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成長戦略インサイト(4)中国リスクに動じない経済体制の構築を

http://hrp-newsfile.jp/2020/3829/

幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真
――17日、内閣府は19年10月~12期の国内総生産(GDP)速報値(1次速報)を発表した

今回の発表により、物価変動の影響を除いた実質値で、当期のGDP成長率は、前期比1.6%減、年率換算では6.3%減となったことが明らかとなりました。

特に、民間最終消費支出、民間企業投資はそれぞれ、前期比で2.9%減、3.7%減(ともに実質値)と、国内民需の柱となる各項目が大幅減となっています。これについては、台風や暖冬による影響があるとの見方もありますが、やはり昨年10月に施行された消費増税の影響が最大の要因であることは、論をまちません。

日本政府が消費増税を強行したことについて、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)や英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、「大失態」だったとして批判的な記事を掲載しています。

「増税は最悪のタイミングだ」とも言われていますが、デフレ脱却もままならない中、家計や企業活動を圧迫する消費増税を強行したのは理解し難いというのが実際のところでしょう。

――マイナス成長は次の期にも及ぶのではないかとも危惧されている

GDPが2四半期連続でマイナス成長を記録した場合、欧米では一般的に、「リセッション(景気後退局面)に入った」とみなされます。こうした事態が現実のものとなるのは、十分に想定されます。

一般的に、増税後の消費水準は、増税前の段階までは回復しないまでも、増税直後からは時間とともに緩やかに回復に向かうものです。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響次第で、消費水準の回復は鈍くならざるをえず、このため、消費の停滞傾向は今後も継続することも想定されます。

同感染症は、場合によっては2、3カ月では収束せず、その影響は少なくとも1年程度は続くとの見方もあります。

従って、東京五輪・パラリンピックについては、開催延期どころか、場合によっては無観客での開催や、大会そのものを中止すべきとの論調さえ聞かれるところです。

このような事態となれば、関連消費にもたらす悪影響もあり、日本経済にとって大きな打撃となるのは間違いありません。

こうして考えると、日本は、2期連続どころか、最悪の場合、2020年は通年でマイナス成長になる可能性も指摘されるところです。経済的な観点から見ても、2020年代の幕開けはまさに、「苦難からの出発」となりつつあるのが現実です。

――中国国内については、スタグフレーション(インフレと景気後退が同時進行すること)への懸念もある

中国では、特に感染が広がっている地域を中心に、住民が外出を控えているほか、工場などでの生産活動が滞っていることにより、経済は需給両面において停滞している状況となっています。

この中で、昨年流行したアフリカ豚肉コレラ(ASF)による豚肉の供給量の減少で、豚肉とともに、海鮮、野菜など代替となる食糧の価格が急騰しています。

こうして、中国では景気低迷と同時に、生活必需品を中心としたインフレが同時進行する「スタグフレーション」が、同感染症により今後一層進行するのではないかと危惧されているのです。

日本国内へ与える影響についてはどうでしょうか。例えば野菜については、基本的に今年は国内品が豊作であることから、今のところ大きな影響はないとも見られています。

ただ、工業製品などについては、前号(20年2月7日号)でも一部指摘しておりますが、中国からの部品供給が追い付かないことから、今後一層、日本製製品の産出に悪影響をもたらすことも危惧されています。100円ショップなどでは中国製品そのものが品薄状態になっているケースもあるようです。

今、日本は、中国リスクを踏まえた生産体制の見直しと、その一環としての製造業の国内回帰、「メイドインジャパン」の復活を推進すべきでしょう。

――講じるべき対策の方向性は

製造業の国内回帰はいわば国策として積極的に推進すべきです。日本企業が海外に置く生産拠点を国内に戻す動き(リショアリング)を進めやすくするため、政府は、現在約29%となっている法人実効税率を15%にまで引き下げるなど、大胆な政策を実施する必要があるでしょう。

また、政府は、感染症の影響による中小企業の経営悪化を懸念し、企業の資金繰りについて5000億円規模で支援する策を実施するとしています。

これについては、同感染症の影響次第では、こうした支援策を拡充することを検討すべきと考えます。

さらに、景気対策の位置づけとして一部有識者からは、消費税について全品目に軽減税率を適用すべきである、との考えが示されています。

先行き不透明な今後の日本経済の見通しを踏まえ、まずは全品目への軽減税率の適用を実施すべきとの考えは、次善の策としては、一考に値するかもしれません。

ただ、本来は、中長期的に力強く経済成長を推し進めるのはもとより、インバウンド消費に頼らなくてもよい経済を構築するとの観点から、減税は限定的な措置に留めるべきではなく、標準税率自体をまずは8%に戻す、ないしは5%への減税を実施すべきと思います。

(参考)
「新型肺炎で中国スタグフレーションか」(大和総研「新興国経済ニュースレター(2020年2月6日)」より)

「中国、スタグフレーションの色合いが一段と強まる状況に」(第一生命研究所「Asia Trends(2020年2月10日)より」)

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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