ウクライナ国境にロシア軍大集結――ロシアからみたウクライナ問題の真相【前編】
幸福実現党外務局長 及川幸久
◆ロシア軍が国境に集結、第3次大戦の危機か?
12月3日、『ワシントンポスト』が、「ロシア軍17万5000人が国境に集結。来年の年初には侵攻作戦があるのではないか」と報じました。
プーチンがウクライナを攻め、それが第3次世界大戦につながるのではないかと世界中が注目しています。
元々ウクライナとロシアは同じソ連ですが、位置関係はロシアの隣にウクライナがあり、ウクライナの南側にクリミアがあります。
ウクライナ住民の多くは、ロシア系でロシア語を母語としています。ウクライナのゼレンスキー大統領も母語はロシア語です。クリミア住民の多くもロシア系です。
ウクライナは1991年ソ連崩壊で独立しましたが、2014年に「ソチ冬季オリンピック」のタイミングでウクライナ騒乱が起こり、「極めてロシアに近い人たち」と「EUの方に行きたい人たち」に分かれたわけです。
◆クリミア問題の歴史的な背景
ロシアとウクライナの領土問題は、元々クリミア半島の所有権にありました。
ソ連時代はロシアもウクライナも1つの国で、実質国境はなくクリミアもロシアの一部でしたが、フルシチョフがソ連の最高指導者であった時にクリミア半島をウクライナに譲渡することを決めてしまったのです。
その時点ではソ連が崩壊するとは誰も思っておらず、どちらにしても1つの国の中で、クリミア半島の所属がロシアであろうとウクライナであろうと誰も問題にしていませんでした。
ところが、まさかのソ連崩壊が91年に起こり、ロシアとウクライナに国境ができた瞬間にクリミアはウクライナに所属することになってしまったのです。
ただクリミアの住民たちは、ウクライナという国の傘下にあっても自治権を持った実質的に独立国だという意識があったわけです。
そこに2014年のウクライナ内乱が起き、国民投票を行って「クリミア共和国」としてウクライナから独立する道を選んだのです。
この時はロシアに入りたいというよりもウクライナから独立したいという意識が強かったのです。ウクライナの中でロシア系住民を狙った事件も起きていたこともあったからです。
それが1回目の住民投票です。その後、2回目の住民投票で、クリミアはロシアに併合されることを決めました。
クリミアとロシアの主張は、ロシア軍が国民投票の間、クリミアをウクライナ軍から守っていたと言っています。
日本も含めて西側のマスコミが言っているように、プーチンが武力侵攻して他国の領土を略奪したという見方だけではないということは認識しておいた方がいいと思います。
◆ウクライナ内戦の複雑な事情
ウクライナで、クリミア似たようなケースは数年前にもありました。
ロシアとトルコの間に挟まれ、かつてグルジアと言われていたジョージアの北側にロシアに隣接している南オセチアという地域があるのですが、ここも一つの独立した共和国です。
南オセチアもロシアに入りたかったのですが、ジョージアはそれを武力で止めようとしました。
ロシアは、南オセチアの住人が殺されてしまうので軍を派遣し、結局ジョージアと戦争になったのです。結果はロシアが強く休戦となり、南オセチアはジョージアから独立した形になっています。
他にもロシアと国境を接しているウクライナ東部ドンバスを中心とした地域もロシア側に入ることを望んでいますが、ウクライナが西側の方に向いているので内戦になっています。
このようにロシア側に入りたいという民族国家は多く、クリミアはその内の一つです。
ウクライナ内戦の報道は少ないですが、普通の住民が戦っておりウクライナのドローンによるミサイル攻撃で子供達が殺されたりしています。
ロシアは、クリミアにもウクライナ東部の人たちにもロシアの市民権を与えているのでプーチンとしては守らなければならない義務を持っているわけです。
そのような複雑な事情がある事をまず確認しておきましょう。
(つづく)
執筆者:及川幸久