中国が宿敵イランとサウジアラビアを仲介。世界大戦の構図が鮮明に。【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆中国が宿敵イランとサウジアラビアを仲介
イランとサウジアラビアが7年ぶりに外交関係の正常化で合意しました。
両国とも経済は原油や天然ガスに頼っています。イランとサウジアラビアは宗教上の対立があり、イランはイスラム教のシーア派、サウジアラビアはスンニ派です。非常に複雑な歴史を持っています。
ここ10年くらいのイランとサウジアラビアの対立の経緯を振り返って見たいと思います。主に、二点あります。
一点目は、イエメンの内戦に関わる対立です。
イエメンは、サウジアラビアの南側の国境に面している国で、スンニ派と、シーア派系武装勢力である「フーシ派」の対立がありました。
2015年、スンニ派の大統領に対して、イランが支援するフーシ派の反乱軍が首都を掌握してクーデターに成功しました。
しかしそこに、サウジアラビアが、スンニ派のイエメン政府を守るために、他のアラブ諸国とともに軍事介入しました。
つまり、イエメンの内戦が、サウジアラビアとイランの代理戦争へと発展したのです。ほかにもレバノンやシリアといった国でも、イランとサウジの代理戦争が繰り広げられてきました。
二点目は、サウジアラビア国内のシーア派に対する弾圧です。サウジアラビアのシーア派は、人口で見ると2割~4割を占めると言われています。
イエメンのクーデター騒ぎもあって、サウジアラビアで、シーア派による政治改革を求めるデモが行われたのですが、政権は、参加した47名を処刑しました。
その中には著名なイスラム教シーア派の聖職者(ニムル・バキル・アル・ニムル師)も含まれていました。
これにより、イラン国民も怒って、イランにあるサウジアラビア大使館や領事館へのデモが巻き起こり、結果、2016年1月にサウジアラビアはイランとの外交関係を絶ちました。
その後、サウジアラビアとイランの関係はどんどん悪化しました。
イエメンのフーシ派は、2017年ころからミサイルやドローンを使い、サウジアラビアの首都リヤドや、サウジ国営石油会社であるサウジアラムコの石油施設などを攻撃しています。
◆中国がつくる「新たな世界秩序」
中国の仲介で、険悪なイランとサウジの両国の関係が7年ぶりに正常化で合意し、「ウォールストリート・ジャーナル」によると、イランはイエメンのフーシ派への武器提供を停止すると発表しています。
米国が湾岸地域から撤退していく状況のなか、中国が力の空白を埋める形で中東での影響力を増大させています。
その中国は、一帯一路構想を掲げ、中央アジア、南アジア、アフリカ、ヨーロッパへと、政治的、経済的な影響力を広げると同時に、台湾や南シナ海、インド国境付近でも軍事的な圧力を強めてきました。
しかし、中国は新たな動きとして、大国として、米国に代わって紛争当事国の「仲介役」を担おうとしています。
2月にもウクライナ戦争の停戦案を発表しましたが、中国は老獪さを見せています。
アメリカに代わる大国としての存在感を見せつつ、「新たな世界秩序」をつりだそうとする動きは、警戒すべきです。
(つづく)