ウクライナ侵攻、終結の行方は?米欧日を巻き込むゼレンスキー大統領【後編】
幸福実現党党首 釈量子
◆ゼレンスキー大統領の限界
ゼレンスキー大統領は2015年、テレビドラマ「国民の奉仕者」に出演し、高校教師役を演じました。
この教師が政府の腐敗撲滅を叫ぶ様子を生徒が撮影して内緒でネットに投稿したところ、話題を呼び、最後はウクライナ大統領に就任するという内容です。
これで国民の人気を博し、2019年には、実際にウクライナ大統領に選ばれました。ゼレンスキー大統領がポピュリストと呼ばれる所以は、こうした経緯があるからです。
実際に、ポピュリズムの限界が如実に出てきているように感じます。
◆ゼレンスキー大統領に足りない見識
2014年のクリミア危機以降8年間で、ウクライナ東部では、すでに1万5000人が亡くなっています。
その中、ゼレンスキー大統領は2021年10月、トルコ製攻撃無人機(ドローン)で東部の親露派を攻撃しました。
その後も、プーチン大統領の度重なる警告にも関わらず、ゼレンスキー大統領は、欧米への急接近を図りました。
NATOの東方拡大は、ロシアの安全保障上、致命的なものです。ロシアは、国が亡びる可能性があり、絶対に認めるものではありません。
アメリカにはキューバ危機がありましたが、ウクライナは、ロシアにとってのキューバになるわけです。そうした政治的な見識をゼレンスキー大統領は持っていないと思われます。
◆NATO東方拡大に反対していた米国識者
NATOの東方拡大は、歴史的にも欧米外交筋は慎重に扱ってきた問題です。
ソ連封じ込めを立案した元外交官のジョージ・ケナン氏は、1998年5月ニューヨーク・タイムズで次のように警告しています。
「(NATOの拡大に関して)冷戦後の時代におけるアメリカの政策の最も致命的な誤りだ。NATOの拡大は、米露の関係を深く傷つけ、ロシアがパートナーになることはなく敵であり続けるだろう」
また、2008年にブカレストで行われたNATO首脳会議の場で、当時のブッシュ政権がジョージアとウクライナのNATO加盟を公式に進めました。
これについて、元国務長官キッシンジャー氏は「この2つの国をNATOに加盟させず、中立国として残すべきだ」という見解を示しました。
ロシアから見た場合、欧米諸国のNATO東方拡大を現状変更の行為と見る可能性が高かったからです。
◆ウクライナ問題を解決する道
大川隆法党総裁は3月11日、『ゼレンスキーの霊言』の収録後、日本外交の道筋を次のように提言しています。
「幸福実現党としては、ウクライナの中立化と、戦争への抵抗の砲火を止めて、ロシアと話し合って、親ロシアの大統領を立てて、ロシアとEUと中立の関係で存続できる道を模索すべきである」
緊急発刊『ゼレンスキー大統領の苦悩と中国の野望』
大川隆法著/幸福の科学出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4823303474/ref=cm_sw_r_tw_dp_8J6F6ZBTNHNM705Q7PEJ
ウクライナがこれ以上、欧米や日本を巻き込んで戦おうとすれば、ウクライナでの火種は「世界大戦」へと発展します。
米国を呼び込んで、ロシアと戦わせるという戦略は、ゼレンスキー大統領の分を過ぎた戦略です。ウクライナはこうした「越権行為」を改めるべきです。
ウクライナ政府は抵抗運動を止め、傀儡政権と言われるかもしれませんが、新しい親露派政権の下で、ロシアとEUとの間で中立の姿勢を取って存続できる道を探るべきです。
◆ロシアが日本に軍事的圧力を強める理由
日本は欧米に追随してロシアへの経済制裁を行ってきましたが、防弾チョッキまで提供しました。これは、ロシアから見れば、ウクライナへの軍事協力であり踏み込み過ぎではないでしょうか。
その後、ロシアは3月10日に、ロシア艦隊10隻で津軽海峡を横断、北方領土で軍事演習、さらに14日にはロシアの潜水艦など6隻が宗谷岬付近を航行するなど、日本への軍事的圧力を強めています。
ロシアの原潜基地は、カムチャッカ半島の先端にあるルイバチにあります。オホーツク海を要塞に見立て、核弾頭を搭載した原潜がオホーツク海を潜航していると言われています。
2020年に国後島や択捉島にミサイルを配備しており、北方領土での軍事演習を活発化しています。カムチャッカ半島から北方領土にかけて、ロシアは着々と軍備増強しているのです。
3月2日には、根室上空でロシアのヘリコプターの領空侵犯がありましたが、これは北海道を取り囲む形で、いつでも占領できるぞというメッセージではないかと思われます。
◆日本はロシアとの関係強化を
ロシアには、第二次大戦で北海道を取り損ねたと思っている人もいますが、一方で日露戦争の後、日本に尊敬の思いを抱き、あるいは親日的な人もかなり多くいます。
日本は、中国や北朝鮮に加えて、ロシアが新たな国防上の脅威になりつつあります。対中包囲網の形成を考えた時に日本はロシアと中国を分断する方向に努力を重ねるべきだと思います。
また、エネルギー安全保障の観点からも、日本はロシアとの友好関係を強化する方が国益に適うのは明らかです。
欧米に追随する対露封じ込めの方針を改め、停戦とウクライナの中立化に向けた独自の外交を展開していくべきです。