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クロマグロから見る日本漁業の問題点

http://hrp-newsfile.jp/2017/3197/

幸福実現党・宮城県本部代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし)

◆日本は水産資源を守るために「責務を負う」

今月2日、政府は2016年度版の水産白書を閣議で決定しました。

その中で、世界有数の消費国である日本は、水産資源の枯渇を防ぐための国際的な管理を実現する上で大きな責務を負っていると指摘しています。

実際に、2015年の漁業・養殖業の国内生産量は前年比の2%減の469万トンで、ピークだった1984年の3分の1近くに減っています。

◆クロマグロは獲りすぎの状態

日本で最も国民から愛されている魚は、寿司ネタや刺身として幅広い人気を誇るマグロでしょう。マグロにはいくつかの種類がありますが、マグロの王様は黒のダイヤと呼ばれる「クロマグロ(本マグロ)」です。

日本人が愛してやまないクロマグロは、「獲りすぎ」が問題となっており、世界から厳しい目が向けられているのです。

日本近海に生息する太平洋のクロマグロ、1950年代に4万トンあった漁獲量は、現在1万5千トンまで落ち込んでおり、資源量が過去最低の状態です。

◆絶滅危惧種に指定されたクロマグロ

2014年、国際自然保護連合は絶滅の恐れがある野生生物を指定するリストで、クロマグロを絶滅危惧種に指定しました。

「主にアジア市場に提供するスシや刺し身のために漁業者に狙われている」とし、「大半は産卵する前の未成魚のうちに漁獲されている」ことが減少の原因であると指摘しています。

リストへの指定は、ただちに強制的な規制がかかるものではなく、関係諸国に保全の必要性を示すのが目的であり、関係諸国が連携して、保全措置を執ることが求められています。

クロマグロの国別漁獲量は国別に見ると、日本が最も漁獲が多く、次いでメキシコです。台湾、韓国、アメリカも漁獲をしますが、その量は少ないのです。

クロマグロは、太平洋を横断して長距離回遊することが知られていますが、主な生息域と産卵場は日本の排他的経済水域の中にあるため、クロマグロの保全や資源量回復のカギを握るのは日本です。

◆クロマグロ漁業の3つの問題点

クロマグロの漁業には3つの問題があると、東京海洋大学准教授の勝川俊雄氏は指摘します。

第一に、未成魚中心の漁獲。クロマグロが卵を生み出すのは3歳からですが、漁獲の大部分は産卵前の0歳、1歳の未成魚が占めているのが現状です。

産卵前に漁獲したら、次世代を見据えた資源を保つことはできません。また、成魚状態で獲ったほうが、価値が高くなるので、資源の有効利用という観点からも損失が大きいと言えます。

第二に、産卵場での集中漁獲。クロマグロの産卵場は沖縄周辺と日本海の2ヶ所のみであり、いずれも日本の排他的経済水域内です。

普段は広範囲に分布しているクロマグロも産卵期になると群れをつくって産卵場に戻ってきます。それを待ち伏せして産卵群を一網打尽するようになりました。産卵期のマグロを集中漁獲すれば、マグロは減少し続けます。

第三に、規制の欠如。これまで漁業関係者の自主的なルールに任せていたことが多く、これらの漁獲がほとんど規制されていませんでした。クロマグロを1年中自由に取ることができていました。

2015年になって、ようやく国際機関の中西部太平洋まぐろ類委員会は、未成魚の漁獲枠を導入し、日本は年間4007トンとする漁獲量を受け入れました。

◆求められる日本漁業の規制整備や漁獲の仕組みづくり

今年は、その漁獲枠が漁期を2ヶ月残して、突破しました。さらに、国内で許可を得ていない船がクロマグロを獲ったり、クロマグロを他の魚と偽って報告する違反事例も発覚しています。

水産庁は法律を改正し、許可を得ないでクロマグロを漁獲したり、上限を超えて漁を続けた漁業者を3年以内の懲役または200万円以下の罰金を科すなど規制を強化する方針です。

これらの罰則付きの法規制の適用は2018年1月から始めるというのですから対応が後手に回っていると言わざるを得ません。

今後も漁獲枠の上限が超えるようでは、日本の資源管理の姿勢に海外の批判が強まってくるでしょう。

日本が国際的な信頼を回復し、漁業大国日本が発展し続けるためにも、漁獲規制のあり方を見直すとともに個別の漁獲枠や譲渡の仕組みをつくることが必要となってきます。

【参考】
勝川俊雄「魚が食べられなくなる日」小学館新書 2016.8
勝川俊雄「なぜ日本はクロマグロの漁獲枠を守れないのか?」2017.4.20
https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20170420-00070068/
WWF FACTSHEET「太平洋クロマグロの現状と資源管理について」2014.7
https://www.wcpfc.int/system/files/WWF%20submission%20PBF%20JPA3j.pdf
SankeiBiz「クロマグロ、2カ月残して月内にも捕獲枠超えへ 沿岸部で相次ぐ違法操業、国際批判避けられず」2017.4.18
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170418/mca1704180826011-n1.htm
水産庁 平成28年度水産白書

油井哲史

執筆者:油井哲史

幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生

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