ウクライナ侵攻、終結の行方は?米欧日を巻き込むゼレンスキー大統領【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆ポーランドを威嚇したロシアのねらい
ロシア軍が3月13日、ポーランドの国境から20キロにあるウクライナのリビウ北西の「平和維持安保国際センター」と呼ばれている軍事基地を攻撃しました。
同基地は、米国やカナダの軍事顧問がウクライナ軍を訓練する軍事演習を行う場所で、ウクライナへの軍事支援の輸送ルートにもなっています。
空爆前日の3月12日、米国はウクライナに対する2億ドルの追加軍事援助を発表しており、ロシアは、ポーランドを軍事的に威嚇しつつ、米欧からの武器陸送を防ぐねらいがあったとみられます。
◆米欧とロシアの軍事衝突の可能性
今回の空爆により、米欧とロシアの軍事衝突の可能性は一気に高まりました。
なぜかというと、米軍は地対空ミサイル「パトリオット」をポーランドに配備しており、ロシア軍のミサイルがポーランド国境に近づくほど、パトリオットで迎撃する可能性が出てきます。
ウクライナ領空で迎撃すれば、ロシアが米欧の軍事介入と見て、直接対決、全面戦争に発展する可能性もあり、まさに一触即発の状況です。
ただ、今のところ、米欧は経済制裁や金融制裁は行うけれども、「核戦争」「世界大戦」にならないようロシアとの軍事的衝突を避ける判断をしています。
◆ゼレンスキー大統領のNATOに対する要求
ウクライナは、EUに対し早期加盟を求めていましたが、ポーランドやバルト3国などの東欧諸国は積極的でした。
しかし、ドイツやフランス、オランダなどの主要国は慎重で、ウクライナの早期加盟は難しい状況です。
これに対して、ゼレンスキー大統領は、「EUはもっと強くなれ」と発言、NATOに対して、ウクライナ上空に「飛行禁止空域」を設けるよう求めていました。
ウクライナ領空に「飛行禁止空域」を設ければ、NATOはロシア軍の戦闘機を撃墜しなくてはならず、ロシアとの全面戦争になってしまいます。
そのため、NATOは、「地上でも、領空でも、ウクライナに進出するつもりはない」と答えましたが、これに対して、ゼレンスキー大統領は、怒りを込めて次のように非難しました。
「飛行禁止空域の拒否は、ロシアがウクライナの都市に空爆を行ってもよいと、NATOが許可したことを意味する。今日以降、殺された人たちはNATOのせいで死ぬことになる。NATOが弱気なせいで、戦争が終わらない」
そして、3月14日には再度、「飛行禁止空域」を設けるようNATOに求めています。
◆バイデン大統領「米国はウクライナで戦わない」
また、ゼレンスキー大統領が「ウクライナのパイロットが操縦に慣れているミグ戦闘機がほしい」と米欧に要請したところ、ポーランドは「保有する全てのミグ戦闘機を渡す用意がある」と発表しました。
ポーランドは早速、自国が参戦したことにならぬようドイツのアメリカ空軍基地経由でウクライナに渡す計画を立てました。
しかし、米国はこれを拒否。アメリカ空軍基地から戦闘機が飛び立てば、NATOが参戦したように誤解を与えるからです。
3月11日、バイデン大統領は、民主党内に「ウクライナに対して戦闘機を提供すべき」との声があることを踏まえて、「甘く考えるな。攻撃的な装備を送れば、それは『第3次世界大戦』だ」と釘を刺しました。
そして、「米国はウクライナでの戦争は行わない」と改めて強調しました。
このように、米欧はロシアとの全面戦争を避けるために、極めて慎重に、明確な一線を設けており、「世界大戦」を防ぐための賢明な判断ではないかと思います。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、何とか米欧を参戦させてロシアと戦わせようとしていますが、大変危険なことです。
後編では、ゼレンスキー大統領はどのような大統領なのかという視点から、今回の問題を考えてみたいと思います。
(後編につづく)