国債大増発で大丈夫?地方財政も崩壊寸前――自治体がサバイバルするために必要な発想とは【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆国も地方もコロナ禍で露呈する財政の脆弱さ
東京オリンピックが無観客となったことで900億円のチケット代などが吹っ飛び、どこが負担するのか問題になったりしています。
また、コロナ感染拡大を食い止めるべく、世界第2の規模となる膨大な財政出動を行っているため、21年3月時点で前年比100兆円を超える財政赤字が増加しています。
トータルで国の借金(政府の債務)は1200兆円を超え、世界ダントツです。
地方自治体の懐事情も深刻で、東京新聞の調査によると、47都道府県のいわば「貯金」にあたる財政調整基金残高が1年間で、約7,141億円以上が取り崩されたということです。
総額1兆9642億円の約36%にあたり、わずか1年で3分の2以下に減ってしまっています。
世界最大規模の債務残高を抱える日本は、国と地方自治体の舵取りを本格的にイノベーションしなければ間違いなく潰れます。
そこで今回は、「イノベーション」と「マーケティング」の視点から日本の国と地方の未来に必要なことをお伝えしていきます。
◆PPPとPFI――質の高い公共サービス提供に民間の力
一つ目がPPP(プライベート・パブリック・パートナーシップ)と言われる、いわば「官民連携」で公共サービスの提供を行う仕組みの総称です。
例えば、民間企業へ公有地を貸出し、自治体の運営全般を包括的に委託することなどが挙げられます。
ある自治体が財政赤字になったので、河川敷のテニスコートの管理を民間に委託して、あっという間に黒字化したというケースはよく聞きます。
このPPPの手法の一つで、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)というのが、日本で主に活用されています。
言葉としては「民間の資金等を活用する」ことですが、これは元々、イギリス・サッチャー政権における「小さな政府」への取組みから誕生した考え方です。
例えば、庁舎や公営住宅、学校などの建設や公園を整備しようとしたときに、これまでは、自治体が、設計・建設や運営の方法を決めてバラバラに発注していました。
それだと資金面を中心に大きな非効率が発生してしまいます。
それをPFIでは、設計から建設・運営まで、民間の資金とノウハウを最大限活用することで、効率的な公共サービスの実現を図っていくという考え方です。
そして、その効果は、「支払に対して最も価値の高いサービスを供給する」という考え方によって、どれだけ公的負担が少なくなるかで測られます。これがVFM(バリュー・フォー・マネー)というPFIの基本原則です。
◆日本で増えつつあるPFIの事例と課題
1999年に「PFI法」=「民間資金等の活用による公共施設等の設備等の促進に関する法律」が制定されており、約20年で累計事業数は740件、契約金額は約6兆2,361億円に達しています。(2018年末時点)
身近なケースでは、2015年に完成した49階建ての「としまエコミューゼタウン」です。
豊島区役所をはじめ、商業施設、集合住宅の入った複合施設で、区としては新たな財政負担ゼロで建て替えを実現しています。
また、渋谷区の新庁舎も、三井不動産を中心に、PFI型で建てられています。
敷地の一部に定期借地権を設定し、マンションやオフィス用地として貸し出し、その権利金を新庁舎建設に充てることで、実質、財政負担ゼロでの建て替えを実現しています。
全国各地でも、PFI方式で給食センターやごみ焼却施設の整備運営や、道の駅などでの活用事例があります。
中でも岩手県紫波町の「オガールプラザ」などは、本格的なPPP事例として全国で注目されてきました。
元々、冬場は「日本一高い雪置き場」と揶揄されるような、不毛な駅前の土地でした。
そこをPPPによって、複合商業施設「オガール」として、町役場の新庁舎のみならず、図書館の新設をはじめ、体育館、ホテル、市場(マルシェ)、飲食店、クリニック、保育園などを集積しました。年間100万人近くが訪れ、新しい雇用も多数生み出しています。
紫波町のPPPの優れた点は、国の補助金などには極力依存せず、大企業の力にも頼らず、地元の金融機関や民間企業を中心に、事業を組み立てているところです。
このプロジェクトを牽引したリーダーシップも注目されます。
町長も町職員の理解を促し、更に100回を超える公聴会を通して、町民や議会の理解を得ながら、町全体の共感を少しずつ固めるという地道な努力を重ねています。
民間の方も、地元出身の方を中心に、第一線で活躍している人たちをブレーンに迎えた「デザイン会議」のレベルが非常に高いものでした。
紫波町には幸福実現党の高橋敬子議員がいるのですが、オガールでは小規模なイベントがこまめに打たれ、何か新しいものをやろうという気運があります、と言っていました。
多くの自治体が紫波町を視察し、実際にPPP事業に参画していますが、残念ながら成功に至らない自治体も少なくありません。
(後編につづく)