マイナンバーカードで金融資産への課税の流れにSTOP!
http://hrp-newsfile.jp/2022/4339/
HS政経塾 坂本和佳
◆強まる個人情報の紐づけ
政府は「誰一人として取り残されることなく、多様な幸せが実現できる社会」という理想を掲げ、デジタル化の大きな肝いりの政策としてマイナンバー制度を導入しています。
今年の6月から始まった「マイナポイント事業第二弾」では、マイナンバーカード取得で5,000ポイント。健康保険証としての利用申し込みで7,500ポイント。公金受け取口座の登録で7,500ポイントが付与され、これらすべての手続きを行うと20,000円分のポイントがもらえます。
また、予算規模は1兆8000億円で第1弾(約2500億円)の約7倍にも上ります。
政府は、健康保険証と一体化した「マイナ保険証」の利用推進で、将来的に現行の保険証の原則廃止を目指し(※1)、来年度からマイナンバーカードの交付率を地方交付税の算定に反映させることも検討しています(※2)。
政府の思い通りになるように、明らかに権力を拡大し、強制力を強めています。
◆預金口座とマイナンバーの紐づけで、個人資産は丸裸に
ここで注目したいのが、平成30年から始まっているマイナンバー(個人番号)と預貯金口座の紐付けの問題です。さらなるマイナンバーの活用拡大のため、昨年新たに法改正がなされました。
その結果、金融機関は預貯金者等の情報をマイナンバーによって管理する義務が課せられました。個人の預貯金口座の紐づけは義務ではないとは言いながら、金融機関には管理の方法にマイナンバーを使うことが義務づけられています。(※3)
これにより銀行口座開設時にマイナンバーの紐づけを許せば、他行の預貯金口座でも名寄せして個人の資産を丸裸にできるのです。
その目的は、行政機関などの税務調査や生活保護などの資産調査への回答を行うためと言っていますが(※4)、使用方法は明らかに行政から個人資産へのアプローチです。
また法律の改正によっても、その強制力は徐々に強まっています。なぜ今マイナンバーと預貯金口座の紐づけを進めているのでしょうか。
◆個人資産把握から金融資産課税の可能性
それは、政府の政策の中に、金融資産課税の構想があるからだと考えられます。岸田首相は総裁就任時から金融所得課税の強化に言及しています。金融所得課税とは、利子所得、配当所得、株式等譲渡所得への所得課税のことで、労働所得等への課税とは異なり、一律20%の比例税率での分離課税というものです。
現在諸々の給付金や税金・社会保険料の計算は給与所得ベースに行われており、金融所得額は考慮されていません。
高所得者ほど株式や不動産など給与所得以外にも収入源を持つ場合が多いため、このマイナンバーと預貯金口座の紐づけをすることで、今までの給与所得と金融所得を一まとめにしてより正確な資産を把握することができます。
そうすれば公平で平等な税制にするという大義名分を掲げ、資産全部を合算して累進課税をかける可能性は非常に高いのです。
しかしこれを実行すれば、資産家等が税負担の回避を目的に、金融資産等の所在地を金融所得課税負担の軽い国に移すようになり、その結果、金融所得課税負担の重い我が国では投資の減少や税源の喪失、税負担への不公平感の高まり等の弊害が起きてしまいます。
個人の私有財産に課税し、豊かな者には累進課税を取り入れて所得の再分配に回す流れは、より完全な結果平等を目指す、社会主義への道なのです。
◆日本は自由の大国を目指せ
マイナンバー制度は、もはや国民の個人情報すべてを、権力の肥大化した大きな政府の下に置くためのインフラになっています。
知らぬ間に国家に個人情報や資産、健康状態まで管理されるようになれば、簡単に全体主義、国家社会主義へと導かれます。
その結果やってくるのは「自由の死滅」です。資産把握ができるマイナンバーの紐づけを許してしまえば、そこからさらなる増税政策を招きます。
必要なのは、個人の自由をしっかりと守ることです。国家からの監視、管理強化の流れで、個人資産を把握され、さらには活動規制、言論統制や思想統制につながりかねないマイナンバー制度にはしっかりと戦っていくべきです。
そしてもう一つ必要なのが、政府のやらなくていい仕事をやめることです。政府は今、マイナンバー制度の普及に国家予算一兆円以上をかけています。国の予算も国民の血税です。これも政府の無駄仕事なのではないでしょうか。
また高い税金をかけ、資産家を国から締め出すような政策をしていては、国家繁栄の道は遠ざかります。国民の自由を守るため、そして社会主義、全体主義の流れから守るため、今こそマイナンバー制度による国民管理にはNO!の声を上げなければいけません。
【脚注】
※1 厚生労働省「第151回社会保障審議会医療保険部会(ペーパレス)資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000942380.pdf
※2 内閣官房「デジタル田園都市国家構想基本方針」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/pdf/20220607_honbun.pdf
※3 デジタル庁「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」
https://www.digital.go.jp/laws/
※4 一般社団法人 全国銀行協会「マイナンバー周知リーフレット」より
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/article/F/8188_leaflet_01.pdf