菅政権「デジタル庁」構想、中国サイバー軍の標的に【後編】
幸福実現党党首 釈量子
(3)「デジタル化」に伴うリスク――サイバー攻撃
前編で、「デジタル化」に伴うリスクとして、難しいシステム構築と運営や、政府と業者の癒着の問題を上げました。
他に重要なことが「安全保障」の観点です。
日本は、軍隊も、諜報機関もありません。スパイを取り締まる法律もないという、スパイ天国です。
国際基準で見ても、先進国の中で、最もサイバーセキュュリティ意識が低く、最もそうした攻撃に脆弱な国の一つです。
サイバー空間は、世界の最先端のハッカー達が、「獲物が無いか」とハイエナのように嗅ぎまわっている戦場です。
そこに、日本のお役所という、全く無防備で無経験な、それでいて巨大なお宝を抱えたお客が、のこのこと入っていこうとしているのです。
◆中国のサイバー攻撃
「サイバー攻撃の先進国」といえば、中国です。令和2年版「防衛白書」でも、人民解放軍の中に「サイバー軍」があり、「中国は、平素から機密情報の窃取を目的としたサイバー攻撃などを行っている」とされています。
平成30年12月、米国などは、中国国家安全部と関連するサイバーグループが少なくとも12か国に対して知的財産などを標的とするサイバー攻撃を実施したと発表しました。
わが国でも民間企業、学術機関などを対象とした広範な攻撃が確認されています。
また平成29年、米国の消費者信用情報会社から、名前、生年月日、社会保障番号、運転免許証番号、クレジットカード番号などの個人情報が窃取されるサイバー攻撃が発生しています。
今年2020年2月に、米司法省は、当該サイバー攻撃に関与した疑いで中国軍関係者4名を起しています。
そうした中で「デジタル庁」構想は、中国のようにサイバー部隊を強化している国に日本のあらゆる情報がまるごと抜かれてしまう可能性があります。
◆「デジタル化」は全体主義への道
そもそも、「マイナンバーのポイント還元」をはじめ、国民を利で釣りながら国主導で進められる日本経済のキャッシュレス化は、キャッシュレス化の進む中国の強い圧力で進められたものでした。
増大した訪日中国人の利用が多いことから、政府は、キャッシュレス化を進めることで、インバウンド消費の拡大とともに、全国の中小・小規模事業者の皆さんの成長へつながりますと言ってきました。
しかしこの次に来るのは、「デジタル人民元」です。デジタル人民元は、ドルを介さずに決済できます。世界の基軸通貨とするドルに対抗して、「デジタル人民元」の通貨圏、使える範囲を広げようとしています。
役所の手続きの複雑さは、デジタル化ではなく、「そもそもの規制や手続きを減らしていく」ことによって、対応すべきです。
縦割り行政の問題は、各省庁のうえに「デジタル庁」を作って屋上屋を重ねるのではなく、要らない省庁を廃止して、役所全体をリストラしていくことによって対応すべきです。
「デジタル庁」は、「便利だ」「儲かりますよ」といっているうちに、「都合の悪い情報も含めてすべての情報を上の機関に監視されてしまう」という状態は、「奴隷」にほかなりません。
政治哲学者で「全体主義の起源」のハンナ・アーレントや、「隷属への道」のハイエクなど、ナチス・ドイツが出現した教訓を、人類に残した人たちがいます。
日本の「デジタル庁」の推進は、北京政府に近づいていくことでもあるし、全体主義・中国のコントロール下に入ってしまう危機でもあるのです。