夕張市の奇跡――自助の精神が日本を変える
http://hrp-newsfile.jp/2017/3209/
幸福実現党・広島第二選挙区支部長 水野善丈
◆『2025年問題』
皆さんは『2025年問題』をご存知でしょうか。
2025年に日本は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という「超・超高齢社会」を迎えます。
これが『2025年問題』と言われるものです。
この「超・高齢化社会に伴い増大しつづけるのが社会保障費であります。
現在、日本政府の歳出の多くを占め、約1000兆円ある政府の借金を増やす要因となっているのもこの社会保障費です。
今後、日本で高齢化社会が進む中で、この問題をどう乗り越えていくのかを世界各国は注目しています。
そして、この問題を解決するヒントを北海道の夕張市からご紹介させて頂きたいと思います。
◆高齢化率が高い夕張市
夕張市は、札幌から60km近く離れた北海道の中心部に近い市で、人口が8593人(5月末時点)である小さな市です。夕張メロンでも有名ですが、2007年に財政破綻し、財政再建団体となった唯一の市でも知られています。
かつて日本有数の産炭地として栄えた市でしたが、炭鉱の閉山や観光開発の失敗も重なり、人口はピーク時(1960年代)の約12万人から激減し、現在では、1万人をきっています。
しかも、夕張市は全国の市で高齢化率が最も高い市でもあり、8593人のうち65歳以上が4301人で人口の48.86%が高齢者となっています。
こうした中で、夕張市では、財政破綻とともに医療崩壊もおきました。
公営の総合病院は財政破綻の同年2007年に公設民営化され、診療所は171床から19床に縮小、市内の病院にはCTやMRIなどの機器はなくなり、救急病院も無くなったため、病院到着まで倍近くかかるようにもなってしまったのです。
これが、2050年の日本の未来を先取りしているともいわれていました。
◆医療崩壊からの復活
さて、夕張市に残された高齢者は、医療崩壊のせいで、病気に苦しみ、悲惨な目にあっていたのでしょうか。
実は、全くの逆の現象がおきました。お年寄りは元気になり、寿命も延びてしまったのが実際の状況でした。
例えば、日本人の死因上位三疾患(心疾患、肺炎、ガン)の死亡率が、全国で増えている中で、夕張市は下がっています。
実際に、三疾患の標準化死亡比(SMR)は、胃がんであれば、2006年134.2だったのが、医療崩壊後2010年には91.0まで下がり、肺炎については、125.0(2006年)から96.4(2010年)までに低下しています。(週刊日本医事新報「夕張希望の社の奇跡」参照)
また、全国的に一人あたりの医療費は増加しておりますが、夕張市の一人あたりの医療費は、2005年に83.9万円から2010年には73.9万円へと減少しています。
このようなことができたことの要因に、夕張市立診療所の前所長で医師の森田洋之氏は、病院があるから安心ではなく、病院に頼ることなく、予防の意識を市民の皆さん一人ひとりが持ち、地域で支え合う温かい風土ができたことを挙げられています。
参考:「医療崩壊のすすめ」(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=lL8aJE9Xp3Y
◆夕張市の事例から学べること
今回の夕張市の事例は、財政破綻・医療崩壊もした危機の中で、人間が持っている底力の部分や自立した精神こそ社会や自らを良き方向に導くことを教えてくれたものであると思います。
現在の政治は、社会保障を手厚くする代わりに国民から税金を多く徴収するというスタンスで運営を行っています。
一見、国民にとって楽であるから良いように見えますが、「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があるように、実際は、財政赤字は膨れ上がる一方で、増税により使えるお金が少なくなり、個人の選択の自由も無くなっていく地獄の道へと繋がっています。
もちろん、社会保障がいらないわけではなく、自助の精神に立脚したうえで、どうしても逃れられない困難に出くわすことも人生にはあるので、その時に社会保障などのセーフティネットを使えることは大切であります。
しかし、過度な社会保障は、国家財政を崩壊へと導くだけでなく、自由や人間の本来持っている力を喪失させ、堕落させる方向へと導いていくので問題であると考えます。
やはり、超・高齢化社会に向けては、「生涯現役」という理念を掲げ、高齢者も生きがいを持って働いていける社会の環境整備を優先すべきであると考えます。
そこには、個人として、人生を選択できる自由があります。
今回の夕張市の事例は、「超・高齢社会」に突入していくこれからの日本の大きな教訓を与えてくれたものであると思います。