非接種者が支払う「罰金」制度?怒りの声に「イベントワクワク」見送り【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆ネットで炎上「イベントワクワク割」
4月に入って、政府は、「コロナ感染症対策」と「経済の両立」を目指して「イベントワクワク割」を打ち出しました。
「イベントワクワク割」は、ワクチン接種や陰性証明を条件に、スポーツなどのイベントのチケット代を割り引く制度です。
ねらいは、なかなか進まない若者の3回目のワクチン接種の推進です。
しかし、4月13日、岸田総理は、「イベントワクワク割」を「現時点で直ちに始めることは考えていない」と、一時的な見送りに追い込まれました。
理由は、世論の声です。
若い世代でも接種が進むとともに、「ワクチン後遺症」で苦しむ人が続出していており、「ワクワク」という名称等に批判の声が高まり、Twitterでも炎上しました。
◆計画は半年前、すでに実施も
「イベントワクワク割」が、報道されたのは4月6日からですが、計画自体は半年近く前からありました。
「特許情報プラットフォーム」によると、昨年11月18日に、経済産業大臣名で、4種類が出願され「わくわり」「ワク割」「イベントワクワク」「イベントワクワク割」が商標登録申請されていたのです。
この「イベントワクワク割」は、「GoToキャンペーン」の一つで「GoToイベント」にワクチン接種の条件を加えたものです。
実際には、「GoToキャンペーン」の一つである「GoToトラベル」予算で、すでに各県で「県民割」あるいは「ブロック割」として、事実上始まっています。
◆「県民割」「ブロック割」とは
「県民割」は、GoToトラベルが2020年末に感染拡大を受けて停止してから、「県内の移動であれば大丈夫だろう」と、翌21年4月から始まった補助金政策です。
これが今年に入ったあたりで、ワクチンの2回接種や陰性証明が利用の条件になりました。
今年3月25日には、「GoToトラベル」の再開に先立って、県単位から、近畿や関東などのブロック単位に拡大することを国交省管轄の観光庁が発表し、利用条件も3回接種と陰性証明に、アップデートされました。
「県民割」「ブロック割」は、既に4月1日から4月29日の期間終了まで割引が適用されるのですが、全国の知事たちの熱い要望もあり、政府は5月末までこの制度を延長する方針です。
ですから、ワクチン接種等を条件として、特定の業界にお金を補助する制度は既に始まっているわけです。これも「バラマキ」です。
◆バラマキ政策の中身
「県民割」「ブロック割」は、行代金の50%を最大で5000円まで国がお金を出してくれます。場合によっては、県がさらに上乗せする場合もあります。
例えば、三重県の「みえ得トラベルクーポン」は、県内旅行の宿泊料金などが最大で実質7000円割引されます。さらにお土産や飲食店で使えるクーポン券2000円。ほとんど無料で旅行にいけます。
こうした、「お得な」サービスを支えるのは、私たちの血税です。
21年4月に「県民割」が始まるとき、「GoToトラベル」予算から3000億円が充てられました。これがどんどん延長されていくので、いずれ予算は尽きます。
足りなくなれば、今年度の「GoToトラベル」予算、約1.3兆円から充当されます。国土交通省の通常の予算は毎年およそ6兆円前後で、1.3兆円は非常に大きなお金です。
しかも、こんな血税を投入しながら、成果を挙げていると言えるでしょうか。
◆血税投入の経済効果
GoToトラベルには、2.8兆円、あるいは3.7兆円の経済効果があったと言われますが、ホテルや旅館に泊まった人の数がコロナ禍でどう変わっていったのでしょうか。
2020年の1月にコロナ・パンデミックが発生して以降、急激に宿泊者数が減りました。そして、緊急事態宣言が解除してから回復しています。
このときに、7月下旬から始まったGoToトラベルが大きく貢献したとよく言われます。
しかし、緊急事態宣言が完全に解除された6月から既に宿泊者数は急激に回復に向かったのであって、GoToトラベルで、突如勢いが上向いたわけではありません。
GoToトラベルをやらなくても、観光産業は回復していたはずです。
◆中小ホテルの経営を圧迫
反対に「GoToトラベル」は、割引を使って普段は泊まれない高級ホテルに予約が偏り、「中小の経営を圧迫する」という不条理を生みました。
せっかく回復しても、政府の「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が適用されると、また元の木阿弥です。
はっきり言えば、GoToトラベルのような政策は、経済政策としては不適切であり、何もしないほうがいいのではないでしょうか。
(後編につづく)