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「森林環境税」には反対!ばらまきで日本林業は再生しない

http://hrp-newsfile.jp/2018/3435/

幸福実現党 湊 侑子 

◆新たに始まる、「森林環境税」

2018年5月、森林経営管理法が参院本会議において与党などの賛成多数で可決、成立しました。2019年4月から施行されます。

所有者の高齢化や後継者不在などで手入れできない人工林を市町村が意欲ある林業経営者に貸し出す、所有者が分からない森林は市町村が管理すると定めます。

この「森林バンク」のため(森林整備・人材育成・道路整備・機械の購入など)、個人住民税に年1000円が上乗せされ、年間620億円が集められます。これが森林環境税です。

これを特定財源とし、必要とされる市町村に配布します。

◆「森林環境税」で林業は変わらない

日本の人工林を何とかしなければならないことも、林業を復活させることもたいへん重要な課題です。しかし結論から言うと、今回の森林環境税導入には反対です。

反対の理由は、

(1) 森林量は地域によって異なっているため、都市住民は恩恵が少ない。
(2) 特定財源として目的税化しているため、市町村側は予算獲得・消化のための無駄なばらまき、受注側も予算目的のずさんな仕事が行われる可能性が大きい。成果判定も不明確。
(3) すでに全国8割の都道府県や横浜市において、森林環境税に似た税金が導入され、地方の財源としているため、二重課税となる。
(4) 市町村だけでは人工林管理に対応できない。国としての経営計画が必要。

日本の林業不振の原因は財源ではなく、経営・生産管理思想が入っていないことにあります。

戦後、大きな木材需要があった際、切れば売れるということでずさんな管理の下で国産材が供給された歴史があります。

その結果、安定供給・情報公開をしている外材にユーザー(住宅メーカー)が流れ、国産材の価格が下落。結果、林業は成り立たなくなり人が減り山は荒れていく、という悪循環が起きました。

しかし、戦後植林した人工林は今からが切り時を迎えます。また現在では、経営・生産管理・効率化の下、集約化を進め森林を守りながら高品質・高付加価値な木材を提供する民間企業も出ています。

このような民間企業が地域に存在する地方自治体にとっては、この財源はありがたいものになるでしょう。

しかし多くの地方自治体にとっては、とりあえずの予算消費が続くのが実際のところではないでしょうか。

◆ばらまきではなく、先進地域の知恵を全国へ

地方自治体の中では、市町村が民間と協力をして研究しつつ、人工林の手入れをすすめつつ林業従事者を増やしている地域もあります。その中の一つが、高知県にある佐川町です。

佐川町では、平成25年度よりこれからの林業の一つの方向性である、自伐型林業(注1)推進計画を策定し、取り組みを始めました。

次年度から、民間に委託して研修を開始し、自伐型推進協議会を発足させました。

その当時の林業担当職員は0.1人でした。農業担当者の一名が、農業の合間のおまけ程度に林業を見ている状況でした。おそらく、全国の地方自治体も同じような状況でしょう。

森林環境税が地方自治体に配分されたとしても、経験・智慧・人がなければ貴重な財源も垂れ流しになります。

佐川町では現在、担当職員3名、臨時職員1名、民間アドバイザー1名をつけ、全国から視察が入るほどになっています。

有名な岡山県西粟倉村の村による民有林の集約・管理方法を学び、登記簿を基に森林所有者に関する情報と森林資源の情報を管理・更新し、関係者との情報共有を行う森林ICTプラットフォームの導入を決めました。

航空機によるレーザー測量を町全域で実施し、樹種別の区分や立木情報などが詳しく分かりました。

山林集約の為には山林保持者216名にアンケートを送付、109名から町による管理希望を取り付けました。

町と所有者とで20年の管理契約を結び、施業委託を自伐型林業者に委託します。民間アドバイザーによる実地研修を林業従事希望者に行い、独り立ちさせます。

その後、委託された地域の木を切り出した売り上げは、自伐型林業者が9割、森林所有者に1割入るようにし、それぞれにメリットがあるようにしています。

このような取り組みを続けることで、新たなる林業従事者が増えつつあります。このように工夫しながら先に進んでいる地方自治体も存在しているのです。

政府は税金を集め、配る前にもっとすべきことがあるはずです。

国としての林業のビジョンを描き、林業を経営として成り立たせるために、成功事例を研究して各地にその遺伝子を入れていくことです。

同じことは消費税増税にも言えます。単なる増税で自分たちの権限を増すだけの政府はもう必要ありません。ビジョンと経営力と知恵こそが未来を切り開くカギなのです。

(注1)自伐型林業とは
基本的には皆伐をせず間伐を繰り返す超長伐期の林業で、1人~数人のグループで施業し、副業から専業まで個人のライフスタイルにあわせた施業ができます。大型・高性能機械は導入せず、設備投資とランニングコストを抑えることで、参入障壁を下げつつ収入を増やします。

みなと 侑子

執筆者:みなと 侑子

HS政経塾1期卒塾生

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