【憲法記念日】改憲論の先にある国家の未来構想「新・日本国憲法試案」
幸福実現党党首 釈量子
◆「平和憲法」では日本は守れない
1947年5月3日、現行の「日本国憲法」が施行されて77年経ちました。
現行憲法は1945年の敗戦後の占領下において、占領軍の人が一週間ぐらいで作り、押し付けられたものです。
軍隊を取り上げられ、宗教を教育から排除し、国家の背骨が抜かれました。日本の強さは精神性にあるとみた占領軍は、日本が再びアメリカに対して歯向かうようなことがないように、国家の背骨である宗教を骨抜きにしたのです。
このように、とても日本人の手で作ったとは思えない憲法は、戦後、一度も改正されることがないまま、今日に至っています。
ちなみに諸外国では戦後どのくらい憲法改正されているかというと、1945 年から 2022 年まで、アメリカ 6 回、カナダ19 回、フランス 27 回(新憲法制定を含む。)ドイツ、67 回、イタリア19 回、オーストラリア 5 回、中国でも、戦後10回改正しています。
世界は激変しています。ウクライナや中東での戦争が世界大戦につながりかねず、核兵器を持つ中国、北朝鮮、ロシアの3カ国を敵に回して日本は国家存亡の危機です。ところが国会では裏金問題に終始しています。
日本では戦争の放棄を定めた憲法9条を含んだ現行憲法を「平和憲法」と称し、「日本国憲法さえ守っていれば、日本は安全で幸福になれる」という“憲法信仰”、「現行憲法を守っていれば、日本は平和で安定的に発展する」という考え方がずっと続いてきました。
しかしながら、日本は「平和を愛さない国」に囲まれています。戦後、状況は大きく変わってきており、日本が戦争を放棄すれば、日本も世界も守れないことは明らかです。
企業でもイノベーションが必要なように、国際情勢に照らして、軌道修正、さらには思い切った憲法改正が必要です。
日本人の手で自分の国の憲法を変えられないというのなら、「政治参加の自由」がないということです。まるで江戸時代の町人のように「お上によって、下々が治められている」意識とあまり変わらないのではないでしょうか。
◆国家理念を提示する「新・日本国憲法試案」
私たち幸福実現党は、2009年の立党直後に、大川隆法党総裁による「新・日本国憲法試案」を発表しました。
「この国を根本的に改造し、未来型国家に変身させることも可能だと信ずる」とし、「国家の理念」となる骨組みとして前文と16条を提示しました。
「新・日本国憲法試案」
http://special.hr-party.jp/policy2013/constitution/
憲法とは国家権力の制限の道具として存在するというのが一般的な考え方です。しかしながら、それではあまりにも寂しいと私たちは考えます。
会社に経営理念があるが如く、国家にも「国家理念」、つまり国の基盤となる考え方を明らかにすることが、国民の幸福を実現するために必要なことだと考えています。それが幸福実現党の憲法観です。
「新・日本国憲法試案」はこのような憲法観に基づくものであり、聖徳太子の「十七条憲法」を彷彿とするのですが、国家の未来をどうデザインするかという構想を示し、叡智は、そう簡単に得られるものではありません。
大川総裁が書き下ろされた憲法試案は、改憲議論のさらに先にある未来国家の構想といえます。
まずは、現行憲法の改正から始めるのが現実的ですが、日本人の手で自分たちの幸福を実現する機運を作っていくために、その一部をご紹介します。
◆現在の改憲議論「緊急事態条項」について
現在、衆議院の憲法審査会で焦点になっているのは「緊急事態条項」です。
安倍政権下で「お試し改憲」ということで浮上しましたが、「緊急事態条項」とは、戦争やテロ、それに大規模な災害などの非常事態に対処するための規定のことです。「大規模な災害」には、コロナの感染拡大といったことも想定されています。
現在、国会では「国会議員の任期延長」に絞って憲法改正に向けた議論が行われています。総理大臣が事前もしくは事後の国会承認を要件として「緊急事態」を宣言すれば、「国会議員の任期延長」を行って、国会の機能を維持することを目指す趣旨です。
緊急時に国会機能を維持する必要性は理解できます。ただ、同時に憲法審査会では、緊急状態で国会機能が維持できない場合に備えて、政府が法律と同じ効力を持つ政令を定める「緊急政令」や「緊急財政処分」に関する規定についても検討すべきだとの議論も行われています。
このような政府権限の強化は危険性が高いといえます。「緊急事態」の名のもとに、政府に権限が集中すれば、国民の自由が制限される危険性が高まるからです。これは、ナチスのヒトラー政権における授権法のような、全体主義体制につながりかねません。
ヒトラーのようにというのは大げさかもしれませんが、日本でもコロナ禍において「緊急事態宣言」が出され、私たちの移動の自由や営業の自由などが著しく制限されました。
あくまでも「外出の自粛」「営業の自粛」ということではありましたが、営業しているお店を攻撃したり、ネットで晒したり、といった「自粛警察」という言葉が流行りました。まるで反ナチス運動を取り締まる秘密警察、ゲシュタポのように一般国民が密告者にさせられるような恐怖を感じました。
緊急事態を名目に、一時的にせよ内閣が法律と同じ効力の政令を安易に出せるようになってしまえば、国民の自由や基本的人権が簡単に制限されてしまう危険性が高まるのです。
◆宗教立国は世界のスタンダード
もちろん、戦争時など、やむを得ず政府の権限を強化しなければいけないこともあるかもしれません。しかし、新型コロナの特性が次第に分かってきてからも、緊急事態宣言が繰り返され、自由が制限されたことを振り返ると、自由の大切さを何度強調しても足りないと言えます。
私たち幸福実現党は、私たちの生命、そして自由は神から与えられたものだと考えます。人間は造物主に作られたものだから、神の子、仏の子だから尊く、人権があると考えます。
このように、人間を超える神仏の存在を認めていなければ、為政者は国民の自由を奪うことに躊躇がなくなってしまうのです。
ですから、幸福実現党は、まずこの国を宗教を基盤とする精神性の高い国にしたいと考えています。宗教立国は世界のスタンダードです。
アメリカ独立宣言には、「すべての人は平等に造られ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され」と述べられています。トランプ氏が何度も「自由は政府ではなく神からの与えられたものであるという基盤の上にこの国は成り立っている」と述べていました。
自由の大切さは、先ほど述べた緊急事態への対応の際に問われるのはもちろんのこと、経済政策においても問われます。
トランプ氏は大統領就任時、大胆な減税や規制緩和を行い、国民の経済的自由を拡大しましたが、これは神から与えられ自由だからこそ、それを最大限尊重すべきだという、トランプ氏の宗教的な「自由の哲学」がもとになっているといえます。
ドイツ憲法の前文では「ドイツ国民は、神と人間とに対する責任を自覚し」と示されています。
「人間は造物主によって造られた神仏の子である」ことが人権の根拠であり、ここから「自由」が尊いものになるわけです。この点、神仏の存在に根差さない日本国憲法は、人権の根拠が薄弱です。
『新・日本国憲法試案』前文には、すべての党派や宗派を超え、人々が国民として生きていくための規範、進むべき方向を指し示されています。
〔前文〕われら日本国国民は、神仏の心を心とし、日本と地球すべての平和と発展・繁栄を目指し、神の子、仏の子としての本質を人間の尊厳の根拠と定め、ここに新・日本国憲法を制定する。
いま、感染症全体主義や、マイナンバーを使った国民の私有財産を一元管理することなど、人間を超えた叡智を持つ神仏の存在を認めない、天狗的な傲慢さがあります。
私たちはこの精神のもと、政策を作り、判断し、唯物論・無神論国家の中国、北朝鮮の覇権主義や人権侵害行為も止めさせたいと考えています。
◆国防…自衛隊を国際標準の国防軍に
世界情勢を考えると、急がなくてはならないのが「憲法第九条」の改正です。「自分の国を守る」ということを憲法で明文化できないのは、主権国家としては悲しいことです。
「戦争をしない」ということと、「戦争ができない」のは意味が違います。「敵の監獄の中に入れば、もう襲われることはない」と言うなら、奴隷の平和です。
安倍政権の時に、戦力不保持と交戦権を否認したまま、憲法9条に自衛隊の存在を明記する「加憲」が議論されましたが、これは「自衛隊は戦力(軍隊)ではない」という、嘘の追認をするだけで、日本の国防強化にはぜんぜんつながりません。むしろ、「戦えない自衛隊」が明文化されてしまう危険性があります。
ですから、9条を改正して、自衛隊を国際標準の軍隊と認め、自衛のために戦えるようにすることが大事です。
幸福実現党の「新・日本国憲法試案」では、もう一歩踏み込み、「防衛軍」を創設することを明記しています。
〔第五条〕国民の生命・安全・財産を護るため、陸軍・海軍・空軍よりなる防衛軍を組織する。また、国内の治安は警察がこれにあたる。
国防と警察は政府がなすべき代表的な機能です。
◆経済…小さな政府で国民の自由を守る
現在、インフレが暮らしに打撃を与えていますが、こうした厳しい状況のなか、与野党ともにバラマキ合戦に終始しています。しかし、バラマキ政策は必ず増税をまねきます。
歴代政権がバラマキ政策を繰り返した結果、政府の借金は1280兆円です。政府の借金を子孫の代に先送りしているだけです。
著名な投資家が、「日本に経済的に明るい兆しはもうない」として、日本からの脱出を促す人もいます(ジム・ロジャース氏)。
いまこそ「小さな政府」「安い税金」を目指し、「国民の自由の領域」をふやし、民間に任せられるものは民間に。無駄な役人を減らして、無駄な役所を減らして、無駄な仕事をやめる。」ことです。(『減量の経済学』第3章)
「国家は常に、小さな政府、安い税金を目指し、国民の政治参加の自由を保障しなくてはならない。」(『新・日本国憲法試案』第11条)
「小さな政府」か「大きな政府」かを分ける指標はいろいろありますが、代表的な指標が「国民負担率」です。所得に占める、税と社会保険料の割合です。今は47.5%。江戸時代の五公五民と同じ状況で、どんどん大きな政府に進んでいます。
日本がバラマキと増税の悪循環に陥る中、日本の国内総生産(GDP)はドイツに抜かれ世界4位、2026年にはインドにも抜かれそうです。
与党も野党も、福祉国家主義、国家社会主義のもと大きな政府に突き進むなか、幸福実現党だけは「小さな政府」「安い税金」を訴えています。
それは先述したように、「小さな政府・安い税金」こそが、国民の自由を守る道だからです。「安い税金を目指し」で、増税の防波堤にはなります。
以上、「憲法記念日」にあたり、変わるに変われない日本の急所、憲法について考えました。
日本人自らの手によって、憲法を、自分たちの幸福にとってふさわしいものに変えていこうではありませんか。