エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6)自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠
http://hrp-newsfile.jp/2019/3562/
幸福実現党 政務調査会エネルギー部会
(本稿では、読者の皆さまからいただいたご意見・ご質問にお答えします。)
◆原子力発電だけで経済成長を支えられるか
幸福実現党は、2050年頃までに日本の一次エネルギー自給率をフランス並みの50%以上に高めることを目標としています(※1)。
この目標を達成するために、再生可能エネルギーの主力電源化ではなく、原子力発電をさらに推進してはどうかというご意見があります。
我が党は原発の再稼働・新増設を訴えており、現在原子力規制委員会が新規制基準への適合性審査を進めている新設2基(※2)に加えて、合計13基(計画・構想段階の原発9基および我が党独自の提案分4基)の軽水炉の新増設、さらに高速増殖炉等の開発を目指しています。
これが実現すると、2050年の原発による発電電力量は3,000億kWh以上となりますが、それでも過去最高だった1998年度の原発による発電電力量(※3)を超えることは厳しい状況です。
我が党は、減税、規制緩和、大規模なインフラ投資などの成長戦略により、実質経済成長率3%程度を実現することを目指しており、これに基づく2050年の最終エネルギー消費は約1.7倍、電力需要は約3倍(いずれも2016年比)と推定しています(※4)。
2050年における電力需要は約2兆8,000億kWhとなり、このうち原発で供給できる電気は約10%しかありません。
◆エネルギー自給率を高めるには再エネが不可欠
したがって、残りの90%の電力供給を火力発電と再エネで分担することになりますが、一次エネルギー自給率を50%以上に高めるには、電源のうち再エネの比率を80%程度まで高め、火力発電の比率を10%程度とする必要があります。
ここで、発電用の燃料のうち液化天然ガス(LNG)の一部は、日本近海に豊富に賦存するメタンハイドレートに置き換わることを想定しています。
再エネ比率80%は非常にチャレンジングな目標ですが、日本は海洋・地熱等の未開発の豊富な再エネ資源に恵まれ、先行している太陽光発電についても、システムの低価格化が進んでいます。
大川隆法・幸福実現党総裁は2009年2月の講演(※5)で、時代が脱石油文明にシフトしていくとの見通しを示していますが、実際に2010年代には、世界で再エネに関する技術革新が飛躍的に進み、低炭素技術や化石燃料を削減する技術の普及が一段と進んでいます。この「新文明」の潮流はもはや止まらないと考えられます。
再エネに投資を行い国産資源として活用することは、日本の安全保障を高め、低廉なエネルギーが潤沢に供給される社会の基盤をつくり、政策を誤らなければ投資の大部分を国内経済に還流することも可能なため、国家としての総便益はきわめて大きいといえます。
◆仮に原発だけで自給率50%以上を目指すなら
仮に、自給率を50%以上に高めるために原発だけを使うとした場合には、現時点で国内最大級の原発(1基あたり138万kW)を250基以上新増設する必要があります(※6)。
日本のような民主主義国で、わずか30年間に250基の原発を新増設することは非現実的ですが、中国のような共産党一党独裁の全体主義国家であっても、ほぼ不可能でしょう。
なお、現在の経済状態が2050年まで続き、エネルギー需給構造や電力需要が変わらないと仮定した場合には、火力発電を全て廃止して原発と再エネに置き換えれば、一次エネルギー自給率は50%程度になります。
その場合にも、再エネを利用しない場合には原発を80基以上新増設する必要があり、現実的ではありません。
◆エネルギー政策にはバランスが重要
特定のエネルギーに偏る政策は、それが実現しなかった場合の代替エネルギーの確保を困難にするため、リスクが大きいといえます。原発に過度に期待すると、それが実現しなかった場合には、結局は化石燃料への依存から脱却できないことになります。
我が党は、原子力を重要なエネルギー源として位置づける一方、太陽光・陸上風力などの在来型再エネ、洋上風力、潮力、海洋温度差、次世代地熱(EGS)などの新しい再エネに加え、メタンハイドレートの新規開発も進め、石油、石炭、LNGなどの在来型の化石燃料も戦略的に維持することを目指しています。
エネルギーに関するあらゆる可能性を否定せず、情勢の変化に柔軟に対応できるエネルギー供給体制を構築し、日本の独立と繁栄を守ります。
◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。
ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。
参考
※1 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1) 総論」 HRPニュースファイル
2019年5月12日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3534/
※2 電源開発の大間原発1号機と、中国電力の島根原発3号機
※3 エネルギー白書2018 資源エネルギー庁
1998年度の原発による発電電力量は3,322億kWで、電源比率は36.8%と、ともに過去最高。
※4 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か」 HRPニュースファイル 2019年5月26日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3558/
※5 『創造の法』 大川隆法 幸福の科学出版 ISBN978-4-86395-014-6
※6 改良型沸騰水型原子炉(ABWR)で想定。出力138万kW、設備利用率85%とすると、1基あたり年間約103億kWhの発電電力量となる。
執筆者:webstaff