ウクライナ戦争で進行する史上最悪の食料危機【後編】
幸福実現党党首 釈量子
◆世界の「肥料庫」としてのロシア
史上最悪の食料危機は日本にどう影響するのでしょうか。
輸入とうもろこしの1%がロシア産で、輸入のほぼ全量を米国やカナダ、オーストラリア、ブラジルなどからの輸入のため、価格高騰の影響は受けながらも、「食料危機が日本を直撃」という事態には至っていません。
その代わりに、日本を直撃するものが「肥料危機」です。日本は肥料原料のほぼ全量、99%を輸入に依存しています。
ロシアはその肥料の三要素である「窒素、リン酸、カリウム」の全てで重要な役割を担っており、世界の「肥料庫」なのです。
三要素のうち、カリウムの25%をロシアとベラルーシに依存し、リン酸については、日本の輸入の約9割が中国産だと言われています。
現代の農業においては、化学肥料なしでは、産業ベースに乗る収量や品質を維持することが出来ず、絶対的な必需品です。
世界最大の肥料庫であるロシアからの供給が、ウクライナ戦争による物流の混乱と経済制裁の両面から途絶えることになれば、この「肥料危機」が日本はもちろん、世界中の農業に大打撃を与えることになります。
山形県で20ヘクタール以上の規模で米作を行う農業経営者にインタビューしたところ、次のように言っていました。
「肥料危機は次年度以降の農業経営に直撃する。肥料会社に問い合わせたところ『次年度も予約さえ入れれば同量確保は可能だが、価格は倍以上になる』と言われた」
また、「昨秋から、中国のリン酸や尿素などの輸出制限で肥料が高騰しているのに加え、トラクターの動力で使う軽油1600Lの経費など、ただでさえ苦しい。販売価格を大幅に上げるしか、生き延びる道はない」と。
◆危機感ゼロの日本
米欧追従を貫く日本は、ロシアを敵に回してしまったことで、国防的には、北は北海道、南は沖縄に至るまで、ロシア・中国・北朝鮮といった敵性国から包囲され、いつ攻撃を受けてもおかしくない状況です。
また、資源インフレが起きる中、資源小国・日本の数少ない希望である原発再稼働も一向に進まず、エネルギー安全保障の脆弱さは否めません。
このタイミングで中国による台湾侵攻がもし起これば、日本のシーレーンは途端に封鎖され、エネルギーのみならず、食料の輸入も止まる可能性があるのです。
反面、13億人以上を抱える中国は、世界の穀物在庫(小麦51.1%、トウモロコシ68.8%、コメ59.8%)の半分以上を抱え、過去最高水準にまで、在庫を積み上げています。
要するに、世界は穀物在庫の残りを中国以外の国々で分け合っている図式になります。
中国は、肥料についても「一帯一路」の沿線国から輸入増強を図り、肥料生産プロジェクトも推進しています。
不測の時代に備える中国のしたたかな食料戦略を、危機感ゼロのお花畑・日本も少しは参考にしなくてはならないのではないでしょうか。
食料安全保障の柱を立てるためにも、今こそ「減反政策」を完全に廃止し、「食料増産体制」を確立すべきです。
そして世界最大の「肥料庫」としてのロシアとの関係改善を図ることは、日本の食糧増産にとって、シンプルかつベストの方策でしょう。
軍事防衛の面でも、エネルギー・食料安保の面でも、日本の危機を脱するカギを握る国は、実はロシアであるという現実認識がいま求められています。
岸田首相は、欧米追従一辺倒ですが、国家存続の危機に立たされた日本を守り抜くためには、「ウクライナよりも、ロシアを失った方が日本の打撃は大きい」ことを直視すべきです。リアリスティックな判断が必要です。