エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(3)再生可能エネルギーは高い?
http://hrp-newsfile.jp/2019/3538/
幸福実現党 政務調査会エネルギー部会
◆すでに「戦力」となっている太陽光発電
民主党(当時)政権が2012年度から導入した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」により、太陽光発電(PV)を中心として、再エネの利用が急速に進んでいます。
日本のPV導入量は4,300万kW(2018年末現在)を超え(※1)、既に重要な供給力の一部となっています。
例えば、九州エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約81%をPVで賄い、余った電気を他のエリアに融通しました。夏のピーク需要時には約27%をPVが供給しました(※2)。
また、需要の多い東京エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約36%をPVで賄い、夏のピーク需要時には約11%をPVが供給しました(※3)。
このように、PVは特に昼の需要に対しては「戦力」として機能しており、夏の節電要請が4年連続で見送られていることからも、その効果の大きさがわかります。
一方、再エネを電力量(kWh)の点から見ると、2017年度の日本の発電電力量約1兆602億kWhのうち、PVは約551億kWh(約5%)であり、水力・風力・バイオマス等を合わせた再エネ全体でも約1,700億kWh(約16%)に過ぎません(※4)。
エネルギー源として期待するにはまだ量が足りないといえます。
◆莫大な国民負担
このように、日本ではFITの導入により、PVを中心とした再エネの爆発的な普及が進みましたが、その代償として国民負担が急増しています。
FITを導入した2012年度には、再エネの賦課金総額(国民負担)は約1,300億円でしたが、2018年度には約2.4兆円に膨れ上がりました(※5)。
電力中央研究所は2017年に、このままでは2030年度の賦課金総額は3.6兆円、累計44兆円に達するとの試算を発表しました(※6)。
この試算はメディアでも取り上げられ(※7)、国民や経済界にも負担増への不満が高まってきたことから、経済産業省は国民負担の抑制のため制度設計を段階的に見直し、2019年4月にはFITの抜本的な改革に向けた検討を始めました(※8)。
◆民主党(当時)の失政が巨額の国民負担を招いた
なぜ、ここまで国民負担が増大したのでしょうか。
実は、再エネのコストは高くないばかりか、海外では急速にコストが低下し、既存の系統電力のコストを下回る例も出てきています(※9)。
また、バイオマス以外の再エネは燃料が不要なため、ひとたび初期投資を回収すれば、ほぼ「限界費用ゼロ」(※10)で電気を供給することができます。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、日本でFITが始まった2012年当時でさえ、世界のPVの発電原価は既に急速な下落傾向にあり、1kWhあたり25円程度、入札価格はさらにこれを下回っていました(※11)。
ところが、日本はFITの導入時に、1kWhあたり42円(税込み)という、当時のドイツの2倍近い、世界の相場とかけ離れた非常に高い価格でPVの電気を買い取ることを決めました。
これは、メガソーラー事業への参入を予定していたソフトバンクの孫正義氏が、民主党(当時)の菅直人・元首相に強く要望したことが理由ともいわれています。
このように、民主党(当時)政権が再エネ事業者の過大な利益を誘導したことが、PVの爆発的な普及につながったことは間違いありませんが、再エネ事業者が法外な利益を得る一方で、巨額の国民負担が累積的に増加し、高い買取価格を織り込んで日本ではコスト削減が進まないなど、多くの弊害が出ています。
再エネはもっと安いものですが、日本の再エネをここまで高コストにしたのは、明らかに民主党(当時)の失政が原因です。
◆FITの速やかな廃止で、再エネはもっと安く大量に導入できる
幸福実現党は、FITを速やかに廃止し、電気料金を原資としない補助金制度を創設することを訴えています。
FITでは買取価格が固定されているため、コスト削減の努力が生まれにくいことから、再エネの開発にあたり、競争入札を広く適用します。
また、陸上におけるPV・風力発電等の開発では、乱開発による深刻な環境破壊が各地で発生していることから、規制を強化し、秩序ある開発によって自然環境・生活環境を守ります。
このような施策により、我が党は国民が安心して再エネを受け入れられる条件を整えて、低コストの再エネの導入を拡大し、広く国民がメリットを享受できるようにします。
◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。
参考
※1 固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト
https://www.fit-portal.go.jp/PublicInfoSummary
※2 九州電力 系統情報の公開 http://www.kyuden.co.jp/wheeling_disclosure.html
これによると、2018年4月29日(日)12:00頃、エリア需要793万kWのうち646万kWをPVが供給。2018年7月26日(木)14:00頃、エリア需要は1,601万kWのピークに達し、そのうち432万kWをPVが供給。
※3 東京電力パワーグリッド エリアの需給実績公表について
http://www.tepco.co.jp/forecast/html/area_data-j.html
これによると、2018年5月20日(日)11:00頃、エリア需要2,616万kWのうち952万kWをPVが供給。2018年7月23日(月)14:00頃、エリア需要は5,653万kWのピークに達し、そのうち611万kWをPVが供給。
※4 平成29年度(2017年度)エネルギー需給実績(確報) 資源エネルギー庁 2019年4月12日 https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/stte_025.pdf
※5 日本のエネルギー2018 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2018.pdf
なお、買取費用から電力会社の回避可能費用等を減じたものが、賦課金の額となる。
※6 「固定価格買取制度(FIT)による買取総額・賦課金総額の見通し(2017年版)」
電力中央研究所 2017年3月
https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/pdf/Y16507.pdf
※7 「再生エネ買い取り5年 国民負担は電気代の1割に拡大 論説委員・井伊重之」
産経新聞 2017年7月2日
https://www.sankei.com/premium/news/170701/prm1707010025-n1.html
※8 「経産省、再エネ固定価格買い取り制度を抜本見直しへ」 日本経済新聞 2019年4月25日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44175090V20C19A4000000/
※9 Renewable Power Generation Costs in 2017, International Renewable Energy Agency
https://www.irena.org/publications/2018/Jan/Renewable-power-generation-costs-in-2017
※10 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。
※11 「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた今後の論点~第5次エネルギー基本計画の策定を受けて~」 資源エネルギー庁 2018年8月29日
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/007_01_00.pdf
執筆者:webstaff