教員免許制度の改革で、発展する教育界の実現を
http://hrp-newsfile.jp/2019/3528/
HS政経塾8期生 柄澤悠(からさわ ゆう)
◆進む教員不足
現代日本では、「教員不足」が進んでいます。
2018年の文科省調査によれば、11自治体を累計すると、小学校で316人、中学校で254人の教員が不足していることが分かりました。
少子高齢化の影響や、第二次ベビーブームに合わせて増えた教員の定年退職も重なり、教員採用試験の倍率は年々低下しています。
さらに、転職が盛んになり、教育関係業の離職率(3年目までの離職)は46.2%もあります。
国は、退職した教員を臨時採用するという対策を講じましたが、これで新たな人材は確保できないので、その効果は限定的でしょう。
◆多様化する教育内容
加えて、現代の教育は多様化が進んでいます。グローバル化に対応するための「国際教育」、プログラミングやタブレット等を使った「IT教育」、高校普通科の見直しによる「教育の専門化」等が必要とされているのです。
こうした変化には、今までの教員採用システムでは対応しきれません。
まず、教員養成カリキュラムの再編成が必要でしょう。
しかし、それだけではなく、免許を持たない新しい教育人材に対して、門戸を開くべき時期が来ているのです。
◆教員の採用規制を緩和する
このように、現在の公教育で、人材不足の中で多様化が進んでいます。
こうした状況に対応するには、どうすれば良いのでしょうか。
その対策は、「特別免許状制度の廃止」と「免許の有無を問わない臨時採用」です。
本来、特別免許状とは「一定の社会経験や専門知識が認められた者に授与される免許状」ですが、実際は、あまり活用できていません(約30年間で、累計1101件。33校に1人しかいない)。
そうなるのは、非常勤講師でカバーした方が人件費が安く、特別免許状を取ろうとする程の「なり手」が不足しているからです。
そのため、「免許がなければ教員にはなれない」という常識を、今こそ覆す必要があるでしょう。
免許制度ができる以前には「代用教員制度」というものがありました。
これは、免許を持たない人であっても教員になることができ、かつ、一定の経験と簡単な研修によって、代用教員から正規の教員になることも可能という制度です。
この制度は、GHQの教職追放等で急激に減った教員の補充にも、大きな効果を発揮しました。
免許がなくとも、質の高い教育ができる人材は数多くいます。
免許の取得は、採用後でも構わないのです。
◆不適格教員の排除で、教員の質を保証
しかし、教員の門戸を広げれば、同時に質が落ちるのではないかという意見もあるでしょう。
そこで活用されるべきは、「免許更新制」です。
現在の免許更新は、数万円の費用を払い、ただ研修を受けるだけの制度です。これでは、はっきり言って「無駄」です。
免許更新の際に、不適格教員の排除も可能にできるよう、しっかりと教員の評価を行っていく必要があるでしょう。
教員になる「チャンスの自由」を保障し、採用後の「振るいの強化」を行うことで、「量」と「質」の両立を目指すことができます。
そして、教員免許制度の改革は、「教員免許」そのものの存在意義を考え直す機会にもなり、大学における教員養成プログラムの見直しにまで、影響は広がっていくのです。
<参照>
・『教師は生まれ変わる 教育現場を変える新しい考え方』(森口朗著、幸福の科学出版)
・「小中学校で「先生が足りない」理由」NHKニュースおはよう日本2017年7月4日(火)
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/07/0704.html
・「文部科学統計要覧(平成28年版)」文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/1368900.htm