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クアッド失敗!? 対露制裁でほころぶ中国包囲網【後編】

https://youtu.be/R2o25ITa6yU

(6月1日収録)

幸福実現党党首 釈量子

◆クアッドとしての立場を考えない「親中派」

このように、アルバニージ氏は親中派の政治家であり、経済の落ち込みを救うために心理的にも距離が近い中国との関係の改善に動くでしょう。

そうなれば、「対中国」であるはずのクアッドが機能しなくなる恐れがあります。

さらに、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アルバニージ氏は中国とは「大惨事に至らない競争を」と述べています。これはバイデン政権がよく使うフレーズです。(※1)

当のバイデン政権は、インフレを止めるためにトランプ政権が課した中国への関税を引き下げることを検討しています。

実際に引き下げとなれば、これを合図にオーストラリアも中国との関係改善へ動く可能性もあります。

まさに、ロシア制裁などによるインフレを皮切りにして、クアッドの中国包囲網がほころびつつあるわけです。

クアッドのうち、オーストラリアとアメリカは、このように中国接近の流れができつつありますが、残りのインドは多くの報道の通り、対ロシア制裁に明確に賛同せず、むしろ、ロシアからの石油などを爆買いしています。

3月・4月だけで昨年1年間の原油輸入量の倍以上を購入、発注しています。(※2)

◆歩調も合わず、本末転倒のクアッド

これらの事実が何を意味しているのかと言えば、中国とロシアを権威主義国と言って、同時に相手にする戦略、これは「破綻している」ということです。

クアッドが対ロシアに動こうとすれば、インドはクアッドに賛同できなくなり、アメリカやオーストラリアは対ロシアのため、経済的に中国に対して融和姿勢を取るようになります。

それが、先日の首脳会議のあとの共同声明でも表れています。声明では、ロシアにせよ中国にせよ、名指しはできていません。

一方で、中国とロシアは爆撃機6機をクアッドの会議に合わせる形で日本周辺に飛ばしています。明らかにクアッドに対して、中国とロシアで連帯するぞという姿勢を示しています。

このように当のクアッド側は、お世辞にも歩調が合っているとは言えず、さらにはクアッドの動きに刺激された中露を結束すらさせてしまっているわけですから、本末転倒です。

クアッドは、もはや失敗であると見るべきでしょう。

◆日本は独自外交を

中国は着実に対クアッドの布石を打っています。日本とオーストラリアの間のオセアニアの島々に次々と中国資本を投下し、安全保障の結びつきも強めています。

これは日本のシーレーンの危機を意味します。オーストラリアから日本への石炭や鉄鉱石が通る貿易ルートがあります。台湾有事の際の中東からの石油などの迂回ルートを塞ぐ動きです。

こうした中国の動きを考えれば、日本としては、ロシアとの友好の道を閉ざすのは非常に危険です。

中国は西側と南側の補給ルートを断とうとするわけですから、わざわざ日本が北側からの補給ルートを閉ざせば、日本は食糧的にもエネルギー的にも干上がる可能性が高くなります。

幸福実現党としては、クアッドは、既に失敗していると見て、単なるアメリカ追従はやめて、日本の国益を考えた独自外交も考えて、強大な中国に備えていくべきだと考えます。

(※1)
https://www.wsj.com/articles/australias-center-left-labor-party-on-track-to-win-election-11653137678?page=1
(※2)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70006

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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