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日英同盟の締結に向けて 日本に求められるインテリジェンス協力

http://hrp-newsfile.jp/2021/4151/

幸福実現党政調会・外交部会 久村晃司

◆コロナ禍に勢いづく中国の覇権主義

コロナ・パンデミックの最中、中国は南シナ海や沖縄・尖閣などで不当に領土主権を主張して海洋進出を行い、日本をはじめアジア諸国の安全保障を脅かしています。

中国政府は9月1日には「改正海上交通安全法」を施行し、中国の海事当局は外国船に対し、「領海」からの退去や航行の阻止を行うことができるようになりました。

南シナ海や東シナ海を中心に、周辺国との緊張が高まる可能性が指摘されています。

日本にとって、自由や民主主義といった価値観を共有する欧米諸国と連携しながら、戦略的な外交・国防を展開して対中包囲網を築くことが急務となっています。

欧米各国のなかでも、中国包囲網の形成において重要な役割を担いうるのがイギリスです。

◆イギリスとともに中国を封じ込める

イギリスは現在、国際社会での地位や影響力を高めることを目指した戦略である「グレート・ブリテン」構想を掲げています。

その戦略の一環として8月下旬、イギリスの最新鋭空母クイーンエリザベスを中心とする空母打撃群が、沖縄南方で自衛隊及び米軍・蘭軍と共同訓練を行いました。

「インド太平洋」を「世界の成長の中心」と位置付けるイギリスは、このように中国の封じ込めに積極的に関与しています。

特に昨年、コロナ情報を隠蔽し、また香港の「一国二制度」を反故にした中国政府の横暴なふるまいを受けて、イギリスは対中抑止に向けて大きく舵を切りました。

日本としても、国連安全保障理事会の常任理事国であり、核保有国でもあるイギリスと連携を強化していく意義は大きいと言えます。

また「グレート・ブリテン」構想においても、イギリスは日本を安全保障上の重要なパートナーと位置付けています。

こういった背景から、日本が英国との関係を現在の準同盟関係から同盟関係に格上げし、対中抑止に向けた安全保障協力を強化していくことが、日本の基本的な外交戦略の一つとなりえます。

そこで今回は、日英同盟の構築にむけて日本が解決すべき課題について考えてみたいと思います。

◆インテリジェンス協力で日英同盟の深化を

近年、イギリス政府から、日本の「ファイブ・アイズ」への参加を歓迎する声が出ています。

「ファイブ・アイズ」とは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン系の英語圏五カ国で構成される機密情報共有の枠組みです。米英は特に、日本の持つ中国と北朝鮮、およびロシアに関する情報に関心があると言われています。

日英同盟の締結を考えるとき、日本がそうした枠組みを通してイギリスとの緊密なインテリジェンス協力を行うことができれば、同盟関係はより深く実効性のあるものになると言えます。

そこで問題となるのが、機密情報の共有に関して、日本の体制整備が不十分であることです。仮にファイブ・アイズに加盟したとしても、他の加盟国から機密情報を共有する相手国として信用されなければ、必要な情報は得られません。

そうした観点から、日本の解決すべき課題を挙げてみたいと思います。

一点目は、「機密情報の漏えい」のリスクです。日本は秘密の保全体制が充分に築かれていないという問題があります。

まず日本には、機密情報のアクセス権限を限定する資格である「セキュリティ・クリアランス体制」の導入が求められます。例えばアメリカでは、機密レベルは三段階に分けられており、官僚や役人、そして防衛産業などに携わる民間人もセキュリティ・クリアランスを持っています。

さらに、そうした情報が他国から狙われ、盗まれるリスクもあります。日本は「スパイ天国」ともいわれますが、「スパイ防止法」を制定することで情報を他国機関の働きかけから守る仕組みが必要です。

二点目は、「日本から有力な情報を提供できるのか」という問題です。インテリジェンスの世界は「ギブ・アンド・テイク」が原則と言われています。

つまり、ただファイブ・アイズに加盟しただけでは有力な情報は得られません。日本からもそれ相応の有益な独自情報を提供できなければ、協力関係を築くのは難しいのです。

日本にはアメリカでいう「CIA」やイギリスでいう「MI6」といった対外情報機関が存在しません。そのため、日本は他の主要国に比して、圧倒的にインテリジェンス能力が低いのが現状です。

将来的には、日本も自国の対外情報機関を創設する必要があるでしょう。また、その前段階としては、日本から機密情報を分析する能力を持った人材を育成する環境の整備も必要です。

三点目は、「対中抑止に向けた日本の覚悟」です。ファイブ・アイズは情報共有のための機能ですが、そもそもその五カ国が目指すのは、自由や人権、民主主義といった普遍的な価値観を守ることです。

例えば近年、先進国の多くが中国共産党によるウイグル人への人権弾圧に対して非難の声を強め、国際問題となっています。しかし、日本はこの問題について「深刻な懸念」を表明するにとどめ、具体的な行動はとっていません。

日本がそうした親中的な態度をとり続けている限り、欧米諸国、ましてやファイブ・アイズ加盟国から本当に信頼されることはありません。

日本に大きな期待を寄せるイギリスにとっても、日本が曖昧な態度を続けていては、「インド太平洋への回帰」という戦略は中途半端に終わってしまいかねません。

日本はいち早く、中国の横暴に対して善悪の価値判断を下し、中国の覇権拡大を押しとどめる決意を固める必要があります。

例えば、ウイグルでの人権弾圧問題を「ジェノサイド」と認定するなど、日本としての明確なスタンスを示していくことが大切です。もちろん、いざと言うときに欧米諸国と連携するためにも「憲法九条の改正」を避けて通ることはできません。

◆日本の決意がアジアと世界を守る

以上、ファイブ・アイズ加盟国の仲間入りをし、日英同盟を締結していくために必要な課題について挙げました。

今年7月に建党100年を迎えた中国共産党は、香港に続き、台湾、沖縄・尖閣とその支配の手を伸ばそうとしています。

こうした危機に対し、イギリスをはじめ欧米諸国は徐々に声を上げ、立ち上がりつつあります。

欧米の国々が一枚岩になるには、アジアの大国である日本の行動が必要不可欠です。日本がキーマン国家として、積極的にアジアと世界の平和の建設に動くべき時が来ています。

久村晃司

執筆者:久村晃司

幸福実現党政調会 外交部会

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