このエントリーをはてなブックマークに追加

海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【中編】

https://youtu.be/ugpWvLgFYns

幸福実現党党首 釈量子

◆失った水田面積は四国一つ分!?コメの生産調整(減反)の驚くべき実態

終戦直後の900万トンから一時は1400万トンを超えるまでコメの生産力を拡大した日本でしたが、1970年頃から価格維持を目的としたコメの減反が始まり、なんと今では700万トンまで半減しています。

減反に応じ、他の作物に転作するコメ農家に、補助金を支払うことで生産量の調整を図っていきました。が、莫大な財政支出を伴って、自国の主力の穀物生産を減少させた事例は日本以外に見つけることは難しいと言えます。

実際に、米国や中国、インドといった生産国を中心に、この半世紀でコメ生産は3倍規模まで増産、世界全体では3.5倍以上も増産しています。

一方で日本は半減、あまりにも逆行しています。(グラフ)これはコメだけではありません。この半世紀で小麦、トウモロコシなど、他の穀物においても減産している国はほぼ皆無です。

【参考】この国の食糧安保を危うくしたのは誰か
https:/cigs.canon/article/20220602_6800.html

【参考】「武力攻撃より食料不足で壊滅」米の生産を減らし続ける日本が抱える本当の危機
https://www.gentosha.jp/article/21521/

また半世紀続いた減反政策によって、失われたものは少なくありません。

まず、農業にとって最も大事な資源である「農地」です。1970年には350万haあった水田のうち、200万haが水田として活用されなくなっています。

200万ha(20,000㎢)は、四国4県分(18,297㎢)よりも広いと考えれば、半世紀で失われてしまった水田は空前絶後の規模だと分かります。

これを取り戻すことは容易なことではありません。

また、「智慧」の喪失です。「たくさん作るな」という指令に等しい減反によって、特に、それまで精力的に取り組んできたコメを沢山作る技術(単収増加)がタブーとなり、失われていきました。

そして、農村からコメ農業への「情熱」「やる気」を失わせた点が、最も大きいでしょう。

コメ作りで生計を立てる主業農家ではなく、会社勤めをしながら、週末に片手間でコメを作るような零細(兼業)農家に補助金を支払うといった、極めて不公平で社会主義的な仕組みを作ったことで、農村から「勤勉の精神」が失われました。

そして、補助金と高い米価、また農地の転用期待、要するに「将来、持っている農地が高く売れるかもしれない」といった期待感などを甘いエサとして、農業を本業とするつもりがない零細(兼業)農家を、大量に農業に引き留めてしまいました。

これこそ農地集約化、大規模化などを阻害し、農業改革が一向に進まない真なる要因だと言えるでしょう。では、なぜこのような不合理極まりない政策が、半世紀もの間、続いてしまったのでしょうか。

それはひとえに、零細・中小農家へのバラマキによる見返りとして、農村に堅固な票田が出来るという農林族議員の利得や金融機能(JAバンク)を柱に経済基盤を拡大し続けた農協組織のお互いの「既得権益」を守りあうという強固な結束があったからです。

◆もう一つの異常なコメ農政 ~高すぎる関税障壁とその犠牲~

以上のように、コメの生産調整(減反)によって、莫大な財政支出を行いながらコメの生産量を減らし、高い米価を維持してきました。

いわば国民に対して「税金」と「商品価格」の二重の負担を強制しつつ、自国の食料安全保障を脆弱化するという、国際的には異常すぎる政策が罷り通っています。

しかし、コメ農政の異常さはこれで終わりません。

それが「高すぎる関税」です。コメにかかる関税は従量税で1㎏あたり341円ですが、国内米価となる約240円を100円以上も上回っているわけです。

要するに、輸入される米価が仮に0円/kgでも、341円となるため、誰も買いません。このように、高すぎる関税障壁を築くことで、海外から実質的に輸入されない仕組みを作っています。

関税交渉の時、コメの高い関税を死守するために、バーターとしてほかの物品の完全を下げるなどしているわけですが、この数十年の差し出した犠牲はあまりに多く、莫大な経済的利益が失われたと言っても言い過ぎではないと思います。

ここで、国の農業保護の度合いを観てみたいと思います。

よく日本はアメリカよりも低いと言われていて、フードスタンプなど食糧費の補助をしていますが、OECDの指標でPSE(Producer Support Estimate:生産者支持推定量)という指標があります。

これは財政支出における「納税者負担」と、関税も含めた国内外の価格差から算出する「消費者負担」の合計から算出したものです。

それをみると、2020年時点で日本は40.9%と、アメリカ11.0%、EU19.3%と比べて際立って高く、主要国で3本の指に入る農業保護国となっています。
https://cigs.canon/article/20220104_6468.html

ただ、日本の場合、農業保護といっても、(主業)農家が守られるのではなく、農協組織と農林系議員の間の「既得権益」が守られるという真実は、何度繰り返してもいい足りないくらいです。

(後編につづく)

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

page top