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学問の自由を脅かす文部科学省の天下り問題【前編】

幸福実現党たつの市地区代表 和田みな

◆文部科学省の天下り問題

文部科学省の元高等教育局長が退職の2か月後に私立大学の教授に就いた「天下り」問題が霞が関を騒がせています。

政府の再就職等監視委員会による文科省への調査では、10件のあっせん行為について国家公務員法違反であると認定され、この件に直接関与した前川喜平文科次官が辞任、6人の幹部が懲戒処分となる事態にまで発展しました。

さらにその後、文科省側が再就職等監視委員会の調査に対して想定問答を作成していたことも発覚し、同省が規制をすり抜けるため口裏合わせをしていたことも明らかとなりました。

これらのことから、文科省から私立大学への天下りは、組織的に、常習的に行われていたことが疑われています。

文科省の管理職経験者で退職後2年以内に大学に再就職したケースは、ここ5年間で79人(2011年~2015年度)に上ります。

この内、監視委員会が疑わしいとする事例は上記の10件以外にも28件あるとされ、詳細な調査が行われています。

さらに、安倍首相は、全省庁を対象とした実態調査を指示しました。

◆天下りの弊害

国家公務員として働いていた官僚などが、退職後に関連する民間企業や特殊法人などの重職につくことを天下りといいます。

そもそも天下りが「悪」だとされる主な理由として、汚職や官民の癒着が起こることや無駄なポストが増えることがあげられます。

これまで民間企業などへ天下った官僚が、その見返りに、仕事を斡旋したり、補助金を増やすことが、官製談合事件などの汚職や補助金行政の温床となってきました。

また、官僚が天下り場所を確保するために独立行政法人等の不必要な機関が増え、省庁の影響の強い無駄なポストが作られてきました。

このような天下りが更なる既得権を生み、許認可行政でがんじがらめの状態を招いていることが天下り問題の弊害と言われています。

しかし、公務員であっても職業選択の自由は保障されています。そのため、民間への再就職の全てを禁止することはできません。

そこで、2007年に国家公務員法(106条)が改正され、「天下り斡旋等の禁止」という現在の規制体系が作られました。

天下りの規制が厳格化されて10年。今回の文科省の天下り問題では、組織ぐるみの斡旋行為があったことは明白であり、現在の法規制に「抜け穴」があることを意味しています。

◆文科省と私学助成

国の行政機関である文科省の官僚と、「私立」の大学との間にどのような癒着関係があるのでしょうか。

戦後、教育界では「私学の自主性」が重んじられ、国による私学への規制は緩やかでした。

しかし、少子化などの影響で私学経営が困難になったことや、私学に進む学生の経済的負担を減らすため1970年代頃から国や地方行政による私立学校への助成が本格的に行われるようになりました。

平成27年度の「私立大学等経常費補助金」は、大学だけでも566校、約2940億円となっています。(日本私立学校振興・共済事業団ホームページより)

国からの補助金は私立大学だけではなく、法人化された国立大学の経営においても大きな影響を持っています。

多くの大学で定員割れを起こしている現在、文科省からの補助金は大学の存続に関わる重大なものです。文科省は補助金によって、大学が文科省のいいなりにならざるを得ない体制を作り上げてきたのです。

このような体制の下で、「天下り」の斡旋も行われているといえます。

そもそも、私学に対する助成には、経済的負担の軽減と経営の健全化という目的がありました。しかし、補助金なしでは経営自体が立ち行かず、経営の健全化とは反対の結果となっています。

日本の大学を弱体化させたのは、補助金行政の弊害といえます。

(つづく)

和田みな

執筆者:和田みな

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