Home/ 新着一覧 新着一覧 イスラエル・イラン対立の真相。新たな中東戦争にエスカレートするのか? 2024.04.17 https://youtu.be/Ha6CmHVmKps 幸福実現党広報本部 城取良太 ◆イランによるイスラエル領内への史上初の直接攻撃 ハマス奇襲に端を発するイランとイスラエルの対立が新たな局面を迎えようとしています。 4月14日未明、イランは300発以上にのぼるミサイルやドローンをイラン本国などから発射。ほぼ「99%」がイスラエルや米英などの迎撃により、本土に届く前に撃ち落とされたとされ、イスラエル側の被害は負傷者1名と軽微なのが現状です。 この発端となったのが4月1日、シリア・ダマスカスにあるイラン大使館に対して行われた、イスラエルによるミサイル攻撃でした。 この攻撃によってイラン革命防衛隊の司令官クラスを含む7名が殺害されています。今回はこれに対する報復という形になっています。 しかし、今回のイラン側の攻撃を見ると、イスラエルに大きなダメージを与えるような攻撃とは程遠く、かなり「抑制的」だったと言われています。 実際に、攻撃の前段階には、核協議の再開などをアメリカに持ちかけるような外交を展開していました。 今回の攻撃もイラン国内の宗教保守層に対するパフォーマンスという面も色濃いように思います。 一方のイスラエル・ネタニヤフ首相は、イラン本土からの初めての攻撃に対し「更なる反撃」を行う準備があると明言。 それに対して、アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に自重を求め、防衛上の支援はするがイラン反撃への参加はしないと述べています。 その後、ネタニヤフ首相は「報復を見送る」と述べたという報道も一部ありましたが、一夜明け、イスラエルの戦時内閣でイランへの反撃で一致しており、「全面戦争が目的ではない」とするも、「明確かつ強力」に反撃することを述べています。 どちらにしても、昨年10月から約半年経過したハマスとイスラエルの戦争が、いよいよ中東全土を巻き込んだ大規模戦争へと、いつエスカレートしてもおかしくない、かなりきわどい状況にあることは確かだと言えます。 ◆以前は良好だったイスラエルとイランの関係 では、そもそもイスラエルとイランはなぜ対立するのでしょうか。 ユダヤ教とイスラム教の宗教対立といってしまえばそれまでですが、個別的に見れば、イスラエルとエジプトなど、宗教を超えた国家間で平和条約が締結されている事例は実際にあります。 ここでイスラエルとイランの対立がどのように深まってきたのかを客観的に整理してみたいと思います。 何より、以前はこの両国は関係良好だったという歴史があります。 1948年イスラエル建国直後に起きた第1次中東戦争から、1973年の第4次中東戦争に至る25年間の戦いは、エジプトを中心としたアラブ諸国とイスラエルの戦いであって、イランは関与していません。 そういう意味で、これからいつ起きてもおかしくはない新たな中東戦争は、過去4回の中東戦争とは意味合いが全く異なると言えます。 当時、王政だったイランは、中東における「アメリカの前線基地」として、実はイスラエルと同じく親米国でした。 実際、イスラエルの諜報機関モサドと当時のサバックというイランの諜報機関は「対アラブ」「対ソ連」で情報協力協定を結んでいるように、同盟関係に準ずるものがあったと言えます。 ◆イスラエル・イラン対立の大きな転機①:1979年の「イラン・イスラム革命」 この両国の関係にとって、1つ目の大きな転機が、1978年から1979年にかけて、イスラム指導者のホメイニ師が求心力となって起こった「イラン・イスラム革命」でした。 ホメイニ師は「イスラム法学者による統治論(ヴェラヤテ・ファキーフ)」を発表、当時パフラヴィー王朝の元、急速に西欧化しようとしていたイラン国内の風潮を危険視し、欧米の植民地主義、またシオニズムによって建国されたイスラエルを痛烈に批判しながら、「将来、ユダヤ人に支配されることをおそれる」とその中で述べています。 この1冊がいわば国の指導原理となり、今の「反米」と共に「イスラエル打倒」を掲げるイラン・イスラム共和国が誕生、今に至る45年間の長きに渡る対立の「原点」となります。 また時をほぼ同じくして、4回の中東戦争を繰り広げたエジプトとイスラエルがアメリカの仲介で平和条約が締結。この「1979年」という年がいかに中東情勢を根底から変える非常に大事な年の一つといえるでしょう。 ちなみに、この大転換を図ったエジプトに代わって、反イスラエルの急先鋒として「アラブの盟主」に名乗りを挙げたのが、イラクのサダム・フセイン大統領でした。 イラクはイスラム教の2大宗派スンニ派とシーア派が入り混じった地域で、イラクでは約2割しかいない少数派となるスンニ派が国を支配していました。 そのためフセイン大統領は、抑圧された多数派であるシーア派(約6割)が、お隣のシーア派国家イランから「革命の影響」を受けることを止めるべく、1980年から8年に及ぶ「イラン・イラク戦争」を起こします。 イラン革命によって飼い犬から手を嚙まれる形となったアメリカは、この時、イラクのフセイン政権を積極的に支援します。 しかし、その後イラクもアメリカに牙を剥くこととなるのは歴史が示している通りです。 ◆イスラエル・イラン対立の大きな転機②:2003年の「イラク戦争」 そしてイランとイスラエルの対立を更にエスカレートさせていくきっかけとなったのが、まさに「イラク戦争」です。 アメリカブッシュ政権は2003年、イラクが所持する大量破壊兵器の脅威から、世界を解放するという大義のもと、「イラク戦争」に踏み切ります。 余談ですが、大量破壊兵器は見つからず、当時の国務長官だったパウエル氏は、CIAの情報を信じ、開戦の大義を語ってしまった自身の国連演説を「人生の汚点」と語っています。 結果的に、イラク戦争によってフセイン政権は崩壊、アメリカ主導によって民主化がなされます。 先ほど申し上げた通り、イラクの宗派バランスから考えると、民主化されたことで多数派のシーア派主体の政党が力を持ち、政権を握っていくことになります。 すると、それまで力を持っていたスンニ派と、抑圧されていたシーア派のパワーバランスが逆転し、スンニ派が押され始めます。 CIA長官まで務めたペトレイアス氏の占領政策によって、一時期は宗派の均衡は見事に維持されていましたが、イラク戦争を「誤った戦争だ」と断罪し、大統領に就任したオバマ元大統領は2010年にイラク駐留軍を大規模に縮小し、宗派間の衝突が激化し、治安が急激に悪化していきます。 このように、良くも悪くもイラクのフセイン大統領、そしてそれに代わる米軍という「重石」がなくなったことで、イスラエル国境に向けて、イラン革命防衛隊など軍事組織が、イラクを超えて、シリアのアサド政権(シーア派系のアラウィー派)、レバノンのシーア派組織ヒズボラなどとの連携を緊密にしながら、直接的に影響力を行使させていくことが出来るようになっていきます。 いわば「シャドウ・ウォー(影の戦争)」が活発化していくわけです。 ◆イスラエル・イラン対立の大きな転機③:2011年から始まる「シリア内戦」 そして、この「シーア派の弧」と呼ばれるイラン勢力圏を更に強大化させるきっかけとなったのが「シリア内戦」です。 イランのこうした急速な影響力の拡大にアメリカやイスラエル、サウジアラビアなど周囲の国々は焦ります。 その頃奇しくも2011年に北アフリカで起きた「アラブの春」によって、民主化のウネリがシリアにも直撃し、アサド政権(シーア派系)の独裁に対して、スンニ派系の反政府勢力が立ち上がり、内戦に発展していきます。 当時のオバマ大統領はアサド政権の打倒を名目として、CIA主導で「ティンバーシカモア」という秘密プロジェクトを立ち上げて、巨額の予算を投じてスンニ派の武装組織に武器の支援や戦い方を教えていきます。 そしてこの時に提供された膨大な武器の多くを闇ルートで手にし、巨大化していったのが、かの「イスラム国」です。直接的なつながりを証明するものはありませんが、間接的にアメリカが「イスラム国」を巨大化させたということは紛れもない事実です。 ちなみにこの「イスラム国」の中枢を担ったのが、元フセイン政権の構成メンバーと言われています。 アメリカとしては、シリアのアサド政権、そしてバックにいるロシア、イランの影響を弱めていくために、弱体化していたスンニ派勢力に力を与えることでシリア・イラク地域における宗派間の力の均衡を保ちたかったという思惑があったようには思います。 しかし、結局「イスラム国」が予想以上に強大化、最終的に、アメリカを中心とした有志連合は「イスラム国打倒」のために更なる資金と大量の武器を投じていきます。 こうした長年の「イスラム国」などとの戦いを通じて、更に力を蓄えていったのが、イランの革命防衛隊を主体とした、前述したシーア派系の武装組織などです。 また、近年では、長年の不倶戴天の敵だったサウジアラビアと中国の仲介によって歴史的な国交正常化に踏み切るなど、イランにとって中東における対立構図というのはイスラエル一国に先鋭化していると言っても過言ではありません。 イスラエルから見ても、イランの強大化というのは、紛れもなく現在の最大の脅威です。 こうした深い懸念こそ、イスラエル政権の極右化が進んでいる主な要因の一つであり、エスカレートが止まらなくなっている訳です。 ◆イスラエルとイスラム教国を巡る対立軸にあり続ける「核兵器」 そして、イスラエルを巡る対立軸の中心にあり続けるのが「核兵器」という要素です。 イラクのフセイン大統領は、イスラエルとの戦争を見据えて、大統領就任当初から秘密裏に核保有を目指していました。それに対してイスラエルは「イラク原子炉爆撃事件(1981年)」などに象徴されるように、軍事力を行使し、爆撃によって力づくで排除します。 前述した「イラク戦争」の開戦前には、現首相であるネタニヤフ氏など一部の閣僚が、「フセインがまた核開発を再開している」と脅威を訴え、ブッシュ政権にイラク戦争をけしかけたとも言われています。 そして、21世紀に入って、核開発の疑惑が浮上してきたのがイランです。 モサドによるイラン人の核科学者の暗殺や核施設の爆破などで、イスラエル側はイランの核開発の妨害を幾度となく繰り返してきました。 しかし、科学国際安全保障研究所の2024年3月の報告書によると「あと5カ月で13発の核兵器を保有する能力がある」と言われています。 内情が見えにくいイランの場合、もっと進んでいる可能性は否めず、核保有が寸前まで迫っている現状を考えれば、イスラエルとしてはいよいよ一刻の猶予もありません。 ◆新たな中東戦争はエスカレートするのか? さて今後はどうなっていくのでしょうか。 今回、シリアのイラン大使館攻撃でイスラエルは明らかに挑発的な姿勢を示しています。 決めつけはもちろん禁物ですが、そうした意味から考えると、今回のイランの反撃がたとえ抑制的であったとしても、国際社会でイラン攻撃の口実となる限り、イスラエルとしては「エスカレート」させたい思惑は強いとも言えます。 また一方で、「ハマスによる奇襲」によって、世界中の目がパレスチナに向けられてきたことを考えれば、イランとしての格好の「時間稼ぎ」にもなっている面も見過ごすことは出来ません。 いま核戦争の発火点となりうるのはロシア・ウクライナ方面、そして今回、中東におけるこのエスカレーションで核戦争の危険性はグッと高まったと言えるのではないでしょうか。 幸福実現党の大川隆法党総裁は『信仰の法』の中で、中東における核戦争の可能性について、このように言及されています。 今、心配されているのは、「核兵器をすでに持っているイスラエルと、核兵器をもうすぐ製造し、保有するであろうイランとの間に、核戦争が起きるかどうか」ということでしょうし、また、「イランの核兵器が使用可能になる前に、イスラエルがイランを攻撃するかどうか」ということでしょう。 そして、イランの核保有を認めたら、おそらく、サウジアラビアやエジプトも核武装をするのは確実でしょう。 今の中東は、「イスラエルだけが核武装をしていて、イスラム教国は核兵器を持っていない」という状況にありますが、それが今度、「核武装したイスラム教国にイスラエルが囲まれる」という状況になったとき、それを黙って見過ごすことができるかどうかです。これが、ここ十年ぐらいの間に懸念される大きな事態の一つです。」 日本人の心理の中には「ノーモア・ヒロシマ」が世界の常識だと思い込んでいる節があります。しかし、残念ながら世界の本音の部分とは大いにかけ離れているといえます。 実際に、日本は神を信じない唯物的無神論国家の核保有国に囲まれています。 いいかげん、きれいごとばかりで表面を繕うお花畑思考から抜け出さないと、日本の存続自体が立ちゆかなくなるという危機感を持たなければならないのではないでしょうか。 4月から始まった制度改正――日本に必要とされる「勤勉革命」 2024.04.11 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。 https://youtu.be/BGBWAB_AQu4 ◆新年度の開始で、暮らしはどう変わるか 新年度が始まり、私たちの生活に影響を与える、料金の値上げや制度改正が行われています。何が変わったのか、簡単に見てまいります。 一つ目は、食品や宅配料の値上げです。 4月に値上がりする食品は、価格を変更せずに中身を減らすという「実質値上げ」を含めると、2806品目に及びます。 宅配料金は、佐川急便で平均7%、ヤマト運輸で平均2%の値上げに踏み切っています(*1)。様々な商品の値上がりが続いており、今後、生活はますます苦しくなっていくと懸念されます。 二つ目は、時間外労働の上限規制の適用です。 安倍晋三政権の下で進められた「働き方改革」により、2019年以降、一般の労働者の時間外労働、残業に対して、年間で720時間の上限規制が設けられましたが、運送業、建設業、医師については、人員確保が難しいなどという理由から、その適用が5年間猶予されていました(*2)。 しかし、猶予期間が過ぎる今、こうした業種が、労働時間の減少により現場で支障が出る、いわゆる「2024年問題」に対して十分に対応できているとは言えないでしょう。 今後、宅配料などの更なる値上げ、場合によっては地域で医師が不在となるケースが生じるなど、私たちの生活に打撃を与えかねません。 三つ目は75歳以上の一部の方を対象にした公的医療保険の保険料引き上げ、四つ目は、森林環境税の導入です。森林環境税は、国内の森林整備を目的に、住民税に上乗せされる形で、年間一人あたり1000円が徴収されるという新しく導入された税金です。 こうした保険料の引き上げや新税の導入は、国民負担をさらに増大させることになります。 五つ目は、ライドシェアの一部解禁です。 これまで、タクシー以外の自家用車が客を運ぶ「白タク」行為は原則禁止となっていました。 しかし、タクシー不足や地域における移動手段を確保するという観点から、今月1日より、東京や京都など一部地域を対象に、ライドシェアが部分的に解禁されることになりました。 ただ、海外とは違い、ドライバーはあくまでタクシー業界に雇用される形に留まっており、ライドシェアが運行できる区域や時間帯も限られています。 このように一見「規制緩和」に見える「ライドシェア一部解禁」は、不足する移動手段を穴埋めする「その場しのぎ」の策にすぎません。タクシー業界が政治に守られていることで、料金は高止まりしてしまっています。 それによって生じる損失を被っているのは、私たち消費者です。利便性を高めたり、安全性を担保するルールを整備しながらも、地域の足を確実に確保するという観点から、タクシー業界以外にも有償運送業への参入を認める「全面解禁」を目指すべきではないでしょうか。 ◆経済成長路線への回帰に向けて必要な「勤勉革命」 今の日本は、様々な業界が既得権益で守られているほか、増税や社会保険料の引き上げで、「大きな政府」化が進んでいます。 一方で、日本経済はこの30年、低迷が続いています。昨今、GDP3位の座をドイツに明け渡し、近く、インドにも追い抜かれるのではないかとも言われています。 日本が経済成長路線に回帰するには、何が必要なのでしょうか。その大きな鍵となるのが「勤勉」という価値観ではないでしょうか。幸福実現党の大川隆法総裁は、『減量の経済学』の中で、次のように述べています。 「自由的な意志による努力の継続があって、そして経済的繁栄は来るのです。 過去、こういう『勤勉革命』というのは、イギリスで二回ほど起きています。十六世紀、十八世紀ごろに、それぞれ起きていますが、これでイギリスの国力がガーッと上がっているわけです。 要するに、『個人個人が、自由意志に基づいて勤勉に働いて、世の中を発展させようとする』、『自分自身も豊かになって、世の中も豊かになるように努力しようとする』―、世間の風潮がそういうふうになってきたときに、産業革命が起きたりして、国がもう一段上がっているわけです。」 ◆勤勉革命がイギリスで起こった背景とは ここで、18世紀ごろのイギリスに焦点を当てると、1700年から1870年までの170年間で、イギリス経済の規模は、10倍にまで拡大しています(*3)。 この経済成長を裏付ける要素の一つが、労働時間です。特に18世紀後半、1760年から1800年において、年間の平均労働時間は約2631時間から3538時間へと35%増加しています(*4)。 当時、工場での生産活動が行われていましたが、それは、労働者による長時間労働があってこそ、運営が成り立つものでした。確かに、あまりにも長い労働を強いられたり、場合によっては児童労働が起こったケースもあったのは事実でしょう。しかし、プラスの面に焦点を当てると、人々の勤勉性が国全体としての活発な生産活動に繋がっていき、これがさまざまな「技術革新」が生み出された、「産業革命」にもつながったのは確かです。 ではなぜ、当時のイギリス人は労働意欲が高かったのでしょうか。 一つは、「財産権」が保障されていたこと、すなわち、国家が個人や企業の財産を没収するといったリスクがほとんどなかったことです。 1688年に起こった「名誉革命」以降、イギリスでは議会政治が確立し、国家権力はある程度制限されていました。国民は自らの財産が政府に奪われる心配もなく、安心して労働に励み、富を築くことができたのです。 もう一つは、信仰観です。マックス・ウェーバーが説いたように、当時のイギリスの人々は「魂の救済は、あらかじめ神によって決められている」というカルバンの「予定説」に従って、自らが「選ばれし者」であることを示そうと、勤勉に働いて富を蓄積していったのです。 16世紀以降、世界経済のフロントランナーを走ったのはオランダ、イギリス、米国とプロテスタントが優位な国々であることからも、宗教が国の経済的な繁栄に大きく影響を及ぼしてきたと言えるでしょう。 いずれにしても、経済活動の自由や民主主義、そして信仰をベースとする考え方が、勤勉革命が起こった素地になっていたのではないでしょうか。 ◆日本経済が成長するのに必要な「小さな政府・安い税金」 今、日本では、バラマキが横行しています。バラマキは必ず、増税など国民負担の増大につながります。増税は、働いたり知恵を出して稼いだお金が強制的に国家に没収されることに他なりません。これはある意味で国民の財産権に対する侵害です。 バラマキ・増税は、働かなくてもお金がもらえること、また、働いても重い税金で自由に使えるお金が少なくなるということから、労働意欲をますます低下させることにつながります。ましてや今、政府は働く自由を阻害する新たな規制まで設けています。 日本経済が成長するためには、確かな信仰観の下で、政府はバラマキや要らない規制をなくして、「小さな政府、安い税金」を目指すべきではないでしょうか。 (*1)ヤマト運輸は、大型の宅急便やクール宅急便など、佐川急便は飛脚宅急便を対象としている。 (*2)建設業の労働者に適用される上限規制は、他の業界と同様、年720時間が上限となる。運送業のドライバーは年960時間、医師は、休日労働を含めて年1860時間となる。いずれも、特別な事情がある場合に限られる。 (*3)マーク・コヤマ他『「経済成長」の起源』(草思社、2023年)より。 (*4)永島剛「近代イギリスにおける生活変化と勤勉革命論」(専修大学経済学会, 2013年)より。 世界大戦を招くマクロン発言。トランプが戦争を終わらせる。 2024.03.29 https://youtu.be/bPz6Lb1_rmM 幸福実現党党首 釈量子 ◆マクロン発言でパニック 2月26日、フランスのマクロン大統領が、欧州全体を戦争に巻き込むような発言をして世界を驚かせました。 パリで開かれたウクライナ支援について話し合う緊急会議で、ドイツのショルツ首相、英国キャメロン外相、アメリカやカナダの代表団などが出席。 マクロン大統領が記者会見で、「西側の地上部隊をウクライナに派遣する可能性」について「排除すべきではない」と発言して驚かせたわけです。 米ホワイトハウスは声明で、バイデン大統領は「勝利への道」は軍事支援の提供だとしつつも「アメリカがウクライナでの戦闘のために部隊を派遣することはないと明言している」と付け加えました。 イギリスのスーナク首相の報道官は、イギリスは現在ウクライナ軍を訓練している少人数の軍人以外に、ウクライナに大規模な軍事派遣をする計画はないと述べました。 ドイツのショルツ首相も、欧州やNATO加盟国はウクライナに部隊を送らないという合意された立場に変更はないと述べました。 イタリアのメローニ首相の事務所も、イタリアの「支援には欧州やNATO加盟国の軍隊がウクライナ領土に滞在することは含まれていない」としました。 NATOストルテンベルグ事務総長は、ウクライナに部隊を送る可能性を否定し、一方でNATOに加盟していないウクライナを引き続き支援すると強調しました。 こうした姿勢は、スペイン、ポーランド、チェコといった多くのNATO加盟国も同調し、フランスとはだいぶ温度差があります。 ところが、マクロン氏はさらに3月14日、現地テレビ局のインタビューで、改めて欧州諸国による部隊派遣の可能性について「選択肢は排除しない」「自分たちから攻撃を仕掛けることはない」と述べました。 けれども、「私たちにはロシアを勝たせないという目的を達成するための決意と勇気を示さなければならない」と強気の発言をしました。 ◆マクロン発言に対しロシアが警告 これに対して、ロシアは警告を発し、2月28日プーチン氏側近の下院議長は、次のように牽制しています。 「ナポレオン気取りだ」「第3次世界大戦を引き起こすこと以外に考えられなかったのだろう。フランス市民にとって彼の構想は危険だ」 マクロン氏の突如のタカ派発言の背景について、フランスのニュースサイト『マリアンヌ』が興味深いことを言っています。 フランス軍の機密文書を紹介し、「ウクライナ軍の勝利は軍事的に不可能」「軍事的解決策のみを追求し続けることは深刻な誤り」と指摘しています。 つまり、ウクライナの苦境に焦ったマクロン氏は、政治的に援護する必要があると判断し、長い目でみれば「戦略的な曖昧さ」といっても帳尻が取れると考えたのではないかという見方です。 フランスの新聞『ル・モンド』によると、マクロン氏はさりげなく「オデッサに派遣しなければならないだろう」と語ったといいます。 ロシアがウクライナの港湾都市オデッサを制圧すると、ウクライナが「陸の孤島」となり終わってしまいます。 長期戦になれば最終的にはロシアは損をして負けるかもしれないと、あらゆる選択肢をテーブルの上に並べようとしているのかもしれません。 ◆口先だけのマクロン発言 欧州唯一の核保有国ではあるけれども、保有する弾頭はフランス300発に対してロシアは7000発近くです。 フランス国内の世論調査では、大統領のウクライナ派兵案には国民の約68%が反対し、「マクロン一人でいけ」と言う声なども上がっています。 前述の『マリアンヌ』編集長の「目を覚ましましょう!さもなければ全面戦争になります」と主張しています。 ドイツの「キール世界経済研究所」によると、これまでアメリカはウクライナへ(開戦後から今年1月15日までに)422億ユーロ(約6兆8800億円)を拠出、続いてドイツ、イギリス。 これまでの軍事支援は7億ドルで、EUから見るとフランスのマクロン発言は口先だけです。ロシアとの戦争準備が整った軍隊もありません。 ◆トランプ前大統領の再登板でどうなる? トランプ氏はこれまで、自分が大統領選で当選すれば「24時間以内に」戦争を終結させると約束しています。 また、EUのなかにはハンガリーのオルバン首相のようにウクライナ支援は「無駄」と言って反対しているところもあります。 オルバン氏は3月9日、トランプ氏のフロリダの私邸まで行き、会談後に「(トランプ氏は)ウクライナとロシアの戦争には一銭も出さないだろう。だからこの戦争は終わる」と述べています。 ◆レッドラインを示して牽制するロシア ロシアは戦争拡大を望んではおらず、欧州の動きを牽制しています。 3月19日、ナルイシキン対外情報局長官は、もしフランスがウクライナに軍隊を派遣すれば、「フランス軍はロシアによる攻撃の優先的、かつ合法的な標的になる」と牽制。 ほかにも、3月1日、ロシア国営メディア『RT』のシモニャン編集長がソーシャルメディアに「ドイツ軍のビデオ会議38分の音声」をリークするといったのもありました。 ドイツ軍幹部が、クリミアとロシアを結ぶ橋のミサイル攻撃を検討している内容で、リークの翌日、ドイツ当局がロシア側に不正侵入されたことを認めました。 プーチン大統領自身も、欧州諸国に、何度も「レッドライン」を出しています。 3月13日、プーチン大統領は国営テレビのインタビューで「核戦争の準備があるのか」と聞かれ、「軍事技術の観点から言えば、もちろん準備はできている」と述べ、核戦力は常に臨戦態勢にあると強調しました。 ◆停戦しなければ核を使った世界大戦へ ロシアは冷静で本気です。できるだけ早く停戦することが、ウクライナの若者を死地に追いやらないために大切なのです。 3月8日、トルコのエルドアン大統領がゼレンスキー大統領をイスタンブールに招きました。 会談後の共同会見でエルドアン大統領は「われわれは交渉による戦闘の終結に向け最大限の力を尽くし、ロシアも参加する和平協議を開催する用意がある」と仲介役を担う姿勢を改めて示しました。 しかし、ゼレンスキー大統領は「すべてを破壊し、殺す連中をどうすれば招待できるのか分からない」と述べ和平交渉に応じる気がありません。 ウクライナ国内の世論調査では「停戦」支持が、戦争から2年経って過半数を上回っています。 このまま戦争が続けば、「ウクライナが地上から消える可能性がある」こともあるかと思います。 ◆トランプ氏による「強制終了」 戦争終結を願う世界の人々が待ち望むのが、トランプ氏による強制終了です。 バイデン氏が、2月27日、連邦議会幹部らに対しウクライナ支援600億ドルを含む総額950億ドル(約14兆3000億円)余りの外国支援包括予算案を承認するよう求め、13日に連邦上院で可決されました。 しかし、下院のジョンソン議長(共和党)は会議で、まずメキシコとの国境危機を最優先事項とすべきとしています。 トランプが復活すれば、アメリカのウクライナに対する軍事支援は無くなります。 幸福実現党の大川隆法総裁は、核戦争の危機がかなり近いところまで来ていることに警鐘を鳴らし、次のように述べています。 「八十年近い昔に、広島と長崎に原爆が落とされて、『あんな悲惨な目に遭った』『ノーモア・原爆、ノーモア・戦争、ノーモア・ヒロシマだ』と言って、そして、『これはもう世界の常識だろう』と思い込んでいるところがあるということです。けれども、そうではないのです」(『真実を貫く』) 日本は、バイデン政権に言われるままウクライナ支援を続けてきましたが、方向転換しないと、支援金を引き出すATMのように使われますし、ロシアと準軍事同盟化した北朝鮮のミサイルが本土に落ちかねません。 核を保有するロシア、中国、北朝鮮の3カ国を敵に回しながら、日本は裏金問題に終始している場合ではありません。日本が属国になりたくなければ、自分の国を自分で守るための核保有も含めた抑止力の強化、憲法九条改正も急ぐべきです。 マイナス金利が日本経済にもたらした3つのこと。17年ぶりの「金利ある世界」に戻るために必要な心構えとは? 2024.03.21 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 当記事は、動画チャンネル「TruthZ」に連動しています。 下記の動画もぜひご覧ください。チャンネル登録もお願いいたします。 https://youtu.be/oODks5s9Xkc ◆日銀はマイナス金利政策の解除を決定 3/18-19日、日銀の金融政策決定会合が行われ、焦点となっていたマイナス金利政策の解除が決定されました。 先週にも、株式市場で「日銀がマイナス金利を解除する可能性が高い」と見られ、一時株安が進みましたが、その後は反発するなど、株価、円相場は大きく変動しています。 先般、日経平均株価は最高値を更新しましたが、生活実感に乏しいというのが現状です。株高をもたらした影響としては、直近では、中国経済のバブル崩壊の懸念から、中国に流れていたマネーが日本株に流れるといった影響も挙げられます。また、この10年スパンで見ると、家計(売り越し25兆円)、日銀(買い越し36兆円)、企業(買い越し16兆円)、海外勢(買い越し5.7兆円)と、日銀が日本株を買い支えていたことが明らかであり(*1,2)、この点からも、この株価は「官製株高」と言えるでしょう。 いずれにせよ、金融政策というのは、株式市場に大きく影響を与えるわけですが、今回は、マイナス金利が日本経済に何をもたらしてきたのかについて、見てまいります。 ◆マイナス金利政策とは 2013年4月以降、黒田前総裁は、世の中に大量にお金を流す「量的・質的緩和」を行い、家計や企業がお金を借りやすくして景気を良くし、デフレから脱却することを目指してきました。しかし、2014年に行われた8%への消費増税が大きく影響し、デフレ脱却には至りませんでした。 そこで、日銀は、金融緩和策の深掘りを行います。それが2016年1月に導入が決まった、マイナス金利政策です。 マイナス金利政策とは、民間の金融機関が、日銀に預ける預金の一部にマイナス金利を適用するというものです。マイナス金利政策が経済にもたらしてきた影響を3つ取り上げます。 ①資本主義の精神を傷つける 1つ目は、そもそも、マイナス金利政策は、資本主義の精神を傷つける、というものです。 資本主義は、いわば「勤勉と節制で富を蓄積し、その富で新しいものを作る。そして更なる富を獲得して、さらに付加価値あるものを作っていく」という好循環を生み、国家に繁栄をもたらすものですが、マイナス金利は、考え方の根底において、資本主義の精神とは逆行するものと言えます。 小峰隆夫教授(大正大学)も、マイナス金利について、「お金を預けると減っていき、お金を借りると増えていくという世界になる。そんな世界はありえないと思う」と述べています(*3)。 ②景気回復にほとんど効果がなかった 二つ目は、景気回復にほとんど効果がなかったことです。 マイナス金利政策では、一般の金融機関は日銀にお金を預けておけばマイナスの金利、すなわちペナルティーが課せられます。日銀の狙いは、日銀に預けられたお金を企業や家計への貸し出しに回させようとするものでした。 しかし、そもそも極めて低い水準の金利が多少低くなったからと言って、企業や家計が借入を増やすことはなく、日銀の意図の通りにはいきませんでした。 ③銀行の経営を圧迫 三つ目は、銀行の経営を圧迫したという点です。 一般的に、信用が同じ程度の債券の場合、長くお金を貸す方が返済されないリスクも高まるため、短期よりも長期の金利の方が高くなります。 銀行は、基本的に、預金など短期のお金を低い金利で借り入れて、長期のスパンで企業や個人に貸し出しますが、高い金利で貸し出した部分と、低い金利で借り入れた部分の差が、銀行にとっての利益になります。 では、日銀がマイナス金利政策を実施した時、何が起きたかといえば、短期金利はすでにゼロ付近にあったことから、金利が低下する余地はほとんどなく、相対的に長期金利の方が低くなっていきました。 すると、銀行にとっては、利益が少なくなることになり、経営が大きく圧迫されることになりました。 経営難に陥った地銀など金融機関はリスクを避けるようになり、日銀の意図とは裏腹に、むしろ貸出を躊躇するという動きも見られました。 幸福実現党・大川隆法総裁は『富の創造法』の中で、マイナス金利政策によりもたらされる銀行の経営難が、日本経済に与える影響の可能性について、次のように述べています。 「銀行が危なくなると、銀行から大口の融資を受けているところもみな危なくなるので、経済政策が失敗すれば、大きなドミノ倒し型というか、将棋倒し型で経済の「負の連鎖」が起き、ある意味での経済恐慌が起きる可能性もなくはありません。(中略)マイナス金利を、一時的な“カンフル剤”として使っているだけならば、そこまでは行かないでしょうが、もし、これが恒常的なものになってきた場合、産業の構造自体が壊れる可能性が高いのです。」 銀行は、実体経済に血液としてのお金を送り込む、心臓のような存在とも言えます。心臓である銀行が機能不全に陥れば、日本経済は立ち行かなくなってしまいかねないのです。 ◆金融緩和の出口戦略に本来必要となる、政府の「覚悟」 以上、三点を踏まえても、今回のマイナス金利の解除は妥当と言えると考えます。 今回、日銀はマイナス金利政策を解除するとともに、長期金利を低く抑え込む長短金利操作(イールドカーブコントロール)の枠組みを終了することを決めています。 ただ、日銀は長期金利の急な上昇を避けるため、同枠組みの撤廃後も「これまでとおおむね同程度の金額で長期国債の買い入れを継続する」としています。 重要な点としては、今後、国債の金利が上がる場合、それは政府財政における利払費が増加することも意味します。 政府は今、1000兆円を超える国債を既に発行していると同時に、放漫財政を続けていることにより、毎年多額の新規国債を発行しています。政府が利払費の増加で財政が破綻に向かうことを防ぐためには、政府は、バラマキはやめ、歳出のあり方を根本的に見直す必要があります。日銀の出口戦略の本格化に向けては、政府歳出の抜本的な「減量」が必要なのではないでしょうか。 (【Truth Z】「株価史上最高値更新もこのままだと日銀倒産?「金利ある世界」に求められる覚悟とは?」(https://www.youtube.com/watch?v=qIofw00WPrc&t=2s)もご覧ください。) (*1)テレビ東京「ワールドビジネスサテライト(2024年2月26日)」、日銀「資金循環統計」より (*2)今回の日銀の金融政策決定会合において、日銀はリスク資産の買い入れ縮小策として、金融市場に大量の資金を供給する目的で行ってきたETF(上場投資信託)と不動産投資信託(REIT)の新規での購入を終了すると決定した。 (*3) 小峰隆夫『平成の経済』(日本経済新聞出版, 2019年)より 「国民の安全を守る」はまやかし?地方自治法改正でヒッソリ近づく危険な未来 2024.03.17 幸福実現党政務調査会 藤森智博 当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。 https://youtu.be/LRQO2xspgUE ◆地方自治法改正で、県や市町村などへの国の権限が強化され、全体主義に一歩近づく 今、SNS上では、地方自治法が改正され、”プチ緊急事態条項”がつくられるのではないかと話題になっています。地方自治法とは、市町村や県などの組織や運営、国との関係などを定めている法律です。 この地方自治法の改正案が、3月1日に国会に提出され、大きな波紋を呼んでいます。 改正の内容は、いくつかあるのですが、今回、注目したいのは、感染症や災害などが発生したときに、市町村や県などの自治体に国が「指示」を出すことができるという部分です。 つまり、緊急時には、自治体に対して、国が強権を持つことになります。これをもって、「“プチ緊急事態条項”だ」「独裁国家になる」ということが、一部で話題になっているわけです。 ただ、ここで注意しておきたいことは、今回の法改正は、自治体の権利を緊急時に制限するもので、国民の自由や人権を直接的に制限するものではないということです。 自由や人権を制限するためには、それこそ「緊急事態法」のような法律が必要です。その意味では、今回の法改正で、すぐに全体主義国家や独裁国家が完成するわけではありません。 しかし、間違いなくその道筋を描く法改正になると考えられますので、ポイントを3点、お伝えさせていただきます。 ◆「国民の安全を守る」という名目で、国民の自由や人権は侵害されていく まず挙げたいポイントは、今回の地方自治法の改正は、間接的に国民の自由や人権を制限するものに必ずつながるということです。 それは、今回の法改正の経緯を見れば明らかです。2020年に中国発・新型コロナ・ウィルスがまん延し、国は緊急事態宣言を発令いたしました。 しかし、緊急事態宣言で大きな権限を持つのは、都道府県知事です。この知事に対して、国はストレートな命令はできず、必ずしも国の方針に従わない首長が出てきました。 率直に言ってしまえば、コロナなどの緊急時に自治体を国の命令に従わせるために、この法改正は生まれているのです。 そして、こうした命令は、国民の自由や人権を制限するものにつながることが予想されます。 それは、改正案の条文を見れば一目瞭然です。条文では、指示を出すための条件として「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の「発生」や「発生するおそれ」のある場合としています。 ポイントは「安全」のところです。この「安全」という言葉は「魔法の言葉」で、「国民の安全を守る」という名目で、緊急事態宣言が発出され、行動制限が行われたり、ワクチンの接種が強力に推進されました。 つまり、「安全」という大義名分のもと、国民の自由が制限され、人権が侵害されたわけです。 もし、この条文が「国民の”自由”に重大な影響を及ぼす事態」だったら、一考の価値はあったかもしれません。 緊急事態宣言下では、東京都の小池都知事のように、国と競うような形で、独自の基準で国民に行動制限を強める事態も多々あったからです。 こうした暴走する知事たちを止めるための条項なら、検討の余地はあったでしょう。しかし、「安全」を盾にしている以上、国民の自由や人権を侵害する方向で、運用されると考えるべきです。 ◆拡大解釈されれば、理由をこじつけて、国の“やり放題”となってしまう危険性も 次のポイントは、指示を出すための発動条件が、曖昧過ぎる点です。つまり、国の強権発動が乱用される恐れがあります。 条文では、「大規模な災害」「感染症のまん延」を挙げつつも、その他の「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」であっても、指示などの強権を発動できるようになっています。 この事態を拡大解釈すれば、理由をこじつけて、「やり放題」となる可能性があるわけです。 さらに問題なのは、こうした事態の認定を「閣議決定」のみで可能としている点です。 例えば、有事法制では、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」「存立危機事態」「重要影響事態」は、全て国会の事前ないし事後承認を必要としています。 災害については、国会承認を経ずして、自治体に指示を出すことができますが、今回の法案のように発動の条件があいまいではありません。 つまり、今回の改正案は、“お手軽”な条件で、“お手軽”に閣議決定で発動可能であり、ここが大きな問題なのです。 ◆国の権限が強化されても、本当に必要な「安全保障分野」で発揮される期待は薄い 一方で、国と地方自治体の関係の在り方として、安全保障面で大きな課題があることも事実でしょう。 例えば、沖縄県の米軍基地の辺野古移設の問題です。2013年時点では、最短で22年度でしたが、県の強烈な反対に遭い、現在では2030年代半ばに遅れる見通しです。しかし、辺野古移設は国家全体の安全保障の問題であり、「地方自治」のみで振り回してよいものではありません。 この沖縄の問題が、今回の地方自治法の改正で解消されるかと言えば、大いに疑問です。 法律に基づき「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と認定して、県に指示を出したとしても「条文の乱用だ」と反発され、指示には従わず、結局、裁判にもつれ込むのは目に見えています。 裁判になれば、県側の主張が認められる可能性もあります。従って、こうした問題の有効打にはなりえないでしょう。 こうした問題は、裁判の余地がないよう、個別法で、具体的に規定すべきと言えます。 ◆「緊急事態」と称して全体主義が入ってくる ですから同法案の結論としては、本来、国がリーダーシップを発揮すべき問題では効果は出ず、国民の自由や人権が制限されることになるでしょう。 コロナ禍では、多くの自治体は責任問題となることを嫌い、国の指示待ちの姿勢でしたが、今回の法改正で、正式に国の「お願い」が「指示」に格上げされれば、喜んでこれに従い、国民の自由を制限する対策を講じていくことになると考えられます。 大川隆法党総裁は、『コロナ不況にどう立ち向かうか』の第1章「政治について言いたいこと」で次のように述べられています。 「日本人はわりにお上の命令に忠実なので、『はい、はい』と言って従う気はあるのですけれども、『ちょっと気をつけないと、もう一歩で(全体主義に)行ってしまいますよ』というようなことは言っておかなければいけません。(中略)「緊急事態」と称して全体主義が入ってくるので、気をつけなければいけないところがあると思います。」 今回の地方自治法改正は、まさに「安全」を大義名分に「緊急事態」を煽ることで、国民の自由や人権が侵害され、全体主義への道を開く危険性のある法律です。 もちろん、「地方自治」を名目に、本当に必要な「安全保障」の問題が疎かになってはいけませんが、これには、災害対策基本法のように個別法でもって、解決を図っていくべきでしょう。 政治家の「ムダ遣い」のツケを支払わされるZ世代。若者に無関心の日本政治、未来を変えるためにはどうすべき? 2024.03.16 幸福実現党政調会:西邑拓真 当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。 https://youtu.be/zWVT9hHdYpY ◆政府の来年度予算案が衆院で可決 3月2日、2024年度の政府の予算案が衆議院の本会議で可決され、年度内の成立が確実となりました。 今回決まった予算では、一年間で政府が使うお金、歳出額は112兆5717億円と多額にのぼり、昨年度に次ぐ過去2番目の規模となっています。 現在、政府の収入にあたる税収はおよそ70兆円です。歳出額は110兆円ですから、その差は実に40兆円です。 政府はこの差額40兆円を借金、国債で賄っているのです。俯瞰的にみて、およそこの30年は、税収がそれほど増えない中で、歳出は拡大を続け、毎年多額の借金を生み出してきました。 そして、その国債はいわゆる「60年償還ルール」の下で、今の若い世代、また、これから生まれる世代が、そのツケを払うことになります。 政府が歳出を拡大することは、実は、将来世代への負担の押し付けで成り立っているのです。 ◆世代間格差を生み出すバラマキ こうした状況をなくしていくためには、そもそも財政の構造を変えなければなりません。 政府が使うお金の最大の項目は「社会保障」費です(*1)。そもそも、年金や医療などの社会保障給付の財源は、私たちの収入から天引きされる社会保険料ですが、それだけでは巨額の社会保障給付を賄いきれないために、社会保障費に多額の税金が投じられています。 今、少子高齢化が急速に進んでいるため、今後、社会保障給付は拡大し続けていくと予想されています。社会保障のあり方を今、抜本的に見直さなければ、今後、さらに国債を発行する、あるいは大増税、社会保険料の大幅な引き上げに迫られることになります。 こうしたことについて、年金制度を例に見てみましょう。 年金制度ではそもそも、「将来、自分達が高齢者になって受ける年金は、自分達が現役の時に積み立てる」という「積立方式」が採用されていたのですが、1970年代に年金給付の大盤振る舞いを始めて、積立方式が成り立たなくなり、「賦課方式」、つまり、「今、高齢者が受けている世代の年金は、今働いている現役層がこしらえる」という方式に実質的に移行したのです。 現役層の人口が拡大する局面では、こうした賦課方式は成り立つのですが、今はまさに少子高齢化が進んでおり、「支えられる高齢者層」が増える一方、「それを支える現役層」が減少の一途を辿っています。 1950年には、12人の現役層で高齢者1人を支えているという構造でしたが、現在は概ね、現役層2人で高齢者1人を支えている状況となっています。そして、およそ40年後の2065年には、1人の高齢者を1人の現役層で支えるという状況となるのです。 それは、例えば自分の給料が30万円だとすると、この30万円で自分や家族を支えるとともに、社会保障制度のもとで、「見知らぬ、誰かわからない高齢者一人」を養うということを意味するのです。 このように、社会保障の賦課方式が採用されている中で、少子高齢化が急速に進むという、日本では今、「最悪のコンビネーション」が成り立ってしまっているわけです。 鈴木亘教授(学習院大学)は、厚生年金、すなわち、会社などに勤務している人が加入する年金について、若者と高齢者層など、世代間でどのくらいの格差があるかについて試算しています(*2)。 年金の大盤振る舞いの恩恵を受けた世代は、年金の支払う額よりも貰う額の方が多い「もらい得」となっている一方、若い世代は、貰う額よりも支払う額の方が多い「払い損」となっています。例えば、2000年生まれの方は、2610万円の「払い損」になるという試算となっています。 3460万円の「もらい得」となっている1940年生まれの方と比べると、実に、6000万円ほどの開きがあるのです。 そもそも、保険というのは、「加入者同士がお金を出し合い、将来のリスクに備える」ためにあり、年金も「年金保険」というくらいですから、本来は、保険の一つであり、「長生きしすぎて資産がなくなり飢え死にする」というリスクを社会全体でカバーしようとするものです。決して、年金は、世代間での「所得再分配」を行うための道具ではないはずです。 若い世代はいわば、「加入すれば必ず損する保険」に、強制的に入らされている状況にあると言えます。こうした年金制度の歪みを、無視し続けるわけにはいきません。年金をあるべき姿に戻すために、本来の年金制度のあり方について、徹底的な議論を行うべきでしょう。 ◆シルバー民主主義の横行は、若者の未来は暗くさせる 幸福実現党・大川隆法総裁は『地球を救う正義とは何か』において、少子高齢化がもたらす政治的問題について、「今後、『シルバー民主主義』といって、高齢者たちが選挙民として増えてきます。高齢者の場合、投票率が高く、だいたい六十数パーセントの人が投票します。一方、若者は三十数パーセントしか投票しません。二倍ぐらい違うわけです。そうすると、政治家としては『年を取った方の票を集めたい』という気持ちになるのです」と述べています。 2022年7月に行われた参議院選挙における年代別投票率(*3)を見ると、60歳代(65.69%)、70歳代以上(57.72%)と高い水準にある一方で、10代(35.42%)・20代(33.99%)は、少子化で有権者数自体が少ないにも関わらず、投票率も高齢層に比べて、半分程度に止まっています。 こうしたことから、今の政治において、相対的に若い年代の声が届きにくくなっているのが事実でしょう。 これまでの政治において、社会保障のあり方を見直そうという動きが、出ていないわけではありません。 しかし、結局のところ、その場しのぎとして制度の微修正にとどまってしまい、制度を根本的に変えるというところまでは到達していません。 それは、有権者の多くを占めるのがシルバー層であり、こうしたシルバー層の利益を優先する政治が行われてきたからにほかなりません。臭いものに蓋をし、制度改革の先送りを続けてきたこれまでの政治こそが、「シルバー民主主義」が横行してきた証明と言えるのではないでしょうか。 ◆若者が「政治参加」しない限り、未来は変えられない 関東学院大学・島沢諭教授が『教養としての財政問題』などでも触れていますが、政治学の中で、シルバー民主主義の脱却に向けて、若者の声を政治に届けるための新しい選挙制度のアイデアが、様々提案されています。 例えば、投票権をまだ持たない子供を養う親に、子供の人数分の選挙権を付与する「ドメイン投票制度」、「20代選挙区」「60代選挙区」など、年代別の選挙区を設ける「年齢別選挙区制度」、あるいは、人間の限界の余命を例えば、125歳とした時に、90歳なら125-90=35票、20歳なら125-20=105票を付与するなどして、若いほど自分が持つ票数が増える「余命投票制度」というものがあります。 こうした奇抜なアイデアがあるわけですが、結局のところ、高齢者が多数を占める「シルバー民主主義」の下では、高齢者が損失を被るような制度改革の実現は難しいと言えるでしょう。 幸福実現党は、上記のような選挙制度の変更を唱えているわけではありませんが、若者にとって希望の持てる未来を到来させるには、年金など社会保障のあり方を真っ当なものに変えることは必要と考えています。また、これからの世代にツケを回す、バラマキをなくさなければなりません。 日本の政治を変えるには、特にZ世代の皆さんの政治参加が必要不可欠です。幸福実現党は、若い世代、Z世代の皆さんとこれまでの日本を創り上げてきた世代の方との架け橋になるような政策提言を行っていけるよう、今後とも努めてまいります。 (*1)財務省「令和5年度一般会計予算歳出・歳入の構成」など参照。 (*2)幸福実現党2022年4月主要政策、鈴木亘『年金問題は解決できる!』(日本経済新聞出版社)参照。 (*3)総務省「参議院議員通常選挙における年代別投票率(抽出)の推移」参照。 https://www.soumu.go.jp/main_content/000646811.pdf (*4)全体の投票率は、52.05%。 地方自治体で加速する保育無償化――本当に必要なことは、保育無償化をやめること 2024.03.14 http://hrp-newsfile.jp/2024/4487/ HS政経塾12期生 縁田有紀 ◆地方自治体でも加速している保育無償化 ここ最近、地方自治体では、独自に保育無償化を加速させる動きが見られています。 全国一律の保育無償化は、3~5歳児が対象ですが、独自で0~2歳児にも対象を広げる地方自治体が増えています。 象徴的だったのは、2023年10月から、東京都が0~2歳の第2子の保育料無償化をはじめました。 直近では、2024年2月4日投開票の京都市長選で、自民・公明・立憲推薦の候補者、松井孝治氏は第2子以降の保育料無償化を公約として掲げ、当選を果たしています。 このように、地方自治体で保育無償化が進められているわけです。 しかし、優しい印象を持つ保育無償化ですが、手放しに喜べません。「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉もありますが、このような一見優しいものほど、大きな落とし穴が隠されているのです。 ◆「無償化」という言葉のウソ この保育「無償化」という言葉は、良い印象を持ってしまい、歓迎しがちです。 しかし、日々の保育にお金がかからなくなったわけではないのです。 例として、東京都の認可保育所の場合、全年齢1人当たりの平均運営費は、月額15万円~20万円程度のコストがかかっています。 特に0歳児1人当たりにかかる保育運営費は、平均で月額30万円~50万円程度もかかっているのです。 このように、保育には大変なコストがかかっているわけですが、問題は「無償化」という言葉のウソによって、そのコストが見えなくなってしまうことです。 そして、このコストを負担しているのは、保育園を利用していない人も含めた国民の税金なのです。 ◆無償化で保育の需要は、際限なく広がる このような無償化の構造は、保育園の利用を過剰に促していくことになります。本来、保育園を利用するかどうかは、自分たちの収入のなかで、家庭で判断することになります。 しかし、「政府からの無償」という過度な支援は、自分たちの経済状況は関係なく、自分たちの責任の範囲を超えたお金で、保育園を利用することになっていきます。 これにより何が起こったかというと、保育園の需要拡大です。 こども家庭庁が発表している「保育所等関連状況取りまとめ」によれば、3~5歳児の保育利用率は、2018年は51.4%でしたが、2019年から国による保育無償化開始以降、右肩上がりで上昇し、2023年には59.5%となりました。 3~5歳児の保育を利用する人数で言えば、約7.8万人増えたのです。 ◆過度な福祉で家庭がいらなくなってしまう こうした保育所全入の流れは、価値観の変容を引き起こしています。 ベネッセコーポレーションが2022年3月に行った「第6回幼児の生活アンケート」によれば、「子どもが3歳くらいまでは母親がいつも一緒にいたほうがいい」と回答した比率は、過去最少の44.9%。2005年の61.7%から20ポイント近く減少しているのです。 もちろん、保育無償化のみがこの原因であると断定はできませんが、大きな影響を与えていると考えられます。 このような考え方の変化は、「子育ては家庭で責任を持つもの」という伝統的な価値観が崩れ、「子育ては社会や政府がするもの」に変化しているとも言えるでしょう。 しかし、政府に面倒を見てもらう、依存しようとすればするほど、家庭がいらなくなってしまいます。 例えば、武田龍夫著『福祉国家の闘い』では、福祉国家を代表するスウェーデンについてまとめていますが、ここに象徴的な記述があります。 大学生がある老人に、一生の中でもっとも重要な変化は何かと問いました。 二度の世界大戦かなどと大学生はいろいろ考えていましたが、老人の返答は「それはね、家族の崩壊だよ」。家庭の中にあった老人たちの介護、子どもの子育ては公的機関に任せるようになったことで、家庭が役割を失っていく様を表しています。 家庭の価値がわからなくなり、家庭をつくる意味も、家庭を大切にする意味もわからなくなってくるのです。 ◆気づかぬ間に政府依存に さらに、そうして高められた福祉が、人々の幸福には直結するかと言えば、実はそうではありません。 衆議院議員を務め、マルクス主義を鋭く批判していた山本勝市氏は『福祉国家亡国論』の中で次のように述べています。 「人間の欲望は、それ自体絶対的水準があるのではなく、欲望自体が肥大してくるのが通例です。その肥大した欲望を満足させるためには自分で努力しなければならないということであれば、たとえその欲望を満たせなくてもあきらめますが、国に要求すれば与えられるということであれば、節度が失われてきます。福祉が経済的に高まれば高まるほど、ますます精神的状態は不満足の度合いが高まることになりがちなのです。」 (引用終わり) 残念ながら、これは保育の分野でも当てはまりつつあります。 2019年に全国一律で幼保無償化が行われましたが、それでは足りないということで、0~2歳児の保育も無償化してほしいという希望、保育園を利用する人だけではずるい、専業主婦にも支援が必要だ、だから、「こども誰でも通園制度」をしようなど、福祉は際限なく拡大しつつあります。 こうして福祉が拡大すればするほど、家族の絆は失われ、家庭は解体されていきます。 その結果、バラバラになった個人は、結局政府なしには生きることができなくなります。まさに、過度な福祉は、隷属への道そのものです。 ◆まずは一つでも減量を 大川隆法党総裁は『危機に立つ日本』の中で、「正しい方向で努力しなくても、いくらでも援助を引き出せる世界は、一見、善いように見えますが、これは、自分の体のなかに、麻薬、麻酔を打ち続けているのと同じです。」とおっしゃられ、なんでも政府が面倒を見る社会に警鐘を鳴らされています。 なかなか抜け出しにくい過度な福祉による政府依存から、一歩でも抜け出すことを考えなくてはなりません。まずは、保育無償化を加速させるのではなく、むしろやめることを考えなければならないのです。 そして、現役世代の負担解消は、「税金、社会保険料」の重い負担にこそあります。税金や社会保険料は、「五公五民」とも言われ、総額で収入の半分近くも取られており、バラマキ政策の「減量」に目を向けていくべきでしょう。 台湾有事に備えて、国民保護法の改正を!沖縄県民の生命を守るためには 2024.03.13 http://hrp-newsfile.jp/2024/4485/ HS政経塾第12期生 山城頼人 ◆台湾有事に備え、沖縄等の避難想定が進むも、現状では大事な視点が足りていない 近年、中国の習近平国家主席は台湾の統一についての発言を繰り返しており、専門家の間では、習主席の任期が終わる2027年までに、台湾の統一に向けて動くのではないかと言われています。 こうした台湾有事の際に国民の生命を守るために、「どのようにして避難をするか」ということが真剣に検討され始めています。 沖縄県の先島諸島(与那国島や石垣島、宮古島など)をはじめ、今年の1月には鹿児島県の離島の住民避難を想定した図上訓練が行われました。 今まで台湾有事に備えた訓練は行われていなかったため、実際に訓練を行って、課題を洗い出すことは重要なことです。しかし、大事な視点が抜け落ちています。それは、住民に対して「避難指示が出るタイミング」です。 ◆戦闘が目前にならないと避難指示を出せない!? では、なぜ「避難指示が出るタイミング」が問題なのでしょうか。それは、台湾有事が起きて、先島諸島周辺が戦闘区域に入ってしまえば、避難が困難になるからです。 特に与那国島は台湾から約110キロの近さに位置しているため、真っ先に巻き込まれてしまいます。ですから、いかに早く避難を始めるかが重要なのです。 しかし、現行の国民保護法だと避難は間に合いません。その理由は大きく二つあります。 一つ目は、現行法では「武力攻撃予測事態」にならないと国民への避難指示が出せないためです。武力攻撃予測事態とは、「他国からいつ攻撃を受けるか分からない切迫した事態」です。 例えば、沖縄の離島が軍艦で囲まれ、明確に攻撃が行われると予想される事態などがあげられます。つまり、もう戦闘が目前に迫っている状態なわけです。こうした状況下で避難指示が出たとしても、先島諸島の避難には間に合わないのです。 なぜこのような法律になっているのでしょうか。それは、戦後の行き過ぎた平和主義から諸外国や自治体に必要以上に配慮して、法律を整備し、複雑化していったからです。 二つ目が、住民を輸送する手段が事実上ないということです。そもそも、自衛隊は住民避難への輸送に協力する余裕はありません。自衛隊の主要な任務は外敵(敵国)の排除になります。 軍事大国である中国を相手に戦うと考えると、住民避難のための輸送力を提供するのは困難であるのが実情です。大地震のときのように人命救助に徹することはできません。 また、民間の運送会社(航空会社、海運会社)が住民避難の輸送に協力してくれるかも、実際のところ分かりません。 そもそも、民間の運送会社に、住民避難を手伝う義務はありません。もし、武力攻撃事態に至れば、民間船が攻撃されるリスクもあります。 このようなリスクを背負ってまで、運送会社が自社の社員を現地に送り出すのかは疑問に思います。 前提として、そのような危険な状況下で、民間企業に避難を行わせるような計画を当初から考えるべきではありません。 ◆早いタイミングで避難指示を出せるようにするには 以上の理由から、武力攻撃予測事態よりも、早いタイミングで避難指示を出すことができるように、国民保護法の改正を行うべきです。具体的には軍事衝突が深刻化していない段階である、「存立危機事態」と「重要影響事態」の両事態でも避難指示を出せるようにすることです。 存立危機事態とは、「日本と密接な関係にある国が攻撃を受け、日本の存立が脅かされる事態」のことを意味します。 例えば、米軍が中国から攻撃を受けた事態などがあげられます。重要影響事態とは、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」のことを意味します。例えば、南シナ海における中国とフィリピンの軍事衝突などがあげられます。 先島諸島の住民が、安全な間にすばやく島外避難を行えるようにするには、このような法改正をするべきです。 そして、政府は、存立危機事態と重要影響事態の解釈の範囲に、「台湾と中国の軍事衝突」、また「軍事衝突の予兆」を含めて、普段からシミュレーションを行っていく必要があります。 その上で、国民保護法を改正して、早いタイミングで避難指示を出せるような体制を構築すべきです。 もちろん両事態でも、自衛隊は敵国への対応を強いられるので、災害時のように人命救助のみに力を割くことはできませんが、武力攻撃予測事態よりも時間的には余裕が生まれます。 この間に、民間とも協力しながら、住民の輸送を行うべきです。 ◆沖縄県民の生命を守るために、一刻も早い法改正を もちろん、他にも課題は山積みです。例えば、避難にあてる具体的な輸送力の確保、避難場所の確保、空港の滑走路の延伸工事や港の岸壁の工事、または島内にも避難できるように地下シェルターの建設などが必要となります。 しかし、そうした準備を行っていたとしても、避難指示の出るタイミングが遅ければ、沖縄県民の生命を守ることはできず、本末転倒になってしまいます。 このような事態を招かないためにも、一刻も早く国民保護法の改正を行うべきです。 そして、そもそもこうした事態を招くことがないよう、同時に国防の強化と戦略的外交を展開していくべきです。 LINEへの行政指導、アメリカで中国に個人情報の販売・移転禁止… ほぼ同時に報道された2つの事件から見えてくるものとは 2024.03.08 https://youtu.be/Et-1K-LeD1s 幸福実現党政務調査会 藤森智博 ◆日米でほぼ同時に報道された個人情報の重大事件 月間利用者数は9500万人を超え、日本人口の約7割をカバーするLINEアプリ。今や日本人になくてはならない。 そんなLINEアプリですが、個人情報の流出が相次ぎ、2月29日には総務省が行政指導を行う方針であることを日経新聞がスクープし、3月5日に行政指導が行われました。 そして、ほぼ時を同じくして、2月28日にアメリカでは米国人の特定の個人情報を大量に販売・移転するのを禁止する大統領令が発表されました。禁止する対象は、中国などの安全保障上の懸念がある国々あり、個人情報は、個人の健康状態などの機密情報になります。 運命は数奇にして、個人情報関連の大きな事件が、ほぼ同時に日米で起きました。この2つの事件を比較していくことで、日本の個人情報保護の大きな問題点が見えてきます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 ◆繰り返すLINEの個人情報流出に、ついに3回目の行政指導。しかし効果のほどは? まずはLINEです。LINEは21年3月に中国から利用者の個人情報が閲覧可能だったことが発覚し、大問題となりました。 このときLINEは対策として、①中国からのアクセスの完全遮断、②海外に保存してあるLINEデータを同年9月までに国内に完全移転することを発表。 さらに4月には、総務省から行政指導も受けますが、その後も問題は後を絶ちません。 21年10月には、ヤフーなどのZホールディングスと合併し、LINEヤフーとなりましたが、23年8月には、韓国のネイバーに対し、利用者への十分な周知をせずにデータを提供したとして総務省の行政指導を受けました。 ネイバーはLINEの生みの親であり、今もLINEヤフーに対し、事実上ソフトバンクと同等に出資している大株主です。 LINEヤフーは、このネイバーに不十分な周知で、位置情報約410万件を含む約756万件の個人情報を提供したのです。 さらに23年11月には、LINEヤフーは、44万件の個人情報がサイバー攻撃で流出した可能性を発表。その原因の1つは、ネイバーと一部のシステムを共通化していたことでした。 加えて、今年2月には、ネイバーとは別の韓国の業務委託企業から、旧LINEの従業員情報が5.7万件流出した可能性と、44万件としていた個人情報の流出が、実は51万件だった可能性を発表しました。 しかし、同社から具体的な説明や対策の発表はなく、業を煮やしたのか、総務省が再び行政指導を行うことが2月29日に報道され、3月5日に実際に行われました。 ですが、21年から3度目となる行政指導で、問題が解消されるのかと言えば、大いに疑問であると言わざるを得ません。 ◆政治主導で、個人情報の機密データの悪用を防ごうとするアメリカ 次にアメリカを見てみましょう。28日に発表された中国などへの大量の個人情報を販売・移転するのを禁止する大統領令です。 今回規制された個人情報は、遺伝情報、音声やキーボードを打つ動きなどを含む生体認証に関する情報、そして健康情報、位置情報、金融情報、個人を特定可能な情報です。 例えば遺伝情報などは生物兵器にも転用可能であり、こうした情報が安全保障上の懸念国に流出することは、安全保障上の危機に直結しかねません。バイデン政権の幹部も、遺伝情報の悪用を最も強く懸念していると述べています。 さらに、こうした機密情報は、スパイ活動や脅迫、詐欺などに活用できます。 LINEの例で考えてみれば、不倫相手とのメッセージのやり取りが“文春砲”などで、暴かれることが多々ありますが、こうした個人情報を中国などが入手すれば、有名人や政治家を脅迫し、世論誘導やスパイ活動に従事させることも可能です。 また、健康上の悩みも脅迫などに利用できるでしょう。 これを先ほどのLINEの情報流出で考えてみると、21年段階で、韓国のサーバーに保管されていた情報は、オンライン診療サービスで利用する健康保険証の情報も含まれていました。 また、昨年8月の行政指導の内容も、機密情報に分類された「位置情報」の約410万件の流出でした。 昨年11月から続く情報流出では、どのような機密情報が含まれていたかは、現状不明ですが、過去の事例を見る限り、何かしらの機密情報が含まれていたと考えるべきでしょう。 アメリカでは、こうした機密情報の取り締まりが、大統領令によって強化されます。さらに議会では、アメリカ人の遺伝情報を守るために中国のゲノム解析大手BGIなどと政府機関が契約するのを禁止する法律を検討しています。 また、今回の規制対象は外国でしたが、外国だけでなく、アメリカの連邦政府自体が、諜報機関を通じて、国民のそうした機密情報を収集していることが議会で明らかになり、超党派で問題意識が強まっています。 ◆日本も政治主導で、国民の機密情報の悪用を防げ このように、日米で個人の機密情報の問題は、同様に起こっている問題ですが、その“対処”の仕方には大きな違いがあります。 2021年以降、LINEへの行政指導は3回に及びますが、この間に個人情報保護法の法改正はありません。 一方、アメリカでは、法令の制定を行なったり、議会で強い関心を持って、個人情報の問題を扱っています。 また、アメリカでは議会や政府が、中国への情報流出を問題視していますが、日本の政治家は、あまりそうした問題を語りません。 今回の日米の2つの事件を比較すると、日本の政治のこうした問題点が鮮明に見えてきます。 また日本では、マイナンバーのシステムを強化し、中国のような国民総監視社会に近づきつつありますが、一方で、米紙ワシントン・ポストに昨年8月、中国からのサイバー攻撃で政府のコンピューターシステムから機密情報が流出した疑いが報道されるなど、行政の情報管理の在り方には大きな疑念があります。 大川隆法総裁は次のように述べています。 「国民監視を一元管理し始めたら、やられるのは、おそらく、日本国民がやられるのであって、たぶん外国のスパイのほうではなかろうと思います。そちらのほうはトラブルを避けたいから、たぶん“逃げ放題”になるのだろうから、たいへん情けないなと思っています」(『コロナ不況にどう立ち向かうか』/第1章 政治について言いたいこと) 今のままでは、私たち国民の個人情報は、内外からほしいままにされかねません。 そうした事態を防ぐためには、アメリカのように政治の側から声を上げていくことが必要なのです。 日本人のほとんどが、実は正しく理解できていない「保守」と「リベラル」のホントの意味 2024.03.07 幸福実現党選対本部・湊侑子 ※当記事は、YouTubeチャンネル「Truth Z」に連動しています。 ぜひ、下記動画をご覧ください。 https://youtu.be/PADGEF5b8fU ◆分かるようで曖昧な「保守」「リベラル」の定義 最近評判になっているテレビ番組に『不適切にもほどがある』という番組があります。 これは、昭和のダメおやじが令和にタイムスリップし、その「不適切」発言が令和の停滞した空気をかき回す、という内容で、現代の働き方改革やハラスメント概念、教育などに対して、おもしろおかしく疑問を呈する内容です。 ある意味、令和の行き過ぎたリベラルに対する批判にも見えます。 政治の世界では、昨年自民党が「LGBT理解増進法」を成立させたことに対し、日本の伝統や歴史に反しており「自民党はもう保守ではない」と、新しく保守を名乗る政党が誕生しました。 このように、私たちは「リベラル」とか「保守」という言葉を使っていますが、「保守」と「革新、リベラル」は反対の概念ですが、これらの定義をはっきりと答えられる人は少ないのではないかと思います。そこで今回は、これらの言葉の意味について考えてみたいと思います。 ◆「保守」と「フランス革命」の関係性とは? 日本では、「保守」というと、皇室や伝統を重んじるというイメージが定着していますが、具体的に何を保守するのか、は曖昧な状態が続いてきています。「保守」とは、もともとはフランス革命を批判する政治的立場を指していました。 保守主義の元祖は、英国の18世紀の政治家「エドマンド・バーク」であると言われています。著書『フランス革命の省察』のなかで、バークがフランス革命を批判した論調が保守主義と呼ばれたことが、保守のはじまりだと言われています。 バークの考えによると、フランス革命は、人間の理性で考えられた理想主義で、フランスの歴史や伝統、宗教を破壊し、国家の秩序をなくすものである。その結果は国民の自由と安全を脅かすものとなり、「いかなる国家も神を信じない合理主義者に支配されるべきではない」と批判しました。 その後のフランス革命の混乱や、共産主義による独裁や大量粛清をみるに、バークの先見性が後世、高く評価されています。 フランスの外に目を転じると、バークは、アメリカの独立を、信教の自由の拡大と支持しました。さらに、自国の英国のインドに対する支配の在り方については、インドの伝統的価値を奪ったとも弾劾しています。 バークのいう保守主義とは、旧来の制度を単に守り続けることではなく、個人の財産の自由、信教の自由を、秩序あるものとして少しずつ拡大するものであります。その中でも特に、信教の自由を大切にするのが保守の基本であるのです。 ◆「リベラル」の中に潜む大きな危険性とは? それに対して、リベラルとは人間の理性で考えた通りにすれば、世の中は変えられるという考え方です。伝統や宗教を無視して政治体制を作り上げようとする考え方で、共産主義国がその典型的な例となります。 その結果、何事も役人が立案し、国民をその下に従わせる「大きな政府」が出来上がっていきます。 このリベラリズムに対して、「保守」は人間の知性には限界があり、いくら理性的に新しい制度を考案しても、それが正しく機能するという保証はないと考えます。 そのため先人たちが長い時間をかけて検証してきた叡智の結晶である過去の伝統や文化を大切にしながら、変えるべきところを変え、自由を拡大していこうという考え方です。 真なる「保守」は、政府からの干渉をできるだけ小さくしようとする、「小さな政府」を指向するのです。 幸福実現党の大川隆法党総裁は、保守とは、「家庭や社会、国家にたいして責任を感じる立場」と定義されて、その著書『危機に立つ日本』のなかで、次のように述べられています。 「さらには、『理屈どおりにいかない繁栄というものがある』ということを知らなくてはいけません。それは、トックビル(フランスの政治学者〔一八〇五〜五九〕)が見たアメリカの民主政治と同じものです。 『なぜかは知らないけれども、民衆に活気があり、繁栄していく世界』というものがあり、こちらの世界観のほうを大事にしなければいけません。 ルソーなどの影響を受けた、フランス革命等の『理性主義的な民主主義』のなかには、危険なものが潜んでいて、実は、ロシア革命や中国革命で起きた大量粛清につながっていくものがあります。 冷たい理性主義が流行ると、自分たちの理論や考え方と合わない者を処刑し、粛清していくようになるのです。これに気をつけなければいけません。 やはり、『多くの人たちの智慧を引き出し、繁栄を導いていく』という、自由主義を守ることが大事です。 そして、そのなかに、『社会に対する責任、国家に対する責任、あるいは家族に対する責任、こういう責任を負う』という自覚を持ったときに、それが『保守』となるのです。自由と保守とが結びつくわけです。 今、日本において、自由政党も保守政党もなくなろうとしています。しかし、最も伝統的で古く見えるものが、 実は、最も新しく、未来につながるものなのです。」 (引用終わり) ◆今の日本における「保守」のあるべき姿とは? ある意味で「保守」とは、人間の知性を超えた神の存在を信じることであり、決して古い制度を守り続けることではありません。人間の知性や理性を超えた「神の心」を無視した「保守」というのは本来の保守ではないのです。 ですから、保守政治が目指すものは、戦前の日本神道で統制する国家や、すべてを国が面倒をみる、行き過ぎた福祉国家でもありません。ましてAIによって管理される国家でもありません。個人の自由を守りながら、社会に対する責任を負う自覚のある社会。自助努力や勤勉さを重んじる社会ではないでしょうか。 神を大切にするということで、いわゆる「保守」と言われる政党は皇室を尊重している面がありますが、残念ながら日本神道には教えがありません。「かたち」だけ尊重すれば、政治で何をやってもいいというものではありません。それが「大きな政府」に流れた今の自民党政治であると考えます。 幸福実現党は、何もかも国家が面倒をみる「大きな政府」ではなく、個人の努力や責任を尊重する「小さな政府」を目指すべきだと考えています。 また、国防については、まわりの国の善意を信じる理想主義ではなく、国民の生命と財産を守る権利として、防衛権はあるという伝統的な考え方に立つべきだと思います。 さらに、善悪を教える神の心を知り、尊重する姿勢を持たないといけません。国の繁栄も、真なる「保守主義」から生まれるのではないでしょうか。 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 … 253 Next »