ワクチンパスポートは全体主義への道 それより治療の選択肢を増やすべき【前編】
http://hrp-newsfile.jp/2021/4124/
幸福実現党政調会長代理 小川佳世子
◆ワクチンパスポート導入の議論
新型コロナの感染拡大が続くなか、ワクチンパスポート導入の議論がされています。
現在は、海外渡航者のために発行されていますが、ワクチンを接種した人に証明書を発行し、所持者が公共や民間の施設を活用できるようにするものです。
8月25日の記者会見で、菅義偉首相は「ワクチン接種証明書の積極的な活用の方法を含め、飲食店の利用、旅行、イベントなど日常生活や社会経済活動の回復もしっかり検討する」と述べ、ワクチンパスポート導入に意欲を示しました。
政府分科会の尾身茂会長も「ワクチン接種や検査の陰性を証明できた人が経済活動を再開できるようにするなど新たなルールを議論する時期が迫っている」と述べています。
フランスでは、8月9日より、飲食店や長距離移動の交通機関、病院などでのワクチンパスポートの提示が義務付けられ、不携帯の場合は罰金も科されます。しかし、反対する人も多く、5週連続でデモが起きています。
厚生労働省HPには「予防接種を受ける方には、予防接種による感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意志で接種を受けていただいています」「接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします」とあります。
ワクチンパスポート導入検討は、この方針と矛盾し、事実上の接種強要に繋がりかねません。
◆ワクチンでは感染は完全に防げない
ワクチンには感染や重症化予防というメリットもありますが、副反応のリスクもあります。
幸福実現党は、各自がメリットとリスクを検証した上で、接種は自由選択に任せるべきだと考えます。
ゆえに、事実上の接種義務化につながるワクチンパスポートには反対です。接種を希望する人の自由も、接種を希望しない人たちの自由も守られるべきだと考えるからです。
先日、コロナで亡くなられた俳優の千葉真一さんが「ワクチンを打っていなかった」と報じられましたが、摂取についての個人情報が当たり前のように報じられることに違和感を覚えました。こうした報道が自由の侵害につながらないか注視が必要です。
感染抑止という「公共の福祉」の観点から、ワクチン接種を進めるべきだとの声もあります。
しかし、ワクチンを打っても、完全に感染から守られるわけでもなく、他人に感染させなくなるわけでもないため、義務化の正当性は低いといえます。
大阪府からは、3月以降に確認された新規感染者計約8万5千人のうち、2回のワクチン接種をして発症した人は0・4%で、重症者や死亡者はいないとのデータが公表されました。
三重県は2回接種後に感染したのは5・2%で、重症者と死者はいないとしています。
このように一定レベルの有効性はあるといえますが、感染は100%防ぐことはできません。
イスラエルはワクチン接種を進めることで一度は感染者を大幅に減らしましたが、再び感染拡大に苦しんでいます。
アメリカやイギリスなどでも、接種者が増えても広がっています。そもそもワクチンの効果が何か月続くかは明らかではなく、特に新たな変異株が出てきたときには、効果が低下すると言われます。
すでに日本でも、2回目接種を終えた人の感染や死亡も報告されています。
厚労省のHPにも、ワクチンを2回接種しても感染を完全に予防できる訳ではなく、ワクチン接種にかかわらず、適切な感染防止策を行う必要があると書かれています。
重症化を防ぐことができるというだけなら、そのことにメリットを感じる人だけが接種すればいいのであり、「公共の福祉」を旗印に事実上の強制をすることは許されません。
◆長期的な治験が終わっていない
もう一つは、今回のワクチンはわずか数か月の治験(臨床試験)だけで特例承認されたものであり、長期的かつ十分な治験が終わっていないということです。
長期的な副反応については不明で、現在進行形で情報収集が行われています。
国民はそのことについて十分知らされておらず、承諾のない治験に参加させられていると言っても過言ではありません。
短期的な副反応だけを見ても、ワクチン接種が始まって約半年の間に5100万人以上が接種した段階で、死亡報告や重篤な副反応が少なからず報告されています
厚生労働省のワクチン分科会副反応検討部会によれば、8月25日時点の発表で、死亡報告数は1088人、8月8日時点の重篤な副反応報告は3098人(死亡報告除く)です。
いずれも因果関係は「評価できない」とされていますが、かといって無関係とも言えない副反応がこれだけ生じています。
なお、令和元年シーズンに、5600万回接種されたという季節性インフルエンザワクチンの死亡報告数は5人です。これと比べてもやはり多いといえます。
このように考えると、ワクチンパスポートの推進は、健康リスクのある治験への参加を国民に強要することになりかねないと言えます。
◆自由は何よりも大事な価値
一方、経済界は、ワクチンパスポートを経済回復のために使いたいと考えているようです。
経団連は6月24日付で「ワクチンパスポートの早期活用を求める」という提言を公表しました。ワクチン接種を条件に、経済活動を再開していこうというのです。
しかし、このような「条件付き自由」は、長期的にはかえって経済活動の自由を失わせることになります。
例えば、ワクチンを接種したのに再び感染が拡大しているイスラエルなどを中心に、ブースター接種が進んでいます。これは、ワクチンの効果をブースト(強化)するという、三回目のワクチン接種のことです。
「ワクチンパスポートがあれば、飲食店やコンサート会場に入れる」という条件を付けて経済活動を再開すれば、ワクチンの効果が落ちてきたらその自由は奪われ、ブースター接種の義務化など、また新たな条件が付けられることになりかねないのです。
それよりも、コロナに感染した人に対する治療の選択肢を広げることが急務です。
(後編へつづく)