「核兵器使用」への共通認識を新たな安全保障の土台に
文/HS政経塾5期生 表奈就子
◆北朝鮮が「核保有国の立場」をPR
北朝鮮の金正恩第一書記が、第7回朝鮮労働大会において、「北朝鮮は責任ある核保有国だ」と発言したことが、8日のマスコミ各紙で報じられました。
金正恩氏は「米国による核戦争の危機を、強力な核抑止力に依拠して終わらせる」と強調。他方で、他の核保有国と対等な立場で、核の不拡散や非核化に取り組むことを表明しました。
また北朝鮮は、近く5回目の核実験を行う可能性があると、米ジョンズ・ホプキンズ大学が分析しています(5月7日日本経済新聞)。
北朝鮮が今後、核兵器という武力を背景にし、自らを「責任ある核強国」と正当化して国際社会に圧力をかけようとしていることは明白です。
◆核兵器をめぐる国際的な矛盾
日本としては、核兵器で恫喝しようとする北朝鮮に黙っていることはできません。
しかし核兵器をめぐってはダブルスタンダードが存在し、国際的に矛盾があります。
核不拡散条約(NPT)という国際条約がありますが、これは「国連常任理事国の5か国以外は、核兵器の製造、保有をしてはならず、厳しい国際査察を受ける義務がある。しかし常任理事国は核保有国として、核兵器の自由な製造、保有を認められる」という内容です。
これでは核保有国の核兵器は永久になくならない可能性が高いのです。
◆核兵器をめぐる日本の矛盾
また日本の立場にも矛盾があります。
一つは、唯一の核兵器被爆国として、核兵器の廃絶を訴えながら、アメリカの「核の傘」の下にいて安全を保っている矛盾。これは長年議論されてきました。
また、日本政府は核兵器について、「憲法9条は、自衛のための最小限度の核兵器の保有を禁止するものではない」としています。
ですが日本は先述のNPTに加盟していることや、原子力基本法で核の使用を平和利用に限っていることなどから、自衛のために核兵器を保有するには現状では矛盾があります。法改正と国際的な合意が必要です。
最大の矛盾は、日本は米国の核の傘の下にいることもあり、核兵器使用の善悪について一貫した主張をできないでいることです。
原爆投下は、1899年に採択されたハーグ陸戦法規で禁止されている民間人への攻撃であり、国際法違反だと言えます。
しかしオバマ大統領の広島訪問に際しても、日本政府は謝罪を要求していません。両国の友好関係を考えると難しい課題です。
◆国際社会の危機を見据え、安全保障の本質を捉える
日本としては、国際情報を無視して核開発し続ける北朝鮮があることや、核兵器の保有を認められている中国が近隣の海洋に軍司基地を築いている周辺現状を見ると、戦争の勃発を防ぐには戦争を抑止する力が必要だと考えられます。
それは日本にとっては、米国との同盟関係の強化であり、核装備をも視野に入れた安全保障体制の構築です。
しかし、それには同盟国アメリカと、核兵器使用に対して共通の認識がなくてはなりません。
◆核兵器に対する、「戦争をしない」ための考え方
昨今は核保有国も、他国より優位に立つために核兵器を積極的に誇示しようとする国と、そうでない国に分けられると考えられます。
そうすると優先順位は、核保有国の中でも、核兵器を笠に着て他国へ圧力をかける国を牽制するために、その他の国と共通の価値観を共有することが必要です。
それは、憎しみや恨み、差別に基づいて他国を打ち負かすために核兵器を使うことは正しくないという認識です。
これは核兵器を使用したアメリカが、戦後の日米の友好関係を鑑み、過去の経験を反省して発信してこそ説得力を持つものです。
難しい問題ではありますが、要は、核兵器を使う人間がどういう考えを持っているかという要素も勘案する必要があると認識することです。
日本は、憎しみや差別を越えて戦争を抑止することが新たな安全保障の基盤であり、それでこそより強く正義を実現できるという考え方を国際社会に広め、アメリカの反省と謝罪を国際的に讃えられるものにする必要があります。
幸福実現党は、実際に戦争を抑止し国民の皆様を守りながら、同時に世界の全ての国に住むあらゆる人の平和と幸福を実現する理想を掲げ、多くの国に理解を求めながら、平和主義国家日本の舵取りに責任を持ちたいと考えます。