クアッド失敗!? 対露制裁でほころぶ中国包囲網【前編】
https://youtu.be/R2o25ITa6yU
(6月1日収録)
幸福実現党党首 釈量子
◆クアッド失敗の兆し
5月24日、東京でクアッド首脳会議が開かれました。
クアッドとは、日本、アメリカ、インド、オーストラリアの4か国の対中国包囲網の枠組みです。会談の後は、共同声明で、中国を念頭に「威圧的、挑発的、一方的な行動に強く反対する」と発表しました。
しかし実のところ、クアッドは既に失敗する可能性が見え始めました。その表れのひとつが、会談直前の21日に行われたオーストラリアの総選挙です。
対中強硬派だった保守連合(自由党と国民党)を率いるモリソン首相が敗れ、親中派だと言われているアンソニー・アルバニージ党首が率いる労働党が第一党となり、政権を奪取しました。
オーストラリアの政権交代は9年ぶりの出来事です。
◆政権交代によるオーストラリアの「親中化」
選挙キャンペーンでは、習近平国家主席が「Labor(労働党)」と書かれた投票用紙を投票箱に投じている写真をラッピングした、PRトラックがオーストラリアを走り回っていました。
これは与党系の市民団体による活動ですが、このように保守連合は、中国問題を争点にしようとしましたが、これは空振りに終わります。
理由は、ロシア・ウクライナ戦争などでオーストラリアは、20年ぶりの前年比5.1%の物価高(3月)を記録し、国民の関心は、インフレに対処に集まっていたからです。
労働党のアルバニージ党首は、インフレに追いつくために少なくとも5.1%の最低賃金の引き上げを支持し、育児補助金の引き上げなどのバラマキ政策を主張しました。
さらに労働党に期待されていることは中国との関係改善です。
保守連合のモリソン前首相は、「2019年にコロナ・ウィルスの起源の調査を中国ですべきだ」と主張したところ、中国との関係が悪化しました。
これがきっかけで中国は、実質上の報復としてオーストラリアからの石炭やワインなど200億ドル相当の品目に関税をかけ、例えば、オーストラリアのワインの輸出量は12億ドル近くから2420万ドルに落ち込みました。これは、約98%の減少になります。(※1)
◆親しくしないものには制裁を与える中国
オーストラリアにとって中国は最大の貿易相手国であり、この輸出の落ち込みは経済に大打撃です。
これにロシア制裁などによるインフレが加わって、生活のために中国と関係改善して少しでも稼ぎを増やしたいという国民の声が高まりました。
例えば、西オーストラリア穀物グループのダグ・スミス会長は「私たちの業界に課されている中国の関税が取り除かれれば、とんでもない利益となるだろう」と取材に答えたことが5月29日、イギリスのデイリー・メールが報じています。(※2)
◆中国にゴマをするアルバニージ氏
新首相のアルバニージ氏は、クアッド首脳会議の直前に「中国からの要求は完全に不適切であり、私たちはそれらを全て拒否します」と強気な発言をしており、すぐに中国に妥協する姿勢は見せていません。
これがいつまで続くかは怪しいところです。
先ほどのデイリー・メールは、1月25日にキャンベラの「ナショナル・プレス・クラブ」でアルバニージ氏が「中国が何億人もの人々を貧困から救ったのは、多大な賞賛に値する」と述べたと報じています。
報道によると、さらにアルバニージ氏は「これは素晴らしい経済的成果であり、人類の歴史上、これまでに見たことのないようなもの」と中国をベタ褒めしました。(※3)
ある意味で、アルバニージ氏の最低賃金の引き上げなどの社会主義的な経済思想が、中国共産党の思想と共鳴していると指摘できると思います。
(後編につづく)
(※1)
https://www.dailymail.co.uk/news/article-10851989/Anthony-Albanese-repair-Australias-trade-tensions-China.html
(※2)
ttps://www.dailymail.co.uk/news/article-10851989/Anthony-Albanese-repair-Australias-trade-tensions-China.html
(※3)
(※3)
https://www.dailymail.co.uk/news/article-10438091/Federal-Election-2022-Albanese-praises-China-lifting-hundreds-millions-poverty.html