日銀、マイナス金利の誤算――初の国債保有額400兆円超え
HS政経塾第2期卒塾生 川辺 賢一
◆日銀の国債保有額、400兆円超え
今月12日、日銀の国債保有額が初めて400兆円を超えたことが発表され、約1100兆円の国債発行残高のうち、3分の1程度を日銀が保有していることが明らかになりました。
2013年4月に始まった異次元緩和により、日銀が市場に大量のお金を放出し、大量の国債買い入れを進めてきたからです。
国内民間銀行が保有する国債は今年8月時点で87.5兆円とされ、異次元緩和前と比較して半減。あと1~2年すると年間80兆円ペースで国債を買い入れる政策に限界が訪れると言われます。
また異次元緩和以前には1.5兆円程度であった日銀による上場投資信託(ETF)の購入額は今年10兆円に達しようとしております。
◆「金利」政策への回帰
そうしたなか日銀は昨年末にマイナス金利の導入を発表し、民間金融機関が新たに日銀に預け入れるお金に-0.1%の金利がかかるようになりました。
マイナス金利を導入した日銀の狙いは何だったのでしょうか。
もともと日銀の金融政策の中心は「金利」の上げ下げを通じて、景気・不景気に対応することでした。
金利が下がれば、お金を借りる人が増え、景気が過熱し、金利が上がればその逆に過熱した景気にブレーキがかかると考えられるからです。
ところがバブル崩壊後の失われた20年のなかで、日銀の「金利」政策はゼロの下限に達したため、新たにお金の「量」の拡大を指標とする量的緩和政策が実行されるようになりました。
お金の「量」拡大を通じて、人々に将来の物価が上がる(お金の価値が下がる)と予想させ、現在の消費や投資を喚起させようとしたのです。
これまで「量」拡大を目指した政策に限界はないと言われてきたなかで、昨今、国債発行額の3分の1程度まで日銀の買い入れが進み、その限界が意識されるようになったのです。
そこで日銀は「マイナス金利」を導入し、再び「金利」に着目した金融政策に回帰したという経緯があります。
さてマイナス金利の結果はどうだったのでしょうか。確かに日銀の狙い通り、民間金融機関が保有する日銀の預金の一部にマイナス金利が適用されることで、住宅ローンや貸出金利等、様々な金利に下落圧力がかかりました。
ところが安い金利でお金を借り、高い金利でお金を貸すことを生業とする銀行業にとってマイナス金利は収益の圧迫を呼び、さらに量的緩和政策の限界を意識させる結果となり、これまで金融緩和を主張してきた幸福実現党としても資本主義の精神を傷つけるとして厳しく批判をして参りました。
◆日銀の混乱した政策、その解決策は
そのようななか先月21日発表されたのが、新発10年物国債の金利を0%程度にコントロールする政策でした。
この政策からは、マイナス金利導入による金利の下落圧力を是正しようとする日銀の意図が見られます。
しかしながらマイナス金利撤回以外の方法で金利の下落圧力を是正するには、現状、日銀の国債購入量を減らす以外にありません。
実際、日銀の国債買い入れ額は減っており、異次元緩和以降の金融政策を評価してきた中原伸之氏や嶋中雄二氏らリフレ派エコノミストたちも現在の日銀の政策に批判的です。
このように日銀の金融政策は現在、マイナス金利の導入に端を発して混乱していると言わざるを得ません。
では何が解決策なのでしょうか。
まず政府は消費税率を5%に戻すことで、政府も日銀に協力して、徹底的にデフレ脱却に取り組む姿勢を改めて明確にすることです。
また銀行紙幣の発行等、日銀による国債購入やETF購入に頼らない手段でお金を創造する新たな金融政策が求められます。
幸福実現党は民間の知恵と資本が生きる自由な経済の創造を目指します。