東京オリンピックで話題「LGBTQ」。過度な保護は文明を崩壊する【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆トランスジェンダー選手が出場する初めての大会
今回の東京オリンピックは、コロナ禍というだけでなく、LGBTQと公表したアスリートの数が史上最高であることでも話題で、5年前のリオと比べて2倍に上がっています。
また、トランスジェンダー(体の性と心の性が異なる人)の選手が出場する史上初の大会となっています。
例えば、ニュージーランドのローレル・ハバード選手(重量挙げ)は、性転換して女子87キロ超級に参加致しました。(試技で3回連続で失敗し記録なしに終わった。)
国際オリンピック委員会(IOC)では、トランスジェンダー選手の出場について、「男性ホルモンのテストステロン値が12カ月間にわたり一定以下なら、女子として競技することを認める」といったガイドラインを2015年に策定しており、ハバード選手はトランスジェンダー選手として出場する資格を満たしています。
とはいえ、ハバード選手は以前、男性として同競技に取り組んでおり、筋肉量や骨格など、男女で生まれ持った体格の違いもあるので「不公平だ」という声も上がっています。
7月24日、トランプ前大統領も講演の中で、女性となったトランスジェンダー選手を「彼」と呼び、「1つの競技に男女が参加していることから東京五輪が台無しになった」「非常に不公平」と猛烈に批判しました。
◆日本でも進行する理解増進への動き
性的少数者であるLGBTQの権利を守ろうという動きは、世界的な潮流といえます。
日本においても、LGBTQへの理解を深め、差別をなくそうという趣旨の、「理解増進」法案について検討されましたが、自民党内の意見がまとまらず、結局提出そのものが見送られました。
「差別は許されない」という文言があるため、「行き過ぎた運動や訴訟につながるのではないか」「自分は女性だと主張する男性が、女湯に入ることを要求しても止められない」といった反対意見がありました。
幸福実現党としては、自由で多様な価値観を尊重する立場であり、LGBTQの人たちの自由や幸福追求権も尊重されるべきだと考えています。
しかし、法的規範や社会秩序を乱すところまで自由を認めてしまえば、通常の男女が生きにくい世界となり、「逆差別」のようなケースが起きれば、本末転倒だと思います。
例えば、アスリートが人生をかけたオリンピックの場で、不公平な条件で戦わざるを得ないことも、象徴的な逆差別ですし、その他の場面でも既に起こりつつあります。
◆「差別」と「区別」を混同する愚かさ
戸籍上は男性、現在は女性として働くトランスジェンダーの経産省職員が「職場の女性トイレの使用が制限されているのは不当な差別だ」と国を訴えた裁判で、今年5月、二審の東京高裁はトイレの使用制限は違法ではないと判決を下しました。
職員側は判決を不服として最高裁に上告しましたが、他の女性からすれば、女子トイレに男性の肉体を持つ人物が入ってきたら不快に思うはずです。
また、米ロサンゼルス(LA)のスパ(温泉)では、男性として生まれたトランスジェンダー女性が、スパの女性用スペースで服を脱いでいたため、利用者の女性から苦情が入ったところ、その施設では性自認に基づく差別は出来ないと対応を拒否。
最終的には、スパの対応に抗議する人たちと、トランスジェンダー女性の権利を守ろうとする人たちが衝突、流血騒ぎにまで発展し、警察が事態を収拾するという極端な事例まで発生しています。
この後、スパ側は、「LAにはトランスジェンダーがいる。私たちはすべての顧客のニーズにこたえるために尽力する」と声明を発表しましたが、女性同士で安心してスパを利用したいというニーズは無視された形です。
通常、男性が女性の風呂に入ってきたら犯罪に当たるにも関わらず、「女性の心を持っている」と主張すれば、正当な権利として認められるのはちょっと行き過ぎです。
心と体の不一致で深刻な悩みを抱えている人が多数いることは承知しておりますが、虚偽の主張で、女子トイレや女子風呂に入り込む変態がいた場合、それをどのように見分けるかは難しい問題です。
「差別」ではなく、男女の「区別」としての智慧が働くべきではないでしょうか。
◆「差別発言」のレッテル貼りで侵害される思想・信条・表現の自由
男女の区別がなくなっていく風潮に異を唱える人たちの言葉尻を捉えて、「差別」と言い立てる空気感にも、一種の怖さを感じます。
前述した法案について、自民党の山谷えり子元拉致問題担当相は「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、女子陸上競技に参加してメダルを取るとか、ばかげたことがいろいろ起きている」と発言しています。
また、簗和生(やなかずお)元国土交通政務官は「生物学的に自然に備わっている『種の保存』にあらがってやっている感じだ」と述べ、こうした主張を口にできなくなる社会はおかしい、という趣旨の発言も行っています
これは、議論の場で出たもので、差別的な意図を持ったものとは思えませんが、一部の新聞はこうした意見を「差別や偏見に基づく発言」と断じ、両者の発言の撤回と謝罪を求め、有志が、9万4千筆以上の署名を提出しました。
このレベルの発言で「理解がない」「差別だ」と言われると、「思想・信条・言論の自由」が侵害されてしまうのではないかと不安になります。
(後編につづく)