した安倍政権も、その前は安保法制の採決で支持率を落としておりました。 この問題では、憲法学者のほとんどが安保関連法案を違憲だと表明して話題になりましたが、そのうちの7割の憲法学者は自衛隊の存在自体、違憲あるいは違憲の可能性があると表明しております。 憲法を職業にする憲法学者でなくとも、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とある憲法9条第2項を字面通り読めば、確かに憲法上、自衛隊が存在して良い理由がわかりません。 日本国憲法を字面通り、あるいは憲法学者の大半が示す通りに理解するならば、私たち日本国民は、自衛隊を廃止するか、憲法を変えるか、どちらかを選ばなければ、「憲法でも嘘をついている」ことになります。 立憲主義によれば、憲法とは国の最高法規であり、権力を制御して、民主主義を守るための大事な法です。 しかし、その大事な憲法で国民が嘘をついていて、どうして日本に正常な民主主義が機能するでしょうか。「民主主義や立憲主義が大事だ」と言うならば、まず憲法で嘘をつくのをやめるべきです。 ◆日本は国際秩序への再挑戦を! このような戦後日本の歪んだ民主主義は、日本がGHQに占領され、あらゆる言論がGHQの検閲を受け、GHQが作った日本国憲法に対しても、彼らの占領政策に対しても、批判が許されなかった「閉ざされた言論空間」から始まったものだと考えられます。 またそれは安倍談話の「新しい国際秩序への挑戦者」という言葉にも象徴されます。 本来、「国際秩序」というのは価値中立であり、良い秩序もあれば、悪い秩序もあります。にもかかわらず、日本では安倍談話を肯定する側も、批判する側も、「国際秩序に挑戦した」こと自体悪いことであるかのように論じられます。 当時の国際秩序は、安倍談話のなかにもあるように、欧米列強諸国が植民地を巻き込んで経済のブロック化を進める秩序です。 安倍談話にある「民族自決」は欧州に限られた動きで、アジア・アフリカの有色人種は独立国家を持てず、人種差別を受けていた、さらに自由貿易ではなく、保護貿易が進められた――そういう秩序に挑戦して何が悪いのか、正義や民主主義や人種平等や自由経済の観点から一体どう説明できるのでしょうか。 そして現代の国際連合においても、事務総長が中国の抗日戦勝式典に参加する等、全く理解できない行動をとっています。これが国際秩序であるならば、挑戦して当然です。 私たちは、このような戦後日本の歪んだ民主主義を真実の光で検証し直し、間違った国際秩序に挑戦した先人たちの気概を取り戻すべきです。 ※1 2012年5月「産経新聞インタビュー」 ※2 2009年2月号「正論」 ギリシャ危機は終わらない。――根本解決に必要なこと 2015.07.29 文/幸福実現党埼玉県本部幹事長代理 HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆ギリシャ危機は終わったか 今月23日、ギリシャ議会は増税や年金改革関連法案に加え、銀行の破綻処理手続き等を柱とする財政改革法案を可決。これにより、ギリシャはEUから求められていた金融支援の条件をクリアしました。 「ギリシャ危機の後退」を受け、世界の株式市場は高騰。2万円台を割り込んでいた日経平均株価も2万500円台まで回復しました。 では、これでギリシャ危機は終結に向ったのでしょうか。 確かに、労働人口の4分の1とも言われる公務員を抱え、早くて50代から年金受給が始まるギリシャ経済の現状は持続不可能であり、ドイツを始め、金融支援と引換えにギリシャに改革を求めるEU側の主張にも正当な点はあるでしょう。 しかし、若年層失業率が50%を超え、名目・実質共に一人当たりGDPがピーク時の4分の1も減少している状況で、増税を始め、さらなる緊縮政策が断行されれば、いっそう失業者が増大し、失業者救済のための公共支出が求められることが予想できます。 これでは、たとえEUが求める改革が断行されても、ギリシャ債務問題は深刻さを増すばかりか、EU支援に依存したギリシャはやがて国民の意思による予算決定、すなわち国民による主権行使が何一つできなくなるでしょう。 つまり、ギリシャとEUが現状、向っている未来は、かつて債務国であった東ドイツを債権国の西ドイツが吸収したとの同様、EUという第3者機関を通じた「ドイツのギリシャ吸収」、あるいは「ギリシャのEU直轄領化」です。 むろん、東ドイツと西ドイツの場合と異なり、言語も民族も異なる国家の統合は、常に破局の危機に晒され、その度に、日本も含め、世界経済は迷惑を蒙るでしょう。 では、ギリシャ危機の根本解決には本来、何が必要なのでしょうか。 ◆ギリシャに必要な改革 まず、「50代で退職したギリシャ人の生活を、どうしてドイツ人が税金で面倒を見なければならないのか」という率直なドイツ人の感覚は間違ってないでしょう。 かつて英国病とマーガレット・サッチャーが闘ったように、勤労意欲の低下したギリシャには労働組合の弱体化政策、国有資産の民営化、社会保障費の削減、行政のスリム化等といったドイツが求める改革の断行は一部不可欠であり、ギリシャは鉄の意志を持った指導者を選出しなければなりません。 しかし、同時に不可欠なのは、独自通貨の復活と通貨切り下げを通じたギリシャの国際競争力回復です。 現状、ギリシャは通貨切り下げではなく、デフレによって、つまりギリシャの製品・サービス、そして労働賃金が名目・実質共に、下落していくことを通じて、国際競争力を取り戻そうとしています。 ところが、統計上、あるいは直感的にも、名目上の賃金給与額が低下し続ける社会(デフレ下)で、景気回復や失業率の改善は不可能で、ギリシャは国際競争力の回復、つまり債務返済のために、失業率を増大させなければならないという、矛盾した状況に陥っているのです。 だから独自通貨の復活と通貨切下げが必要なのです。 もしもギリシャが独自通貨ドラクマの復活を決断すれば、通貨の切下げによって、ギリシャは自国の製品・サービス、また賃金給与の名目額を下落させることなく、対外的な競争力を取り戻すことができるのです。 実際、英国病からの脱却にはサッチャーによる改革だけでなく、ポンド危機による通貨切下げが必要でした。また97年通貨危機に見舞われた東アジア諸国においても、通貨の暴落自体が次の成長を後押ししました。 日本政府も世界経済のステークホルダーとして、ギリシャ問題をEUやIMFだけに任せるのではなく、意見を述べるべきです。 例えば日本政府には1兆ドルを超える外貨準備があり、その準備から一部融資することで、ギリシャの債務不履行を防ぐことができます。 日本はその見返りに、日本の改革案をギリシャに履行させ、また円建ての返済を求めることで、欧州における円国際化を進め、ギリシャ進出を足かせに欧州における人民元の国際化を企てる中国を牽制することもできます。 ◆緊縮財政と決別を 緊縮財政ではギリシャ問題の解決は難しいこと、そして根本解決に必要なことを述べて参りましたが、1930年代の大恐慌を経験した世界は、既に緊縮財政の間違いを痛い程、学んでいるはずなのです。 大恐慌以前の世界では、金と自国通貨の価値を連動させること、つまり金本位制がグローバル・スタンダードでした。 供給側に制限のある金を基準に貨幣を刷れば、貨幣の価値暴落はまぬがれ、世界経済は安定すると考えられていたのです。 ところが金本位制の下では、金の流通量、あるいは金の埋蔵量に世界の貨幣供給量が規定されるため、世界経済は成長しようとすればするほどに、デフレ、賃金の下落、景気悪化、結果的としての社会秩序の不安定化が進む構造となっていました。 そこで世界は金本位制と決別し、金ではなく、供給側に制限のない国債やその他債券・証券を担保に貨幣を発行するようになったのです。 金の価値は供給が制限されることで保たれますが、債券には供給側の制限がありません。ところが、たとえ新規債券が発行されても、人々の勤労により、新しい価値が付加されれば、債券の価値は保たれるのです。 緊縮財政の発想が世界経済の成長の足かせとなっています。これを乗り越えるために必要なのは、勤労によって富を増やすことができるという世界観です。 今こそ、私たちは緊縮財政と決別すべきなのです。 時価総額バブル期超え――バブルとは言わせない本物の繁栄に向けて 2015.06.10 文/幸福実現党埼玉県本部幹事長代理 HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆東証一部、時価総額バブル期超え 先月22日、東証一部の時価総額が591兆円に達し、バブル絶頂期(1989年12月)を上回り、25年ぶりに過去最高を記録しました。 こうした経済状況に対して、アベノミクスを評価する声もあれば、「官製相場」だと言ったり、「政治が無理やり作ったバブルだ」と言う声もあります。 では、私たちは一体、現在の経済状況をどのように分析し、どのような未来経済に向かうべきなのでしょうか。そこで本稿では経済金融の観点から、現在の分析と未来への提言を行います。 まず現在の相場を特別「官製相場」であるとする考えに対して、筆者は違和感を持ちます。 というのも、もし現在の相場が「官製」なら、「官製」でない相場を探す方が難しいからです。 例えば2003年4月末、厳格な不良債権処理に向けた小泉政権の方針発表を受け、当時バブル後最安値であった7603円台まで急落した相場も、デフレ容認的だった民主党政権期に8千円台~1万円台で低迷し続けた相場も「官製相場」に違いありません。 中央銀行を中心とした現代の銀行制度や統一的な財政制度を持つ近代的な主権国家を前提とするならば、良いか悪いかは別にして、政治の影響を受けない株式市場は存在しないのです。 そして一般に株価は景気の先行指標と言われますから、株は安いよりも高い方が良く、実体経済の回復のためにも株高は必要なのです。 ◆株高から「実感ある景気回復」へ しかし一方で現政権は実体経済の回復を潰すような、間違った政策も実行しております。 先月、名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金が24ヶ月ぶりにプラスに転じたと報道されましたが、24ヶ月も実質賃金が減少し続けたのは異常なことです。 それは昨年4月の消費税率の引上げで、賃金が上がらないのに一般物価が押し上げられたことが原因です。 また日本経済は米国等と比較して、株高が実体経済の回復に波及しづらいと言われます。 それなのに政府は昨年1月、NISA導入に伴って証券優遇税制を撤廃し、株高の実体経済への波及を阻害するばかりか、株高自体を阻害する手を打ってしまっているのです。 幸福実現党はかねてより消費税率5%への引戻しと証券売買に掛かる税金の撤廃を提唱し、株高から「実感ある景気回復」を後押しする経済をつくろうとしています。 ◆中央銀行改革――権力の正統性を問う さて冒頭では「政治の影響を受けない株式市場は存在しない」ということを述べました。 特に昨今の株高やドル高円安の為替相場が、日銀による2013年4月以降の「異次元緩和」や2014年末の「追加緩和」、また米連銀の「QE3終了」や「利上げ観測」によってもたらされているように、いかに中央銀行の権力が巨大であるかが伺えます。 円高が定着すれば、日本企業の海外移転比率が上昇し、円安が定着すれば、日本企業の国内回帰が促されるように、中央銀行の政策は為替への多大な影響を通じて、日本の産業構造をも変える力を持つのです。 しかし、こうした中央銀行の権力に関して、その正統性を問う議論はあまり見られません。 例えば日銀最大の株主は財務省であり、そのトップは財務大臣、そして財務大臣は総理大臣に任命され、総理大臣は国民に選出された国会議員により指名されます。 中央銀行においては時の政治や世論の動向に左右されない「独立性」が重要視されますが、その権力構造を冷静に分析する限り、「独立性」とは名ばかりで、一人一票を原則とした政治の原理と不可分であることがわかります。 「独立性」が担保されなければ、中央銀行は公共性や全体の景気動向を勘案するのではなく、マスコミ先導型の世論や政治の恣意的な判断に従って、例えば倒産寸前の金融機関につなぎ融資を提供したり、しなかったり、その判断を下すことになるのです。 それに対し、幸福実現党・大川隆法総裁は講演で「日銀は新たに出資を求めるべきだ」との提言を行っております。 日銀が民間から出資を募り、民間優位の資本構成になれば、これまでの世論による支配から、市場による支配へと、日銀の権力構造は根底から変わるのです。 現代の銀行制度の中心にあって一国の産業構造に多大な影響を与える中央銀行は、民間の金融機関や産業界の総意が反映される体制であるべきではないでしょうか。 東証一部、時価総額バブル期超えを迎えた今、株高を「実感ある景気回復」へ変え、バブルとは言わせない本物の繁栄を作っていく必要があります。 幸福実現党は新しい提案を通じて、日本と地球全ての平和と発展繁栄に全力で尽くします。 間違った金融規制案を迎撃せよ!――日本から生まれる新しい世界秩序 2015.05.12 文/HS政経塾2期卒塾生 川辺 賢一 ◆間違ったグローバルスタンダード 「90年代には、アメリカ押し付け型の『グローバルスタンダード』というのが流行っていましたが、これによって、他の国の経済は、そうとう破壊されたところがありました。」 「少なくとも、日本の経済が、『グローバルスタンダード』によって破壊されたことは間違いないと思います。これによって、日本の金融機関は軒並み潰れました。」 幸福実現党・大川隆法総裁が『国際政治を見る眼』(2014)のなかで、こう指摘するように、世界経済、とりわけ90年代の日本経済は、グローバルスタンダードの名を借りた金融規制、いわゆるバーゼル規制によって、大変、苦しめられてきた経緯があります。 以前にも筆者が指摘したように、それは当時、躍進中だった日本経済を狙い撃ちしたような内容であるばかりか、結果的に世界経済の低迷をも促すものでした。 参照:http://hrp-newsfile.jp/2015/1994/ http://hrp-newsfile.jp/2014/1478/ しかしながら、主要国からなるバーゼル銀行監督委員会は再び、間違った金融規制案を各国に課そうとしております。 具体的な規制内容としてバーゼル委員会は2つの選択肢を示しています。 1つは、購入時より値下がりしていく国債を保有している銀行は、新しい共通ルールにもとづいて、その国債の一部を売却するか、新たに資本を増強する必要に迫られるというもの。 もう1つは、各国の金融監督局の権限に基づいて国債値下がり時の売却や資本増強が求められるという内容で、不合理な規制に関しては、事実上、各国の裁量で無視できる余地が残ります。 もしも、最初の案が導入されれば、国債の値下がり時に、銀行によって国債が売却され、それが国債の値崩れにつながり、また国債が売却される、悪循環に陥る可能性があります。 これに対して銀行の国債保有率の低い欧州は規制強化を主張し、対して長期国債を多く保有する銀行の多い日米は各国の裁量の余地が残された柔軟な仕組みを求めています。 80年代後半に発案された国際金融規制(バーゼルI)は米英の結託によってグローバルスタンダードとなりましたが、今回の規制案は、日米で結託し、戦略的に迎撃していくべきです。 ◆日本は国際金融に関する骨太の哲学を持て さて、世界共通のルールに対して、異議を唱え、新しいルールの発案をしていくには、金融や貨幣、国債に関する根本的な議論が必要です。 国際金融論の大家として知られるJ・M・ケインズは、かつて「現金には国債やその他の資産とは違って金利がつかないのに、なぜ人々は現金を持ちたがるのか」という問題提起をしました。 ケインズは、様々な資産や財・サービスと容易に即座に交換できる現金特有の性質(流動性)に着目し、国債やその他の資産に金利がつくのは、流動性を手放すことへの対価であると考えました。 しかし、現在、世界は超低金利時代に入り、特に日本の10年物国債の金利は、今年に入って史上初の0.1%台にまで低下しました。 国債の金利が最低水準にあるということは、ケインズの世界観からすれば、日本では今、現金と国債の境界がなくなりつつあることを意味します。 実際、幸福実現党・大川総裁は『もしケインズなら日本経済をどうするか』(2012)で、「ケインズの考えでいくと、日本のような大国になれば、『国債を発行する』ということは、『単に借金をする』ということではなく、『アメリカがドル紙幣を刷っているような感覚に近い』ということです」と述べています。 こうした世界観からすれば、「国債をリスク資産とみなして、国債の保有量に応じて資本(現金)を積み立てる」という発想自体、日本やアメリカではナンセンスなのです。 それに対して、欧州では一つの金融機関の不良債権問題で一国の政府が吹っ飛んでしまうような小国が数多くあります。 そうした小国が発行する国債と、現金と同等に近い性質(流動性)を持つ国債は区別されるべきです。 ◆日本が新しい世界秩序形成をリードせよ さて、中国主導のAIIB設立が世界を賑わせ、欧州や新興国と米国との間でも異なる見解や対立があるように、国際金融のアリーナでは次の世界秩序形成をリードしようと各国がそれぞれの思惑をぶつけ合っています。 例えば欧州連合(EU)も、見方によっては、かつてナポレオンもヒトラーも成し遂げられなかった欧州統一の夢・野望を、21世紀において、通貨と財政の統合という非軍事的な手法で静かに進めていると考えることもできます。 翻って日本はこれまでのように米国や欧州が発信する新しい秩序やルールに受身で従っているばかりであってはなりません。 世界一の債権国である日本は、新しい世界秩序の形成をリードするだけでの資力を持っているのです。その資力を生かして、日本から新しい提案や構想、世界秩序のあり方を発信していく必要があります。 どうなる中国経済!?――日本は中国危機に備えた対策を 2015.04.21 文/HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆世界経済のリスク、中国 中国は15日、今年1-3月期の成長率が7.0%であることを明らかにし、2009年1-3月期以来の低い伸び率であったことがわかりました。 中国の成長鈍化はいまや欧州での経済危機と並び、世界の経済成長を阻害する最大のリスク要因となりつつあります。 果たして、一部のエコノミストや評論家たちによって久しく喧伝されてきた「中国バブル崩壊」論は現実になるのでしょうか。本稿では中国経済の動きを分析し、日本に求められる対策について論じます。 ◆外貨資産を売却し始めた中国 さて15日は中国経済に関してもう一つ注目すべきニュースがありました。 昨今、中国が米国債保有額を大きく減少させたことにより、米国債保有額で日本が中国を抜いて、約6年半ぶりに首位に立ったのです。 これまで中国は輸出拡大を図って為替相場を元安に誘導するため、外為市場で「元売り・ドル買い」介入を続けて来ました。また、そこで得たドル資産を米国債で運用していました。 そのため、中国のドル準備や米国債の保有額は急激に膨張し、2008年8月以来、中国は世界最大の米国債保有国となっていたのです。 ところが昨今の景気後退と米国の利上げ観測により、海外から中国に流入していたマネーが反転し、低リスクかつ高利回りが期待される米国に、流出し始めたのです。 その結果、今年3月、中国は元相場の急落を防ぐため、米国債で運用していたドル準備の一部を売却し、外為市場で元を買い支える「元買い介入」を実施したのです。 つまり、中国は輸出拡大を目的とした「元売り・ドル買い」介入から、元急落を防ぐための「元買い・ドル売り」介入へと為替政策を切り替えたのです。 実際、李首相は15日、「一段の元安望まず」と発言しているように、元安による中国の成長モデルは今、限界に直面しているのかもしれません。 ◆矛盾に直面する中国の経済政策運営 15日の発表が明らかにしたように、不動産市況の不振や相次ぐシャドウバンキングの倒産により、企業の生産や投資が伸び悩み、中国は内需も外需もいまいちです。 そのため、中国担当のエコノミストやアナリストには、中国人民銀行に「さらなる利下げ」を求める声もあり、実際、人民銀の周小川総裁も先月、デフレリスクに警戒する必要があるとし、「一段の緩和余地」があることを示唆しています。(人民銀は19日、預金準備率引下げを決断) しかし、片方で元相場の急落を防ぐべく元買い介入を行いながら、もう片方で内需刺激のために利下げを行うのは、政策運営として混乱していると言えるでしょう。 なぜなら、人民銀による利下げは、国際金融の観点からは、元安要因となるからです。中国の利下げと米国の利上げによって、中国からのマネー流出はさらに加速するでしょう。 さて、これまで「中国バブル崩壊論」は一部のエコノミストや評論家によって喧伝されて来ましたが、共産主義国家ということもあって、実際の中国経済の実情を知るのは困難でした。 ところが、このように矛盾に直面する中国の政策運営から、中国経済の苦境を伺うことができます。 ◆日本の対策――「中国バブル崩壊」対策と「AIIB吸収」構想 さて、私たちは中国クライシスを警戒し、政府は対策を打ち出すべきです。 まず第1に政府は「中国バブル崩壊」対策を打ち出すべきです。 具体的には90年代00年代の過度な円高で中国に進出せざるを得なかった日本企業の中国撤退あるいは親日アジア地域への移転を、国際協力銀行やそのための基金を設立し、金融的に支援することです。 かつて1920・30年代も日本は通貨政策の誤りによりデフレに陥り、経済的に大陸へ活路を見出さざるを得なくなりました。そして、それが日中戦争の遠因となったのです。 これを教訓とするならば、政府は日中友好のためにも、日本企業の中国流出を金融的に支援すべきです。 第2に「アジアインフラ投資銀行(AIIB)吸収」構想です。 先に述べたように、中国経済は現在、下降軌道にあります。そうした中国主導のAIIBに日本が参加を見送ったのは、経済的に正しい判断であったと言えるでしょう。 ただし、幸福実現党が日本の世界戦略として、リニア新幹線や民生化スペースシャトルにより、全世界を一つに結ぶ構想を掲げるように、日本としても、中国政府が提唱する「新シルクロード」構想自体には共感を寄せるべきでしょう。 しかし、下降軌道にある中国主導で進められるのは心もとない限りであり、また本来、こうした構想は一国の主導ではなく、環境や人権にも配慮する複数の国によって、民主的・平和的に進められるべきです。 よって、日本としては時期を見極め、米国の資本を巻き込みつつ、アジア開銀によってAIIBを吸収合弁・子会社化していく道を構想すべきです。 私たち幸福実現党は日本と地球、全ての平和と発展繁栄に全力で尽くします。 2015年、地球新世紀の幕開け――左派経済学の打破から第2の産業革命へ 2015.03.31 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆ピケティ経済学の論点 フランスの経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』は米国での出版を契機に大きな話題となり、今年1月末の来日もあって日本でも注目されました。 ここではピケティ経済学の論点と矛盾点を踏まえつつ、私たちが築くべき21世紀の経済社会について論じてまいります。 ピケティは過去200年に渡る欧米諸国のデータを集積することにより、以下の言説を唱えました。 1)世界中で所得と富の分配の格差拡大が進んでいる。2)その要因は資本収益率>国民所得の上昇率(以下、r>g)にある。 つまり、例外的な期間を除けば、一部の資本家が所有する資本の収益率(r)は国民一般の所得上昇率(g)を常に上回る。3)グローバル資産課税や税制の累進性強化によって世界的所得格差を是正すべきだ。 これはノーベル経済学賞受賞者であるクズネッツが唱えた「資本主義経済は発展すればするほどに格差解消に向かう」とする定説を覆すものです。 ピケティによれば、クズネッツが研究対象とした期間は、二つの世界大戦とそれに挟まれた期間、すなわち1913年から1948年に限られており、この間に戦争や革命による動乱で株や海外権益等、資本家が保有する資産が暴落または喪失されたため、この期間に限ってr>gの不等式が逆転し、格差が解消に向かったとされます。 ピケティが空間的にも時間的にもクズネッツの研究を圧倒するデータを集積し、クズネッツの定説を陳腐化させた点は評価されるべきでしょう。 しかし政治的・政策的な結論としてグローバル資産課税や税制の累進性強化がそのまま正しいと言えるかどうかについては冷静な議論が必要です。 ◆ピケティ経済学の矛盾点 ピケティ経済学の特徴は理論によってではなく、過去の事実、膨大なデータの集積によって、未来の経済社会への予測を立て、政策提言をした点にあります。 例えばピケティは欧米における人口増加率の上昇期と一人当たりGDPの上昇期が、だいたい重なっていることから、人口増加率が低下傾向にある現在の世界経済はやがて長期停滞に向かっていくと予想を立てます。 しかし、たとえ人口の増加率と一人当たりの経済成長率に正の相関がみられたとしても、人口増加が経済成長を規定するとは言えません。 一方、著名な経済史家のウィリアム・バーンスタインは、著書『「豊かさ」の誕生』のなかで、19世紀西欧で富の飛躍的増大がもたらされた要因は、私有財産制の確立や科学的精神の勃興だとしています。 人々の勤労意欲を掻き立てるため、経済成長には所有権の確立が不可欠であるとする説は、理論的にも経験的にも批判の余地がなく、現代経済学においても基本理論となっております。 それを踏まえるならば、ピケティが言うように、rの上昇を抑えるため課税強化を進めると、人々の勤労意欲の減退を通じて、gの上昇をも妨げてしまい、結果、目的であったはずの格差是正も進みません。 また、そもそも格差是正を進めることが政治的正義であると無前提に受け入れられがちですが、ピケティ自身が認めるように、かつてr>gの不等式が逆転したのは戦時期前後の動乱期に限られます。 国民所得の上昇率が長期停滞に向かう世界で、もしもr>gの不等式を逆転させようとするならば、世界戦争や大恐慌に匹敵するインパクト、すなわち株や土地等のかたちで所有される富が喪失される事態を起す必要があるでしょう。 90年代初頭、日本で政策的に引き起こされたバブル潰しで幸せになった人がいなかったように、格差是正のためとはいえ、自発的に資産価値を下落・喪失させるのは馬鹿げています。 ◆2015年、地球新世紀の幕開け! それでは私たちはいかに長期停滞予測を打破し、豊かな経済社会を創造していくべきでしょうか。 近代の経済史に学ぶならば、まず国民の所有権を侵害する課税強化はなるべく避けられるべきです。そして19世紀の産業革命に先んじて科学的精神の勃興、すなわち新しい学問の誕生があったことも忘れてはなりません。 さて、本年4月、ついに日本発の本格私学、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)が開学します。 創立者の大川隆法総裁は著書『勇気の法』でこのように述べます。 「この21世紀の100年間に、日本を発展・繁栄させ、世界一の国にしなければなりません。政治や経済、芸術をはじめ、宇宙開発や海洋開発などの科学技術の分野、その他あらゆる分野で世界一になることです。それが、日本に生きる若者たちの使命です。」 今、まさしく地球新世紀の幕が開ける時です。幸福実現党は新しい科学、学問の発展を支援し、第2、第3の産業革命を起こして参ります。そして日本を中心とした史上空前の繁栄の文明創造に貢献いたします。 ギリシャ債務の経済的帰結――EU問題からアジアの未来を考える 2015.03.10 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 はじめに――東日本大震災から4年を迎えて 3月11日――未曽有の被害をもたらした東日本大震災から4年を迎えました。 あらためて震災によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。 また被災された方々が一日も早く以前のような平穏な日々を取り戻すことができますよう、わが政党としても努力して参りますことをお誓い申し上げます。 ■ギリシャの債務問題 1月25日、ギリシャで反緊縮派の新政権が誕生し、一時、ギリシャのユーロ離脱やデフォルトの危機が高まりました。 先月20日のユーロ圏財務相会議では、国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)からの金融支援が条件付で4ヵ月延長されることが決定されたものの、ギリシャ債務問題をきっかけにした経済危機の可能性は拭えていない状況です。 さて、20世紀における2度の世界大戦の中心となった欧州で、欧州統合の理念が掲げられ、それを経済統合という形でいっそう推し進めるために導入されたのが共通通貨ユーロです。 今、欧州で起こっているのは、「ドイツもギリシャも一つの欧州だ」という政治的理想に、「ドイツとギリシャは違う」という経済的現実が突きつけられ、この矛盾をいかに乗り越えていくかという問題です。 これは私たち日本人にとって、遠い欧州で起こる無関係な問題ではありません。 なぜならば、かつて私たち日本の先人たちも大東亜の理想を掲げたように、国家民族の違いを超え、一つのアジア、一つの地球に住むもの同士、共通の価値観を持って交流交易を活発にし、平和と繁栄の文明を築いていきたいと願うのは同じだからです。 ただ、どんな高邁な政治的理想が掲げられても、経済の論理を無視しては達成できません。 そこで、ここではEU問題をきっかけとし、日本やアジアの未来を構想する材料を提供できたらと考えます。 ■解決策はユーロ離脱か さて、ギリシャのように巨額の対外債務を負った国がその返済を進めるには、一般に増税や政府支出の削減等、緊縮策を進めることが必要だとされますが、各国で反緊縮派の政党が台頭しているように、単純な緊縮路線に行き詰まりが生じています。 これまでの緊縮派の政権が試みてきたように、国内での雇用、特にギリシャのように若年層の失業率が50%を超える状況を見過ごして、対外債務返済のために緊縮財政が断行されるのは、政治的な困難さだけでなく、経済的合理性の観点からも見直しが迫られるべきです。 本来、対外債務返済のためには財政収支だけでなく、国際収支、特に経常収支改善の方法が議論されてしかるべきです。ところが、ギリシャの場合、自国通貨を持たないため、そうした議論が見られません。 通常、自国通貨を持つ国であれば、対外債務返済の困難が予想された場合、自国通貨の為替が切り下がることで、極端な緊縮策をとることなく、経常収支が改善に向かいます。 英国病で苦しんだイギリスでも、労働組合の弱体化や規制緩和による競争促進といったサッチャー改革の実効的な効果が現れるのには、1992年のポンド危機を経る必要がありました。 当時、イギリスは欧州通貨制度(EMS)の一員として、マルクに自国通貨ポンドの価値を連動させておりましたが、ジョージ・ソロスらヘッジファンドによるポンド売り攻勢を受け、結局、ポンドは暴落し、イギリスはEMSからの離脱を余儀なくされました。 ところがイギリスはEMSから離脱し、自律的な金融政策の手段を得ることで、90年代、00年代と平均5%程度の成長率を保持することができたのです。 同じことをタイやインドネシア、韓国等、97年のアジア通貨危機を経た東アジア諸国も経験しております。 経済合理性からすれば、一時的な混乱覚悟で、ギリシャは自国通貨ドラクマを復活させるべきです。 ■ギリシャのEU直轄領化 しかしギリシャのユーロ離脱は現在のところ、議論されることはあっても、実際、互いに望んでいない印象があります。 ヨーロッパの語源はギリシャ神話に登場する女神「エウローパ」とも言われますが、欧州発祥の地がユーロから離脱するのは、いろいろな意味で困難があるのでしょう。 では単純な緊縮策でもなければ、ユーロ離脱でもなく、現状の延長で事態が展開するならば、どんな状況が現れるのでしょうか。 現在、ギリシャは金融支援の見返りにEUやIMFで協議された経済改革案を実行しなければならない立場にあり、その延長線上で考えるならば、EUの認可なしで何一つ予算が決められない未来がいずれギリシャに訪れることが予想できます。 つまりギリシャにユーロ離脱以外の選択肢があるとすれば、主権や領土を担保に資金援助を受け続ける状態、すなわちEU直轄領となることです。 EUとしてはギリシャの主権を所有し、例えばギリシャをタックスヘイブンの「自由の大国」として、非ユーロ諸国に対抗するという手もあるでしょう。 ドイツは自国通貨マルクを捨てましたが、代わりにユーロを創設することで、欧州における影響力を保持、拡大させました。 私たち日本人も自国の財政収支だけに着目するのではなく、地球的視野を持った対外経済政策を構想していくべきです。 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 Next »