世界大戦の新たな火種に。インドvs中国、ミャンマー離島にスパイ基地。【後編】
幸福実現党党首 釈量子
◆大ココ島が新たな火種に
前編で見てきたように、インドと中国の両国とも国境問題について譲歩するつもりはないため、いつ戦争が始まってもおかしくない状況です。
これに加えて、今問題になっているのは、中国の海洋進出がインド洋に迫り、中印紛争の新たな火種になりつつあるという話です。
インド洋のベンガル湾にミャンマーが領有している大ココ島があります。
今年3月末、英国のシンクタンクが「中国がこの島にスパイ基地を建設している」というレポートを発表しました。
衛星写真を見ると、滑走路がハッキリと写っています。以前は1300メートルしかなかったそうですが、現在2300メートルまで伸びています。レーダー基地もあります。
滑走路に隣接される形で、二つの航空機の格納庫が写っています。
英国のシンクタンクの分析によれば、ミャンマーは中国と連携しており、中国は大ココ島を海洋監視の拠点として利用し、将来的に空軍基地にする可能性があるため、インドの大きな脅威になるだろう、ということです。
大ココ島からわずか55キロメートルの場所には、インドの海洋戦略上、重要な基地があるアンダマン・ニコバル諸島があります。
もしインドと中国が対立した場合、インドはアンダマン・ニコバル諸島を利用して、中国の商船を規制し、中東から原油を輸入するルートを封鎖することができます。
中国はこうした事態を想定し、「中国・ミャンマー経済回廊」を建設し、陸路で原油を輸入できるように対策しています。
この構想は、雲南省の昆明とミャンマー最大都市ヤンゴンやベンガル湾に面するチャオピュー約1700 kmの区間を高速道路と鉄道で結ぶものです。
ウクライナ戦争の陰で中国は着々と、東シナ海、南シナ海、そして、インド洋まで覇権を広げようとしています。
中国は、原油の確保を確実なものにするために、ミャンマーに経済回廊をつくり、大ココ島に軍事基地を構えようとしており、大ココ島が中印戦争の新たな火種になりつつあるのです。
中印対立は世界大戦の火種と言われており、中東から原油を大量に輸入している日本にとっても他人事では済みません。
◆インドとの友好関係の促進を
このように、インドは経済発展のポテンシャルを持ちながらも、常に中国の脅威に曝されています。
だからこそ、インドは中国を牽制するためにロシアとの関係を維持しています。
インドが置かれた安全保障上の環境は日本も似ています。
しかし、インドがすでに核保有国であることを考えると、日本は憲法9条を改正することもできず、自衛のための核保有の議論すら始めることが出来ないのは情けないと言わざるを得ません。
さらに、外交面では、まるでNATOの一員だと錯覚しているかのように、ウクライナ戦争に積極的に協力し、ロシアと敵対関係になりました。
その結果、中国と北朝鮮、ロシアの核保有三カ国と対峙するという、戦後最大の国防上の危機を迎えています。
インドは英国の植民地だったこともあり、欧米諸国の傲慢さを肌身で感じています。
だからこそ、インドの外交方針は欧米諸国に巻き込まれないための中立だったのです。
一方で、グローバルサウスと呼ばれる国々の声を代表していると言う自負もあります。
日本はそうしたインドの立場を理解しうる立場にあるとともに、仏教的精神を共有する国です。
日本は精神的にも、経済的にも、軍事的にも、インドとの関係を深め、アジアの国々をリードすべきだと思います。
日印関係の更なる強化を目指すことが、中国の覇権を抑止し、アジアの平和、そして、世界の平和につながると考えます。