原爆投下が戦争を早期終結させたのではない!
文/HS政経塾6期生 野村昌央
◆近づくオバマ大統領の広島訪問
いよいよ伊勢志摩サミット終了後の5月27日、オバマ米大統領が広島を訪問します。実現すれば世界で唯一の核兵器使用国の大統領が、現職大統領としては初めて被爆地を訪れることになります。
オバマ大統領は「核兵器のない世界」について言及すると見られ、世界中が広島に注目しています。
2009年4月にオバマ大統領がプラハで核兵器廃絶の演説を行ってから7年が経ちます。その間、2010年の「核体制見直し」の表明や、イランの核開発を遅らせる合意などに取り組んできました。
しかし、今年1月に行われた北朝鮮の4度目の核実験では、北朝鮮は核の小型化に成功したとみられており、東アジア地域での核の脅威はむしろ大きくなっています。
そうした中で日米だけが核のない世界を訴えても、中国や北朝鮮は応じません。むしろ喜ぶだけでしょう。
◆原爆投下の正当化は将来に禍根を残す
来日に先立ってオバマ大統領はNHKとのインタビューを行いました。
インタビューの中で「(広島訪問での)メッセージに広島への謝罪は含まれるか?」という問いに対し、「含まれない。戦争のさなかにある指導者は、あらゆる決定を下すとの認識が大切だ」と答えています。
「戦争における指導者の決定に対して疑問を呈し検証するのは歴史家の仕事である」とインタビューでは続けていますが、原爆投下による大多数の民間人に対しての無差別攻撃は当時においても国際法違反です。
これをアメリカ大統領が正当化することによる国際社会への影響は甚大です。確かに、現職の大統領が原爆投下の過ちを認めてしまえばアメリカ国内での若者の愛国心が揺らいでしまうなどの懸念はあります。
しかし、今後、広島や長崎のような被爆地をつくらないためにも、民間人への無差別な大量殺戮は正当性を持ちえないということをはっきりさせるべきです。
◆日本は和平交渉を続けていた
アメリカ国内では原爆投下は「戦争を早期終結させた」という見方が多数となっていますが、広島でも「原爆の惨禍は恐ろしいことだが、原爆投下によってそれ以上の犠牲者が出ずに済んだ」と認識している方が少なからずいます。
しかし、本当に原爆投下は戦争を早期終結させたのでしょうか。
フーバー元大統領が著した『フーバー回顧録』によると、1945年2月のヤルタ会談の時期に、既に日本は和平についての打診を中立国であるスウェーデン公使に要請していました。
そうした日本の動きを受けて、7月のポツダム会議が行われています。日本側に和平の準備があった事を連合国側も把握していたのは明らかです。
また、どんな事情にせよ長崎による二度目の原爆投下は必要ありません。
◆自虐史観を脱し、抑止力としての核配備を
核兵器の惨禍を二度と繰り返さないためには、「原爆投下は民間人に対する無差別攻撃であり、国際法違反である」という認識をしっかりと持つことが重要です。
同時に、原爆が戦争の早期終結をさせたというアメリカによる国内外の世論を説得するためのレトリックを打ち返していく必要があります。(ただし、昨年夏の米国内の調査では、若年層のうち45%が「原爆投下は間違いだった」とした。)
真に「核兵器のない世界」を目指すのであれば、日米の協力関係が不可欠です。
公正な歴史認識を持つことによって、日本は「過去に原爆を落とされても仕方ない悪行を行った国」という戦後のレッテルから解放されなければなりません。
そして主権国家として明確に自主防衛体制を築きつつ、日米同盟の片務性を解消するべきです。さらに独裁国家の核の暴発を防ぐための核抑止力を持つ必要があります。
日米が同盟国としての協力関係を堅持することで、真の平和と正義の実現を担っていく土台が整っていくものであると信じます。