Home/ 彦川 だいし 彦川 だいし 執筆者:彦川 だいし HS政経塾第1期卒塾生/党政調会・外交部会 中国経済の崩壊と、軍事力行使に備えよ! 2012.05.03 中国史から見る、大帝国建設の要因 中国歴代王朝における統治の、本質を突いた言葉があります。 「実は治世とは好景気のこと、乱世とは不景気の別名なる事が多い」(『中国史:上』宮崎市定(岩波全書)p.79) 中国の大帝国と言えば、唐・元・清ですが、それぞれの時代で繁栄を築いた要因として「対外交易の発展」が挙げられます。 唐時代には燃料革命がおこり、鉄器の生産が拡大しましたほか、ペルシア人やアラビア人との交易が盛んに行われていました。また、元帝国時代には東西交流が活性化し、清帝国時代にはキリスト教世界との貿易が活発となりました。 経済の発展が、大帝国を支える権力機構と軍事力の維持を可能とする。この構図は現在も変わっておりません。 失速する中国経済とその要因 急成長を続けてきた中国経済のエンジンは、(1)通貨の低いレートと安い労働力、低い資源コストと言った「輸出中心の経済成長」と、(2)98年から導入された住宅制度改革をきっかけとする「土地バブル」の二つに集約できます。 中国は、これら二つの強力なエンジンによって、軍事費増強の「元手」を稼いでいきました。 しかし、「輸出中心の経済成長」を目指した戦略は、米国による元のレート切り上げ要求や、人件費の高騰、新興国の台頭による世界的な資源価格の上昇によって破たんしていくことが確実視されています。(4/4 ロイター「中国の安い製造コストは過去のもの」⇒http://goo.gl/Q5o2U) また、中国経済を力強くけん引してきた土地バブルも、崩壊が現実のものとなっています。(4/26 産経「不動産バブルの末期症状大幅な値下げ必至」⇒http://goo.gl/wEVgN) 「汚職」と「輸出不振」は中国経済崩壊の歴史的要因 中国評論家の石平氏は「中国における不動産価格高騰の一因に、独特の『不動産開発=汚職利権』の構造上の問題がある」ことを指摘しています。(『中国経済崩壊の現場』石平(海竜社)p.29) 唐帝国の衰退は、玄宗皇帝が楊貴妃を寵愛するあまり、宦官など官僚の専横を許してしまうなど、現代の中国と共通しています。さらに、急成長の要因となった輸出が振るわなくなり、大打撃を受けるというパターンは清帝国と共通点があります。 その底流には、諸外国を蛮族と見なして「朝貢外交」を求めるという、華夷秩序と呼ばれる世界観が流れています。当時の清帝国も、大英帝国との貿易を「対等な立場での貿易」ではなく、「天子への朝貢」として認識していました。(前掲『中国史:上』p.528) 帝国主義全盛の時代とはいえ、こうした清国の「自国中心的な態度」が英国をして「麻薬を売ってでも利益を取り返す」という悪名高い「阿片貿易」を招き、国の崩壊を招いた事実は否めません。 また、現在の中国経済の発展は、日本や米国などが中国製品の輸入先となり、育成されてきたものです。にもかかわらず、「ipad騒動」や「高速鉄道事件」が示すような国家ぐるみの知的財産侵害を平然と行うなど、相変わらず「自国中心的態度」を改めておりません。 こうした中国政府の態度は、やはり諸外国に対して「朝貢」を求める中華意識を受け継いだものと言えるでしょう。こうした中国の態度に対して、国際社会からは「元の切り上げ」圧力が高まると共に、TPPによって中国包囲網が形成され始めております。 「軍事力による富の収奪」を封じるべく、「自主防衛・日米安保」の強化を! 過去、中国において発生した「帝国」は、どれも経済の衰退によって滅んでいきました。地政学的要衝である「辺疆地帯」を抑える軍事力を維持することが困難となり、異民族の侵入を許してしまったからです。 景気変動の波を乗り越える手段やアイデアを持たない中国において、このまま経済の衰退が続けば、政治の民主化要求や経済の自由化要求が高まり、「第二の天安門事件」が起こる可能性も少なくありません。 しかし、注意しなければならないのは「軍事力によって他国の富を収奪する」という手段がまだ中国に残されていることです。それは「核の威嚇」によってなされることが予想されます。 幸いにも、5月1日の日米首脳会談で対中防衛を視野に入れた日米安保の強化が合意され、一段と中国の核に対する抑止力が高まった形となりましたが、野田首相には、もう一段、憲法9条改正によって「自主防衛」と「アジア防衛の役割」を果たす気概を示すところにまで踏み込んで頂きたいところでした。 昨日、幸福実現党は「憲法を変えて日本とアジアの自由を守る!国民集会&デモ」を開催致しましたが(⇒http://goo.gl/GDILa)、中国による「核の威嚇」を中心とした侵略行為を未然に防ぐためにも、今後とも「自主防衛強化」や「日米同盟強化」といった国防意識を喚起して参ります。(文責・HS政経塾1期生 彦川太志) 弾道ミサイル実験――金正恩の狙いは韓国への政治的干渉 2012.03.22 先般、北朝鮮が4月15日の金日成主席の生誕百年を祝して「地球観測衛星」の打ち上げを予告しました。国際社会から強い非難が湧き起こっていますが、北朝鮮は今回のミサイル発射実験を通して何を意図し、今後いかなる事態が予測されるのでしょうか。 ミサイル発射の意図は核サミットへの威嚇と、韓国総選挙への政治的介入 前回(2009年4月)の弾道ミサイルはハワイ方面に向けて発射され、我が国や米国に対して威嚇の矛先が向けられておりました。 今回の発射実験では発射試験場が異なる上、打ち上げの方角も韓国側に向けられており、韓国に対して強いプレッシャーを与える目的があると考えられます。 韓国の朝鮮日報は、弾道ミサイル実験を行う北朝鮮の意図は、(1)3月26日・27日にソウルで開催される核サミットへの威嚇、(2)4月11日に行われる韓国総選挙への干渉にある予測しています。(3/17 朝鮮日報「ミサイル:異例の発射予告、総選挙に介入か」⇒http://goo.gl/n12NO) 金正恩は以前からソウルでの核サミットの開催を批判していました。今回の核サミットには世界50カ国以上の首脳が参加し、オバマ大統領も参加を予定しております。 また、韓国総選挙への干渉については、2010年に起きた「天安」撃沈事件後の地方選で、北朝鮮に対して強硬姿勢を崩さなかった与党ハンナラ党に対し、国民の反戦機運を盛り上げた野党勢力が優位に立ってしまうという政治的変動が起こったという経緯があります。 金正恩はミサイル実験を通じて野党勢力を焚き付けることで、再び韓国の選挙に介入しようと狙っていると考えられています。 核の搭載も視野に入れた、近代化・大型化された新しいミサイル施設 さらに、今回、打ち上げに使われると見られる最新の「銀河3号」ロケットの性能は、テポドン2を超える4000kmの射程を持つと予測されています。 また、新しい東倉里の発射場そのものも打ち上げ作業のほとんどが自動化・地下化されており、テポドン以上の大きさの大型ミサイルの発射試験も可能と見られています。(3/17 朝鮮日報「ミサイル:北朝鮮が10年かけて建設した東倉里発射台」⇒http://goo.gl/jEXZY) この発射場は寧辺の核施設からわずか70キロの場所にあり、核弾頭搭載のミサイルを運用することも念頭に置いて建設されたと考えることができます。 過去、北朝鮮は弾道ミサイル発射実験の後、核実験を行っている さらに最も注意すべきはミサイル発射実験後の「核実験」の可能性です。 近年、北朝鮮は弾道ミサイル実験の後、数か月以内に核実験を行っていることが指摘されています。(3/18 DefenseNews「N. Korea Seeks Nuke Through Sat Launch: South」⇒http://goo.gl/EZCez) 実際、北朝鮮は2006年7月5日にテポドンなどを含む7発のミサイル発射実験を行った後、10月9日には初の地下核実験を強行しています。2009年4月5日にテポドン2の発射実験が行った後、5月25日に二度目の地下核実験を行っています。 金正恩の知恵の浅さが、北朝鮮を崩壊に導く いずれにせよ、こうした北朝鮮のミサイル発射行為自体が国連安保理決議1695・1718の二つの決議に違反していることは明白であり、たった半月で米朝合意を反故にする態度は、国際社会の安定と平和を揺るがす行為以外の何物でもありません。 金正恩はこのような冒険主義によって国威発揚を掲げ、金正恩体制を国内に定着させることを狙っていると考えられますが、かえって日米韓の結束を強め、国際社会での北朝鮮の立場を悪化させてしまいます。 また、ミサイル実験後に核実験をも強行するとなれば、米国の大統領選に向けた共和党(8月)・民主党(9月)の候補者選出大会に影響を与える可能性も高く、北朝鮮の崩壊を早める結果に繋がるのではないかと考えられます。 韓国はイージス艦二隻と偵察衛星、偵察機等を投入してミサイル監視をする予定ですが、韓国軍のPAC-2による弾道ミサイル迎撃能力は自衛隊よりも低く、範囲も限定的です。 我が国もPAC-3やイージス艦を沖縄に配備して迎撃態勢をとることが検討されていますが、自国の防衛だけを考えるのではなく、集団的自衛権の容認も視野に入れ、日米韓のスクラムを強化しつつ北朝鮮の暴発に備えていくことが重要です。(文責・彦川太志) すべてを表示する « Previous 1 … 5 6 7