誰でもわかる中東問題―アメリカとイラン、エスカレーションは起こるのか?【後編】
本日は、「誰でもわかる中東問題―アメリカとイラン、エスカレーションは起こるのか?【後編】」をお送りいたします。
(広報本部)
誰でもわかる中東問題―アメリカとイラン、エスカレーションは起こるのか?
https://www.youtube.com/watch?v=yLf1dsoGudg&t=9s
幸福実現党外務局長 及川幸久
※下記は要約したものです。詳しくは上記の映像をご覧下さい。
◆革命防衛隊とはどういう組織か?
ここで改めて、ソレイマニ司令官が所属していたイラン革命防衛隊について紹介したいと思います。
イランには正規軍としての国軍と、イラン革命防衛隊という2つの軍隊があり、ホメイニ革命後、シーア派指導者の直轄組織が革命防衛隊となります。
革命防衛隊には陸海空軍に加えて、海兵隊まである12万5000人の軍隊で、更にそれに加えて対外工作を主とする特殊部隊コッズ部隊があり、そのトップがソレイマニ司令官だったのです。
ソレイマニ司令官は、イラク、シリアやレバノンなどの地域で、親イランのシーア派系の民兵組織を指導訓練し、兵器を供与していたので、アメリカから見れば「テロ組織」を作っている中心人物、まさに「テロリスト」であり、イラン革命防衛隊というのは「テロ支援組織」であるという風になるわけです。
◆イラン側の視点:イランの軍事行動は「防衛戦」
しかし、イランは経済的にも軍事的にも、中東全体を支配できるような帝国ではありません。
ですから、別の視点で考えれば、米国に正面から立ち向かえないので、他国の民兵組織を育成して、自国を守るという「防衛戦」であるという考え方も出来ます。
中東に関する報道については、基本的に欧米側の見方が100%になりがちなので、ここではイラン側の立場で考えるという、中立的な考え方も提示したいと思います。
◆世界各国のメディアが明らかにする両国の考え
また前述しましたが、ウクライナ機の誤射に関連して、この前後に水面下では様々な事態が展開されていたということが世界のメディア報道によって徐々に明らかになってきました。
英国のThe Time誌は「昨年12月の在イラク米軍基地へのミサイル攻撃の目的は、米国側に圧力をかけるだけで、戦争をエスカレートしないように、人がいない場所に撃ったはずだったが、米国民間人がたまたま居合わせてしまい、死亡してしまった」と報じました。
要するに、イランはもちろん、米国としても戦争をエスカレートさせたくなかったわけですが、民間人が犠牲になってしまった事で、致し方なく何かしらの手を打たなくてはならなくなったわけです。
いままさに重要なのは、「米イランの関係を戦争までエスカレーションさせないこと」であります。
また、米国のWSJ誌も「ソレイマニ殺害直後、トランプ政権はイランのスイス大使館経由で、イラン政権に対して「事態をエスカレートしない」という暗号メッセージを送った」と報じています。
◆2種類ある「エスカレーション」
米国スタンフォード大学にフーバー研究所というシンクタンクがありますが、そこではある女性研究員が、エスカレーションには2通りあり、一つは「意図的なエスカレーション」、もう一つは「不注意なエスカレーション」の2つがあると発表しています。
米イランの政権が「戦争をやりたい」という意図があったら、何らかの事故を起こして、それを引き金にエスカレーションを起こすというのはあり得ます。
しかし、本当は戦争したくなくても、不注意な出来事によって起きてしまうエスカレーションもあり、まさに危機における最大のリスクというのは、この「不注意なエスカレーション」から生じると言われています。
具体的事例としては、第1次世界大戦のように、全く計算外な不注意な出来事によって、戦争にエスカレートしてしまうということがあり得るわけです。
そういう意味で、前述のウクライナ機撃墜事件は、まさに「不注意なエスカレーション」に成りかねず、もし乗客に一人でも米国人が搭乗していたら、この一発で今頃もしかした戦争になっていたかもしれません。
◆緊張関係が断続的に続く米イラン情勢
現状としては、とりあえず米国とイランの本格的な戦争はなさそうだということでちょっと楽観視している雰囲気ですが、昨年からの流れを振り返ると、どうも戦争を起こしたい人たちがいるようです。
トランプ大統領に「イランを叩け」という決断をさせたい勢力がいて、この後何を起こすかは分かりませんし、また「不注意な何か」が起きるかもしれません。
そういう意味で、現状はまだ緊張関係が本当は続いているわけです。
解決する方法があるとしたら、トランプ大統領とロウハニ大統領の直接会談でありますが、トランプ大統領個人は前向きだったとしても、トランプ大統領の側近たちが止めてきているかもしれません。
2020年、中東問題が第3次世界大戦のような大規模戦争に広がらず、平和裏に外交によって解決の方向に向かってくれることを心から祈りたいと思っています。
執筆者:及川幸久