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マスコミが報じない「電力需給危機」のなぜ【前編】

https://youtu.be/2eYPf6vP6LY

幸福実現党党首 釈量子

◆大停電の背景

3月22日、季節外れの大寒波の中、電力が足りなくなり、あわや200万~300万の大停電かという事態にまで発展しました。

規模でいうと、一時405万戸が停電した2011年の東日本大震災に次ぐ規模でしたが、多くの事業者や個人が節電の呼びかけに応え、今回は最悪の事態を回避できました。

今回の電力不足の直接的な原因は、3月16日の夜遅くに発生した福島県沖地震です。

一時は14基の火力発電所が停止し、新地火力発電所の出力100万kWや広野火力発電所6号機の出力60万kWなど合わせて647.9万kWの電力が失われました。

現場の懸命な作業で8基分が復旧しましたが、22日時点では、334.7万kW分が動かすことができませんでした。

これに加えて、横浜市の磯子火力発電所1,2号機が、地震とは関係のないトラブルで19、20日と相次いで停止しました。

これで失われた発電の供給力は、それぞれ60万kWで合計120万kWです。つまり、合わせて450万kW以上の火力発電が動かない状態となっていました。

電力は地域間で融通し合いますので、東北での停止は東京にも影響します。

こうした背景で、東京電力は、22日の8時から23時に累計で6000万kWhの節電を要請しました。これは想定された需要に対し、10%の節電になります。

◆「原発再稼働」の声

そこで、「原発再稼働」の声が上がっているわけです。

今回、福島県沖地震は震度6強ですが、原子力発電所は、安全性の観点から地震に非常に強く設計され、東日本大震災以降、よりハイレベルの対策も取られるようになっています。

また、今回の地震のケースでは、新潟県の柏崎刈羽原発は無傷で動かすことができたはずです。柏崎刈羽原発には7つの発電設備があり、総出力は約821万kWです。

今回の東電の節電要請6000万kWhを、単純に8時から23時まで15時間で割れば、1時間あたり400万kWになります。

柏崎刈羽原発が動いていれば、そもそも節電要請自体が必要ありませんでした。

電力は、地域を分散させて、安定して供給できる多様な電源を持つことが大事です。

昨年21年の1月上旬にも大寒波による急激な電力需要の高まりで停電の危機がありました。また21年夏頃からは、エネルギー価格がじわじわと上昇し始めました。

このように、原発再稼働の機会は何度もありましたが政府は動きませんでした。

◆欧米ではエネルギー政策を見直し

欧米では、ウクライナ危機を通じて、エネルギー政策を根本的に見直しています。

ベルギーも3月18日に2025年までに閉鎖する予定だった原子力発電所2基の稼働を10年間延長することを決めました。

ドイツは今回のウクライナ危機を受けても、結局、原発の復活は難しいという結論になったようです。

これは原発の技術者がいなくなってしまうなど、既に脱原発が後戻りできないレベルまで進んでしまったことが原因です。

◆「脱原発」の誤り

日本は、今であれば、脱原発の見直しは間に合います。しかし、時間が経てば経つほど、技術の継承は難しくなります。

資源のない日本はこうした観点からも脱原発の撤回を進めるべきです。

しかし、政府は依然として原発の再稼働に及び腰で、3月22日の電力需給ひっ迫では、何とか大規模停電を回避できましたが、次も回避できる保証はどこにもありません。

◆「太陽光発電」の誤り

エネルギー政策の第二の誤りは、太陽光発電を爆造です。

太陽光発電の問題は、真冬のように暖房をつけたくなり、電気が必要になっているときに、雪が降ったり、曇ったりしていて発電量が大幅に下がります。

太陽光発電は、東電管内で仮にフル稼働すれば1600万kW分ですが、冬の最大電力需要は4500万から5000万kWで、3分の1弱くらいです。

実際に、22日の太陽光発電を「貢献度」で見ると、8時から18時から電力供給の全体の実績に対し、太陽光発電からの供給はわずか3%で、いざというときに頼りにならない発電でした。

状況によって発電量が大幅に変わる太陽光発電などの再エネ発電の不安定さをバックアップするためには火力発電が必要です。

今回の大停電は、火力発電が止まったので電力がひっ迫したわけです。

(後編につづく)

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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