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「契約結婚」から税控除のあり方を考える

千葉県本部 副代表 古川裕三

◆「契約結婚」って何?

いま、「契約結婚」をテーマにしたドラマが高視聴率で人気を博しています。

家事代行サービスを外部委託している独身男性と、臨時のバイトとして家事代行で働きながら「安定した就職先」を探していた独身女性が、お互いに合理的なメリットを感じて、戸籍上夫婦になる、という設定の漫画を原作とした物語です。

結婚といっても、事実上は、夫(雇用主)が妻(労働者)を雇い、家事全般を仕事として任せて、対価として給料を支払うという雇用関係(=契約結婚)というわけです。

◆専業主婦の年収っていくら?

ドラマの第一話にも出てきましたが、専業主婦の家事・育児を給与に換算すると、年収300万円ほどにも相当すると言われています。

単純に、夫が稼いでくる分の半分は、家事や育児を担う妻の稼ぎであり、夫の年収÷2をすれば妻の年収も計算できるという考え方もありますが、一般的には、家事活動の貨幣評価の方法として、機会費用法(OC法)と、代替費用法(RC-S/RC-G法)と呼ばれる二つの手法があります。

OC法は「家庭内ではなく、会社で働いていた場合のお給料」で換算する手法で、RC-S法は、「家事の内容を市場の類似サービス」に当てはめて換算する方法です。そして、RC-G法は、ずばり家政婦さんのお給料に当てはめて算出します。  

ちなみに、2011年、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部がOC法で算出した一人当たりの年間無償労働評価額は、専業主婦が年齢平均で304.1万円でした。

◆手取りを減少させる様々な「壁」の存在

日本では、専業主婦の年収300万円にも相当する〝内助の功“への配慮として、配偶者控除の仕組みがあります。

たとえば妻の年間の給与収入が103万円以下の場合、夫の所得から一律38万円が控除されます。(手取りが減らないように103万円以下に収入を抑えようとするいわゆる「103万円の壁」があります。)

加えて、先月より、従業員数が501名以上の企業には、社会保険加入の収入基準が年間130万円から106万円に引き下げられ、「106万円の壁」も出現しました。(参照:HRPニュース~パート主婦を襲う「106万円の壁」~http://hrp-newsfile.jp/2015/2488/)

これらの「壁」の存在が、「女性の活躍」を阻害しているとして、政府では見直しの動きが出ていました。

◆配偶者控除の見直しの動き

14日に開かれた政府の税制調査会が所得税改革の中間報告をまとめ、所得税の配偶者控除について「103万円の壁」を是正するため、配偶者控除の上限を130万円か150万円に引き上げる案などを明記しました。

現案では、現行の配偶者控除の仕組みを維持しながら、103万円を超えて150万円以下までは38万円の控除を適用し、150万円を超えたら徐々に控除額を縮減することを想定しています。

つまりは、141万円まで控除額を縮減して適用するという現行の配偶者特別控除をさらに拡大する形式となります。

ただし、厳しい財政事情を踏まえ、夫の年収が1320万円(「所得」では1100万円)、1120万円(同900万円)を超える場合は制度の対象外とする2案を軸に17年度税制改正大綱に盛り込むことを目指すとしています。

政府税調ではこれまで配偶者控除を廃止し、配偶者の収入がいくらであるかにかかわらず、控除を適用する夫婦控除という新たな仕組みも検討してきましたが、頓挫しています。

当初、夫婦控除は、女性の働き方に中立な仕組みとして有力視されていましたが、控除の対象者が大幅に増え、高所得者だけでなく中所得者まで適用外とする必要があり、大幅な税収減となることや、実質増税となる中所得層から票が逃げることを恐れた与党は早々に見送りを決めました。

◆勤労税額控除の導入を

そもそも、夫婦控除導入の議論や配偶者控除の廃止、拡大といった一連の議論は、女性の就労を阻害している「103万円の壁」を是正することにあるわけですが、就労促進を目的とするならば、英米仏など世界でも10か国以上が採用している「勤労税額控除」を導入するのも一案です。

例えば、アメリカであれば、主として低所得者の勤労意欲の促進を意図して労働を要件に勤労者に税額控除する仕組みを採っています。

控除額は所得の増加とともに増加し、一定の所得で頭打ちとなり、それを超える高所得となると逓減するという制度設計がなされています。

日本でも同様に、手取りの逆転現象を是正すべく、例えば130万円前後で控除額を増加させるようにすれば、就労調整をして手取りが減ることを気にすることなく、働けば働いた分だけ手取りが増えるため、勤労意欲も向上し、就労も増えるはずです。

ポイントは非正規(パート)か正規社員かではなく、「働くこと」そのものにスポットを当てていることです。

これによって、就労を阻害している様々な「壁」を突破し、勤勉に努力すれば報われる、という社会に近づくことができるでしょう。

減税を公約に掲げて見事当選を果たしたアメリカの次期大統領、トランプ氏にならい、日本も「偉大な国」の実現に向けて、大胆な税制改正が必要とされているのではないでしょうか。

古川 裕三

執筆者:古川 裕三

HS政経塾 担当チーフ

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