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水素社会に向けて――課題と展望、そして光合成

http://hrp-newsfile.jp/2017/3232/

幸福実現党茨城県本部代表・茨城第一選挙区支部長・政務調査会経済部会長 川辺賢一

◆水素の魅力

水素は、“究極のクリーン・エネルギー”として90年代から注目を集め、2014年に政府のエネルギー基本計画で方針が示され、同年12月にはトヨタが水素で作った電気で走る燃料電池車としてMIRAI(ミライ)の販売を開始し、水素社会への期待は日に日に高まっております。

最近では、ホンダの燃料電池車クラリティをタクシーとして導入するとして帝都自動車交通が発表(7/4)。

またトヨタや東芝、岩谷産業、神奈川県等が水素社会に向けた環境省委託の実証実験に参加すると発表(7/12)。

内容は、風力で発電した電力で水素を作り、それを貯蔵・圧縮してトラックで運び、近隣の倉庫や工場で稼働する燃料電池フォークリフトに供給するというプロジェクトです。

では水素の魅力と何でしょうか。

例えば、水素と酸素の結合により発電する燃料電池では、発電の際に熱と水しか排出されず、有害ガスや温室効果のあるCO2を放出しないため、クリーンなのです。

クリーンな車として先行する電気自動車は充電に時間がかかる上、満充電でも航続距離が限られるところ、燃料電池車は数分で水素を補給でき、航続距離も比較的長いのです。

また発電の際に同時に放出される熱も利用して給湯を行うエネファーム(家庭用燃料電池)の利用も進んでおります。

しかし何より水素の魅力は、例えば水が地球上に無尽蔵に存在するように、宇宙一多く存在すると言われる水素原子(H)からなる物質である点です。

水素を自由に利用できる社会の実現は、日本にとってエネルギー安全保障上も悲願なのです。

◆課題

ただし現状、水素社会に向けては多くの課題もあります。

まずは輸送や貯蔵の問題です。

水素はかさばるため、ガソリンならタンクローリーで20〜25t運べるのに、水素は20気圧に圧縮しても0.06t程度しか運べません。

また液化して運ぶ場合、蒸発損が多く、天然ガス・タンカーで蒸発損が1日0.6%のところ、液体水素はその5倍の3%以上だとされます。

貯蔵に関しても同様の困難が伴い、水素社会実現のためには、より高度な断熱材の開発等、周辺技術の開発も同時に進めなければなりません。

しかし最も重要な問題は、水素の製造です。

現状、最も経済的な水素製造方法は、天然ガスの改質ですが、水素を作るのに天然ガスを使うなら、天然ガスをそのまま使った方が良いでしょう。

また、水の電気分解という方法もありますが、これも水から水素を取り出すのに、電気エネルギーを要するので非効率です。

他には、石炭を加熱し、その際、発生するガスに含まれる水素を利用する方法もあり、今まで需要が少なかった低品位炭を利用する点で優れていますが、化石燃料由来のエネルギーを投入しなければならないことには変わりありません。

こうした点から米テスラ・モーターズのイーロン・マスク氏は「燃料電池車は馬鹿げている」とし、太陽光で発電し、電気自動車を走らせるのが理想だと語ります。

◆水素を自由に取り出す技術の開発を

それでも私たちは水素の夢を諦めるべきではありません。

水素技術の革新は、エネルギーにとどまらず、私たちの生活に欠かせない化学工業においても革命的技術となるからです。

例えば水素と一酸化炭素の混合ガスである合成ガスを反応させれば、ガソリンを始め、オレフィンやメタノール、またそれらの誘導により、化学製品や建材、あるいは窒素との結合で化学肥料も作れるのです。

私たちが水素を自由に取り出す技術を手にした時、いわば水素はあらゆる物質・エネルギーに変換可能な通貨となるのです。

そこで注目すべきは、植物の光合成であり、それを人工的に行う人口光合成の技術です。

植物は太陽光と水から水素と酸素を作り、その水素と大気中の二酸化炭素から炭水化物を作ります。

この光合成を人工的に行う技術こそ、水から自由に水素を取り出し、水素をエネルギーに、または、あらゆる物資に変換する究極の循環型エネルギー社会=水素社会を創る鍵なのです。

そのためには、燃料電池車の普及や水素ステーションの整備のみならず、人口光合成を始め、水素の製造方法に関して、基礎研究の助成を推進すべきです。

こうした未来産業の種を官民で育て、予算の代わりに報告義務で研究者を縛るのではなく、自由に研究できる環境を整えるべきなのです。

川辺 賢一

執筆者:川辺 賢一

幸福実現党茨城県本部代表(兼)政務調査会経済部会長

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