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再エネ推進はもう限界なのに・・・国民に負担ばかりのFIT制度が止められない仕組みとは?

https://youtu.be/YSEmBglPaM4

HS政経塾 第12期生 坂本和佳

◆再エネ事業者に対する交付金の一時停止が可能に

現在、太陽光発電の増加に伴い、山間部で相次ぐ住民とのトラブルが無視できない状況になっています。

こうした状況を受け、経済産業省は再エネ事業者と住民とのトラブルを回避するために、FIT制度の規定を変更する改正再エネ特措法を4月1日に施行する予定です。

FIT制度とは、再エネ政策の根底を支える制度で、再エネ事業者が発電した電気を高値で買い取ることを電力会社に義務付けるものです。

今回の改正では、法令違反をした場合に、FIT制度等の交付金を一時停止できるようになります。

再エネ事業者にとってFIT制度は、操業資金の供給源にして命綱であり、この交付金が無ければ事業継続が危うくなります。

このFIT認定の一時停止の権限を持つことによって、悪質な業者への抑止力とし、解決を図ろうとしています。これは事業者の違反行為の解消につながる面はありつつも、トラブルへの根本的な解決にはなりません。

なぜなら、既に日本の再エネ政策は限界まできており、そうした中で政府が無理やり導入を進めれば、更なる負担やトラブルを引き起こしかねないからです。そうした点を詳しく見ていきます。

◆そもそも太陽光パネル設置の適地が少ない日本

まず、太陽光発電は莫大な土地が必要になるという点が上げられます。エネルギー密度が低いため、発電効率が悪く、広大な土地を必要とします。

原子力発電所1基分の発電量を賄うためには、太陽光パネルを山手線の内側の約2倍の面積に敷き詰めなくてはならないほどです。

しかし日本は平地面積が限られている上に、すでに平地部分には人口が密集しています。そのため、大量に再エネ電源を導入することは実質不可能です。

それにもかかわらず、日本の再エネ導入量はすでに世界第6位、太陽光発電の導入量であれば世界第3位、国土面積当たりの太陽光発電の導入量は世界1位となっています。

国土面積当たりの平地面積で見れば、再エネ電源の導入が進んでいると言われるドイツの約2倍です。日本の再エネの導入量はもうすでに限界に達していると言えます。

◆設置工事費の増加でコストは高止まり

こうした状況の下で、無理に再エネを増やそうとすれば、コストは高止まりしてしまいます。

平地面積が限られた中で、大規模な太陽光パネルを設置するには、山肌を削って設置するしか方法がありません。そのため、設置の造形コストが余分にかかってしまいます。

太陽光パネルの費用は年々減少傾向にあると言われていますが、日本では、こうした背景もあり、建設費用が他国に比べて高止まりしているのが現状です。

日本で再エネ建設が高くつく理由は他にもあります。それは自然災害です。日本は自然災害が多いため、耐風や耐雪などの基準を満たそうとすると、工事費はさらに高くなるのです。

そして再エネコストの増加は、電気代の上昇に直結します。高コストの再エネを維持するには、FIT制度による買取費用も高くならざるを得ません。

そうなれば、私たちの電気代に転嫁されている再エネ賦課金の金額は高止まりしてしまい、電気代が益々上がることになるのです。

◆屋根上設置の推進で国民負担はさらに重く

このようにFIT制度による再エネの推進が、電気代の上昇につながっていますが、政府の政策は国民負担をさらに強める方向に進んでいます。

それが、太陽光パネルの屋根上設置です。平地の適地が少ないということで、次に屋根の上に目を付けたのです。

政府は、本年2024年からFIT制度に新たな区分を設け、太陽光パネルを屋根上設置にすると平地よりも2~3割ほど高く買い取るようにしました。

これは発電する側からはうれしい話ですが、この高い電気代を負担するのは私たち国民であることを忘れてはいけません。

さらに東京都では、2025年4月から脱炭素政策のため、大手住宅メーカーに対し、太陽光パネルの設置を義務付ける制度が創設されることになりました。

この義務化とセットにして太陽光パネル搭載の住宅商品の開発へ助成金を交付し、都民を誘導しようとしています。

東京都は住宅購入者への義務ではないことを強調していますが、購入する住宅が太陽光パネル設置済みのものしか選べなくなれば、事実上、購入者への義務化になります。

また、その負担は購入者ないし、助成金の財源を負担する納税者が負うことになります。

通常であれば、誰もこのような義務化を望みません。しかし、誰も批判できない錦の御旗になっているのが「脱炭素」という名目です。

脱炭素のため、地球温暖化を防止するためという大義名分を掲げて推進することで、誰もそれを否定出来ない風潮が作り上げられています。

その裏では、義務化と補助金の範囲が拡大することによって政府の権限、強制力は格段に強まり、「大きな政府」にも拍車がかかっています。そして、それは、国民生活を圧迫するものに必ずなるのです。

◆国民への負担にしかならないFIT制度の撤廃が必要

再エネの導入拡大は、百害あって一利なしの状態です。悪徳業者も増え、トラブルが多発し、今や弊害の方が大きくなりつつあります。

政府はやっと、こうした事業者への対応を始めましたが、根本的にこの負の流れを止めるためにはFIT制度の撤廃を進めるべきです。

FITなどの国民の負担や補助が無ければ維持できないのが再エネ電源ですが、そもそも再エネは不安定で高コストな電源なので、国民が余分な負担をしてまで維持すべきものではありません。

むしろこの制度自体が、環境や地域住民に配慮することなく、再エネを推進するような悪徳業者が生まれる温床になっており、政府が価格統制をすることによる歪みも大きいため、制度そのものを廃止すべきです。

本来投資すべきは、エネルギー自給率を高め、安定した電力を供給できる原発であると考えます。

このように、現在は再エネ事業に対しての過剰な保護が生み出した弊害が大きく尾を引いているため、早急にこのFIT制度の撤廃が必要なのです。

坂本和佳

執筆者:坂本和佳

HS政経塾 12期生

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