憲法改正、今こそ根本的議論が必要
HS政経塾第5期生 表なつこ
◆今年、与野党間で憲法改正が大きな論点に
本年1月10日のNHK日曜討論で、安倍総理は、憲法改正に積極的な政党で改正の発議に必要な3分の2の議席確保を目指したいと述べました。
憲法改正を目指す幸福実現党としては、このような方向は大きく歓迎したいと考えます。
◆憲法とは
憲法とは国家統治の基本を定めたものと言われます。
その内容として、政治権力を制限して人権を守るという「立憲的意味」が重要だとされています。
「立憲」という言葉がなぜこんな意味を持つと言われるかというと、「近代の始まりの一つとされるフランス革命が、王や貴族の統治に対して民衆の権利を求めて憲法を制定したから」という、西洋史の考え方に基づいています。
「憲法を立てて国を運営する」という字面である「立憲主義」という言葉は、西洋史的な意味に従えば、「一国の憲法はその国の国民の自由意思に基づいて制定され、かつ、国民個人の権利が守られる内容でなければいけない」ということになります。
今回は以上の意味をふまえ、日本国憲法改正の根本的な部分について説明いたします。
◆占領期間に、GHQに作られた憲法
1945年(昭和20年)のポツダム宣言の受諾による終戦から、1951年に調印したサンフランシスコ講和条約が翌1952年(昭和27年)に発効されるまでの7年間が、日本が連合国に占領統治されていた期間です。
占領開始一カ月後の9月、米大統領からマッカーサーに与えられた「降伏後における米国の初期の対日方針」には、「究極の目的」として「日本国が再び米国の脅威となり又は世界の平和と安全の脅威となることなきよう保障すること」とありました。
マッカーサーはこの指示に従い、日本の牙を抜こうと考えました。10月にはマッカーサーは当時の国務相近衛文麿に対し、大日本帝国憲法変更を指示しました。
1946年2月8日、日本政府は憲法改正要綱を提出しました。
しかしその一週間前に毎日新聞がスクープした日本政府の憲法改正案を見ていたマッカーサーは、これを現状維持的だと判断。GHQ民生局に指令を出して6日6晩の超特急で独自の憲法草案をつくらせます。
この指示の内容に、現在の9条の元となる「国家主権の発動としての戦争の廃止」という規定が入っていました。
そして、GHQは日本の改正案を却下してマッカーサーの指示のもとつくった憲法草案を提示、この憲法草案を受け入れない時は天皇の御身柄を保障しかねると明言し、自らの持つ原子力の力を脅迫的に示唆したといいます。
◆徹底した検閲で、総司令部の憲法作成という事実を秘匿
また、GHQは日本国内で徹底的に検閲を行いました。
民間検閲支隊(CCD)が検閲した内容は多岐にわたりますが、以下の内容も削除または発行禁止の対象とされていた資料が残っています。
「SCAP(連合国最高司令官または連合軍総司令部)が憲法を起草したことに対する批判」
「検閲制度への言及」
日本の憲法が他国の手でつくられたことを隠すことが大目的でしたが、そのために行う検閲が行われていること自体を検閲して隠した上で実行する、という、実に厳重な取り締まりようだったのです。
◆憲法改正の必要性を正直に見よう
以上の経緯を見てみると、日本国憲法は「一国の憲法はその国の国民の自由意思に基づいて制定されなければならない」という憲法の原則に反していると言えます。
また、「米国の脅威となることなきよう」という方針のもとに制定されている条文では、個人の権利や自由を守るための国家権力が個人を守れない事態が発生しかねず、立憲主義の原則に反することにつながります。
憲法改正の議論には、以上のような成立過程を国民に周知させることと、現在ただいま日本国民の自由や権利を守るために欠けているものがある事実を見ることが必要です。
◆それぞれの「正義」を理解し、重層的判断を
そこで気をつけるべきは、憲法学は、今ある憲法の欠陥を指摘し手直しを言うべき立場にない、ということです。
それは立法を仕事とする議員たちの仕事であり、司法は法律を解釈して争いを解決するのが仕事であって、議員の仕事に口出しするのは三権分立の精神を損なうという考えです。
この態度自体は、決められたルールを守り秩序を維持するために不可欠な態度でしょう。
ただ、ルールを守ることだけが安定をもたらす方法ではないことも確かです。
「不殺生」を説いたインドの釈迦教団が武力によって滅ぼされたように、状況によってはルールを作り変えて対応することが安定につながる場合もあるのです。
したがって大事なのは、「憲法学」「国際法学」「国際政治学」などが、それぞれ何を見、何を守ろうとしているかを理解した上で、できうるかぎり多くの人が幸福を享受できるような結論を出していくことです。
◆真の憲法は「すべての人々の幸福を願う神仏の御心」から始まる
このように正義とは何かを考えつつ憲法を見ていくことによって、「権力を縛り個人を守るのが憲法」という西洋史的な考え方とは別に、「すべての人々の幸福を願う神仏の御心」という法もまたあるということが見えてくるのではないでしょうか。
【参考文献】
・大川隆法『正義の法』(幸福の科学出版)
・佐藤悠人『理想の憲法を求めて「新・日本国憲法試案」の研究』(HSU出版会)
・芦部信喜『憲法』(岩波書店)
・江藤淳『一九四六年憲法―その拘束』(文春学藝ライブラリー)
・長谷川三千子『九条を読もう!』(幻冬舎新書)