RCEPのリスクとデジタル人民元の脅威、中国は通貨覇権を握るのか?【後編】
幸福実現党外務局長 及川幸久
◆ドル支配体制を崩す中国の戦略
海外送金は、ベルギーに本社がある国際銀行間通信協会SWIFT(スイフト)という「国際銀行決済システム」を通じて決済されます。
世界の銀行が国際業務において、どの通貨で決済をしているのか、それが米ドルであるとSWIFTが世界中の銀行と結んでいます。これがアメリカのドルの支配体制です。
これには中国であろうと歯向かうことができません。
そこで中国はRCEPとCAIによってデジタル人民元を、東アジアとヨーロッパの地域限定の決済通貨にして米ドルの支配体制を終わらせようとしているわけです。
同時に、中国は人民元を中心に持って行っていくために、SWIFTと中国人民銀行と合弁会社をつくり、SWIFTにもアプローチしています。(2月4日、ロイター記事)
これだけ見ても中国が人民元デジタル人民元を世界の基軸通貨に本気でしようとしていることが伝わってきます。
◆デジタル人民元の目的
デジタル人民元という新たな通貨でアメリカの経済的覇権を奪おうとしているわけです。
デジタル人民元の目的は、それだけではありません。デジタル人民元は、元々は国民の個人データを政府が把握するというところに目的がありました。
中国14億の人民が行う経済学活動をすべてデジタル化してしまえば、誰がいつ何にお金を使ったかを全部把握できます。
すでにこれを中国の中でやっているのが、例えば「アリババ」です。
アリババは、「アリペイ」というデジタルの決済システムによって10億人くらいの人民のお金のやり取りを把握しています。
それに対して、「中国共産党がアリババを攻撃している」という記事(映像15:54)がありました。
アリババア創設者ジャック・マーは、去年の末から今年の1月まで音信不通で全く現れなくなり、ニュースになっていました。
他にも、中国共産党はアリババグループの新たな 企業上場にストップをかけたりしています。
要は民間企業にデジタル通貨の決済をやらせない。決済は、中国共産党がデジタル人民元で全部やることを言いたいようです。
◆バイデン政権で中露接近
ここでアメリカがバイデン政権になりました。
バイデン政権の影響について、大川隆法党総裁が最近刊『ヤイドロンの本心』の中でバイデン政権の外交について重要なことを述べています。
ヤイドロンという存在については、幸福実現党言論チャンネルの中で一度取り上げていますのでそちらをご参照いただければと思います。
同書でこのバイデン外交について、「中国とロシアを近づけることになる」という指摘をしています。
バイデン大統領は先日、国務省に入って今後の外交方針についてのスピーチをしました。
その中で、ロシアに対しては厳しくいく。そして中国に対しても厳しく行く。しかし中国は競争相手であり、できたら強調していきたいと、トランプ政権とは真逆の方針を出しました。
同書では、まるでバイデンの発想は20世紀の米ソ冷戦時代の発想だ。ロシアが敵であって、逆に中国を引き込むという全く時代遅れの発想だ。
バイデン外交ではロシアが孤立し、間違いなく中国とロシアの距離が近づいていく。これは最もいけないシナリオだと指摘しています。
これは、もちろん軍事的にも、経済的にも最もまずい形になります。すでにロシアがデジタル人民元決済体制に参加するような空気が漂っています。
1月6日の「日経アジア」の記事ですが、ロシアが資源エネルギーの輸出で中国への輸出を拡大しているという記事(映像20:59)です。
ロシアが石炭を中国に輸出する量を倍ぐらいにしようとしています。中国はこれまでオーストラリアから石炭を輸入していましたが、オーストラリアとの関係が悪化していました。
ロシアとしては願ってもないことです。ロシアと中国との貿易量が増え、その時の決済通貨はどうなるのかです。
去年8月6日の「日経アジア」の記事ですが、ロシアが米ドルに代わって人民元を増やし始めています。
ロシアもそうですが、中国との貿易に依存する国は中国のペースで人民元によって決済を迫られる方向に動いているわけです。
そこに日本を含むRCEPやCAIや日本も入ってきます。
◆デジタル庁設置で懸念すること
日本に関係する部分として懸念せざるをえないのが、2月9日に閣議決定した「デジタル庁の設置」です。9月に発足させることです。
同庁は、菅政権の看板政策ですが、9月に発足予定で菅首相をトップに500人規模になるということです。
気になるのがRCEPに日本が入っていって、そのステップの中でデジタル人民元というのが使われる流れに日本が簡単に入ってしまわないだろうかという点です。
入ってしまったとしたら、日本は中国の経済覇権の領地になってしまうのではないか。そんな懸念を持たざるを得ません。
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執筆者:及川幸久