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日米台の半導体「中国包囲網」へ。日本復活のカギは?【後編】

https://youtu.be/UT3GXmPe9kc
(6月8日収録)

幸福実現党党首 釈量子

◆「周回遅れ」にある日本の半導体産業

前編では、台湾、韓国、中国、アメリカの半導体事情を紹介しましたが、その中、日本のルネサスエレクトロニクスが40ナノで、日本企業がいかに立ち遅れているのかが分かります。

考えられるボトルネックとしては、先端工場の運営ノウハウが不足していることに加えて、「微細化」するほど、工場や製造装置の投資額が莫大になるので、本来は相当な利益を上げて、投資に回さなければいけません。

TSMCの利益や投資額を見てみますと、20年12月期売上約5兆円、純利益約2兆円で、トヨタの純利益が2.2兆円(21年3月期)とほぼ同じレベルとなっています。

また、21年の設備投資計画は最大約2.9兆円で、まるで国家予算かと思うほどの投資規模で、税金を使わずに、TSMCは民間企業としてこれだけの投資を行っています。

台湾経済への貢献は甚大で、採用が追いつかないほどの雇用を生み、台湾国内に工場を次々と新設していますが、これらの中には、2022年下半期に量産予定の3ナノ生産用の設備投資や新工場も含まれています。

現時点で、兆単位の設備投資に耐えられるのは、TSMC以外では、サムスンやインテルくらいです。

◆先端工場誘致を進める米国

米国は現状をよく把握しており、中国に負けないためには、米軍の最新鋭戦闘機で先端半導体を使用しないといけませんし、米国内で生産できる体制を整える必要があります。

昨年、トランプ政権の時に、米政府はTSMCに働きかけ、アリゾナ州に1兆円~1.2兆円の5ナノ工場を建設するという誘致に成功し、今後、更にアリゾナ州に2.3兆円~2.5兆円の3ナノ工場の追加投資を検討しているとのことです。

TSMCの他には、サムスンが5ナノ、インテルが7ナノの先端工場を、米国内に建設予定で、バイデン政権はこうした企業を支援するために、米国内に工場や研究開発拠点を設ける企業に、5年間で4.3兆円の補助金を検討しています。

◆TSMCにとって「経済合理性」が低い日本

では、日本はどうすべきでしょうか。

日本は約2000億円の支援基金で先端工場の誘致に動いていますが、如何せん、金額が見劣りする点、米国のようにアップルや軍需産業などの納品先が少ない点、人件費が高い点など、TSMCにとってはほぼ「経済合理性」がありません。

経済産業省は「TSMCが日本で実施する半導体の研究開発に5年間で190億円出す」と発表しましたが、これは、日本に先端工場を誘致したかったが、実現しなかったことを意味します。

TSMCにとって負担の少ない研究開発で折り合いをつけたと言えるかもしれません。

それを裏付けるように、今年1月のTSMC決算発表会で、モリス・チャン社長は「単独での日本進出も、合弁での進出もない」と話しました。

一方、4月下旬には、中国南京市のファウンドリーに新ラインを設置し、約3100億円を投資し、自動車向けの半導体(10ナノ以上)を増産するという発表がありました。

これらを見ると、TSMCは非常に「したたか」で、民間企業として「経済合理性に基づいて判断している」ということです。

一般的には、海外の半導体メーカーが日本に研究所を置く場合、実際の目的は、企業や大学研究室からの「最先端技術情報」の収集や、優秀な技術者のリクルートにあって、ボランティア精神で、日本に貢献しようとはあまり考えていないのが実情です。

◆製造装置と素材は日本の「強み」

そこで、改めて着目したいのが日本の強みであり、半導体の設計・製造を側面から支える「製造装置メーカー」としては、世界最強で、2020年のトップ15社のうち、7社が日本企業です。

他にも、シリコンウエハーなど「素材」の分野も大きな強みで、こうした日本企業がなければ、TSMCも先端半導体を作ることができません。

まず、こうした技術を死守することが大事です。

中国は日本の技術を常に狙っており、TSMCとの共同研究を行って、気づいたら、日本が身ぐるみはがされていたとならないように注意が必要です。

◆国内の生産体制を構築し、地方に雇用創出を

また、米国は製造装置メーカーから先端工場まで、国内で一貫して生産できるように誘致を進めています。

日本の素材・製造装置メーカーが開発拠点を米国に移転したら、日本が空洞化する可能性もあります。

半導体は「産業のコメ」と言われ、製造業の基盤になっているので、おろそかにできませんし、安全保障の問題にも直結します。

脱中国、日米台の連携を深めることも大事ですが、製造装置や素材など、日本の強みで、国内の生産基盤を死守しながら、雇用を生むことを考えて、国内に半導体の先端工場を作るべく努力すべきだと思います。

政府もなんとかしないといけないという危機感はあるようですが、一刻も早く付加価値の高い製造業で雇用増大を図り、地方に工場を建設し、地方の活性化を目指すべきだと思います。
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釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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